fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者)   作:鴉鍵

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もう一人の『召喚せし者(マホウツカイ)』③

 "究極"の『召喚せし者(マホウツカイ)』と呼ばれる所以となった『天地創造の神槍(グングニル)』……それは純粋なまでの『力』の一撃……

 

「あ……灼く……」

 

 迫り来る死に自らの終わりを悟るセリーヌであったが……

 

 その死の一撃はセリーヌに当たる事は無かった……

 

「なぜ、邪魔をする? 苺」

 

 苺は意を決して、立ちすくむセリーヌを身を呈して飛び出し、何とかセリーヌ共々死の一撃を躱す。

 

「っ! どうして? どうして私を助けたんですか?」

 

 まさか、あり得ないと言った表情を見せるセリーヌ。

 

「知らぬ……気づけば勝手に身体が動いたのじゃ」

 

「ふ、零二に似てきたな」

 

 オーディンは微笑を浮かべる。

 

「ふふ、確かに零二なら、こうするじゃろうな……」

 

 己の行動に気づき、思わず笑みを零す。以前の苺では到底考えられない行動だった。

 

「ふざけないで下さい! 私はあなた方の敵ですよ……それをどうして……」

 

「苦しそうな瞳をしておったからじゃ」

 

「え?」

 

 苺のその一言に、セリーヌは思わず素っ頓狂な声をあげる。

 

「お主、灼に命じられて望まぬことをやっておるんじゃろ? その際『召喚せし者』……いや、人間を殺めるということにより、心が壊れぬようにと、無意識に感情を殺しておることがはっきりとわしの目に映るのじゃ」

 

「そんな……こと……」

 

「ならば、最初の初撃の時、どうしてわざわざ躱せるような軽い技にしたのじゃ? わしらが油断している間に神話魔術で方をつける方が良いではないか?」

 

「………………」

 

 口ごもるセリーヌ。その瞳には潤いのあるマリンブルーの瞳に戻っていた。

 

「でも……それでも……私は灼くんの為に……」

 

「セリーヌ!」

 

 温かい苺の手を振りほどき、グラムを杖にしてなんとか立ち上がるセリーヌ。

 

「私は灼くんの為に! 戦う!」

 

「セリーヌ!」

 

「やぁぁぁ!」

 

 迷いをぬぐい捨て、再び魔剣の柄を握りしめるセリーヌ。灼の為ならば全てを投げ打ってでも……役に立とうと決めた。

 

 例え、それで己のココロが壊れてしまっても……

 

「グラムーーッ」

 

 その掛け声に呼応するかのように魔剣は急激に軽く、今ここにセリーヌの腕の一部となる。

 

「今度こそ……本気で!」

 

 その瞳に感情の灯火は残っていた。大切なあの人の為にやりたくない事を我慢するのではなく、あの人の為に例え道が間違っていようと信じる事を決意した。

 

 皮肉にも、苺の優しさがセリーヌの迷いを甘さを斬り捨てた。

 

「苺さん、オーディンさん、私はもう迷わない……灼くんの為にあなた達を……殺す!」

 

「っ!」

 

 その覚悟を受け、苺も臨戦態勢に入る。

 

「『英雄の記憶(ヴォルスンガ・サガ)』」

 

 かの英雄の魂を己と一体化し、己を英雄とする『魔力魔術換装(エイン・フェリア)』

 

「まずは……一の太刀『加速する英雄(ヴォルスング)』!」

 

「む……」

 

 セリーヌはグラムの高速剣ではオーディンを捉えきれないと判断し、グラムに刻まれた記憶を解放する。それが一の太刀『加速する英雄(ヴォルスング)』……それは高速剣を遥か上の音速を光速を超えて、神速剣となる。その剣戟はさすがのオーディンと言えど、その目にて捉える事が出来なかった。

 

 だが、オーディンの概念魔術空間という名の隔たりが存在する限り、いかに神を超える速さの剣戟であろうともオーディンには届かない。

 

「………………」

 

 だが、オーディンはすぐさま反撃に出る事は無く、セリーヌの次なる一手を見極めていた。

 

「はぁぁ! 二の太刀『復讐の一手(シグムンド)!』」

 

 セリーヌは一の太刀『加速する英雄』では、打ち破れないと判断し次なる一手、二の太刀『復讐の一手(シグムンド)!』を発動する。

 

「ぐっ……」

 

 その太刀はオーディンの概念魔術空間を飛び越え、オーディンへダメージを与える。

 

「馬鹿な……我が概念魔術の壁を打ち破るだと!」

 

 オーディンは確かに痛む左腕を庇い、セリーヌの魔剣グラムを注視する。

 

「二の太刀『復讐の一手』は斬る事が目的ではありません……その執念を以って『当てる』事に固執した一撃です」

 

 二の太刀『復讐の一手(シグムンド)』

 

 一の太刀『加速する英雄(ヴォルスング)』は剣戟のスピードを上げる太刀。殆どならこの一太刀で決着がつくことが多いが、それを防いだ者には次なる必殺を放つ為の一太刀が待ち受けている。

 

 かつて、神話の時代にて、名を馳せた英雄シグムンド。しかし、彼の英雄譚は輝かしいものではなく、全てを奪ったシッゲイル王に復讐せんとその牙を磨いていた。その執念がこもった太刀……

 

 対象者を斬るのではなく、『当てる』……そこには堅固なる魔術障壁や神速の身軽さや概念よる壁など通用しない。

 

「まだまだ! 二の太刀『復讐の一手』」

 

「ぐ……」

 

 次々とオーディンの身体に当てるセリーヌの太刀。だが、その攻撃はさほどオーディンには効いていないようだった。

 

 それもそうだ……二の太刀『復讐の一手』は威力を弱めてでも、当てる事を追求した一撃……その太刀の威力はなまくらと同等のもの。

 

 だが……それでいい。

 

全ては最後の太刀の為、今までの太刀とは比べ物にならない程の威力を持つ……

 

「これで……トドメです」

 

 二の太刀『復讐の一手』を解き、オーディンを滅ぼさんと、その魔剣に魔力を練る。

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