fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者)   作:鴉鍵

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星見学園にて② 誤った答え

 星見学園、昼休み……

 

「れーじ! れーじ! 生徒会室に行こっ」

 

 昼休みのチャイムが鳴ると同時に隣の席の紅葉が身を乗り出して、話しかけてきた。いつも通り生徒会室で弁当を食べようというお誘いだろう。

 

 だが……

 

「悪い、里村。今日は早退するんだ」

 

「えぇーー! どうしたの? 体調悪いの? あのさあのさ、体調悪いんなら私が家までついて行ったげよっか?」

 

「いや、体調が悪いとかじゃなくて、紗雪を捜しに行くだけだぞ」

 

「えぇーー!」

 

 先ほどとは全く違ったトーンで不満を表す紅葉。

 

「あんな奴の為に学校早退しなくてもいいじゃんかさ」

 

「そういうわけにもいかないだろ? やっぱり、一人の兄として心配なんだよ」

 

「ぐぬぬ、黒羽 紗雪……私たちの楽しーいお昼タイムを邪魔しやがってーー絶対許さないわ」

 

 里村は怒りのあまり拳を握りしめ、ワナワナさせている。

 

「悪いな……」

 

「んーん、れーじは悪くないよ、悪いのは黒羽 紗雪だからさ」

 

「はは、ったく、もうちょっとお前ら仲良く出来ないのかよ」

 

 と、零二は苦笑を見せた後、カバンを持ち、学校から早退する為に職員室の方へ向かった。

 

………………………………

 

生徒会室にて……

 

「あら、残念、今日は芳乃くんは来ないのね」

 

 学園の生徒会長にして高嶺の花の雨宮が愛しい人の姿が見えず、落胆の息を漏らす。

 

「うん、黒羽 紗雪を捜しに行ったんだって」

 

 不機嫌そうに呟く紅葉。

 

「え? 紗雪ちゃんを?」

 

「そっ、なんでも、昨日から帰ってきてないみたいだよ……ったく、れーじに心配かけさせるなんて、妹失格じゃない」

 

「………………」

 

「ばかいちょー?」

 

「会長? どうしたんですか?」

 

 黒羽 紗雪の名前が出た辺りから妙に深刻そうな表情を浮かべる雨宮。そんな雨宮の様子に二人は不審に思い、訊ねてみる。

 

「二人とも、昨日の夕方、ボヤが起きた事は知ってるかしら?」

 

「ボヤ?」

 

「ええ、まだ道路が舗装されていない辺りで起きたそうよ……」

 

「へー、で、それがどうしたっていうの?」

 

 紅葉の反応はクールだった。それもそうだ。今の会話の話題は黒羽 紗雪に関する話のはずなのに、急にボヤの話を始めても関連性が見出せない。

 

「そのボヤ、青い火だったそうよ」

 

「え、青い炎?」

 

「ばかいちょー、そんなのどーせ、また変な噂の類に決まってるでしょ」

 

 それぞれ違う反応を見せ、雨宮は指を口当たりに持って行き、うーんと唸る。

 

「変な噂ね……残念ながら違うわ、だって、私自身がこの目で見たのよ」

 

「「え?」」

 

 紅葉となぎさはほぼ同時に声をあげる。雨宮のそれに世間話を話すような気軽さはなく、どこか真剣そうな雰囲気を漂わせていた。

 

「それに……青いボヤが発生した時、ほんの、たったの、一瞬だったけれど魔力を感じたわ。それに周囲には一般人が、全くいなかった……これは恐らく人払いの魔術を使ったのかも知れないわね」

 

 人払いの魔術とは、言葉通り一種の結界のようなものを張り、範囲内の人を無意識の内に外に追い出し、外から人が入れなくするように仕掛ける魔術。

 

「魔力って……じゃあ昨日の青いボヤは噂なんかじゃなくて、誰かが起こしたってこと?」

 

「ええ、そうなるわね」

 

 なぎさの問いに雨宮はコクリと頷く。

 

「様子を見る為、私はボヤが起きた場所へ向かって行ったわ……けれど、私が着いた時にはもう収まっていたわ」

 

「ふーん、でさ、青いボヤが変な噂とかじゃなくて本当なのかも知れないって事はなんとなく分かったんだけどさ……それが、黒羽 紗雪となんか関係でもあんの?」

 

 そう、青いボヤが噂ではなく、誰かが故意に起こした……ただそれだけだ。わざわざ話の腰を折りする話のようには思えなかった。

 

 しかし、雨宮はこれからが本番だと言わんばかりに一呼吸置いてからまた話し始めた。

 

「その青いボヤを発生させたかもしれない魔力の持ち主の近くに……もうひとつの魔力を感じたのよ。多分それが紗雪ちゃんだと思うわ」

 

「え?」

 

「なっ!」

 

 雨宮のその言葉は衝撃的なものだった。紗雪の方はともかく、ボヤを発生させた者が『召喚せし者(マホウツカイ)』だとしたら、恐らく両者は激突したであろう……雨宮の見たボヤも紗雪と激突した時に『召喚せし者』が使った魔術だと考えられないことも無い。

 

 仮にそうであったとしたら……今、学園に来ていない紗雪は即ち戦いに敗れ、考えたくもない最悪の状況に陥ったということになる。

 

「じゃあ、紗雪ちゃんは……」

 

「いえ、それは無いと思うわ」

 

 状況から導き出したなぎさの答えを雨宮は否定する。

 

「現在この島にいる『召喚せし者』の数は新たな『召喚せし者』を入れて十四人……『召喚せし者』の数は減っていないわ」

 

「十四人って……ほんとなの?」

 

「あら、私の能力、『天駆ける光の使者(スキンファクシ)』の索敵能力をなめないで欲しいわね」

 

 『天駆ける光の使者(スキンファクシ)』

 

 範囲内にいる『召喚せし者』の数と居場所を索敵する能力。

 

 だが、雨宮の推測は外れていた。あくまでも『天駆ける光の使者』は『召喚せし者』の居場所と数を特定する能力。居場所は分かれども、その『召喚せし者』がどのような人物かまではわからない。さらに、現在この島に存在する『召喚せし者』は十四人ではなく、正確には十五人。その中の一人、『死刑執行人(エクゼキュータ)』の瀬道 灼は特殊な能力を使い、自身の魔力を隠している……その為、雨宮の『天駆ける光の使者』には映らない。

 

 さらに、瀬道 灼を除いた四人の『召喚せし者』の中に黒羽 紗雪という『召喚せし者』は存在しないということを雨宮は知らなかった。

 

「でもさ、その十四人の『召喚せし者』の中に黒羽 紗雪がいるかどうか分からないでしょ? もしかしたら、知らない『召喚せし者』が二人いるかもだしさ」

 

 紅葉の読みはあながち間違っていない。

 

「いいえ、それはあり得ないわ」

 

 しかし、紅葉の言う可能性を雨宮は一蹴した。なぜなら雨宮には確信がある。黒羽 紗雪が生きているという確信が……

 

「はぁ? なんでよ?」

 

「ふふ、それはね」

 

 雨宮はまるで、問題の答えが分からず、苦悶している子供に諭すように、優しく、はっきりとした声色で説明する。

 

「紗雪の存在を覚えているからよ」

 

 そう、その答えほど完璧なものはなかった。黒羽 紗雪が必ず生きているという確証の元は『召喚せし者』の仕組み。

 

 『召喚せし者』が『戦略破壊魔術兵器(マホウ)』によって倒された時、その存在は文字通り消滅する。この世に生きてきたという証ごと、無くなるのだ。それは、『召喚せし者』ではない一般人の記憶から〈黒羽 紗雪〉が消えてなくなるということにも等しい。

 

 だが……

 

「先ほど、零二くんが水坂 美樹と話してた時、水坂さんは紗雪ちゃんの事をはっきりと覚えていた……つまり、紗雪ちゃんは消えていない……ということになるわ」

 

 雨宮はビシッと探偵になったかのように、虚空に向けて指を指す。

 

「おおー、ばかいちょーのくせにやるじゃん……って、なんでれーじとあのおっぱい魔人の話の内容知ってんの?」

 

「ふふ、好きな子の全てを知りたいって思う気持ちからかしらね」

 

 犯罪臭が臭う危険な一言に紅葉は思わず、呆れ返る。どうせ、盗聴器を零二のどこかに仕掛けたのだろう……

 

「ま、あのムッツリブラコンがそう簡単にくたばるとは思えないしね……ね、なぎさ」

 

 なぎさに同意を求める紅葉。だが……

 

「………………」

 

「なぎさ?」

 

 しかし、同意を求めたなぎさは反応せず、雨宮が突き刺した虚空へとボンヤリ眺めている。

 

「ほえーーーー」

 

「あちゃーー、こりゃ、駄目だわ」

 

 どうやら、なぎさには難しすぎる話だったようで、思考回路をオーバーヒートしている。

 

「ふぅ、そうね、なぎさにも分かりやすく説明すると、一般人が紗雪ちゃんの事を覚えているから、紗雪ちゃんは生きている……ということよ。分かったかしら?」

 

「ふぁい……」

 

 絶対理解出来てないでしょーが! と思わず突っ込みたくなったが、ここはシリアスな展開を壊さないようにしようと抑える紅葉であった。

 

 十四人の『召喚せし者』の中に黒羽 紗雪の存在はいないという事実と矛盾するかのように黒羽 紗雪の存在を知る一般人……

 

 その矛盾の解く答えを彼女らが知るのはそう遠くない未来に起こるであろう……




初の3000文字突破です(^o^)/

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