fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者) 作:鴉鍵
学校の一日を終えるチャイムが鳴り、零二は背伸びし、大きくあくびを漏らす。
「零二、ちょっと話があるんだけど……」
「お断りだ」
「なっ! まだ何も言ってないじゃないか!」
「どうせ、お前の事だ。また学校休んでパトロールに出かけようとかほざくんじゃねぇよな?」
「っ!」
どうやら図星だったようである。
「それに、俺は今日、里村と遊ぶ予定なんだよ。な、里村?」
「ほえ?」
いきなり、話を振られ首を傾げる紅葉。それもそうだ。なんたって、遊ぶ予定と言うのは嘘である。
「そうなのかい? 紅葉?」
「えーと、え?」
まだ状況が飲み込めておらず、必死に頭を回転させ、理解しようとしている。
「なぁ、頼むよ里村……龍一と放課後楽しいピクニックなんて勘弁だぜ」
「え? あー! そう言うことね! オッケー、分かったわよ」
小声で紅葉の耳にそう呟き、なんとか状況を飲み込めた紅葉。
「実は……この後、二人でミルキー通りに行くって約束したんだよねー、悪いけど今日は……」
「そうか、それなら紅葉も一緒だね」
「は?」
「ふぇ?」
一瞬二人は龍一の言っている意味が分からず、ほぼ同時のタイミングで素っ頓狂な声をあげる。
「丁度良かった。実は僕もミルキー通りにパトロールしに行こうと思ってたところだから……」
「「っはぁぁぁぁぁ?」」
今度はハモりながら声をあげる。もちろんクラス中の視線が一気に零二らに向けられる。
「ちょっと、なんで私まで行かなくちゃならないのよ!」
「え? だって、紅葉もミルキー通りに行くんだろ? 零二と一緒に……」
「っくぅぅぅーーーー」
紅葉はつい先ほどまで口に出した己の言葉を恨む。
「おい、里村! お前、何てことをしてくれたんだよ! こうなりゃ断る理由が見つからねぇじゃねぇか!」
「知らないわよ! だいたい、れーじが私に話を振ったのが悪いんじゃない!」
と、二人、龍一から背を向けてコソコソと言い合いを始める。
「二人ともどうしたんだい?」
龍一は明らかにおかしい二人の様子に、腕を組みながら訊ねる。
「いやいやいやいや、なんでもない!」
「そうそう、まさか、りゅーいちもミルキー通りに行くだなんて知らなかったから驚いただけよ」
作り笑いを浮かべながら話す零二と紅葉だったが、その二人の行動に龍一は更に疑問を抱く。
「まさか、零二……今の話でっち上げじゃないよね?」
「ぐぁっ!」
予想外の不意打ちに胸の奥がえぐられるような錯覚に陥る。これが図星の痛みなのだと零二は理解した。
「どうなんだい? 零二!」
「……すまん」
「ごめんなさい……」
今回は(紅葉のせいにより)龍一の方に軍配が上がり、零二は否応なく龍一とともに(紅葉も強制的に)ミルキー通りを探索することになった。
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ミルキー通りにて、屈強な二人の青年と小柄な少女が肩を並べて歩いていた。
制服姿だったからこそ、辛うじて友達の帰り道のように見えたが、私服姿ではおそらく、ご令嬢を守る二人のボディガードのように見えなくともない。
「ったく、貴重な一日が……」
「それはこっちの台詞よ!」
零二が肩を落とし、ため息をつくと紅葉も続いてため息をつく。
「全く、奴らがいつ襲いかかって来るか分からない状況なのに、よくそんなにのんびりしていられるね」
と、また戦争が始まりそうだと言うのに、相変わらずマイペースな二人に龍一もため息を漏らす。
「……あいつらは一週間、襲って来ないわよ」
「え?」
突然そう言い出す紅葉に龍一は思わず声を上げる。
「なんで、そう言い切れるんだ?」
「黒羽 紗雪から聞いたの」
「っ!」
零二は疑問を紅葉にぶつけ、紅葉が妹の名前を出した途端に、口ごもる。まだ、零二の中では紗雪に対する迷いがあるようだ。
「それは……本当かい?」
零二の続きの質問を代わりに龍一が問い、コクリと頷く紅葉。もし、紅葉……いや、紗雪の言うことが本当ならば、奴らは一週間手だしをして来ないと言うことになる。
だが……何のために?
「理由は置いといて、あのクソ野郎が一週間の間襲って来ないのは間違いないよな?」
またもやコクリと頷く紅葉。なんだか今日はやけに大人しい。
「それじゃ、そろそろパトロールに移ろうか?」
「ああ、そうだな……」
最初は嫌がっていた零二であったが、やはりこの島に関わる事態とあらば、己の時間を費やすことも辞さない。
「三つに別れよう……各自、何があったら連絡を取り合おう」
「ああ」
「………………」
紅葉も首を縦に降り、龍一の案に賛同する。
こうして、零二らは灼の手かがりを探すべく、三つに別れ、ミルキー通りを探索し出す。