fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者)   作:鴉鍵

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俊介の苦悩

 放課後……桜井 俊介は恋人である梶浦 海美と共に帰り道を歩いていた。

 

 家の方向は違うはずなのだが、俊介が「神社まで送る」と言って、一緒に同じ方向へ足を進めている。

 

「なぁ……海美」

 

「え? なに?」

 

「どうして、もっと早く言ってくれなかったんだ?」

 

「なにを?」

 

「その……『召喚せし者(マホウツカイ)』の事をさ」

 

「………………」

 

 『召喚せし者』の事を問いた瞬間、顔色が暗くなるのがはっきりと分かる。それでも俊介は知りたかったのだ。

 

「やっぱり……俺って、頼りない?」

 

「そんな事ないよ!」

 

「それなら……いいけど」

 

 俊介は海美が『召喚せし者』だと言う事実より、恋人である自分に何も相談してくれなかったと言うことの方がよりショックだった。

 

「だけど……大丈夫だよ海美。今度は……今度こそは俺が、俺が護ってみせるから!」

 

「俊介……」

 

 そして二人はごく自然に手を繋ぎ、互いに身体を寄せ合う。肩がぶつかるぐらい近くにいる二人は周りの注目を集めている。

 

「今夜はさ……お父さんもお母さんもいないの」

 

「え?」

 

「だ、だからさ、今日は二人でその……ずっと、側にいて欲しいって言うか……」

 

「ああ、分かったよ海美」

 

「ん、ありがと」

 

 恋人らしき会話を交わしつつも俊介はどこか別の感情を抱いていた。

 

 どこか憎しみに近いソレを必死に心の奥底に閉ざし、今はただ目の前にいる恋人との時間を楽しむ。

 

「もし、その灼? とか言う奴が襲いかかって来たら、私が護ってあげるからね」

 

「そんなのいいよ、自分の身は自分で守るからさ」

 

「何言っちゃってんの? 『召喚せし者』じゃないくせに」

 

「………………」

 

 俊介はそれ以上何も言えなかった。確かに敵が人知を越えた力を持つ者なら、ただの一般人である俊介がどう足掻こうとも勝てない。出来ることと言えば海美を敵の攻撃から庇ってやるだけだ。

 

 だけど、それすらも海美にとっては邪魔になるだけだろう。

 

 『召喚せし者』である海美には庇ってもらう必要なんてない。

 

 なら……俺の存在価値はいったいなんなんだ? 男なのに、ただ海美に守られる事だけしか出来ないのか?

 

 そう俊介が悩んでいると、先ほど感じた憎しみに似た強い感情が心の壁を打ち破り露わになる。

 

 それは劣等感……

 

 それは恋人より劣っているという事からくる感情。

 

 俊介は恋人である海美よりも劣り、更にかつて海美が恋い焦がれていた龍一にも劣る。

 

 そんな弱々しい俊介に失望し、また海美が龍一へ思いを寄せるようになったら?

 

 そんな考えたくもない可能性を頭から振り払おうとするが、既に根を張り、なかなか振りほどけない。

 

「くっ……」

 

「し、俊介?」

 

「え? ああ、なんだ?」

 

「大丈夫? なんだか、怖い顔になってたけど」

 

「え、そうか?」

 

 いつの間にか深く考え込み、怖い顔をしていたらしく、海美を怖がらせてしまった。

 

「あー、もし海美と結婚したら尻にしかれそうだなって思ってただけさ」

 

「はぁ? 喧嘩売ってんの?」

 

「いやいや、冗談だって! そんな怒んなよ」

 

「うっさい、馬鹿!」

 

 強引に手を振り払われ、一人先に先へ進む海美。

 

「ちょっ、待ってくれよ海美」

 

「知らない!」

 

「ごめん! ごめんって!」

 

 早足で歩く海美になんとか追いつきながら、謝罪する俊介だが、海美は聞く耳持たずと言った感じだった。

 

「あーあ、これならまだ皇樹先輩の方が良かったかもー」

 

「………………」

 

 海美がそう言い放った後、俊介の追いかけてくる足音が止まり、後ろを見る。

 

 そこには深く俯き、拳を握りしめる俊介の姿があった。

 

「あ……その、ごめん! ほんの仕返しって言うか、冗談のつもりで言ったんだよ!」

 

 俊介の様子に自分の言った事がどれだけ俊介を傷つけたか理解し、慌てて側に駆け寄り弁解するが、時は既に遅し。

 

「そうかよ……やっぱり、俺じゃ頼りにならないだろ?」

 

「違うの! さっきのは……」

 

「違くねぇだろ! 俺なんかじゃなく、あの憧れの皇樹先輩の方がいいんだろ! だから、海美は俺に『召喚せし者』の事黙ってたんだろ?」

 

 最早、俊介は自分を見失っており、ずっと胸に抱えていた深く深く、深淵へと届く劣等感を海美にぶつけていた。

 

「どうせ俺には、何にも無い! 海美を護ってやれる程強くも無い! 何にも……何にも無いんだよ、俺にはっ!」

 

「そんな……こと……無いよ」

 

 やめろ……

 

「うるさい! 海美にとって、俺は……ただの滑り止めなんだろ? 皇樹先輩が手に入らなかったから、仕方なく俺を選んだんだろ?」

 

 やめるんだ……もう、これ以上言うな……

 

「海美は俺を……愛してなんかいねぇんだろ! だったら、皇樹先輩の方に行っちゃえよ!」

 

 その時、俊介の頬に衝撃が走り、パンッという音が辺りに響き、静かになる。

 

「あっ……悪い……言い過ぎた」

 

 ジンジンと痛む頬から来る痛みに、ようやく、自分を取り戻し、今まで言ったことを振り返り、情けなく思う。

 

「っ!」

 

 俯いていた顔をあげた瞬間、俊介の目に飛び込んで来たのは、大粒の涙をぽろぽろと流している海美だった。

 

「あ……海美……」

 

「別に、滑り止めなんかじゃないもん……皇樹先輩の方が良いって思ってなんか……ないもん!」

 

 そう言って、海美は一目散に俊介から逃げ出した。

 

「う、う……」

 

 だが、俊介は恋人の名前を呼び止める事が出来なかった。何度叫ぼうとしても喉を通るたびに詰まってうまく声に出せない。

 

 なんて……最低なんだ俺は……海美には……海美には関係無いのに、俺の弱さのせいで海美を傷つけてしまった……

 

 そもそも、なんで、こうなった?

 

 俺が弱いから? 海美が強いから? いや、違う……

 

 悪いのは……悪いのは全て『召喚せし者』だ。

 

 『召喚せし者』という存在が、ようやく一つになれたはずの俺たちを引き裂いた。いや、そもそもあの先輩達が俺たちに海美が『召喚せし者』だという事をバラさなければ、俺たちは今まで通りの関係を築き続ける事が出来たはず。

 

 ソウ、ワルイノハスベテ『召喚せし者』デアルセンパイタチ……

 

 その答えにたどり着いてしまった瞬間、俊介の中で何かが目覚めたような感じがした。

 

「はは、まさか……そういうことか……」

 

 皮肉にも、その力は憎しむ対象と同じ力。だが、これで……証明出来る。

 

「もし、もしも、俺が……皇樹先輩より強いって証明出来たら……海美は、戻ってくるよな?」

 

 場には俊介しかいないはずだというのに、まるで、己の力に問いかけるように話す。

 

「海美……ごめんな……でも、待っててくれ、全て終わらせるから……海美が安心して俺に頼ってくれるよう強い男になるから」

 

俊介は最後の希望を握りしめ、沈みゆく太陽を眺めていた。




今回でもう既に38話……

自分がここまで書き続けれたのも読んでくださる読者方のおかげです。m(_ _)m

さて、そろそろ物語もあと半分!

俊介の覚醒に、戦争までの一週間の猶予。そして裏切りの龍一……

そろそろ舞台は整い、迫り来る第二の戦争。

さて、これからの一週間は基本的に平和な日々が続きますが、もちろん争いも起こります。そして、一週間後には灼との戦いが待ち受けていると言うことです!

さらにさらに!(ネタバレになる可能性があるので避けたい方はこれから下に書かれてあるこれからの予定を読まないことをオススメします)

では、また次回で会いましょうm(_ _)m















第4話辺りから出番の無かった真田や陽菜子もこの一週間で出番がグッと増えます!

暇を持て余した褐色の『召喚せし者(マホウツカイ)』アストレもまた非道な作戦で仲間同士を争わせようとします。

今まで死人が出なかったのですが、意を決して、そろそろ誰かを昇天させようと思います。その中に好きなキャラがいたら申し訳ないです。

毎度お読みいただきありがとうございますm(_ _)m
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