霧幻旅【秘封倶楽部】   作:萩崎紅葉

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夢違科学世紀 〜 Changeability of Strange Dream



永夜の報い ~ Imperishable Night

夜が降りてくる ~ Evening Star

人形裁判 ~ 人の形弄びし少女

夢と現の境界






2

 

「天然の筍って、どういう物なのか知らなかったのよ。

合成の物しか見た事ないもの。筍は味しか知らなかったの。」

 

「まぁ、確かに。竹林に生えてる筍はかなりの田舎に行かなきゃ見られないからね。」

 

 

 

「そういえば、竹林は微妙に傾斜が付いていて、私の平衡感覚を狂わせたわ。まっすぐ走っているつもりだったけど、本当はどうだったのかしら?」

 

 

メリーはまた話し出した。

 

 

「──蓮子みたいな『客観的に見て明確な真実が存在する』という考え方はいかにも前時代的だわ。真実は主観の中にある。見たことのある景色しか出てこない...あそこはそういう所なのよ。」

 

「確かに、真実は自分自身にしか分からないこともあるし. . .。」

 

「だから私は走っていたの。夢の中だろうと、得体の知れない物からは逃げなきゃいけないの。それが真実だから。」

 

 

夢と現は対義語なんかじゃない。真実は主観の中にある。客観の中にある。どちらの言い分も理解出来た。しかし、真実は自分自身の中にある...主観的に見なければわからない。

 

だが、夢でもその理論が成り立つかどうかは分からない。

 

「私は、客観的に見る事は大切だと思うわよ?」

 

「確かに。──それにしても不思議ね。貴方みたいな前時代的な人は、夢と現を正反対な物として考える人が多いみたいだけど。」

 

 

メリーが蓮子に言った。すると、今度は横でアップルパイを食べていた夏楓が話し出した。

 

 

「大昔の人は、夢と現実を区別していなかった。そして今は、夢と現実は区別するけど同じ物。まるで時代が1周したみたいだ。」

 

「そうね。現の現実と夢の現実、現の私と夢の私、それぞれが存在するわ。夜の胡蝶が自分か、昼間の人間が自分か。」

 

「今の常識では、両方自分なのね。」

 

 

ようやく、3人の意見が一致したようだ。

 

 

 

「──でね。これがその大鼠と女の子が去った後に落ちていた紙切れよ。」

 

 

大鼠やら、妖怪やらが出てきてどう考えても現実の話ではないが、夢なのか現実なのか、メリーは紙切れを見せてきた。

 

 

「ねえ、それほんとに夢の話なの?」

 

「だぁからぁ、夢と現なんて同じ物なのよ。いっつもいっつも言ってるじゃない。私にしてみれば、貴方と会っている今が夢の現実かもしれないし──。」

 

「まぁまぁ、夢の世界の話でも聴いてあげるから落ち着いて、メリー。」

 

「そういえば、その女の子は何者だったの?その後どうなったの?」

 

 

夏楓が聞くと、メリーは紙切れを机に置いた。

 

 

「知らない。その後は、大鼠が逃げていって――女の子も去っていったわ。私はね、ずっと大鼠にも女の子にも見つからないように隠れていたの。」

 

「どうして大鼠を追い払ってもらったのに隠れてたんだ?」

 

 

「だって──あれは人間じゃないから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




真実って、結局なんなんでしょうね?
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