fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者)   作:鴉鍵

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もう一人の『召喚せし者(マホウツカイ)』④

「三の太刀『竜殺しの英雄(シグルド)』」

 

 瞬間、魔剣グラムの二股の間から鮮血のような紅い輝きを発し、瞬く間に刀身全体を赤く染める。その姿はまるで数多の命を貪り、啜(すす)ってきた魔剣グラムそのものだった。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

 吹き荒れるグラムの魔力……それは目の前にいる最高神オーディンを討ち滅ぼす事の出来る程の魔力。

 

「創!」

 

 その危険さを感じ取ったのか、苺はオーディンに声をかけるが、オーディンは変わらず、セリーヌの三の太刀を眺めている。

 

「これで……終わりです! さようなら、オーディンさん」

 

 放たれる魔の一閃……

 

「………………」

 

 対するオーディンは静かに弓を引くような動作を開始する。

 

「そんなものか? お前の『決断』は」

 

「っ!」

 

「お前の覚悟とやらを見せてもらおうと思ったのだが、この程度とはな……それでは、他の『召喚せし者(マホウツカイ)』とたいして変わらん」

 

「っ! ふざけないで下さい! オーディン! あなたは私の三の太刀『竜殺しの英雄』に倒される!」

 

「私が……こんな、児戯で? 知らぬ間に随分と偉くなったものだな」

 

 襲いかかる魔の一閃にオーディンはただ、それを見据える。

 

「見せてやろう、本物の覚悟とやらをな」

 

 かつて、オーディンとして、桜を生き返らせる為にあらゆるものを犠牲にせんと『決断』した思いを胸から蘇らせる。

 

「第三夜『Goetterdammerung(神々の黄昏)』」

 

 その右拳に『力』の摂理がこもり、百発必中なる必殺の技を創り出す。

 

「今度は……外さん。『天地創造の神槍(グングニル)』

 

 絶対なる一撃が放たれ、魔の一閃とぶつかり、せめぎ合う……必要すらなかった。

 

「そんなっ!」

 

 魔の一閃は絶対なる一撃の前に消え失せ、セリーヌの元へ快進する。

 

 絶対なる死……神の啓示は正しいと言わんばかりにその一撃は無双を誇っていた。

 

「そう……ここで、私は……」

 

 先ほどは苺のおかけで生き延びる事が出来たのだが、今度は流石に護ってはくれないだろう……

 

 チラリと横目で苺の方へ目を向けると、申し訳なさそうな顔をして、拳を握りしめ、涙を堪えている苺の姿があった。

 

 そう、私は敗北するのだ。圧倒的なオーディンの手によって……

 

 もし、私が死んだ事を灼くんが知ったなら、灼くんはどんな顔をするのかな?

 

 残念な事に灼くんにはもう思い人がいる。この世からいなくなっても灼くんは一途に思い続けている。だけど、灼くんは私を"妹"として愛してくれた……

 

 私だって、灼くんの大嫌いな『召喚せし者』なのに……

 

ーー「お前だけは特別だ」ーー

 

 その一言だけでも嬉しかった。

 

 だって、私は灼くんの"特別"になることが出来たんだから……

 

「さようなら、灼くん」

 

 最後にそう言い残し、セリーヌは涙目で『天地創造の神槍』が己の身体を貫くのを待っていた。

 

 だが……

 

「え?」

 

 眼前にまで来ていたはずの『天地創造の神槍』が一瞬にして霧散する。

 

「ど、どうして?」

 

 目の前で起きた事が理解出来ず、頭を混乱させる。

 

「殺すつもりはない……今はな」

 

 そう言ったのは意外にもオーディンだった。己の『天地創造の神槍』を何とか、破棄しセリーヌを、殺めずに済む。

 

「なんで……なんでですか?」

 

 オーディンの意図が全く分からず、生き延びたことに安堵を覚えるよりもオーディンへの疑念が勝る。

 

「お前を斃(たお)す必要は無くなった……それだけだ」

 

「え?」

 

「どうやら、零二と灼の戦闘が終わったそうだ」

 

「っ! じゃあ、灼くんは!」

 

「いや、死んではいない、零二もな。故にお前と戦う理由は無い。これ以上の戦闘は魔力の無駄だ」

 

「オーディンさん……」

 

「ただ、色々と聞きたい事がある。いいな?」

 

「……はい」

 

 それだけ言うと、オーディンはセリーヌを『始まりの大地(イザウェル)』へと転送する。

 

「帰るぞ苺」

 

「全く、お主は変わらんのう」

 

「何がだ?」

 

「かっかっか、その武骨の裏側に隠された優しさの事じゃよ」

 

「ふ、面白い冗談を言ってくれるな……わんこ」

 

「苺じゃ! 前言撤回じゃ、お主は相変わらず腹立つ奴じゃ」

 

「そういきりたつな、イライラしすぎるのはカルシウム不足らしいぞ……だから、ふっ」

 

「創! 今、何で笑ったんじゃ!」

 

「さぁな、己の身体に聞いてみるといい」

 

「うるさい! 別に女はないすばでぃで価値が決まるわけじゃないぞ!」

 

「そうだな、わんこ」

 

「苺じゃ! これ! 頭を撫でるのはよせ! よせと言っとるんじゃ!」

 

 空が赤く染まる時間、創世へ戻ったオーディンは苺をからかいながら、帰路へつく。




毎度お読みいただきありがとうございますm(_ _)m

次回から、ついに零二&サクラVS灼に戻ります……

これからもよろしくお願いします。
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