メイドをクビになりまして   作:蟹のふんどし

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episode 19

 

 

彼女は話をすると言って、ある包みを持って来た

「実は、もう彼らに限界が来ています」

河城はこさんは湖の周りで集まっている河童達を尻目に口を開いた。

「終わりのない役務と加速する支配に不満は高まるばかりで、いつ爆発してもおかしくないのです」

先ほどの河童たちのはしゃぎようを思い出す。

「じゃあ私達が入ってきたときにあそこまではしゃいでいたのは」

「お恥ずかしながら、天狗に打撃を与えた事が好ましいという感情によるものでしょう」

「爆発、というのは具体的に何を指すのかしら?」

「自分たちの不満を天狗にぶつけてしまおう、そういう動きがあります」

魔理沙が眉をひそめた。

「ぶつけるって…そりゃあ」

武力行使をするつもりなら、それは彼女の娘を捨てるということになる。

河城さんは首を横に振った。

「勿論、実際に武力を使うわけではなく、デモ、ストライキという形で行おうとしていたようです」

それでもリスクが高いことに変わりはない。なんせそういう反抗を起こさせないために人質がいるのだから。

いや待て。行おうとして“いた”?

「なぜ過去形なの?」

「それが最近になって妙な品物がこちらに流れてくるようになりまして」

彼女はそう言って、もってきた包みを開いた。

「これは…軍刀?」

包みの中には装飾が寂れ、少しくたびれた刀が入っていた。

「なんでこんなもんが…軍刀は天魔から許可を得た天狗しか持てない決まりだろ」

魔理沙が眉を寄せて問う。

「その通りです。軍刀は天魔様から賜る物で、いわば爵位の証。市場に出てくるなど有り得ないのです」

彼女も厳しい眼差しでその刀を眺め、立ち上がって刀身を抜いた。

「おい」

「見ていて下さい」

彼女はそのまま自分が座っていた椅子にその刀を振るった。

甲高い音を立ててその刀は真っ二つに折れた。

「え?」

「横から力を加えたわけじゃありません。刀身に沿って軌跡を描きました」

刀は刀身に対して垂直に力を加えられると容易に折れるが、平行な力に対してめっぽう強い。極めて強力かつ瞬間的で爆発的な力でも加えない限り折れることはない、と多々良先生が仰っていた。

「つまりこれは粗悪品です。粗鉄で鍛えられているのでしょう。側だけつくろって、年季の入った刀に見せかけています」

「…どうしてそんなもんがあるんだよ」

魔理沙は困惑した表情でその刀を見る。

なんとなく見えてきた。

「つまり、河童達の不満に乗じて、武器を横流しすることでデモを武力蜂起に変えてしまおうとする輩がいる。貴方はそう考えているのね?」

河城さんは驚いた表情をする。

「は、はい。その通りです。よくお分かりになられましたね」

「誰だか知らないけれど、悪意が見え透いているのよ」

こういう流れは局所的に加速する。悪意に基づいているのならなおさらだ。極めて不自然で、不愉快だ。

「武力蜂起って…あいつらがカチコミかけるってのか?そんなことしないだろ」

魔理沙訝しげに私を見つめる。

「見ろよ、あいつら。どいつもこいつも気のよさそうなやつばかりじゃないか。そんな奴らが武器もって殴り掛かるなんてことがあるか?」

「魔理沙、感情というのは個人だけが持つものじゃないのよ。集団は個人とは別の感情を持つの」

集団ヒステリー、集団自決、冷静な個人ではやりそうもないことが集団の感情が爆発したせいで起こってしまう。そんな話は枚挙に暇がない。

「特に恐怖、不満、敵意、負の感情を集団が帯びてしまうと誰にも手が付けられない暴徒になる可能性もある。貴方だって里で経験したことがあるでしょう」

「…」

そこまで極端ではないが、子供一人を目の敵にするのだって普通の大人がやることじゃない。

「そういう暴走はたまりにたまった不満が何かのきっかけで爆発するの。仲間を殺された。残酷な侮辱を受けた。それと、武器を手にしてまった、とかね」

武器というものは所持者に強力な優越性を与える。その優越性は麻薬に似た快感を所持者に与え、冷静な判断力を奪ってしまう。

そして武器を手にしたものが、その武器よりも強い精神性を備えていなければ身を破滅させるまで、死ぬまで武器に振り回される。だから日頃であれば武器を手にしないような、穏やかな気性の者たちが最も危険なのだ。

「十六夜さんの言う通りです。彼らが他者を害することは信じたくありませんが、私は河童の族長として起こりうる可能性を排除する義務があります」

「じゃあ、はこさんは…」

彼女は魔理沙の問いかけに頷いた。

「私は、お二人に彼らが武器を持ってしまった時に止める役目をしてほしかったのです」

なるほど。それで引き留めようとしたのか。

「宮への襲撃。これほど刺激的な情報もありません。このような情勢では何が彼らをたきつけてしまうか分からない。ですから我々よりも武力に優れるお二人に、安全弁となってほしかった」

河城さんは席を立ち、床に頭をつけた。

魔理沙が慌てて席を立つ。

「お、おい」

「厚かましいお願いだとは承知しております。ですが、どうか、この役目を引き受けては下さりませんか?」

彼女の声には覚悟があった。

「私は何としても……河童を守らなくてはなりません」

長としての覚悟だ。

魔理沙はその目を見て口を開いた。

「話してくれてありがとう、はこさん」

そして私を見る。

言わなくてもいいわよ。話し合おうって言ったのは私なのだから。それに河城にとりには、まだ借りを返していない。

「その役目、引き受けるぜ」

「ありがとうございます」

河城さんはもう一度、深々と頭を下げた。

「頭を下げないでくれよ。そもそも杞憂に終わるかもしれないんだしさ」

彼女はゆっくりと顔を上げると表情に安堵をにじませながら彼女は笑った。

「ええ。その通りですね」

 

 

翌日、その楽観は最悪の形で砕かれた。

 

 

 

 

§

 

 

多くの河童が洞窟の湖に集まっていた。もしかしたら妖怪の山にいるほぼ全員の河童が今ここにいるかもしれない。

「もう一度、もう一度、仰っていただけますか…?射命丸様」

河城さんの声は震えている。当然だ。

彼女の声にため息を吐いて、文屋は答える。

「もう一度言いますから、耳の穴かっぽじって聞いてくださいね」

空気が張り詰める。

「河城にとりは宮襲撃の被疑者として拘束されました。明日、天宮裁判所にて彼女の嫌疑を審判致します」

一瞬の静寂のあと、河童たちの怒号が飛び交った。

「ふざけんな!」

「なんでお嬢が犯人になってんだ!」

「てめえらの不始末だろうが!」

「俺たちに押し付けてんじゃねえぞ!飛ぶだけしか能のねえ烏が!」

まさしく喧喧囂囂たる非難と言っていい。もはや侮辱といっても過言ではない怒号の中で文屋は薄笑いを浮かべていた。

「なぜ」

河城さんは呟く。その声に反応してか怒号は徐々に収まっていった。

「なぜですか…」

「なぜ、というと」

河城さんは文屋に掴みかかった。

「なぜです⁉私達は天狗様の命令に従ったではありませんか⁉我々がいつ役務をおろそかに致しましたか⁉いつ天狗様に反抗いたしましたか⁉我々が従順である限り、あの子に危害は加えないと!そういう約束だったではありませんか!」

彼女の必死な形相と対照的に、射命丸文は表情を全く崩さなかった。

「まあ、貴方の言うことは最もですが、にとりさん本人が我々に危害を加えるというのなら話は別です。貴女たちが反抗しないなら、にとりさんに危害は加えない。それは確かですが、だからといって彼女が我々に危害を加えるのを許可したつもりはありません。上下関係以前に、法を犯したものを裁くのは当然のことではないですか?」

「あの子が宮を攻撃するなどいつやったのです⁉どこにそんな証拠があるというのですか⁉」

文屋が笑いながら頭をかく。

「物的証拠は有りませんが、状況証拠ならいくらでもありますよ。にとりさんは宮に研究室を置くことが許可されていましたし、その研究室には危険な薬品がいくつも置いてありました。加えて彼女は天狗ではありません。何より()()()()()()()()()()()

他に犯人が見当たらない。この言葉に河城さんは目じりを引き上げた。

「貴方、よくもぬけぬけとそんなことが」

文屋は胸ぐらを掴んでいた河城さんの手を払う。

「私に詰め寄られても困るんですよね。これは上の決定ですので。むしろ感謝してほしいぐらいです」

「なんですって」

「よく考えてみて下さい。族長の娘。しかも人質として宮で保護されている河童が天魔様に弓を引いたのですよ?貴女たち河童の立場は、今この妖怪の山で極めて危うい位置にあると言っていいでしょう。それを態々知らせに来てあげたのです。まだ上しか知らない情報ですよ?本当であったら裁判当日に貴女たちが知るはずだった情報を、わざわざ私が届けてあげたんです。それを罵倒しかしないなんて恩知らずな方々ですね」

河城さんは震えながら払われた手を降ろす。

「あれ?どうしたんです?聞くに堪えない遠吠えはやめたんですか?河童の皆さん」

文屋がわざとらしくあたりを見回す。

彼らの顔は皆一様に青い。自分たちの立場を認識したからだろう。

「ふぅむ。そうですね。清く正しく親切なこの射命丸文。弱者を見放すようなことは致しません。一つ、貴女たちにアドバイスを授けてあげましょう」

ろくなアドバイスではないことは確かだった。

「反抗によって忠誠が疑われるのなら、それを超えた奉公を示せば良いのではないですかね」

ニヤリと笑って私と魔理沙に視線を向けた。

「例えば…下手人と思わしき()()を天狗に差し出すとか」

河童の何人かがハッとする。

「非常に有効な手段だと思いませんか。天魔様の顔に泥を塗った人間を差し出したとなれば、河童の評価はさぞや上がることでしょう」

やはりろくなアドバイスではなかった。文屋は動揺が広がっていく河童たちの姿を見て楽しそうに笑っている。クソガラスめ。

「そ、そうだ。あの二人を差し出せばいいんじゃないか…?」

「おい、待て。それは…」

「でも、お嬢が冤罪なら…しょうがないだろ」

波が伝播するように、河童たちのささやきが広がっていく。

「いや、しかし、今まで散々霧雨さんにお世話になっといて、それは恩知らずというか」

「綺麗ごと言ってる場合かよ!このままじゃ俺たちだっていつ消されてもおかしくないんだぞ⁉」

「しかしだな…」

「お前はお嬢を助けたくないのかよ⁉」

「そういうわけじゃ」

「じゃあ、しょうがないだろ!」

段々と会話が言い合いになってきてる。不味いわね。

「やるしかねえよ!」

「そんなことしたらダメよ!」

「しょうがねえだろ!」

「恥ずかしくないのか!」

「プライドで生きていけるか!」

「誇りも持たないで何が妖怪だ!」

「だったらほかに方法があんのかよ!」

もはやいつ掴み合いになってもおかしくない。

どうする?止めるか?

「悪いのは俺達でも人間でもない!天狗だろうが!」

「ああ⁉だったら何だってんだよ!」

「戦うんだよ!」

「はぁ⁉」

「天狗どもに好き勝手やられてもううんざりしてんだ!目にもの見せてやるんだよ!」

流れがよくない方向へ進んでいる。昨日頼まれたばかりなのに、私達がその起爆剤になってしまったら笑えない。

咄嗟に懐のナイフに手を伸ばす。

「いや、違うわ。止めるのよ」

だが止めるにしてもこの人数をどうやって?

殺すことなら確実にできるが、止める方法なんて持ち合わせていない。

叫ぶ?今の彼らに聞こえるはずがない。切り付ける?それこそ暴走を引き起こしてしまう。

…?

殺さないで止めるってどうやるの?

「っ!」

敵意に染まっていく多くの目が一つの輝きを捉えた。それは洞窟の中で放たれた光線であった。

その光線は洞窟の天井にぶつかり、轟音を放って壁ごと吹き飛ばした。

「馬鹿か!お前ら!」

光線を放った当人、魔理沙はミニ八卦炉を右手に持って掲げたまま叫んだ。

「にとりが何のために宮に行ったか分かってんのか⁉」

彼女は武器をかざすわけでもなく、怒りを宿した目で彼らを睨みつけた。

「お前らを守るためだよ!真っ向からやりあったって勝てるわけがないからあいつは自分を犠牲にしたんだろうが!それをお前らは!感情任せに戦うだと⁉ふざけてんじゃねえぞ!そんなもんは戦いなんて言わねえ!自暴自棄っていうんだよ!ボロくせぇ鉄棒持っただけで強くなったつもりか⁉」

魔理沙は怒っていた。昨日頼まれてたこととは関係なく、ただ単に河城にとりのために彼女は怒っていた。

「あいつが今一番苦しんでんだろうが!お前らが一緒に戦ってやらなくてどうする⁉天狗相手にチャンバラやったって死ぬだけなんだよ!そんなことでにとりを支えることになるわけねえだろ!」

彼女は八卦炉をしまい、丸腰で両手を広げた。

「文句があるならかかってこいよ!お前らがどれだけ意味のないことしようとしてるか教えてやる!」

誰も動かない。

「ほら!来いよ!天狗を相手取るんだろ⁉人間一人殺せなくてどうする⁉」

彼女の叫び声がこだました後、静寂が辺りを包んだ。

暫くするとその静寂を破って前に進み出るものがいた。彼女は魔理沙の目の前まで来ると、河童の方に顔を向けた。

そして地面に膝をつき、額を地に付した。

「皆様、申し訳ありません」

それは族長であった。

「皆に苦労を押し付け、天狗の命令を鵜吞みにし、あまつさえ娘を売り飛ばしたにも関わらず、皆を窮地に追い込んだのはただひとえに私の無能さが故です。本当に申し訳ありません」

河童たちが動揺する。

「族長!頭を上げて下さい!」

「上げません。技術を扱い、我々に希望をもたらしてきた皆の手に、武器を持たせようとしてしまった私の責はあまりに重い」

「それは…俺たちが…」

「ですが、それでも、恥をさらし、地に伏してでもお願い申し上げたいのです。皆様、どうか、どうかあと僅かばかり耐えてください。誰ともわからぬ者の思惑に踊らされてはなりません。我々には我々の戦い方があります。我々が培ってきたものは血を流す術ではありません。自然を学び、理に寄り添い、我々を豊かにする術なのです。その手を血に染めてはなりません。ですから、どうか、どうか…」

頭を地面にこすり付ける姿に河童たちは何も言えなくなってしまった。先程まで怒号が飛び交っていた空間は、すすり泣きと嗚咽だけが響いていた。

「……」

誰もが唇をかみしめる中、私はただ立ち尽くしていた。

妙な疎外感を感じた。

魔理沙も、河城さんも、自分の気持ちを訴えた。

言葉で彼らを留めたのだ。だけど私だけが武器を振るおうとした。

そんな事実が胸にくすぶっていた。

「お涙頂戴じゃ、意味がないんですよねぇ」

「じゃあ、何なら意味があるのかしら?」

だから一人ふざけたことを言う、この天狗に八つ当たりしたくなった。

いきなり背後に現れたように感じただろう私を振り返りざまに見て、文屋はにやりと笑った。

「物語なら結構ですが、読者が記事に求めるものは他人の不幸か不正です。彼らの怒りを正当化するための記事はうけるのですよ」

「河童が貴女たちに刃を向けたほうが良かったと?」

「それはそれで面白いですが、どうせすぐに鎮圧されます。インパクトが薄い。海姫様に脚本家の才能は有りませんね」

海姫?

「なぜ彼女の名が出てくるのかしら?」

射命丸はにんまりと笑う。

「さあ?どうでしょう?」

「質問に答えなさい。さもなければ」

「さもなければ?なんです?ご自慢のナイフで私の首でも切りますか?貴女は魔理沙さんの方針に従うって言ってませんでしたっけ?」

「っ」

今の気持ちを見透かされたような気がした。

私の反応を見て、射命丸は笑みを深めた。

「暴力でなく、言葉で。彼女は素晴らしいですね。言葉遣いこそ粗暴ですが文明人としての教養が見てとれます」

「…」

「それに対して、貴女ときたらすぐにこれですよ」

射命丸は手を振って、首を切る動作を取った。

「何かあったら殺す。痛めつける。力で押し潰すの一辺倒。そんな風だからスカーレット卿に捨てられたんじゃありませんか?」

こいつ…。

「彼女は貴族ですからね。所かまわず誰にでも嚙みつく狗なんて使いにくくてしょうがなかったでしょう。血統書のない野良犬は要らないって言われたって分かってます?」

一瞬だけお嬢様の顔が脳裏に浮かんだ。

私を追放した日の、あの言葉を放ったお嬢様の表情がなぜか、見えた。

「それにもかかわらず貴女ときたら、相も変わらず殺すだの切りつけるだの血生臭いったらありゃしない。馬鹿の一つ覚えですか。貴女、元主人に失望されてこうなっているんですよ?その物騒な気性で全部失ったって自覚してください」

この天狗の挑発に乗っても仕方がない。抑えろ。

落ち着きなさい。

「暇なのね。他人に嫌がらせして、ほかにやることないの?」

射命丸の笑みはますます深まった。

「知らないのですか?嫌がらせってとても楽しいんですよ。特にあなたみたいに気障ったらしくて賢ぶっているような人間が段々と理性を失っていく様は、股に手を突っ込むよりよほどぞくぞくするんですよねぇ」

「くたばったほうがいいわね。このクズ。」

「多様性を受け入れるのが社会です。この社会は私を受け入れています。ですが逆に、貴方は自分のいた社会に排斥されたわけです。一般的に見てクズはどちらでしょうか?」

それがなんだというのだ。

少なくとも今、私には価値があると思えるものがある。

「…貴女に合わせて言えば、全てを失って、クズになって、私は友人を手に入れたわよ」

「はぁ」

「家と名誉を捨てて、欲しいものを得たというのなら、悪い買い物ではないと思うわ」

社会の地位などという下らないものよりはよっぽど人間味のある報酬だ。

「………魔理沙さんですか?」

こちらの癪に障るとぼけた表情で聞いてくる。

「傍から見るにあなたのそれは友人ではないですねえ。」

「何を根拠に…」

「貴方は彼女の思想に同調しているようには見えませんからね」

「っ」

見透かしてるのか。

「そんなことは…」

「なら何で先ほどのように動くんです。反射的に敵を威圧するのは貴女が心底では納得していない証拠でしょう」

河童を止めようとした時も、こいつと相対したときも、この手は相手の手ではなく刃物の柄を掴んだ。

「貴女が彼女に感じているのは友情ではなく、同情です。自分の身の上を魔理沙さんと重ね合わせているようにしか見えません」

人里で排斥された魔理沙を私は見た。

「一方、彼女も同じですね。人里から排斥された魔理沙さんにとって貴女の境遇は同情するに値するものだったのでは?」

焚火の前で、たそがれる私を魔理沙は見た。

「そういうのは親愛とか友愛ではなくて、共依存っていうんですよ。傷の舐めあいでもいいですけど」

そんなはずは…

「十六夜さんが自分の立場が理解できたようで私は嬉しいです。そんなあなたには一つ仕事を差し上げましょう。魔理沙さんにこの書類を渡しておいてください。あの綺麗事空間に入って本人に渡すの面倒なので」

射命丸は意地の悪い笑みを浮かべて私に黒い箱を渡した。

そして穴の開いた天井へ飛び立った。

 

 

 






他人の肝脳塗地ほど官能的なものもありません。人の不幸は蜜の味だなんて、随分と控えめな表現じゃありませんかねぇ。
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