fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者)   作:鴉鍵

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戦争宣言

 帰路につき、相楽家へと向かうオーディンこと芳乃 創世と相楽 苺。

 

「だが、結局紗雪は行方知れずじゃ……」

 

「心配するな、後ほどセリーヌに聞けばいい」

 

「そうじゃな……」

 

「ああ、だから……っ! 止まれ! 苺!」

 

「なにっ!」

 

 突然降りかかる青い炎……創世の注意が無ければ今頃苺は黒焦げとなっていただろう……

 

「この炎の魔力……イフリートか」

 

「………………」

 

 すると、その青い炎から赤い炎が現れ、それは長駆の燃えるような赤髪の男性となり変わる。

 

「やはり……お前か、イフリート」

 

 と、創世は苺の一歩前に出て、灼に対し、警戒心を強める。

 

「セリーヌはどこだ?」

 

「人質として、私が預かっている」

 

「…………ッ」

 

 灼の表情に亀裂が入る。恐らく溢れ出そうな感情を押さえつけているだろう。

 

「返してもらおうか、セリーヌはお前達ごときに囚われていい存在では無い」

 

「お前達ごとき……だと? 変わったなイフリート」

 

「オーディン……私はもうイフリートではない、お前達『召喚せし者(マホウツカイ)』を殲滅する『死刑執行人(エクゼキュータ)』となった」

 

「っ、何を……言うんじゃ灼」

 

 苺はそんな灼に悲しそうな表情を浮かべる。

 

「心配しないで下さい、相楽姉さん、あなたは消しませんから」

 

 と、穏やかな表情でそう言う灼。

 

「なぜじゃ?」

 

「相楽姉さんは『召喚せし者』じゃありませんから」

 

その話を聞き、創世は理解したかのように首を縦に振る。

 

「なるほど、つまりお前は『召喚せし者』のみ殺めると?」

 

「ああ」

 

「なら、その『召喚せし者』が争いを好まぬ者、あるいは何も知らぬ子供だとしても、お前はそいつも殺めると言うのか?」

 

「ああ」

 

 セリーヌの時とは違い、絶対的な覚悟をこめたその言葉に、創世と苺はビクリと肩を震わせる。

 

「やはり……火織(カオリ)か?」

 

「っ!」

 

 苺が放った一言に過剰に反応する灼を見て、苺と創世は察した。

 

「お主は……火織の敵討ちの為に『召喚せし者』を滅ぼすのか?」

 

「黙れ!」

 

 灼の荒ぶる声とともに灼の周囲の温度が急上昇する。

 

「相楽姉さん……これ以上言うのであれば……例え、貴方でも殺す」

 

「くっ!」

 

 突如放たれた禍々しい魔力……それは復讐の念……悲しくもこれだけが、灼に残された人間らしさ。

 

「だが、今はお前達『召喚せし者』全員を滅ぼすほどの魔力が足りない……それに……ここの『召喚せし者』は他の『召喚せし者』と比べると、なかなか強い」

 

 そう、灼はこの島にいる『召喚せし者』を警戒し出している。灼にとって今までは警戒すべき『召喚せし者』はただ一人、そこにいるオーディンのみだった。

 

 しかし、この島に来て、灼の幻覚魔術や『堕ちた煉獄の業火(イフリート)』を打ち破る『召喚せし者』が現れたのだ。

 

 長年、他の地域で『召喚せし者』を屠って来た灼にとって、この島の『召喚せし者』は予想外すぎるイレギュラーだった。

 

 例えるなら、ただ死を待つ死刑囚が『死刑執行人(エクゼキュータ)』に反乱を引き起こすようなもの。

 

「しばらくは手出しはしない。これは約束しよう」

 

「………………」

 

 灼の言葉を静かに耳を傾ける創世と苺。二人にはとある予感がしたのだ。嫌な予感が……

 

「だが、私は必ずこの島の『召喚せし者』を滅ぼす……オーディン、お前も例外ではない!」

 

 それは、灼の死刑予告……その言葉はこの島にいる『召喚せし者』と戦争をすると言う意味も含まれていた。

 

「つまり、お前は我々『召喚せし者』に戦争を仕掛けると?」

 

「ふ、戦争ではない! これは一方的な虐殺……死刑なのだ!」

 

 灼はそれだけ言うと、再び己の身体に赤き炎を纏い、霧散した。

 

「灼……」

 

 苺は変わり果てた灼を直にこの目で見て、目を覆いたくなるような現実を直視した。

 

「わしの……わしのせいじゃ」

 

「っ、わんこ」

 

 突然、苺の口から漏れ出た懺悔の言葉。

 

「わしが……わしがあの時、火織を……」

 

「お前のせいじゃない……これは誰のせいでも無いのだ」

 

「っ……創……」

 

 心身共に衰弱していた苺は駄目だと分かりながらも創世の体に身を預けて来た。

 

 パートナーとして共に戦う日々を経て、密かに創世に対する女性としての感情が芽生えた苺。しかし、それは親友の桜によって散った。それでも苺は桜を恨まず、二人の仲を心から応援していた。

 

 それでも……その心の中の一片は悲しく、辛く……桜に嫉妬していた……

 

「創ぉ……」

 

「………………」

 

 そんな苺の脆く儚い乙女心を創世は知っていた……だからこそ、パートナーとして接し、男女としては接していなかった……

 

 中途半端な対応をすれば桜だけではなく、苺も悲しませることになる……だから

 

「帰るぞ苺……桜が待っている」

 

 創世は胸に飛び込んできた苺を離し、今の苺にとって残酷なる言葉を言い放った。

 

「っ……そ、そうじゃな……」

 

 苺はほんの一瞬だけ、落胆し、すぐに目尻に溜まった水を払い除け、笑顔を見せる。

 

 灼という『死刑執行人(エクゼキュータ)』から戦争宣言とも捉えられる死刑予告を受け、この月読島に再び悲しき『召喚せし者』による戦争が始まるのだった。

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