メイドをクビになりまして   作:蟹のふんどし

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感想より、抜粋&意訳。
Q. 咲夜さん飛べないの?

A. 飛んだらパンツ見えちゃいます。パンツが見えるのは瀟洒ではないので、咲夜さんは飛べません。
噓です。(以後略)

嘘ですよ?ちゃんと理由があります。


episode 16

 

 

「やってるね、霧雨」

妙に通る声が聞こえた。

顔を上げると周りの天狗たちも同じように顔を上げて一様に魔理沙の方を向いていた。彼らの視線をたどると、魔理沙の前にある烏天狗がいる。ほかの天狗と同じような制服を着ているが基調が紫だ。胸元に刺繍が入っていたり、天狗帽子が紫色であったり、仰々しい軍刀を腰に下げているところを見るにこの天狗は立場が高いことが推測できる。後ろには図体のでかい天狗が二人いるし。

「おお。海姫。毎度御贔屓に」

魔理沙が帽子上げて、気軽に言った。

あれが海姫か。茶髪にツインテールの女天狗。目つきはキツいが確かに顔はいい。

少し可愛らしいかもしれない。ただ私の趣味ではない。

魔理沙の言い様に後ろの一人が眉をしかめた。

「貴様。この方をどなたと心得る。お前の様な人間ごときが生意気な口を…」

「いい、いい」

海姫と呼ばれた天狗は手を振った。

「そういうのは要らない」

「…失礼しました」

「ん」

面倒くさそうに返事をした海姫はちらりと周りを見て、それから魔理沙に声をかける。

「んー、賑わってる。いいことね」

「おかげさまで。助かってるぜ」

「でも客が減ったかしら」

「おかげさまで。困ってるぜ」

魔理沙が肩をすくめる。

客が減った?

周りを見ると天狗たちがいそいそとほかの店に移動していく姿が見えた。先ほどまで購入待ちで列を作っていた天狗たちもだ。それどころかミスティアまで逃げようとしている。

とりあえず捕まえた。なに。その顔。どういう表情よ。

「まだ商品を渡してないわよ」

「後ででいいよ。今度うちの店に来た時にでも渡して」

「なんで逃げるの?」

「なんでって…」

ミスティアが苦い表情で魔理沙と会話してる海姫を見る。

「海姫様が来てるでしょ」

「ええ。そうみたいね」

「だからだよ」

だから?答えになっていない。

「咲夜も逃げたほうがいいよ」

そのまま飛んで行ってしまった。

逃げたほうがいいって…私、店番なのだけど。

「…」

まぁ、いいか。とりあえず海姫とやらが魔理沙に何かしたら殺そう。

「随分遅い。態々呼んだんだけど」

「商品の入荷に手間取った。すまん」

「髪が傷んだわ」

「そうか?そうは見えんが」

「これ、毛先」

「あー、マジか。そーいうの治す奴作ってきたから許してほしいぜ」

「ふーん。じゃあ許す」

「有難いね」

多少語彙に乏しいが普通に会話しているように見える。問題があるようには見えない。

「…」

会話の途中から海姫はチラチラあたりを周りを見ていた。誰かを探しているようにも見える。

その様子に魔理沙が苦笑した。

「射命丸ならいないぞ」

海姫が魔理沙を睨みつける。

「別に、そんなこと言ってないけど」

「私がサボってばかりの天狗をチクりたいんだよ」

「…」

「そんなに睨むなよ」

魔理沙は肩をすくめる。

「で?なんでいないの?」

「私たちの監視は一銭の得にもならんのだと」

「これ、仕事なんだけど」

「私に言われてもなぁ」

「あんたが言い始めたんでしょ」

「そうだっけ?」

「…」

やっぱり問題があるかもしれない。

「………私、()()?」

海姫が呟いた。

「あー。そういやそうだった。うちの店の従業員出来たからさ、連れてきたんだよ。ほら、あいつ」

そう言って魔理沙はこちらを指さした。

人に指向けんな。

海姫は気だるげにこちらを一瞥して、首を傾げた。

「………人形?」

「人だぜ」

「足のない人間なんていたんだ」

「あいつは必要な時に足を生やせるんだ」

「それって人なわけ?」

「レベルが高いんだよ」

「ふーん」

ふーん、じゃない。

人間は何をどう頑張ったところで任意に足を生やすことはできない。

「別になんでもいいけど。私、あんたの入界許可しか取ってないから、死んでも知らないよ」

「死なねーよ。喧嘩を売った天狗は死ぬかもしれないけどな」

「は?」

「十六夜咲夜だぜ、あいつは」

その言葉を聞いた瞬間、海姫は目を見開く。ついでにお付きの二人も驚いた表情でこちらを見た。

またか。なぜこうも名前ばかりが広がっているのか。ここまでくると誰かの作為を疑いたくなってきた。

魔理沙が肩を震わせているのが分かった。

みんながみんな、あの噂にびくつくものだから試して楽しんでいるのね。また魔理沙の腹を殴る回数が増えたわ。

「なんでいんの?」

「だから、うちの従業員」

「あいつ蝙蝠ん所の狗でしょ」

「引き抜いたんだよ」

「へぇ」

海姫が両頬ひきつらせた。初めて表情らしい表情を見せたが、あれはどういう感情なのだろうか。

そんなことを考えていたらこちらに飛んできた。

「ねえ、あんた」

うわ。なんか面倒くさそうな雰囲気してるわね。

「いらっしゃいませ」

「…」

睨むなよ。接客しただけでしょう。

「どちらの商品をご所望でしょう?」

「全部。十本ずつ」

「お買い上げありがとうございます。商品はそのままお持ち帰りになられますか?」

「後で取りに来させるわ」

「かしこまりました」

十本。分けておかないと。海姫からうまく逃げる口実が出来たわ。

などと思いながら在庫の仕分けをしようと帽子の中に入ろうとしたら、直前に再び声をかけられた。

「ねえ、あんた」

ちっ。

「…なんでしょうか?」

「あんたが十六夜咲夜?」

「はい。私めが十六夜咲夜でございますわ」

名乗ると海姫とやらは不躾にこちらをじろじろと見た。当主の娘の割には礼儀がなってない。

「あんたさ、あの蝙蝠に捨てられたんでしょ」

彼女の表情に悪意は見られない。浮かんでいるのは純粋な疑問符だ。

「…………」

「そうなんじゃないの?」

「さあ?」

「霧雨と蝙蝠の所は懇意にしてるらしいけど、あの蝙蝠って使い慣れたモノを他人に貸すような奴には見えなかったし」

「そうですか」

「それにあんたみたいな顔した奴、最近よく見てるから」

「それはよろしかったですね」

「そうなら、あんたに聞きたいことがあるんだけど…」

海姫が思案気な顔したところで魔理沙が間に入ってきた。

「おいおいおい」

苦笑いだ。

「海姫さんよ。あんまし商売に関係ないこと聞かないでくれるか」

海姫は眉を顰める。

「なんで?」

「いや、誰だってあるだろ?そういうの」

「そういうの?この情報には対価がいるの?」

「そういうことじゃなくてだな…」

魔理沙が額に汗を流す。

なるほど。確かにこいつはヤバい。ミスティアが言っていたのはこういうことか?

「どういうこと」

「いや、そうだな……」

魔理沙は何かを言おうと口ごもったが、何度か口を開こうとして結局諦めた。

そして首をぐるりと回した。

「文!」

「はい、なんでしょう?」

気づいたら後ろに文屋がいた。妖怪の山の奴らはなぜまともに現れないのか。正面から来い。というかお前、他の仕事があるとか言ってなかったか。

「なんとかしろ。どうせ見てたんだろ」

「はい、見てましたよ」

「じゃあ、頼む」

文屋は首をかしげる。

「頼む…?はて」

「なんだよ」

「それが人にものを頼むときの態度ですか?」

「…」

「商人として、礼儀が出来てないのはいかがなものかと思いますよ」

魔理沙の腰がさびた機械のようにぎこちなく折れ曲がっていく。

「お、お願いします」

「いや~、久しぶりに頭下げた魔理沙さんが見れましたね」

あいつ、後で殴ろう。

「まあ、ごめんですけどね。私に得ありませんし」

「この野郎…」

「分かります?得です。利益です。メリットがなければ人は動きませんよ」

「………シャンプーボトル一本」

「はぁ?」

「…リンスも付ける」

「誠意が足りませんねぇ」

「セットもやるよ!それでいいだろ!」

「しょうがないですねぇ。ダメダメな魔理沙ちゃぁんを私が善意で助けてあげましょう」

こいつマジでクソ。

ちなみに海姫はこの茶番の前でずっと前髪をいじくっていた。

同族がアレなのだから諫めるとかしろ。

もう、なんだか頭が痛くなってきた。ヤバい奴しかいないわね、ここ。まともなのは私だけかしら。

「海姫様におかれましてはご機嫌麗しゅう」

「…射命丸もね」

「私のような下っ端に挨拶など恐れ多いですねぇ」

「そんなこと、ないと思うけど」

ツインテールの髪を指先でいじりながら、もじもじと答える。

先ほどまでの斟酌を交えない話し方どこへやら。顔をもわずかに赤くなっているし。妙に落ち着かない。

というかこれは…

「ねえ、魔理沙」

「なんだ」

「あの海姫とかいう天狗、どう見ても文屋に気があるのだけど」

「あー、それな」

「統領の娘なんでしょ?あの天狗。頭大丈夫なの?それとも天狗のなかじゃあれが普通なの?」

「安心しろ、咲夜。天狗の中でもあいつはクソだ。クソ中のクソ。お付きの顔を見てみろよ」

後ろのお付きの一人はこめかみがぴくついていた。もう一人は眉をしかめている。

「でも文句は言わないのね。魔理沙には言ってたでしょう」

「天狗は縦社会だからな」

「あの文屋、そんなに高い地位についているの?」

「大天狗の直属らしい。上から数えたほうが早いんじゃないか」

損得勘定が上手いなら仕事が出来てもおかしくはないか。しかし…

「あの文屋を使おうだなんて、倫理観の行方が知りたいわ」

「妖怪に倫理観を求める人間なんて、それこそ倫理観の行方が問われるだろ」

「それもそうね」

海姫と文屋はまだ何かの話をしていた。まあ、話を逸らしてくれたことは有難い。

そこだけは評価してもいい。

「担当になられた異種管理、海姫様のご活躍は耳に入っておりますよ」

「そう」

「何でも空中に畑地を作っているとか。いやあ、よく考えましたね。あれなら土地を開く必要もありませんからどの団体の利権も脅かしませんし」

「まあね」

「施設の建造に使う土地だけでなく、労働力と技術が河童のものというのも素晴らしい。滝が河童の谷と山の境界というのも含めて外部には山の統制が滞りなく機能しているアピールになるでしょう」

「だろうね」

先程までと違い、海姫の返事が妙に素っ気ない。

「それに、最高に傑作なのは河城にとりさんですよ」

「…」

見てわかるくらい海姫の表情がゆがんだ。さっきの頬がひきつったのとは違う。歯を食いしばっているように見える。

「彼女の技術、素晴らしいですよね。一体どんな頭をしていればあんなことが考え付くのか興味が尽きません」

あの河童が使っていた道具を思い出す。私からすると透明になる原理など皆目見当もつかないが、天狗にとってもそうらしい。

「それなのに彼女、族長の娘ですよ。非常に扱いやすいですねぇ。もうやってくれって言っているようなもんじゃないですか!」

魔理沙のこぶしが固く握られているような気がした。

「人質として!使えって言ってますよねぇ!」

河童の族長、河城はこがその相貌を崩し、疲労に覆われたあの笑顔が脳裏にちらつく。

「技術力があって!立場も重要で!何より戦闘能力がない!こんな便利な存在がいるなんて!いやぁ、流石、次期統領です!目の付け所が違います!」

「…」

「他種族を騙し、脅し、支配する。それでこそ天狗!それでこそ天魔の血を引くものです!この射命丸、敬服致します」

文屋は笑顔だった。今まで見てきた中で最も、この上なく満面の笑みを浮かべていた。その面を泳いでいるのは嗜虐心だけだ。愛想ではなく、心の底から愉快だと思っているのが見て取れる。

………こいつは恐らく正真正銘のクズだった。

「おい、文」

「貴方が彼女を見つけ出し、河童たちに取引を申し出たときは驚きました」

「文」

「なんせ親の七光りとあれだけの宮で追いやられてきたあなたが、今もっとも必要な成果を出したのですから」

「文」

「大天狗に出世したのも当然と言えるでしょう。しかしどこでご存知になられたのです?我々妖怪が段々と…」

「文!」

怒鳴った魔理沙は酷い形相で文屋の首元をつかんだ。

「なんです?」

心底不思議そうに文屋が首を傾げた。

「もういい。在庫は大体はけた。店じまいだ」

「はあ。そうですか」

「ああ。お前には運営に売上金と終了の報告をして貰う」

「構いませんよ。」

白けた表情をする文屋に一枚の書類を魔理沙は渡した。文屋その書類を持ってすぐに飛んで行った。

「咲夜、行こうぜ」

「行くって…待たなくていいの?案内役でしょ」

「どうせすぐ追いついてくる。ほっとけ」

「わかったわ」

注文分の仕分けだけはしておかなければ。

「…」

帽子の中に戻ろうとしたら海姫が視界に入った。

「…違うっつーの」

下を向いて何かを呟いていた。

彼女を尻目に私は帽子の中に戻り、注文分の在庫の仕分けを始めた。戻る際、少しだけ見えた海姫の表情は歯を噛み砕かんばかりに食いしばっていたので、私に声をかけたときのあのひきつった顔は笑顔を浮かべていたことにようやく気が付いた。

 

 

 

§

 

 

 

私はただ、あの子と仲良くなりたいだけ。

 

 

 

 

§

 

 

 

「魔理沙、この山はどうなっているの?」

例のごとく魔理沙の箒に乗せてもらい、天狗の里を移動する。

一応飛ばなくても移動はできるが、時間がかかる。烏天狗は飛んで移動するし、白狼天狗たちは草原だろうが林だろうが関係なく走破してしまう種族であるから、天狗の里の中は儀礼的な場以外での道が整備されていないらしい。獣道は出来ているようだが、飛んで行った方が危険も時間も少なくて済む。

「…さっきのことか?」

彼女は振り向かずに答えた。

「それもそうだけど、河童の族長もその娘も、というか妖怪の山全体の雰囲気がおかしいわよ」

「まあ、そう思うよな」

彼女は溜息を吐いて、進路を変えた。大きく弧を描いて滝のあった方向に進み始めた。

「魔理沙…?」

「私も最近になってようやく山で商売できるようになったから、昔のことはそんなに詳しいわけじゃないけど」

「ええ」

「事の発端は、はこさん…河童の族長が言っていた天狗上層部の人事異動らしい」

“天狗の組織内で大規模な人事異動があったらしく”彼女は確かそう言っていた。

「その時から天狗たちの山を統治する方針も大きく変わったんだそうだ」

「変わった?」

「人間の真似事をするようになった」

真似事?天狗が?

「インフラ設備を整えたり、市場を増やして外部の商人をいれたり、食料生産を始めたりな」

「何のために」

「さあ?何かのアピールに見えるが、あいつらの考えることはよく分からん」

彼女は少しだけ早口で言って、顔を逸らした。

魔理沙は噓をつくとき、早口になる傾向があることはここ最近でよく分かっていた。

ただ彼女が無意味に噓をつくこともしないということは前からよく分かっていたことだ。言わないということはそれなりの理由があると理解する。

「…じゃあ、木の葉畑の建設もその一環ってことかしら」

「多分な」

なぜここまで急に進めるのか。天魔が妖怪の賢者の一人だというのは専らの噂である。これまで長年統治に携わってきた妖怪なら急進的な改革の危険性もわかっているはずだ。

妖怪は物質的な存在ではなく、精神的なものだ。存在の比重は心の方に偏る。急激な環境の変化はその精神に大きな負担を生み、下手をすれば存在の瓦解を招きかねない。

「妖怪の山には他の妖怪たちだってそれなりにいるのでしょう?いくら下位組織と言っても相当な反発があるはずよ」

「あったさ。だから言うことを聞くように()()なんて取ってやがるんだ」

さっきのあれか。

「今までは一番交友が深い天狗が各種族との折衝をやっていたらしいが、人事異動で異種管理を担当する組織が出来た。そいつらは優位性を示したいのか、ほかの妖怪たちのある点に着目した」

「ある点?」

「統治が組織によって行われてない点だ。妖怪の山には多くの妖怪が集まっているが議会なんてものを作っているのは天狗だけだ。ほかの奴らは一人の統領がまとめ上げてる。何かの能力だったり知識だったりが秀でている一人がだ。まとめ上げる人材に変わりがいないんだよ。だからその後継ぎがいなくなったら多分反抗どころじゃなくなる」

有象無象の集団は力で脅しやすい。個々の戦闘能力が低いならなおさらだ。

「加えて後継ぎには優秀な力を持ったやつが多いから今回の真似事のための協力要請って形で身柄を引き取りやすい」

「じゃあ、あの河城にとりは…」

「あいつも河童たちに言うことを聞かせるために人質にされてる」

あの河童が…人質…?

「人質なのに簡単に山を抜け出せるの?」

あとからお目付け役がきたとはいえ、あの店で私を襲ってきたときは監視の一人もつけてなかったはずだ。

「射命丸文も言ってただろ?にとりの技術がすごいって。あいつの知識は今の天狗たちには必要不可欠なんだ。人質であり重要な護衛対象。だから、まあ、ある程度の自由が与えられている」

「…」

ある程度の自由。河童の族長と話した時の“お礼はにとりに言ってやれ”という魔理沙の言葉。

「河城にとりは自分を売った河童を恨んでいないの?」

彼女は自分を天狗たちに差し出した河童たちのために魔理沙に協力してもらっていたのではないか。

その為に自分の知識を使っていたように見えた。彼女は自分を切り捨てた親を憎んでいないのだろうか。

「そんなこと分かるかよ」

魔理沙は吐き捨てるように言った。

「そうよね。ごめんなさい」

心の奥内なんて本人以外に分かりようがない。

「ただ、あいつはあの立場になっても河童を助けようと行動してる。それは確かだ」

河城にとりは立場にかかわらず、やるべきことをやっているのだ。黄昏ることもなく、卑屈になることもなく、ただ自分のやるべきことをやっている。

それは私にできただろうか?私は紅魔館を追い出されたあと、立ち止まることなく自分のやるべきことをやってきただろうか。

「河城はあの店に何をしに来たの?」

魔理沙はあの時、白狼天狗に対してにとりは逃げ出してきたと言っていた。

彼女は監視の目をくぐってでもすべきことがあったのではないか。

「……にとりは確認しに来たんだ。私に頼んだ物がちゃんとできたかどうか」

「物………あ」

河童の族長と話したときに言っていたではないか。あの黒い箱や薬剤は河城にとりの理論と設計だと。

「仲間が心配だったんだろうよ」

河城は自分の母親を助けられるか確かめに来たのだ。そして私はそれを無下に追い返した。

「かと言って、咲夜が気に病むことは何もないぜ。急に襲い掛かったのはあいつが百パー悪い」

「…」

「おい?」

魔理沙が振り向いた。

「魔理沙」

「なんだよ?」

「河城にとりのところに向かってくれる?」

魔理沙が呆れた表情で言う。

「だから、咲夜が気にすることはないって」

「違うわ。これは借りよ」

「借り?」

ポケットの中のものを指で触る。

「彼女の作ったスタンガン。私も有効に使わせてもらったから」

「……?」

「貴方に帽子を使ったら対価を払えって言っておいて、私は彼女に何も払わないなんておかしいじゃない」

「ああ。そういう。…そりゃあ、そうだな」

魔理沙の呆れた表情は変わらないが、どことなく笑みを浮かべているようにも見えた。

「だから、お願い」

「まぁ、今向かってるのはにとりのところなんだけどな」

「え?」

「お前ならそういうと思った。なんせ私の友人だからな」

「…」

ふーん。

「あ、照れてんのか」

は?

「あ、おま、ちょっと待て!スタンガンをかざすな!やめろ!」

 

 

 

 

 

 





妖怪の山、物々しすぎるでしょ。もっと理想郷しろよ。

感想頂けたの、嬉しかったです。ありがとうございました。
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