fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者) 作:鴉鍵
「なぜだ……なぜそこまで抗う!」
サクラを己の命をかけてまでも護りぬこうとする零二の姿に灼は思わず訊ねる。
「決まってんだろ……そこに、俺の護りてぇもんがあるからだ!」
『堕ちた煉獄の業火(イフリート)』に押されぎみだった零二が一歩踏み出す。
「なっ……」
「だから……俺は! どんな事があろうが、俺の護りてぇもんを護るって『決断』してんだよ!」
「っ……」
瞬間、灼の脳裏に一瞬だけ浮かんだ記憶の残骸。
そこにはぼやけていて顔はよく分からなかったが、膝をおり、たそがれている俺をなだめる女性……
ーー「灼! いつまでも大人に甘えてちゃ駄目よ いつかあなたも『決断』しなくちゃならない時が来るわ……しっかりね?」ーー
「『決断』だと? 『召喚せし者(マホウツカイ)』ごときが……ふざけるなぁぁぁ!」
灼が幼い頃尊敬し、恋い焦がれたとある女性の言葉。その女性はあまりにも人間すぎて、当時、裏側の世界に無理やり連れて来られた灼にとってはその女性だけが希望の光……
だが、そんな恋い焦がれた女性は『召喚せし者』により、この世を望まぬ形で去って行った……
「『召喚せし者』が、人間の言葉を語るなぁぁぁぁぁっ!」
だからこそ、灼は人間らしい女性を殺した『召喚せし者』は人間ではない……そう脳内にインプットされたのだろう。
「『堕ちた煉獄の業火』ッ! 何をしている! 燃やせ! 燃やし尽くしてしまえぇぇぇ」
冷静さを失った灼は怒号を叫び散らし、煉獄の業火にそう命令する。
だが、『堕ちた煉獄の業火』は零二を飲み込むこと無く、零二の『拳』のみで押し留められていた。
「はっ、こんな炎……全然熱くないぜ」
「あり得ん……そんな馬鹿な事が……『召喚せし者』ごときが……」
そう、先ほどまで零二の『復元する世界(ダ・カーポ)』により腕を燃やしながらも防ぐのに精一杯だったはずの零二が、今度は片手で軽く受け止めていた。
「ふざけるなぁぁぁ!」
灼は更に『堕ちた煉獄の業火』に魔力を込め、その威力を増加させるが
「はっ、効かねぇな」
威力を倍増した『堕ちた煉獄の業火』でさえも片手で軽く受け止める。よく見れば、燃やされ歪な色と形になっていたはずの腕は綺麗に治っていた。
「瀬道さん……一つだけ言わせてもらうぜ」
零二は静かに瞳を閉じ、『堕ちた煉獄の業火』を受け止めている拳に蒼い光が収束する。
「俺は『召喚せし者』なんかじゃねぇ、俺は……俺だ! 芳乃 零二だ!」
その言葉も同時に零二の拳が蒼く光る……
「『復元する拳狼の蒼槍(フェンリスヴォルフ・ダ・カーポ)』!」
それは蒼く光る魔道陣の模様を描いた『神討つ拳狼の蒼槍(フェンリスヴォルフ)』……
『召喚せし者』が発動したありとあらゆる魔術を喰らい、破壊する『堕ちた煉獄の業火』を唯一留めた『復元する世界(ダ・カーポ)』
それは、『復元する世界』が『堕ちた煉獄の業火』の時を戻したのではなく、当たる瞬間を戻した為、押し留める事が出来た……
だが、それでも『堕ちた煉獄の業火』の威力が強く、打ち破れそうになったが、そんな唯一『堕ちた煉獄の業火』を止める可能性の持つ『復元する世界』に神話魔術並み……いや、それ以上の威力を持つ『神討つ拳狼の蒼槍』の威力が加わったら?
それはまさしく、奇跡の魔術……全ての時を戻し、『召喚せし者』を穿つ神話魔術となる。
『復元する拳狼の蒼槍』は『堕ちた煉獄の業火』を"当たる瞬間"へ戻し続け、それは"放たれる瞬間"まで戻される……
「これで……終わりだ!」
「っぐ、がぁぁぁぁぁぁぁ!」
動けなかったはずの死刑囚が、蒼き奇跡の魔術にて、『死刑執行人(エクゼキュータ)』に一撃を喰らわす……