fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者) 作:鴉鍵
「三の太刀『竜殺しの英雄(シグルド)』」
瞬間、魔剣グラムの二股の間から鮮血のような紅い輝きを発し、瞬く間に刀身全体を赤く染める。その姿はまるで数多の命を貪り、啜(すす)ってきた魔剣グラムそのものだった。
「はぁぁぁぁ!」
吹き荒れるグラムの魔力……それは目の前にいる最高神オーディンを討ち滅ぼす事の出来る程の魔力。
「創!」
その危険さを感じ取ったのか、苺はオーディンに声をかけるが、オーディンは変わらず、セリーヌの三の太刀を眺めている。
「これで……終わりです! さようなら、オーディンさん」
放たれる魔の一閃……
「………………」
対するオーディンは静かに弓を引くような動作を開始する。
「そんなものか? お前の『決断』は」
「っ!」
「お前の覚悟とやらを見せてもらおうと思ったのだが、この程度とはな……それでは、他の『召喚せし者(マホウツカイ)』とたいして変わらん」
「っ! ふざけないで下さい! オーディン! あなたは私の三の太刀『竜殺しの英雄』に倒される!」
「私が……こんな、児戯で? 知らぬ間に随分と偉くなったものだな」
襲いかかる魔の一閃にオーディンはただ、それを見据える。
「見せてやろう、本物の覚悟とやらをな」
かつて、オーディンとして、桜を生き返らせる為にあらゆるものを犠牲にせんと『決断』した思いを胸から蘇らせる。
「第三夜『Goetterdammerung(神々の黄昏)』」
その右拳に『力』の摂理がこもり、百発必中なる必殺の技を創り出す。
「今度は……外さん。『天地創造の神槍(グングニル)』
絶対なる一撃が放たれ、魔の一閃とぶつかり、せめぎ合う……必要すらなかった。
「そんなっ!」
魔の一閃は絶対なる一撃の前に消え失せ、セリーヌの元へ快進する。
絶対なる死……神の啓示は正しいと言わんばかりにその一撃は無双を誇っていた。
「そう……ここで、私は……」
先ほどは苺のおかけで生き延びる事が出来たのだが、今度は流石に護ってはくれないだろう……
チラリと横目で苺の方へ目を向けると、申し訳なさそうな顔をして、拳を握りしめ、涙を堪えている苺の姿があった。
そう、私は敗北するのだ。圧倒的なオーディンの手によって……
もし、私が死んだ事を灼くんが知ったなら、灼くんはどんな顔をするのかな?
残念な事に灼くんにはもう思い人がいる。この世からいなくなっても灼くんは一途に思い続けている。だけど、灼くんは私を"妹"として愛してくれた……
私だって、灼くんの大嫌いな『召喚せし者』なのに……
ーー「お前だけは特別だ」ーー
その一言だけでも嬉しかった。
だって、私は灼くんの"特別"になることが出来たんだから……
「さようなら、灼くん」
最後にそう言い残し、セリーヌは涙目で『天地創造の神槍』が己の身体を貫くのを待っていた。
だが……
「え?」
眼前にまで来ていたはずの『天地創造の神槍』が一瞬にして霧散する。
「ど、どうして?」
目の前で起きた事が理解出来ず、頭を混乱させる。
「殺すつもりはない……今はな」
そう言ったのは意外にもオーディンだった。己の『天地創造の神槍』を何とか、破棄しセリーヌを、殺めずに済む。
「なんで……なんでですか?」
オーディンの意図が全く分からず、生き延びたことに安堵を覚えるよりもオーディンへの疑念が勝る。
「お前を斃(たお)す必要は無くなった……それだけだ」
「え?」
「どうやら、零二と灼の戦闘が終わったそうだ」
「っ! じゃあ、灼くんは!」
「いや、死んではいない、零二もな。故にお前と戦う理由は無い。これ以上の戦闘は魔力の無駄だ」
「オーディンさん……」
「ただ、色々と聞きたい事がある。いいな?」
「……はい」
それだけ言うと、オーディンはセリーヌを『始まりの大地(イザウェル)』へと転送する。
「帰るぞ苺」
「全く、お主は変わらんのう」
「何がだ?」
「かっかっか、その武骨の裏側に隠された優しさの事じゃよ」
「ふ、面白い冗談を言ってくれるな……わんこ」
「苺じゃ! 前言撤回じゃ、お主は相変わらず腹立つ奴じゃ」
「そういきりたつな、イライラしすぎるのはカルシウム不足らしいぞ……だから、ふっ」
「創! 今、何で笑ったんじゃ!」
「さぁな、己の身体に聞いてみるといい」
「うるさい! 別に女はないすばでぃで価値が決まるわけじゃないぞ!」
「そうだな、わんこ」
「苺じゃ! これ! 頭を撫でるのはよせ! よせと言っとるんじゃ!」
空が赤く染まる時間、創世へ戻ったオーディンは苺をからかいながら、帰路へつく。
毎度お読みいただきありがとうございますm(_ _)m
次回から、ついに零二&サクラVS灼に戻ります……
これからもよろしくお願いします。