「ようこそ、ここが私の家だ。」
お母さんの葬式も終わって、一週間。
事実上、孤児となった僕は当然のように孤児院の入所が決まり、引き取られる予定だったが、オールマイトの希望により僕は彼に引き取られる事になった。
「オールマイトさん...」
「オールマイトで構わないよ、終那少年。
これから一緒に住むんだから堅苦しいのは無しにしようじゃないか、Hahaha!」
肩をバシバシ叩かれながらそう言われた僕は戸惑いながらも頷き、建物を見上げるとボロボロの一軒家がそこにはあった。
郊外にあるのも相まって、さながら幽霊屋敷のように佇むそれは扉と言う名の怪物の口を大きく開けているかの錯覚を僕にもたらした。
「さ、先にお願いします...」
「?...OK 、では案内するよ。案内する程、広くはないけどね。」
荷物を背負い直すとオールマイトに続いて、恐る恐る建物内に足を踏み入れた。
外観を見る限り、お世辞にも綺麗とは言い難かったので不安だったけど、中は年期は感じるものの掃除も行き届いて、とても綺麗だった。
「まぁ、とりあえずは終那少年の部屋に案内するとしよう。荷物も重たいだろうし。」
オールマイトは二階に続く階段を上がり、少し廊下を進んだ先に扉が二つ並んでおり、手前の一つで止まる。
「ここが君の部屋だよ、因みに隣は私だから何か有れば、いつでも呼ぶといい。私が!普通にノックして来るッ!」
オールマイトが決めポーズを取るのを見て、僕は自然と笑みが零れる。
「では、終無少年は荷物整理も有るだろうし、私は下で夕飯を頼むとしよう。何かリクエストはあるかい?」
「いえ、好き嫌いは無いので、お任せします。」
「私が任されたッ!では、また後で会おう。」
そう言うとオールマイトは部屋を出ていく。
僕は肩掛けにしていた鞄を下ろした。
この鞄以外は全て処分又は売却しており、終那が成人したら、遺産と共に受けとる予定になっている。
鞄の中には衣類にいくつかのお気に入りの絵本と。
『持ってきてくれたんだね、終那。』
「もちろんだよ、お母さんの大切な物だから。それにこれも。」
横を向くとお母さんが微笑みを浮かべて、僕の肩に顔を載せていた。
その視線の先には自身のコスチュームを見つつも終那の掌に向けられる。
『その指輪ね、終那のパパが無理して買ってくれたんだ。お母さんは普通ので良いって言ったんだけどね...パパって見栄っ張りだったから。
ママには緑のエメラルドが映えるね、って言ってくれたんだ。』
お母さんはゆっくりと指輪を持つ手に自身の手を重ねる。けして触れる事は無い、けど何が言いたいのか心で伝わって来る。
「...僕にも似合うかな?」
『当たり前じゃない、貴方はお母さんよりももっと似合うわ。だから付けてくれると嬉しい。』
母の手がそっと離れていく。
僕は緑色に輝く指輪を中指に嵌める。
『思った通りね、後は着替えね。』
「ありがとう、じゃあこの指輪に合わせてこれにしようかな?」
鞄からひらりと服が舞う。
母が笑顔で頷いた。
「お、来たかい?今回は寿司にした、んだが...」
階段の軋む音が聞こえ、オールマイトがそちらに顔を向けると可憐な少女がいた。
鮮やかな紫色のワンピースに緑色の指輪が眼を引く。
「つ、終那少年?その格好は...?」
「あれ、似合ってませんか?」
「いや、そういう事じゃ」
言いかけた言葉を止めて、終那少年の方を向く、正確にはその背後を。
「...い、いや、とても似合ってるよ。さぁ、食べようか。」
トルネイカ君、これはやり過ぎじゃないかな?確かに似合ってはいるが....
そう思うオールマイトの困惑を他所に終那少年の隣で楽しそうに眺めながら、こちらを光の無い眼で眺める彼女が居た。