fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者)   作:鴉鍵

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なぎさ・紅葉・綾音の日常

「あっちゃー、あの様子じゃ失敗したっぽいね」

 

 と、頬をリスのように膨らませている親友なぎさを遠巻きに眺める赤髪の少女里村 紅葉

 

「あら、残念ね」

 

 里村 紅葉の傍らには優雅に紅茶を洋式のティーカップですする星見学園の生徒会長である雨宮 綾音の姿がそこにあった。

 

 現在、彼女達は星見公園へとピクニックに出かけている。あの忌々しい生き残りを賭けた戦いから解放され、三人は守りたかった日常を過ごしている。

 

「むー、龍一の馬鹿」

 

 相変わらずふくれっ面のなぎさは公園に敷いたレジャーシートに座り込み、置いてあったサンドイッチを口に放り込んだ。それも物凄いスピードで……

 

「あはは、りゅーいちの鈍感は今に始まった事じゃないでしょ?」

 

「それは、そうなんだけど……」

 

「なぎさ」

 

「会長?」

 

 と、会長はティーカップを置き、なぎさの名前を呼ぶ。

 

「今日はせっかくの女子会でしょ? 鈍感な彼は置いといて、楽しみましょ?」

 

「そーそー! かいちょー、いい事言うじゃん! ばかいちょーのくせに」

 

 紅葉も雨宮の言葉に便乗する。今日は本当に久々の三人でのお出かけ……誰にも邪魔されずにこの時間を過ごしたいと言うものだ。

 

「そうだよね……うん」

 

 なぎさも納得したのか、そう頷いてからまたいつもの表情に戻り、サンドイッチを頬張る。

 

「ほんと、なぎさはよく食べるわね、作った甲斐があったと言うものだわ」

 

 雨宮はなぎさの食べっぷりを眺め、どこか心地よさそうに微笑む。

 

「むー、ばかいちょーのくせに美味しいじゃん」

 

 気づけば紅葉もまた雨宮が作ったサンドイッチを口に運んでいた。

 

「あら、それは褒め言葉かしら?」

 

「ふぁーふぇ(さーね)?」

 

「こら、紅葉、食べながら喋るのは良くないよ」

 

「うるふぁい、このブラックホールなぎさ」

 

「ブ、ブラックホール? わ、私そこまで大食いじゃないもん」

 

 しかし、バスケット一箱分のサンドイッチを丸々腹に収めたなぎさはどこからどう見ても大食いだ。

 

「紅葉は別に大食いだなんて言ってないわよ? そう受けとったんなら大食いだって自覚はあるようね」

 

「か、会長!」

 

 どうやら図星だったらしく、今にも涙を流しそうな顔になり、慌てて手を振る。

 

「わ、私は他の人より筋肉が多いから、その分消費も激しいから! し、仕方なくだよ? ほんとに仕方なくだよ?」

 

 それでも、必死に否定するなぎさがおかしくて紅葉と雨宮は笑い出す。それにつられて、なぎさもまた表情を緩やかにし、微笑む。

 

「なんかさ、こーいうのいいよね」

 

「紅葉?」

 

 紅葉が空を仰ぎ、どこか遠い目でそう呟く。そんないつもとは違う様子の紅葉を心配するかのように声をかけるなぎさ。

 

「私ね、あの戦いで改めて分かったの、なぎさとばかいちょーがどれだけ大切なのか」

 

「紅葉……」

 

「ふふ、嬉しいこと言ってくれるじゃない」

 

 紅葉は今の今まで自由に生きてきた……しかし、それは罪からであり、縛られた自由という矛盾している人生を過ごしていた。しかし、そんな中でも紅葉にとってなぎさと雨宮の存在はかけがえのないもの。二人の前だと紅葉は取り繕うことなく縛られた自由なんかではなく、本当の自由を感じられるのだ。それをあの戦いで雨宮を失ったとき改めて思い知らされた。

 

「だから……だから、二人とも私の前から勝手に消えないでよね」

 

 いつも自由で強く生きて来た紅葉が見せるやや弱々しい顔。それは紅葉の放った言葉がどれだけ本気なのか二人に確証させるには充分だった。

 

「紅葉……ほんとに貴女は馬鹿ね」

 

「な、なによ! せっかく人が真面目に話してるってゆーのに」

 

 茶化されたと思ったのか、紅葉は不機嫌そうに唸る。しかし、そんな彼女を慰めるかのように雨宮はそっと優しく紅葉を抱きしめる。

 

「ばかいちょー?」

 

「もう、私達は離れないに決まってるでしょう? これからまだまだ時間はあるんだから、例え私が卒業したとしても、会おうと思えばいつでも会えるし、また戦いが起きたとしても私達三人なら乗り越えられるはずよ」

 

 優しく抱きしめながら雨宮はそう紅葉の耳元で呟いた。

 

「そ、そうだよ! 紅葉! 私達……ずっと一緒だから」

 

 なぎさもまた空いてる紅葉の背中を抱きしめる。

 

「えへへ、そっか、そうだよね、私、何言ってんだろ」

 

 もう、紅葉の顔に弱々しさは失せ、輝かしい笑顔が戻っていた。

 

「あら、紅葉の匂いって意外といい匂いね」

 

「意外は余計だっての、ばかいちょー」

 

「ほんとだー、なんか秋の匂いがする」

 

 グリグリと紅葉の華奢な背中に顔を埋めるなぎさ。それよりも顔よりしたにある紅葉にとっては忌々しい膨らみが二つ背中に当たりなんとも言えない感情に陥っていた。

 

「あー、秋の匂い……えへへ、さつまいも」

 

 紅葉は背中に何か生ぬるいものを感じる。おそるおそるそれに触れてみるとびしょひしょと、何かの液体だった。

 

「って、なによだれ垂らしてんのよなぎさ!」

 

「だって、紅葉、さつまいもの匂いがするから」

 

「匂い変わってるじゃんか! 二人とも離れなさいよ」

 

「それは出来ないわね」

 

「なんでよ、ばかいちょー」

 

「だって、こうしてみると私と紅葉の違いがはっきりわかるんだもの」

 

 と、雨宮は自分の胸と紅葉の胸を交互に視線を向ける。現在紅葉と雨宮は密着状態にあり、いやというほど比較されていた。もちろん雨宮の圧勝ではあるが……

 

「こんの……離れろバカァァァ」

 

 昼の穏やかな空気が流れる星見公園にて、里村 紅葉の精神的な悲痛の声が響き渡ったのであった。

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