fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者) 作:鴉鍵
あれは私、桜が創世と出会った後すぐに起きた出来事だった。
創くんの所属である『予言の巫女(ウォルスパー)』に数人の子供たちが送られてきたの……
その子供たちは難民の子だったり、戦災孤児だったり、家族に見捨てられた子供だったりと色んな子供たちがいたの。
けれど、その中に一人だけ、違う子がいたの。それが瀬道 灼……後にイフリートというコードネームを着けられた子供。
灼は難民の子でもなく、戦災孤児でもなく、家族に見捨てられた子でもなかった。ほんのちょっと前までは普通の家庭にいるような子供だった。
ただ、『戦略破壊魔術兵器(マホウ)』を生み出すあの宝石と適合するという理不尽な理由で家族と引き離された……
でも、そんな状況に置いても、灼はタダをこねる事無く、見知らぬ環境に連れてこられ、怯える同期の子供たちを励ました。
そんな強い心を持つ灼でも、やっぱり子供で、夜、一人で枕を濡らしていた。
でも、そんな灼に運命的な出会いが訪れた……
それが、『予言の巫女』のモルモット教育担当のーー中澤 火織(ナカザワ カオリ)ーー
太陽のように暖かくて、慈愛に満ち溢れた彼女はすぐに灼の心の支えとなり、周りから見ても本当の親子のようになっていった。
一緒に勉強し、一緒に遊んで、一緒に他の子供達と笑いあって、一緒にお風呂に入って、一緒に映画を見て、時には泣いたり笑ったり怖がって抱き合ったり、そして、灼が心寂しくなる夜には腕枕をしながら一緒に寝たり……
そんな火織を灼は母親として甘え、姉として信頼し……そして、一人の女性として思いを寄せるようになった。
二人の微笑ましい関係は創くんも知っていて、たまに創くんが火織さんと仲良く話していると、良く喧嘩をふっかけて来た。
ーー「俺の火織さんをとんなよ! 筋肉ダルマ!」ーー
ムキになる灼を創くんはよくからかっていたの
ーー「火織はお前のようなガキには興味ないと思うがな」ーー
ーー「んなぁっ!」ーー
ーー「こら、創世さん! 意地悪な事言わないで下さい」ーー
ーー「火織さんは……俺のこと……興味ないの?」ーー
ーー「もー、そんなこと無いわよ!」ーー
灼は他の作業員や研究者、それに他のモルモット達とすぐ仲良くなり、灼自身が『予言の巫女』を包み込む暖かな光となっていった。
灼がそんな存在になってからは、私のところへちょくちょく他の子供達を引き連れて遊びに来るようになったの。
特に、創くんのニーベルンゲンの歌は大好評で、たくさんの子供達が目を輝かせながら聞いていたわ。
でも、そんなある日、他国の『予言の巫女』が攻め込んで来て、『召喚せし者』達の戦争『大いなる冬(フィンブルヴェド)』が起こり、まだ半覚醒だった灼や他の子供達も一緒に戦場に駆り出されたの。
戦争が拡大していき、灼の同期の子供達が次々倒れ、心と支えとなる火織も忙しく、二人が会えない日々は増えて行った。
それでも、灼はいつか戦争を終え、火織と再び会える日を思い、それを糧にして過酷な戦争を生き抜いて行ったの。
でも……そこであいつが現れた。
「っ……」
桜の話を傍観していた創世がビクリと声を漏らす。
「ここからは、私が話そう……」
と、創世が桜を手近な椅子に座らせ、話をし出す。
現れた奴は……ローゲの焔使いと名乗る"最凶"の『召喚せし者』だった。
奴は、次から次へと『召喚せし者』を食らいつくし、『予言の巫女』の内部にあった『悠久の幻影(アイ・スペース)』発生装置を破壊し、一般人にまで被害を及ぼした。
そこに理由など無く、ただ、己の力を見せつける為に次から次へと一般人まで殺し始めた。
『予言の巫女』の『召喚せし者』も必死に抵抗したが、勝てなかった……
そして、私が……桜の……亡骸を見て……覚醒したすぐ後の時だった。
ーー「うがぁぁぁぁぁ!! なんで! なんでだよぉぉぉぉぉ!」ーー
灼の悲痛の叫び声が聞こえた。
恐らく、灼もまた、私のように大切な人を失ったのだ。
今思えば、ローゲの焔使いをその場で倒さず、灼の元に駆け寄り、二人でローゲの焔使いを倒すべきだったのかもしれない……
一人でローゲの焔使いを倒した私は復讐を終え、桜の生命回帰という目的が出来た……
だが、灼は大切な人の復讐すら出来ず、戦争が終わり、一人おびただしい死体の戦場に放り出された。
やり場のない怒りと復讐心はやがて、『処刑』という名目で『召喚せし者』を殲滅するという結末しか見出せなかったのだろう……
その後の灼の事は知らないが、私がかつて龍一と共に世界中を旅し、ロシアにある『予言の巫女』支部を訪れた時、そこには禍々しい青い地獄の業火に焼かれる『召喚せし者』達の姿があった。
なぜか、そこでは一般戦闘員や研究者、作業員は全員無事で、『召喚せし者』のみが、その業火に焼かれていた。
他にも各地で悪さをしていた『召喚せし者』が、青い地獄の業火に焼かれたという噂が絶えずに流れていた。
そして、私は確信した……
復讐を果たせなかった灼はローゲの焔使いと同じ存在である『召喚せし者』を殲滅しているのだと……
あの頃の優しく、どこか無邪気な少年だった灼は既におらず、火織と同じ存在である人間を守る為に、己の人間を捨て、血も涙もない『死刑執行人(エクゼキュータ)』となったのだ。
それでも、そんな変わり果てた灼でも、信じ、ついて行く『大いなる冬』を生き延びた灼の同期の『召喚せし者』……彼らは世の中に『召喚せし者』が潰えるまで戦い続ける。
彼らの人生を狂わせたのは……ローゲの焔使いでもなく、私でもない……『召喚せし者』という存在なのだから……