fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者) 作:鴉鍵
星見学園、昼休み……
「珍しいわね、龍一くんがそう言うだなんて、明日は大嵐かしら?」
「でしょー、ばかいちょーもそう思うよね!」
零二らはいつものように生徒会室で昼食を食べながら談笑していた。
「えへへ……龍一とデート……」
「なぎさも、あんな感じだし」
なぎさは幸せそうな顔をして、放課後のことを考えていた。その為か、箸でご飯をつまんで口に入れようとしてはポロリと零れ落ち、またそれを取り、また零れ落ち……の永久ループに陥っている。
「ふぅ、でもなぎさは……龍一の事、知らないんでしょ?」
「ああ、そうだ」
そう、なぎさは龍一が零二らではなく灼と共に行く道を選び、敵対することを決めた事をまだ知らない。
「ま、知らない方が幸せ……ってね」
「そうね、今は話さない方がいいわね」
紅葉の意見に雨宮は同意する。
「そう言えば、陽奈子ちゃん退院したそうよ」
「え、ほんと?」
「ええ、もう外を出歩いても体に支障が無いみたいよ」
「そっか、龍一が聞いたら喜ぶだろうな……」
「そうね、陽奈子ちゃんに生命力を分け与え続けたのは龍一くんだものね」
なんだかんだ言っても、やはり皆龍一が裏切った事がショックである。
すると、誰かが生徒会室のドアをノックして来た。
「どうぞ」
「失礼します」
そう言って、現れたのは……美樹だった。
「っ! 美樹?」
「あ、おっぱい魔女!」
「龍一とデート……」
「騒がしくてごめんなさいね」
と、予想だにしなかった来客にそれぞれの反応を見せる。
「あ、零二……私……ッ!」
「美樹? どうしたんだ?」
零二と目が合った瞬間、まるで何かに怯えるような表情になり、零二の胸に飛び込む。
「ち、ちょっと! おっぱい魔女!」
「零二くんから離れなさい!」
と、紅葉と雨宮はお怒りのようだが、それよりも零二は弱々しくなっている美樹の事が心配だった。
「どうしたんだ? 美樹?」
「私……最近、誰かにつけられてるの」
「え?」
「夜、バイト帰りの時、知らない人が……私の後をつけて来るの」
「なっ!」
つまり、それは美樹が、ストーカーにあっていると言うことになる。
「助けて……零二!」
「ああ、分かった……分かったから離れてくれ」
くっつき、圧迫してくる胸に零二は少し戸惑いを感じていた。
「とにかく、事情を話してくれないか?」
「うん……」
美樹は零二から離れ、深く深呼吸し、起きたことを話し始める。
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同時刻、星見学園の中等部、そこには有塚 陣の姿があった。
「………………」
陣は心底つまらなさそうに窓際から覗かれる光景を眺めている。
「陣、一緒に食べようぜ」
「ま、いいケド」
腐れ縁とも言えるべき小等部からの友達に誘われ、共に昼食を食べる。
平和な日常……何事も起こらない毎日……実に退屈だ。
陣はラグナロクの事をふと思い出していた。あれほど、自分が生きているという実感があったのはあの時だけだ。
人の叡智を超えた『召喚せし者(マホウツカイ)』による殺し合い……必死に生きようともがく奴らを見ていると、自分も彼らと同じだと認識でき、心が安らぐ……
「陣、知ってるか? 明日編入生が来るんだって」
「ふーん」
「しかもよ、女の子なんだって! へへ、どんな娘なんだろうな? よだれが出ちまうぜ」
「汚いな」
陣にとってはどうでもいい事だった。このクラスの人数が二十九人から三十人になるだけだから……
「あーあ、なんか面白い事起きねーかなぁ」
「陣さぁ、最近暇そうにしてるよな」
「まーね、一時期ハマってたゲームがあったんだけど、負けたんだよね」
「え?」
「命の取り合いさ」
「は、はぁ?」
「バーカ、ゲームの話だよ」
意味がわからず頭にクエスチョンマークを浮かべる陣のクラスメートに陣は苦笑する。
もちろん、それはラグナロクという本当にあったゲームなのだが、一般人にその事を説明しても分からないだろう。
「あーあ、また何か起こらないかなぁ」
と、また窓から外の景色を眺め出すと
「ん?」
同じ制服を着た中等部らしき女の子が高等部の男子二人に強引に学校の裏へ連れて行かれている光景を目にする。
「はぁ……ちょっと、僕トイレに行ってくる」
そう言い、やや早歩きで目撃した場所へ向かう。
「いいじゃんか……な?」
「えっと……あの……」
学校の裏側、人目につかない場所で、いわゆる路地裏にて、二人の高等部の男子が一人の少女を囲んでいた。
「お金さえ、渡してくれればそれで終わりだって! 頼むよ、お兄さんを助けてくれよ」
「でも……」
「あぁ! クソ! もういい! ひん剥こうぜ、そしたら財布も出てくるだろ」
「おい、やばいんじゃないのか?」
「大丈夫だろ、一応、服脱がせて写メ撮ったら誰にも言えねーって」
「はは、そうだな……財布探してる時うっかり触っちゃっても仕方ないよな?」
「ああ……」
「ひぃっ……」
下劣な思考の二人は手をわきわきさせながら少女に近づいて行く。
「何してんの?」
「っ!」
ようやく、そこにたどり着いた陣は二人を蔑むような目つきで睨んでいた。
「中等部のガキかよ……ビビって損したぜ」
まだ発達途上にある小さな陣の身体を見て、中等部だと判断し、二人はホッと息をつく。
「悪いけど、見られたからには……」
「はっ、まるで悪役のようなセリフだね……反吐が出るよ」
「なに?」
「悪いけど、僕は零二ほど優しくない……『魔術兵装(ゲートオープン)』」
陣はそう言い、空中に携帯電話型の『戦略破壊魔術兵器(マホウ)』を発動させる。
「な、なんだよ、そりゃ」
「ふざけてんのか? 怖くねぇんだよそんなもん!」
と、二人の男子が陣に襲いかかろうとする。しかし、それより早く陣の言葉が宙を走る。
「『お前たち二人は変態だ。今すぐ服を脱ぎ捨て、学園中を駆け回りたくなる変態だ』」
「え?」
「な、なんだよこれ」
と、勝手に手が動き、自分の服を脱ぎ出す男子二人。そして、パンツ一丁になった後、思いっきり学校内に向かって走りだす。
「いや、助けてぇぇぇぇ」
「誰か……止めてぇぇぇぇ」
学校内に入った後、女性の悲鳴とともに、あの男子二人の悲鳴が辺りに響く。
「ふん、いい気味だ」
「あの……ありがとうございます」
「別に……いいさ、あんな弱者ども蹴散らして当然だからね」
妙な達成感を胸に残し、陣は自分の教室に戻る。
本日より、休載させていただきます。
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