fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者) 作:鴉鍵
「……ったく、おせーな」
相楽家にて、リビングのソファーに腰掛け、ため息を漏らす零二。
時刻は夕暮れ時になり、今家にいるのは俺とサクラの二人だけだ。と言ってもサクラは今、お昼寝中で実質一人である。苺やお袋……クソ親父は久々の月読島を一緒に散歩すると言って、出かけたばかりだ。
だが、俺は別に三人の帰りを待っていたわけじゃない……待っているのは最愛の妹、紗雪だ。
朝早く出かけた紗雪だったが、もうこんな時間だ。そろそろ帰ってきてもおかしくないはずだ。
「しかし、本当におっせーな」
一向に現れない紗雪に、零二は不安に駆られていた。
「……パトロールだよな? 多分」
恐らく紗雪はパトロールに出かけたはずだ。あるいは仲のいい誰かに誘われて遊びに出かけているだけかもしれないが、そういう場合は必ず連絡をくれる。
しかし、今日に限っては遅く、連絡の一つも来ない。こちら側から連絡しても留守電のメッセージが返ってくるだけだ。
もしかして、何か事故にでも巻き込まれたのだろうか……心配が積み重なり、もう一度、携帯から紗雪と連絡を取ろうとするが、やはり、連絡がない。
「っ! あぁーっ! クソッ! どこに行ったんだよ紗雪!」
押し寄せてくる不安に耐えきれず、つい叫び散らす。
「マスター?」
零二の叫び声で目が覚めたのか、まだ眠そうなサクラが頼りない足取りで零二の元へ寄ってくる。
「悪い、起こしちまったか?」
「ううん、大丈夫だよ、マスター。自然に目が覚めただけなんだよ」
「そうか」
サクラは自然と零二のそばに座り、肩に頭をかける。そんなサクラを愛おしく感じた零二は不安を抑えるようにサクラの手を握りしめる。
「マスター?」
「ん、嫌だったか?」
「ううん、嬉しいんだよ」
夕日に照らされ、ほんのり紅く染まったサクラの顔。不意にもドキッとしてしまい、照れを隠すようにサクラから顔を背ける。
その時、ガチャリと玄関のドアが開き、誰かが帰ってきた。
「紗雪!」
零二は立ち上がり、一握りの可能性を信じながら玄関の方へ向かう。
「あー、零二! どうしたの? 心配してくれてたの?」
しかし、そこには最愛の妹の姿はなく、お袋とクソ親父と苺の姿だった。
「なんだ、お袋達か」
「もー、なんだとはなによー、えいっ」
帰ってくるなり、いきなり抱きつくサクラ似の母親。先ほどサクラにドキッとした為、余計恥ずかしく感じる。
「零二、まだ紗雪は帰っておらんのか?」
と、苺が家の様子を見回して、いない家族の事を零二に訊ねる。
「あぁ、まだ、帰ってきてないんだ……紗雪のやつ」
「ふむ、ま、紗雪も年頃の娘じゃ、ちょっと夜遅くまで遊ぶ事もあるじゃろうし、心配なかろう」
「でも……」
「それに、紗雪は『召喚せし者』じゃ、仮にそんじょこらのゴロツキに囲まれていたとしても、心配なかろう」
と、俺の悩みを吹き飛ばしてくれるような、屈託のない笑い声をあげる。そんな苺の様子に俺は少なからず心を落ち着ける。
「ったく、帰って来たらお説教だな、紗雪は……」
しかし、その日、紗雪が帰ってくる事は無かった……