「ねえ」
「なんだ?」
三歩前を歩く白黒の魔法使いに声をかける。先ほどあんな会話をしていたことが嘘のように声音は軽かった。
「今私たちは里の外に向かっているのよね?」
「ああ。もちろん」
「私はまだ人里に用があるのだけど」
「………用?」
魔理沙は歩みを止めてこちらを振り返った。返事を出すまでにはしばらくの間があり、彼女の表情は心なしかいつもよりこわばって見えた。
「用ってなんだよ?」
魔理沙はこちらを警戒して、いつでもとびかかることができるよう構えている猫のような眼をしたので私もつられて緊張してしまう。
「食料品の買い出しよ。あなたがどれくらい魔法店に蓄えているかわからないけど、人数が増えるのだからある程度買い足しておいたほうがいいと思うのよ」
「あー。確かにな」
魔理沙はバツが悪そうに頭をかいた。
「じゃあ、頼むわ。私は先に帰る」
さっさと帰ろうとする魔理沙の肩をつかんだ。
「待ちなさい」
「………なんだよ」
「なぜ帰ろうとするの」
「買出しに私がいてもやることないだろ」
「私、貴方がいつもどうやって食糧管理しているのか知らないわ」
「裏手の倉庫に氷で冷やした冷暗所がある」
「あなたの好き嫌いも知らない」
「好きなものは旨いもの。嫌いなものは伸びたそば」
「予算は?食事の頻度は?来客に出す必要はあるの?洋食メイン?それとも和食?それから…」
「わかった!わかった!行くよ!行きゃあいいんだろ!」
キレた。わかりやすいほど典型的な逆ギレだ。
「………なんでそんなに行きたくないのよ?」
意味が分からない。食料品を買いにこうとするだけで逆上されたことは今までに523回しかない。うち28回はお嬢様、495回は妹様となっている。
「言ったろ、節度があるって。私がいても面倒しか起こらない」
「どういう意味よ?」
「そのまんまの意味だって」
もっと直接的な表現をしてほしかったが、この魔法使いの表情を見ればこれ以上は何も言う気がないのは火を見るよりも明らかだった。ならその面倒とやらを直接見たほうが早いだろう。
「そ。じゃあ行くわよ」
「どうなっても知らんぞ、私は」
§
人里。この幻想郷で最も多くの人間が住まう集落。集落と言っても決して村と表現するほど規模の小さな場ではない。この場所単体を表現するなら町といっても過言ではない量の人、物、金、その他諸々が回っている。まあ、ここ以外まともに対外的な活動をしている集落は聞いたことがないので比較できなければ町も村もないのだが。
「なあ、ちゃんと行くから私の手を握るのはやめろ」
こんな娘が生まれてくるなら、やっぱり町かしらね。
「あら?恥ずかしいの?」
「ガキかよ」
それにしては頬が赤い。
「私はお前のためを思って言ってやってんだ」
「誰も頼んでないわ」
跳ね返りの魔法使いがおとなしいのは少し可愛らしい。風のうわさでは彼女は商家の一人娘らしいが、こういう境遇に慣れていたのかもしれない。甘やかされることに慣れている気がするし、こちらも妙に甘やかしたくなってくる。
「言ったからには行くよ」
「そうかしら?離したらいつでも逃げ出してしまいそうだけど」
「逃げねえって。大体逃げたって咲夜ならすぐ捕まえられるだろ」
「…ここ、人里よ?
「ここの人間のいったい何人がお前の能力に気付けんだよ」
「人里にいるのは人間だけじゃないわ」
人里では私闘、能力の使用、傷害行為、その他公共の福祉に反する行動は厳しく制限されている。妖怪は信仰と恐怖によってその存在を維持されている。そして信仰と恐怖を生み出すのは人間だ。つまり人間が妖怪の基盤であり、その人間が多く生きるこの場所は博麗神社と同じくらいこの郷の要である。だからこの掟が作られた。この決まりは人間にとっても都合はいいが、あくまで妖怪の理屈で作られた規範であり、それを取り決めたのは妖怪の賢者たちである。だからそこから逸脱した存在を罰するのも彼らだ。里の人間も規範が破られれば咎めはするが、常人を超える力を持つ存在を人が取り押さえることはできない。必然、社会の秩序を保つ役割は妖怪の賢者たちが担うことになる。行うのは人ではない。だから里ではあまり目立つような行動をするべきではない。賢者の多くは保守的な思想の持ち主であるらしいので目をつけられれば面倒なことになるだろう。博麗は少しばかり例外的な位置にいる。
「………そんな奴らには糞団子でも投げつけときゃあいいんだよ」
「冗談でもそんなことを言うものじゃないわ」
それも誰が聞いているかもわからない人里で。壁に耳あり障子にメアリー。
「冗談で言ってねえよ」
「殺されるわよ、貴方」
八雲曰く、「幻想郷は全てを受け入れる」らしい。だがそれはすべてを許すことを意味しない。個々人の選択を尊重し、それに合った報いをもたらす。因果応報だと、誰も助けないぞと、そう言いたいのだろう。確かに残酷な話だ。
「はっ。それこそ冗談。」
魔理沙は冗談でも空元気でもなく、この体制に不満があるようだった。そう話す彼女の眼は野性的な光を放っていて、私の心の中に心配というものを抱かせた。今の私は他人の心配をする前に自分の今後を心配すべきだけれども、彼女に限ってはどうにも上手くいかない。なぜだろうか?一瞬悩んだが、とりあえずこれ以上この話題についてここで話すのはそれこそ不用心であるので、私は言いたいことをすべて飲み込んで顔を前に向けた。ついでに手も離した。
「まぁいいわ。ささっと買い物を済ませてしまいましょう」
霧雨魔法店には5mを超える荷物を片手に抱え、体幹を一切ずらさずに肉まんをねだる紅髪の荷物持ちはいない。空を飛ぶことができる優秀な人手がいるうちにある程度済ませておきたかった。
「………買えないと思うがな」
「こんにちは」
私はいつも通っていたお肉屋さんの店主に挨拶をした。
「おおっ。エプロンのお嬢ちゃんじゃあねえかい」
お肉の計量を行っていた手を止め、店主は顔を上げた。彼は今日も声が張る。この商店街通りの端から端まで響きそうだ。いや、それは言い過ぎた。でも三軒お隣までは響く。
「今回はまた随分と早いじゃねえの。お祝いでもあったか」
彼は嬉しそうにこちらに向き直る。奥にいた店主の奥さんが驚いてこちらに振り返ったが私を見て笑って会釈をしたので私もそれに返した。背負った幼子は我関せずにすやすや眠っている。
「随分好かれてるな」
後ろに隠れていた魔理沙がささやいた。
「毎回それなりのお金を落としていく客がいれば、接客にだって力も入るでしょう」
週に一回、紅魔館で必要なお肉の殆どをここで仕入れていた。扱っている牛の肉質が非常に柔らかく、下処理がしやすい。お嬢様にお出しするのに必要な手間のいくつかが省けるのだから便利だった。特に最近は食料の消費量が増えていたので随分な上客であったろう。若い娘に親心が働いたとかだったら心も温まるが、そんな夢想をするのにはいささかばかり私は擦れすぎたように思う。
「じゃあ、なんでエプロン?」
「一番最初に来た時に、私がメイド服のままだったから」
「ほーん。珍妙な客だわな」
「あれは正装よ」
メイド服が機能性と芸術性を兼ね備えた優れた作品であることはだれが見ても確定的に明らか。
「嬢ちゃん?」
店主が怪訝な顔をしている。
「ああ、いえ、お祝いというよりは…まあお祝いでしょうか」
「おお?とうとう結婚かい」
「それは違います」
「なんでい。別嬪なんだし男なんてすぐ捕まりそうなもんだがなあ」
後ろで聞いていた奥さんはが顔を真っ赤にして店主の背中をたたいた。
「いてっ!」
「やめなさい!あんた!」
奥さん申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんなさいね。この人、どうしようもなくてね」
「いえ。お気遣い頂かなくても」
この郷の結婚適齢期は十代後半だから、私はドンピシャだ。この反応は至極まともといっていいだろう。余計なお世話だが。
「仕事をクビになったので、その準備といいましょうか」
夫婦そろって目を丸くした。
「お嬢ちゃんクビになったんか」
「そうなの?あんなにお料理美味しかったのに」
覚えていたのか。いくらか前にお嬢様が起きぬけにレバーが食べたいとおっしゃったことがあった。主人の手間割くのがメイドの仕事。日は落ちかけていたが急いでこのお店に駆け込んだ。そのとき店仕舞いの最中にもかかわらず、対応して頂いたので後日お詫びにと簡単なお菓子を渡したことがあった。まさか覚えているとは思わなかったけど。
「大丈夫かい?」
「再就職は決まったので大丈夫です。今日はそのための買い出しです」
二人の顔が安堵に染まる。この表情が食い扶持が減るかもしれないという不安から解消されたため、と思ってしまう私はひねくれているだろうか?冷静に状況分析していると思いたい。
別に個人的な話をしたいわけではないのだけれど、今後仕入れる量が変わればいずれ聞かれるであろうし、変にぼかして不信感を持たれるのは避けたい。面倒は早めに済ませておくにこしたことはない。ちょうどいいから私の雇い主も紹介しておこうか。
「そいつはよかった。今までは里の外でお勤めしてたようだけど、今回はこっちで働くのかい?」
「まだ何とも言えませんが、もう少し頻繁に来ることになるかもしれませんね」
「そりゃあいいや。これを機にもっとうちで買ってくれりゃあ…」
「あなたっ。ちょっとっ」
さてさてどのタイミングで霧雨魔法店店主を紹介しようかと気をうかがっていたら、奥方が険しい表情で店主の背中をたたいた。
「なんだよ。結婚のことはもう言わんよ」
少し力が強かったのか眉をしかめる店主であったが奥方はそんな場合ではないとばかりに顎でこちらを指した。主に私の右斜め後ろ当たり。
「だからなんだって…」
そう口にしながら彼女の言わんとする場所を見た店主もまた、固まってしまった。二人して般若の物真似か。およそ接客する人間がして良い表情ではない。なんだ。彼らは何にそこまで動揺しているのか。私の後ろで鵺と貧乏神と天人が裸でソーラン節でも踊っているのか。それならしょうがない。災厄が天変地異を身にまとって世界を壊す儀式をしている状況であるのならば固まってしまうのも無理はないと言えよう。
そんな状況の中で一人だけ面倒そうに口を開いた。
「だから言ったんだよ」
ねえ、魔理沙。今私が必要としているのは状況説明であって、貴方の行為の正当性如何ではないわ。
「嬢ちゃんよ」
店主が今まで出したことのない低い声を出した。
「俺は嬢ちゃんがどこでだれとつるもうが口出しする権利はないし、するつもりもないけどよ。嬢ちゃんは里に住んでいないようだから知らないと思って親切心で言うぜ」
店主は親の仇でも見るような眼で私の後ろにいるであろう魔法使いを見ている。
「あんた、付き合う人間はもう少し考えたほうがいいよ」
「………」
「悪いけど今日はもう帰ってくんねえか」
「………」
「なんなら牛でも豚でもくれてやるからよ」
そう。そういうこと。
「結構ですわ。失礼します」
私はわざとらしく大袈裟に一礼をした後、魔理沙の手を取って踵を返した。
§
「勝手口はあっちだよ」
「売るもんはねえ」
「帰んな」
「後生だ。頼むから早く出てってくれ!」
「もう来ないでくれ」
とかとかとかとかとか。あ、あと
「い、委員会を呼ぶぞ!」
というのもあったかしら。
食料も雑貨も売る店は一つではないが、彼らの口から出てくる言葉は皆一様であった。まさに異口同音。最初は愛想よく接客をするのに魔理沙の顔を見た途端に顔を青ざめて拒絶する。そろいもそろってほかに言うことはないのか。
「なあ、もういい加減いいだろ」
人里の人通りも少ない裏通りで手を引かれていた魔理沙はうんざりしていた。
「これ以上は時間の無駄だ」
「………」
「それどころか私を連れ歩けば、咲夜の印象まで悪くなっちまう。今日はあきらめて帰ろうぜ?貯えならそれなりにある」
「………」
「…悪かったよ。お前まで嫌な気分にさせちまって」
「怒ってないから。謝らないで」
魔理沙に対して怒ってなどいない。断じて憤りなど感じるものか。
「貴女、随分嫌われているわね」
だけれども自分がどんな表情をしているかは鏡を見なくてもよく分かる。今の顔を彼女に見せたくはない。だから前を向いたまま口を開いた。
「清々しいくらいにな。いやいっそ清々しいか…?」
だが帰ってくる声は暢気なものだった。それがまた妙に気に障る。
「貴女いったいなにを………」
こういう時に口を開くと本当にろくなことを言わない。私は今何を言おうとした?
”いったい何をやったのよ。”
ですって?よくもまあそんなことを言えるな私は。お前が何をしていたか私はよく知っているぞ。誰に噓をつこうとも、いくら時の流れを止めようと私は、私自身だけは絶対に誤魔化せない。
「大丈夫か?」
大丈夫か?大丈夫に決まっているでしょう。なんで貴方がそんなことを言うのよ。それを言うべきなのは私でしょう。立場を考えなさいよ。なによ。笑ってんじゃないわよ。なんでそんな表情で立ってるのよ。怒りなさいよ。愚痴の一つでもあるでしょう。理不尽な怒りの一つでも私にぶつけてみなさいよ。やってらんねえでも、馬鹿ばっかりだなでも、お前が無理に連れて行くからでも、いうことあるでしょうが。
「咲夜」
私を心配するな。気遣うな。そんなことされたら私が馬鹿みたいじゃない。
「ありがとな」
何に感謝してるのよ。私は感謝されることなんて何もしていない。貴女をむやみに連れまわして傷つけただけじゃない。
「私は大丈夫だ」
この…
「大丈夫ですって…?そんなわけあるものですか」
針の筵で大丈夫な人間などいるはずがない。村八分で絶望しない人間がいてたまるものですか。そんな人間の存在を肯定することは私の過去を否定することに等しい。断じて認めることはできない。
私は彼女の手を離した。
「魔理沙。委員会の本部って里の中央だったわね」
「そうだが…」
「そう、ありがと」
魔理沙のためじゃない。私はそんな高尚な人間にはなれない。だからこれは自分のため。私の過去を否定しないための行動だ。
「おい、待て、咲夜」
「なに」
「お前、何する気だ」
「何も。ただ少しお話をするだけよ」
右肩に圧力がかかる。彼女の手が肩にかかっていた。
「駄目だ」
「………」
「お前はもうこのまま帰れ。今日は休んでていい」
「駄目よ」
「いいや、駄目だね」
彼女は私の前に回り込んだ。
「その物騒なお話とやらが何か知らないが、これは業務命令だ。今すぐに帰れ」
「拒否します。基本給がない雇用に行動を強制する力があると思って?」
「従業員ならうちの看板背負ってるだろうが。店の信用を大いに損なう可能性がある場合、その限りじゃないね」
「これは私個人の問題よ。退きなさい魔理沙。」
「やだね。ぜってえ退かねえ」
彼女の顔が挑戦的な顔つきに変わっていく。
「そう」
だとしても私のやることは変わらない。
「でもこれは貴方が言ったのよ?」
「あ?」
「ここの人間のいったい何人が私の能力に気付けるかしら?」
彼女の眼が大きく開く。ついで焦りに変わる。遅い。遅すぎるわ、魔理沙。そうやって目の前で今更危機感を覚えた人間を私が何人見てきたと思っているの?
「馬鹿!やめろ!」
魔理沙がこちらに手を伸ばす。三歩の間合い。私が里の中央にたどり着くには十分すぎる距離。私は懐の懐中時計を握る。あと二歩。神経を研ぎ澄ませ、時間の流れをとらえる。あと一歩。
「悪いわね。退職届は貴方の懐に入れとくわ」
零歩。
そして世界の時間は流れを止めた…………はずだった。
「えっ?」
こちらに駆け寄る魔理沙の動きは止まらなかった。振りかぶった彼女の平手は私の左頬を的確に捉えた。
「この馬鹿野郎が!」
身構えていなかった私は衝撃で倒れ、見事に、そして無様に尻もちをついた。お嬢様にお仕えして以降、誰にも見せることのなかった無様な私の姿がそこにはあった。
どうして?
「戦う相手を間違えてんじゃねえ!」
無様に尻と手をついた私の上についには怒鳴り声まで乗っかってきた。時が止まらなかったこと。長い間受けてなかった物理的な衝撃。無様な姿をさらした精神的衝撃。それらのことが次から次へと襲ってきて私の頭は困惑した。したが、考えたからと言ってこの状況で整理できるものではなかった。あまりにも予想だにしない事態に、胸中訳のわからない怒りがふつふつとこみあげてきた。もはや瀟洒な振る舞いも、あか抜けた姿も、メイドにふさわしい品格もこの時ばかりは本当にどうでもよくなった。
「戦う相手?間違えているのはあなたでしょ!」
私がいまだに目の前にいること、平手が当たったことに魔理沙も当惑しているようだったが私の怒鳴り声は彼女の表情を怒りに染め上げた。
「んだとっ⁉」
「何が大丈夫よ!あんなこと言われて大丈夫な人間なんかいるもんですか!」
「だからなんだってんだよ!何も知らねえくせに口を挟むんじゃ…」
口が勝手に動く。何も考えていないのに次から次へと言葉が出てくる。
「少なくとも!私は大丈夫じゃなかった!大丈夫だったら今、こんな人間になってないわよ!」
「っ…」
平時とかけ離れた振る舞いに自分自身が一番困惑していたが、もうどうでもよかった。もういい。言いたいこと全部言ってやる。
「そうやって大丈夫、大丈夫って自分を騙したって、誰もあなたをいたぶる手を弛めてなんてくれない!壊れたって誰も自分がやったことを反省なんかしない!人間なんて他人が死んだって何とも思わない奴らばっかりなのよ!」
「…」
「いつ殺されるかもわからない。いつ壊れてしまうかもわからない。いつ捨てられてしまうかもわからない。それでも生きなきゃいけないから、辛くて、意味のないこの人生を死ぬことができないから、だから!受けた借りは必ず返す!やられたらやり返す!そうやって私は私を!私の大切な人たちを守って生きてきたのよ!それで今、私の友達が、目の前で理不尽な暴力にさらされていて!それを助けようとして何が悪いのよ!いったい何が間違っているっていうの⁉」
彼女の表情はただ驚きで固まっていた。何を驚くことがあっただろうか。もう自分で自分が何を言ったかわからない。感情のままに吠えているだけな気がする。これじゃあ確かに狗ね。
「………」
魔理沙は黙って私の頭に帽子を乗せた。そんなにどうしようない表情を私は今しているだろうか。少し垂れて帽子のつばが鼻にかかった。妙にいい香りがした。石鹸とも香水とも違う香りだ。
「でも…意味はあるんだよ。私はそれでいいんだ」
なによ、それ。答えになってないじゃない。
魔理沙はそれだけ言って離れていった。それを私はただ黙ってみていた。
咲夜さんはどちらでもいける人だと個人的に思ってる。