fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者)   作:鴉鍵

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一日の終わり

 桜と創世による灼の話を終えた後、沈黙の空気が漂っていた。

 

 そう、憎々しく思っていたはずの灼もまた十年戦争の被害者であるという事実を突きつけられ、複雑な感情が入り混じっていた。

 

「だから、灼も本当は悪い子なんかじゃないの、お願い……彼を救ってあげて」

 

 と、潤んだ瞳で周りに懇願する桜。

 

「桜、出来ることなら奴を救ってやりたい……だが、今の奴を救えるのはただ二つ。我ら『召喚せし者(マホウツカイ)』の全滅か、灼の死のみだ」

 

「そんな事ないよ……言葉できっと、分かり合えるから」

 

「ふん、随分と頭がお花畑な女性(ひと)ね、世の中そんな優しく出来てないわよ」

 

「っ、里村!」

 

 桜の心優しき理想は紅葉の一言でかき消される。だが、零二も含めて、紅葉の一言に反論する事は誰にも出来なかった。

 

「桜、すまない」

 

「ううん……それしか彼を救ってあげられないのなら……」

 

「なるべく、苦しまないように葬るさ」

 

 創世のその優しさに桜はコクリと頷く。しかしその顔にはまだ納得出来ないと言った表情が浮かんでいる。

 

「で、これからどうする?」

 

「できれば、捜索したいところだけど、灼さんについて情報がなさすぎるから、厳しいわね」

 

 と、雨宮が唸る。さすがの雨宮でも今回の敵はかなり厄介な存在のようだ。

 

「ま、灼がどんな奴かは置いとくとして、紗雪の方はどうするの?」

 

「ああ……」

 

「紗……雪じゃと!」

 

 紅葉のその言葉に反応する苺。俯いた顔を上げ、紅葉の肩を両手で掴む。

 

「紗雪は……紗雪は生きておるのか?」

 

「えっと、その……」

 

 あの時出会った紗雪は確かに生きていた……だが、妙な変貌っぷりがあり、苺にどう説明していいか分からずたじろぐ。

 

「紗雪は……身体は生きてるけど、心は死んじまってるんだ」

 

「なに?」

 

 紅葉の代わりに説明する零二。

 

「あのクソ野郎が言ったんだよ、紗雪の心だけを殺し、自分に従うように作り変えたってな」

 

「そんな……」

 

 ガクンと膝をつく苺。

 

「苺!」

 

 苺の側に駆け寄る桜と創世。両者とも心配そうな顔を浮かべ苺を注視している。

 

「他者の精神を破壊……だとしたら、あの炎は……いえ、まさか」

 

 雨宮は一人で何かを呟き、やがて全ての辻褄が合ったかのようにピンと閃く。

 

「零二くん、あの灼さんが使っていた『堕ちた煉獄の業火(イフリート)』の能力はどんなものだったの?」

 

「『堕ちた煉獄の業火』の能力?」

 

「確か……『召喚せし者』の使うあらゆる能力を無効化にする能力だったはずなんだよ」

 

 雨宮の問いに、零二の代わりに答えたのはサクラだった。いつもはほへ〜と、頼りないサクラだが、相手の動作を見張る力においては頼れるものだ。

 

「何か分かったのか? 雨宮」

 

「ええ、でも、まだ可能性の段階だから……」

 

 そう言って、また考え出す雨宮。

 

「この事は他の『召喚せし者』に伝えるべきだよな?」

 

「そうだな」

 

 今集まっている『召喚せし者』は零二に創世、紅葉、雨宮の四人だ。紗雪を除いて、残る『召喚せし者』の数は八人。彼らにも伝えなければ、いきなり灼に奇襲された時、対応が遅れ、不利になる可能性がある。

 

「なぎさやりゅーいちには明日伝えるとして、他の『召喚せし者』はどうするの?」

 

「おいおい、里村、霧崎の事も忘れんじゃねーぞ」

 

「あいつ、なんかやだ。れーじから伝えてよ」

 

 相変わらずの悪魔っぷりだ。

 

「有塚には私から伝えよう、恐らく有塚の仲間である轟にも伝わるはずだ」

 

「って事は残るは三人……高嶺と真田のおっさんと梶浦か」

 

「そうね、真田さんと陽奈子ちゃんは私から伝えるわ」

 

「梶浦は学校で会えるからその時でいいか」

 

 全員、誰かに伝えるかを決め、互いに視線を交わし、コクリと頷いた。

 

「さて、そろそろ遅くなって来たからお暇させていただくわね」

 

「あ、もうこんな時間! むむむむむー、名残惜しいけど、また明日ね、れーじ」

 

「ああ、二人とも帰り道には気をつけろよ」

 

「うん!」

 

「ふぅ、零二くんに送ってもらいたいものだけどね」

 

「駄目なんだよ! 会長さんは強いから一人でも大丈夫なんだよ」

 

「あら、私だってか弱い乙女なのよ?」

 

「そ、それはそうなんだけど……と、とにかく駄目なんだよ!」

 

 と、頑なに雨宮に対抗するサクラ。

 

「ったく、いい加減帰れよ」

 

「ふふ、そうね、それじゃ、また明日ね」

 

「ああ、また明日な」

 

 こうして、長い一日が終わった。

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