「二人で来なさい。」
オールマイトの言葉に爆豪君は怒り、僕は困惑した。
お父さんはオールマイトだとバレない為にいつもの筋肉隆々とした姿ではなく、ガリガリのままで戦う事になる。
僕はオールマイトにそっと近づき、耳打ちした。
「大丈夫なの、お父さん?」
「ふふ、無用な心配だよ、終無。
私はヒーローだよ?どんな時も全力で戦うし、もちろん負けるつもりも無いよ...確かにこの姿だとかなり制限されるけど、やりようはあるさ。
だから、いつものように思いっ切り向かってき来なさい。」
グッと腕を曲げて、力瘤を見せるが、そこにはいつもの筋肉は無い。下手をするとへこんでるように見えた。
少し不安に思ったもののヒーローとしてのお父さん、オールマイトの力は知っているから心配しつつも頷く。
「うん...」
「おい、何コソコソ話してんだ!俺をどんだけ待たせんだァ!」
「悪いね、爆豪少年。
さぁ、終無も位置に付きなさい。」
僕は駆け足で臨戦態勢の爆豪君の横に立ち、構えた。
「じゃ、いつでもきなさ」
「うぉらあ!!」
言い切る前に爆豪君が飛び出した。
いつものように爆豪君は腕を爆破させ加速し、突っ込み拳を振るう。
「おっと!」
振るうもオールマイトは上体を僅かに後方に逸して回避する。
「チィ!まだだ、喰らいやがれ!!」
回避されたと分かるとすぐに爆豪君は振るった状態で爆破する。
「どうだ、オッサン!」
「お父さん!?」
爆風の勢いで僕の所まで戻ってきた爆豪は笑顔でそう言うと爆発で倒れてる姿を見ようとオールマイトの方を見る。
「容赦無いね、爆豪少年...躱して無かったら、大怪我してたよ?」
「なんでアレが避けられんだ!明らかに躱す暇は無かっただろうが!?」
「.....!?」
憤る爆豪君を余所にさっきの攻防で僕は訓練前のオールマイトの言葉の意味を理解した。
爆破の瞬間、オールマイトの姿が消えたかと思うと次に気が付いた時には爆破範囲外に立っていた。その時、一瞬だが足が大きく隆起していたのが元に戻るのが見えた。
「そうか、部分的に身体強化してるんだ。それもこっちに気付かれないように一瞬だけ...」
本当の姿を知っている僕だから気付けたけど、爆豪君は?
「何だよ?ガリガリ過ぎて爆風で飛ばされて避けたってのかよ、オッサン!?」
案の定、爆豪君に気付いた様子はない。
むしろ予想斜めな考えを溢していて、困惑してるみたい。
「よし!」
オールマイトへの不安は消えた。
ならいつも通りにやるだけだけど、せっかく爆豪君がいるんだもん。
「爆豪君。」
「んだよ!」
「僕に協力してよ。」
そう言うと視線がオールマイトから僕に向いた。その顔は怒りで歪んでいた。
「誰がテメェ何かの力を借りるかよ!大人しく俺がオッサンをぶっ飛ばす所を見てろ、糞ナードが!」
「爆豪君、僕はいつもお父さんと訓練してるんだよ?なのに、未だに一撃も当てた事が無いんだ。」
「だから何だってんだよ...」
爆豪君は僕の淡々とした物言いに毒気を抜かれたのか黙って先を即す。
「爆豪君も分かってると思うけど、多分正攻法じゃあお父さんに通じないと思うんだ。
さっきの攻撃はお父さんが個性を把握してなかったから決まりそうになっただけで次は簡単に躱される。」
「チッ...」
爆豪君は馬鹿じゃない。
何かと戦闘になると視野が狭くなるけど、正論だとちゃんと理解して行動する。
そして、少しでも勝つ可能性があるなら従う。
例え、連敗してる相手でも、だって爆豪は...
「...タイミング合わせろよ。遅れたら、ただじゃ済まねぇぞ。」
「任せてよ!」
誰よりも負けず嫌いな天才だから。