fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者)   作:鴉鍵

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平和な日常
零二の日常


 かつて月読島で起きた悲劇の再来ラグナロク。13人の『召喚せし者(マホウツカイ)』による殺し合いといった悲劇……

 

 しかし、それは誰もが予想しなかったであろう結末で終止符を打った。

 

 その結末は戦いの中で倒れて行ったはずの13人の『召喚せし者』全員が存在し、首謀者であったオーディンの望む願いも叶った世界。はたから見ればご都合主義の世界だろうが、少年……芳乃 零二はそれでいいと思っていた。

 

「皆が……幸せならな」

 

 なによりもリアリストな自分に似合わない言葉を吐き、軽く自分で微笑む。

 

「マスター」

 

 相楽家のリビングでのんびりとテレビを眺めていた芳野 零二の耳に愛する者の声が飛び込んできた。

 

「おう、サクラ」

 

 声の主はサクラと呼ばれた少女だった。何を隠そうともサクラは人間ではなく『戦略破壊魔術兵器(マホウ)』と呼ばれる『召喚せし者』の兵器だ。しかし、俺にとってサクラは兵器なんかじゃなくて、一人の女の子だ。

 

「マスター、今日は桜さんとパパさんが来る日なんだよ」

 

「ゲッ、クソ親父が来んのか!」

 

 零二の父親は芳野 創世と言う名で、かつてオーディンと名乗りラグナロクを引き起こしていた。しかし、今ではオーディンの目的である最愛の人、桜の蘇生が叶い、大人しくなっている。

 

 次の瞬間、玄関のドアが勢いよく開き、武骨な男性と、サクラと瓜二つの女性が入ってきた。

 

「邪魔するぞ」

 

「おい、クソ親父! またドア壊しやがったな」

 

「む……」

 

 クソ親父こと創世がドアを壊したのはこれが初めてではない。強すぎる力ってのも色々とめんどくさいものだ。

 

「零二っ」

 

 間髪を入れずに、創世の隣に立っていたサクラと瓜二つの女性が俺に飛びついて来た。

 

「こーんなに大きくなっちゃって、うりうり〜〜」

 

「ちょっ、おふくろ!」

 

 俺に飛びついて来たサクラに瓜二つの女性は桜といって、俺のおふくろだ。サクラと瓜二つの為、今でも戸惑いを感じる。母親なのに欲情してしまいそうで危ない。

 

「あ〜〜! 駄目なんだよ〜〜!」

 

 何を思ったのか、サクラもまた俺に飛びついて来た。同じ顔に同じスタイル。はたから見れば双子のように見える。

 

「む……」

 

 何故か創世まで、うずうずと挙動不審になり、まるで羨ましそうな表情を見せる。かつてオーディンと名乗っていた時は何を考えてるのか分からない奴だったけど、今の創世はよく表情に感情が出るようになった。

 

「かっかっか! 朝っぱらから騒がしいのう」

 

 そんな俺たちの様子を見て、大らかに笑い出す女性。背が低く、魔女のような服装を身につけている。

 

「わんこか」

 

「苺じゃ!」

 

 創世の一言に怒りを孕んだ瞳で訴えかける女性。この人は相楽 苺、俺と妹の紗雪の面倒を見てくれている心優しきおば……お姉さんだ。

 

「あれ? 零二? 顔が赤いよ、大丈夫?」

 

「マスター! 風邪でも引いたの? なんだよ」

 

「い、いや、これは」

 

 もちろん、これは体調が悪いといった問題ではなく、美女二人に抱きつかれている事からくる照れだ。サクラはともかく、俺のおふくろの桜はオーディンことクソ親父の能力により、まだまだ若い。

 

「零二?」

 

「ちょ、もう離れてくれ! お前もだサクラ」

 

 がんじがらめの2人から抜け出すようにうなぎのように身をよじりながら、なんとか抜け出すことに成功した。

 

「も〜、照れなくてもいいのに……ね、サクラちゃん」

 

「うん、そうなんだよ! マスターは恥ずかしがり屋さんなんだよ」

 

「うるせーぞ、サクラ」

 

「あいたぁ!」

 

 と、調子に乗っているサクラを小突く。

 

「あぅ〜〜、彼女に対しておーぼーなんだよ」

 

 と、涙目になるサクラ。サクラの言う通り、あの戦いが終わってから俺たちは正式に付き合うことになった。紗雪や紅葉には申し訳ない。

 

 ふと、紗雪の名前を思い浮かべて、俺は紗雪がいないことに気づく。

 

「あれ? 紗雪は?」

 

「あぁ、紗雪は友達に誘われて遊びに出かけたぞ」

 

 と、苺さんがそう言ってきた。

 

「そうか」

 

 最愛の妹がおらず、どこか寂しく感じてしまう。俺がサクラと正式に付き合うと発表した後、しばらくふさぎ込んでいたが、しばらくすると、いつもの紗雪に戻っていた。

 

「零二、おはよう」

 

「今更かよクソ親父!」

 

 何の前触れもなく突如発した創世の一言に思わずツッコミを入れる。

 

「かっかっか、相変わらずマイペースじゃのう、創は」

 

「わんこ程ではない」

 

「苺じゃ!」

 

 まるでコントのようなそのやりとりに思わず笑みがこぼれる。

 

「ねぇ、創、今日は苺ちゃんのところで夕飯食べていかない?」

 

「桜がそう望むのなら」

 

「うん」

 

 正直、目の前の光景が信じられなかった。あんなに頑固で互いの思いが平行線で命をかけて争いあったオーディンことクソ親父が、静かに人の言うことを聞いていた。

 

「と、いうわけで、はい零二」

 

「え?」

 

 おふくろが俺に渡してきたのは恐らく今日の夕飯の献立に必要な材料が書かれていたメモ用紙だ。

 

「創と一緒に行ってきなさい」

 

「はぁ! クソ親父と!!」

 

「うん、お願いね」

 

 と、にこりと微笑み返すおふくろ。サクラに瓜二つの為、妙に断りきれなかった。しかし、おふくろは俺にあの無愛想で何を考えているのかわからないクソ親父と一緒に楽しくショッピングに行けと言っている。買い物かごを腕にかけ、野菜を手に取り悩むクソ親父が頭に浮かび上がり、思わず笑いがこぼれる。

 

「よし、行くぞ零二」

 

 バキボキと拳の骨を鳴らす創世。何故か尋常ならざる威圧感を出す。

 

「クソ親父、別に戦場に行くわけじゃねぇんだぞ、それしまえよ」

 

「む、そうか」

 

 と、創世は大人しく威圧感を消した。だが、それでも歴戦のツワモノを思わせる風貌はそのままだ。

 

「なぁ、おふくろ、人にはそれぞれ向き不向きがあるんだよ」

 

「そ、そうかもね」

 

 創世の尋常ならざる威圧感をその身に受けた母、桜も額に汗を浮かべながら俺の言葉に首を縦に振る。

 

 結局、買い物はおふくろとサクラが行くことになった。なんかそれもそれで色々と問題が起こりそうな気がするんだが……

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