ピンポンと鳴るチャイムの音で僕は目を覚ました。寝起きが悪い訳じゃないけど、やっぱり数分ベッドで微睡む僕としては珍しく目が冴えていた。いや、冴えさせられたというべきなのかな?
「おっさん、女まだ寝てんのかァ!もう朝だぞ、早く特訓しようぜ、オラァ!」
そんな粗暴な、というか爆豪君が連続してチャイムを連打している音と扉を叩く音が二階まで響いてくる。
しばらくすると隣から扉の開く音が聞こえたかと思うとすぐにチャイムが消えた。
僕は小さく欠伸しながら、階下に降りると玄関前で倒れているツンツン頭が見えた。
「爆豪少年、まず一つ人の家を訪ねる時は時間を考えてから来ること。あまり早く来られても準備があるからね。それと2つ目、ピンポンは一回だけ。分かったかい?」
そういうお父さんは笑ってるけど、口元がひくついてた。それに気付かない爆豪君はいつもの調子でお父さん(他の人にも噛み付いてるけど)に噛み付いてくる。
「痛ェ...何で俺倒れてんだ?って別に早くねェだろ、もう6時だぞ、オッサン?」
「早いとも、爆豪少年?君が外に出ても人気なんてないだろ?確かに訓練するとは言ったけど、今言ったことは守る事、じゃないと約束は無しだよ?」
約束、その話は少し前に遡る。
最初に公園で模擬戦をして以来、爆豪君とはよく一緒に訓練するようになった。
とは言っても、ずっと模擬戦ばっかりだったから多分訓練だと思ってたのは僕だけで爆豪君はただ負けたのが悔しくて続けてたのかも知れないけど。
危ない場面もあったけど、結果は僕の全勝だった。
爆豪君の動きは悪くない、けど我流なのもあり彼の戦闘スタイルを覚えれば、対処は難しくなかったから。
「何で勝てねェんだ。個性も使わない奴に!」
「爆豪君の能力は強力だよ。多分、まともに当たったら、僕に勝ち目は無いよ。
でも、逆を言えばそれだけ気を付ければ、僕は君に負ける事は多分無い。」
「......チッ。」
次第に業を煮やしたのか彼は僕にこう言った。
「俺もテメェん所で訓練させろよ。」
そして頭を下げた。深々と。
「頼む。」
「...僕だけじゃ、決められないから帰ったら、お父さんに聞いて見るね。」
僕がそう言うまで彼はけっして頭を上げなかった。
...という事があって、お父さんに相談したら、少し悩んだ後で「あの爆豪少年が頭を下げてまで頼み込んできたのかい?やるじゃないか、ただのヤンチャ者じゃない、気概は伝わったよ!...ま、でも、終無優先なのは事情が事情だから変えられないし、週に一回だけなら構わないよ」と了承してくれた。
あっ、もちろんお父さんがオールマイトなのと僕の個性は秘密だ。前者は騒ぎになるから、後者は僕に配慮してくれたみたい。
他にも何かあるみたいだけど、お父さんは話してくれなかった。
「チッ、分かったよ。」
ぼっーと考えている内に爆豪君は立ち上がって、お父さんを不服そうに睨んでる。
「というかアイツは...」
睨んでる爆豪君と目が合った。
「おはよー、爆豪君。」
「上着...と、とっと着替えろよ、クソが!」
「うん、ごめんね?すぐ準備するから。」
何故か視線を逸しながら、爆豪君は中庭に向かっていった。
「お父さん、爆豪君顔赤かったけど大丈夫かな?」
「...終無、パジャマのボタン、外れてるよ?」
「あっ、本当だ。」
とりあえず自室に戻っていつものジャージに着替えて、手早く朝食をお父さんと済ませてから中庭に向かう。
「おせーぞ。」
「ごめんね。すぐにウォーミングアップするから。」
「HAHAHA!あまり終無を虐めないでくれよ、爆豪少年!君は充分ウォームアップしたみたいだし、私達がウォームアップするまで休憩しててくれ。」
「...あァ、分かったよ。」
爆豪君は不満そうにしながらも口にする事は無かった。きっとお父さんの約束と関係があるのだろう。
「またせたね、爆豪少年。」
「んなのはいいからさっさと訓練やろうぜ。」
爆豪君は猛禽類の如く獲物を見るようにお父さんを見た。
「OK!私も爆豪少年の事は聞いただけだし、実力も知りたい。ただ」
お父さんが僕を見た。
「二人で来なさい。」