fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者)   作:鴉鍵

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星見学園にて①

 結局、紗雪が帰ってこないまま、次の日がやって来た……

 

 零二は微かな望みを胸に抱いて、星見学園へと向かう。

 

「紗雪……どこに行っちまったんだよ……」

 

 込み上げてくる不安と焦燥を抑え、虚ろな足取りで学園へ足を進める。

 

「おはよっ! れーじっ」

 

 その時、誰かに背中から抱きつかれる。その声の正体を零二はよく知っていた。

 

「おう、里村」

 

 案の定、そこにいたのは紅い髪の可愛らしいクラスメートの里村 紅葉だった。

 

「あれー? なんか、れーじってば元気ないね?」

 

「……そうかもな」

 

「ふーん、もしかして、彼女ちゃんと上手くいってないとかぁ?」

 

「はっ、そんなんじゃねーよ」

 

「ちぇーっ、残念、もしそうだったとしたら、横からかっさらってやろうって思ってたのにさ 」

 

 相変わらずの小悪魔っぷりを見せる里村に思わず苦笑する零二。

 

「なぁ、里村」

 

「ん?」

 

「紗雪見てないか?」

 

「は? さぁ、知らないけど」

 

 紗雪の名前を出した瞬間、みるみる機嫌が悪くなっていくのが目に見える。紗雪と里村は犬猿の仲で、互いの事をDNAレベルで気にくわないらしい。

 

「で、あのムッツリブラコンがどうしたの?」

 

 不機嫌な様子ではあるが、どうやら気になるらしく、訊ねてくる。

 

 紅葉はああ見えて、頭の回転が早く、時には天才的な閃きを見せる事もある……ここは相談すべきだろうか……

 

「あぁ、実はだな……」

 

 

………………………………

 

「ふーん、黒羽 紗雪が昨日から帰って来てない……ねぇ」

 

「あぁ、里村、同じ女性としてお前に意見を聞きたいんだ」

 

「あんな奴と一緒だって見られたくないわよ……そうね、仮にあのムッツリブラコンが少しでも乙女心が残ってたとしたら、一人になりたいんじゃないの?」

 

「え?」

 

 里村の答えに零二は思わず素っ頓狂な声をあげる。

 

「なんで、紗雪のやつが一人になりたがるんだよ」

 

 と、当然のように言う零二に落胆のため息を漏らす里村。

 

「れーじってば、ほんと鈍感よねぇ……ま、そう言うところがれーじのいいところなんだけどね」

 

 今だに里村ほ言いたいことが理解出来ない零二はただ、焦らされた犬のような唸り声をあげるだけしかできなかった。

 

「あぁ! もう! 失恋したらしばらく一人になりたくなるのが乙女なの! 察しなさいよ」

 

「お、おう」

 

 ようやく、里村の言いたい事が分かり、なるほどと納得する。恐らく俺が原因だろう……と、零二は理解した。紗雪の気持ちを零二は気づいていた。しかし、それでも零二は紗雪を妹として接した。零二がサクラと付き合うことを知った時の紗雪の落ち込みっぷりはかなりのものだった。しばらく、一人でいたいというのも分かる……だけど、もし、そうなら

 

「少しだけでも連絡してくれてもいいじゃねぇか……」

 

 連絡もなしにいなくなられては、心配すぎて困る。もし紗雪が帰ってきたら、本気で説教しないとな……そして、俺の本当の気持ちを伝えようと堅く決心する零二。

 

「ありがとな、里村。おかげで少し気が楽になったぜ」

 

「ま、多分だけどね、あんなムッツリブラコンの考えてる事なんか分かんないから」

 

 里村はそう言うと、零二の横に並んで、一緒に星見学園まで足を歩めるのだった。

 

 

………………………………

 

 星見学園……月読島の唯一の学園である。

 

 零二は自分のクラスについた後、カバンを置き、紗雪を求めて隣のクラスへ足を進める。

 

 だが、やはり隣のクラスにも紗雪の姿は無かった。

 

「どこにいるんだよ紗雪」

 

「あれ? 零二?」

 

 一人で紗雪の事を思い、頭を悩ませていると、とても聴き慣れた女性の声が聞こえてきた。

 

「おう、美樹」

 

「どうしたの? ここのクラスに何か用?」

 

「なぁ、美樹、紗雪見かけてないか?」

 

「紗雪ちゃん? そう言えばまだ来てないね、もうすぐチャイム鳴るのに大丈夫かなぁ?」

 

「そうか、じゃあな美樹」

 

「うん、またね、零二」

 

 至って普通に友達らしく挨拶を交わし、それぞれお互いのクラスへ戻る。

 

「結局、星見学園には来てない……か」

 

「おはよう、零二。何か悩み事でもあるのかい?」

 

 自分のクラスに戻った零二がそう呟くと、一人の朴念仁が話しかけて来た。

 

「朝からてめーの面を拝むなんてな、胸くそ悪いぜ」

 

「はは、随分な言いようだね零二」

 

 悪態をつく零二に苦笑する龍一。

 

「おー、芳やんに龍やん」

 

「おう、霧さ……って、お前! どうしたんだよその面」

 

 話しかけて来たのは霧崎 剣吾……だったが、いつものひょろっとした顔ではなく、顔を含め、身体中異常に晴れていた。

 

「ちーっと、蜂に追われたんや。やー、モテる男は辛いのう」

 

 と、茶化す霧崎だったが、その姿はどこかから元気で痛々しく感じる。

 

「ど、どうやら、デンジャーな休日だったみたいだね」

 

 朴念仁の龍一もまた大惨事の霧崎にどう声をかけていいか分からず、ぎこちなく返事する。

 

「れーじっ……って、何よこの化け物」

 

 にこやかに話しかけてきた紅葉も隣にいた霧崎の惨事っぷりに思わず顔をしかめる。

 

「ワイや、霧崎や」

 

「はぁ? 誰よそれ、こんな奴クラスにいたっけ?」

 

「ひどい……酷いわ紅葉ん」

 

 少なくとも数年は同じクラスのはずなのに名前を覚えられていない霧崎。何故か激しく霧崎の事を同情したくなる。

 

「おはよう、紅葉、芳乃くん……えっと、霧崎くんだよね?」

 

 と、遅れて入ってきたなぎさ。人間とは思えない程晴れ上がり一目だけでは霧崎と分からないはずだろうに、言い当てる。

 

「おー、ワイの事を知っとるんか! いやぁ、嬉しいわ」

 

 美女の域に入るなぎさに名前を覚えられ、一人舞い上がる霧崎。しかし、霧崎以外は気づいていた。なぎさが龍一の名前を呼んでいない事に……

 

「えっと……おはよう、なぎさ」

 

 勇気を振り絞って、龍一はなんとか挨拶するもののなぎさは反応せず、プイと龍一を視界から外した。

 

「おい、龍一、また何かやらかしたのか?」

 

「え? うん、どうだろう?」

 

 龍一はまるで心当たりが無いように頭を悩ませる。

 

 こりゃ、無意識のうちに絶対何かやらかしたな……と、密かに思う零二だった。

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