fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者) 作:鴉鍵
星見学園……昼休み
「おお、来たか、梶浦」
既に生徒会室に集合していた零二達はこの星見学園にいるもう一人の『召喚せし出す(マホウツカイ)』、梶浦 海美を校内放送で呼ぶ。
「あれ、先輩達お揃いで、いったい何があったんですか?」
「ああ、実はだな……」
「あら? そこにいる人は誰かしら?」
零二が先日の事を話し出すより速く、その場にいる雨宮がもう一人の来訪者に気づく。
「あ、紹介が遅れましたね、この人は私の幼なじみで彼氏の桜井君です」
「は、始めまして……桜井 俊介と言います。星見学園の一年生です」
周りが先輩だらけだからか、緊張した面持ちで挨拶する俊介。まだ中学校を卒業したてのホヤホヤにしては体つきが良く、一般よりは筋肉がついているように見える。
「なんやなんや、学園のアイドル海美ちゃんまで、彼氏持ちかいな、ショックやわー」
「おい、霧崎……」
どうやら霧崎にとってはまた起こる戦争よりも学園のアイドルに彼氏がいたことの方が重大らしい。
「それで、先輩達が私を呼んだ理由はなんですか?」
「ああ、そうだったな。実は……」
零二は先日起きた出来事を梶浦に話す。
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「なんですか、それ、また戦争が始まるかもしれないって」
灼の事を伝え、その事を知った梶浦は青い顔をして、手近にある椅子にへたり込む。
「せっかく……せっかく平和な日々を……過ごせると思ったのに……」
「………………」
梶浦のその言葉はその場にいる全員の思いと同じだった。ようやくラグナロクが終わり、最高のハッピーエンドを迎えたはずの世界はまだ次の戦いが待ち受けていた。
唯一の救いは仲間同士で争う必要が無いということだけだ。紗雪を除いては……
「あの……戦争って? 『召喚せし者』とか……えっと、ゲームの話ですか?」
切迫した雰囲気の中、梶浦の彼氏である俊介だけが、話の内容を分かっていなかった。
「いや、桜井君、これはゲームの話なんかじゃない。この場にいる僕達は……人間を超越した存在『召喚せし者』なんだよ。そこにいる梶浦さんも含めてね」
「なっ!」
あり得ない……俊介の顔に最初に浮かんだのはそういう表情だった。もし、今の話が本当なら、梶浦は……俊介の最愛の彼女は自分の知らないところで戦っていたということになる。
「海……美……今の話……本当なのか?」
「………………」
だが、俊介の問いに海美は答えない。また起こるであろう戦争に恐怖を感じている。
「っ……海美! だ、大丈夫だ」
「えっ?」
普段の彼女にはあり得ない緊迫した表情の海美。それが事態の深刻さを物語っている。ならば俊介に出来ることは何か?
「俺は……俺は『召喚せし者』とかじゃない。何の力も持たないただの人間だ……けど、けど海美の心の支えぐらいにはなってやれる! だから……だからもう、一人で抱え込まなくていいんだよ!」
「俊介……」
俊介の思いを受け止めた海美は恐怖とはまた別の感情からなる涙を零し、俊介に抱きつく。
「うん……ありがと」
「ああ、俺は、俺なりのやり方で、海美を守って見せるから」
「んっ……」
俊介の胸の中でコクリと頷く海美。
「って事だ。二人とも、帰り道には気をつけろよ」
「はい……ありがとうございます、先輩」
海美の為、わざわざ忠告してくれた零二らに深々と頭を下げる俊介。
「ふふ、梶浦さん、なかなかいい彼氏さんね」
「でしょ! 私の自慢の彼氏ですから」
「羨ましいわ、私も貴方のような素敵な彼氏が欲しいわね……ね、零二くん?」
「あ、ああ、そうだな……雨宮ならすぐに見つかるだろ?」
「もう、零二くんの鈍感……それとも本当は分かって、焦らしてるのかしら?」
「会長はん、ワイ! ワイならいつでも空いとるで」
「ふふ、ありがとう……でも、私はもう心に決めた人がいるもの」
と、嬉々して挙手する霧崎。しかし、雨宮は笑みを壊さずにやんわりと断る。
「はっ、上等やないか、そんな男のことなんかすぐに忘れさせて、ワイに溺れさせてやるわ会長はん」
「あら、でも貴方じゃ、私を満足させてくれる事は出来ないわよ」
「さて、どうやろか?」
「ふふ…………」
「お前らなぁ」
ヒートアップする会長と霧崎の間に入り、なんとか抑える。
「灼…………か」
「龍一?」
傍ら、深く思い悩んでいる龍一を心配して声をかけるなぎさ。
「ああ、なぎさ、どうかしたのかい?」
「龍一は大丈夫? なんだか思いつめているみたいだったよ」
「はは、大丈夫だよ。ただ、その灼って人がどういう人物なのか気になっていてね」
「私達の日常を壊して、更に紗雪ちゃんまで傷つけたんだよ? 悪い人に決まってるよ」
「本当に……そうだろうか?」
「龍一?」
妙に灼を援助するような素振りを見せる龍一になぎさは若干の戸惑いを感じていた。
「いや、なんでもない……例え、灼がどのような人でも、僕達の日常を脅かすのなら、倒さないといけないしね」
「うん」
己の中に芽生えた迷いを振りほどき、覚悟を決める龍一。そんな龍一の様子になぎさは安心こそすれ、どこか言葉に出来ない不安も同時に感じていた。
「あれ? そんな事より……里村は?」
「えっ? いない?」
龍一の言葉でその場にいる全員は辺りを見回すが、そこには里村の姿が無かった。
「あれ? おかしいな? 最初集まった時にはいたんだけど……」
首を傾げながらそういうなぎさ。
「紅葉の事だから、こういうぐだぐだした会議が嫌になって出て行っただけじゃないかしら?」
「そう……なのかな?」
確かに紅葉ならそう言うこともあり得るだろう……だが、それでも何も言わずに消えるのはどこかおかしかった。
「私、紅葉を捜してくる」
そう言って、なぎさは生徒会室から飛び出し、紅葉の行方を追う。
「待て、なぎさ! 僕も行くよ」
出て行ったなぎさの後を追い、龍一も生徒会室を出る。