fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者) 作:鴉鍵
なぎさの言い分は正しい。そんな事は龍一にも分かっている。
だけど、それでも、今あるこの世界で今持つ自分たちの力では、これが精一杯の正しい道だと龍一は思う。
「なぎさ、確かにきみの言うとおり、灼さんの理想は矛盾している。けど、本当の平和の為なら、多少の犠牲はやむを得ないんじゃないかな?」
「っ!」
瞬間、なぎさの顔が急激に強張りだす。
「なぎさ?」
「どうしてそんなこと言うの?」
なぎさは俯き、手を強く握りしめている。
「私の知ってる龍一なら、誰かを犠牲にするようなこと言わない」
「なぎさ……でも、僕は知ってしまったんだ。理想ばかり掲げていても何も変わらない。だから、多少強引でもやらなくちゃならないんだよ」
龍一は己のその意思を曲げるつもりはない。ようやく見出せた自分の迷いに対する答え。それが周りから見て悪であろうと、龍一はただひたすら信じ、突き進む。
「本当に龍一は芳乃くんや紅葉を倒すの?」
「ああ」
「私も?」
「それは……」
そう、『召喚せし者』を一人残らず倒すと言うことは最愛の彼女であるなぎさも倒すと言うことにもなる。
「なぎさは、なぎさだけは僕が守る!」
言っていることが支離滅裂の状態になっている龍一。
もちろん、悪友でもあり親友でもある零二やなぎさの親友である紅葉や雨宮達と戦うことは気が引けるが、それでも己の理想に立ちはだかるのなら、倒す覚悟は出来ている。
だが、なぎさに対してはどうしても割り切れない。かつてはただの幼馴染で守ってあげたい対象に過ぎなかったが、ラグナロクを経て二人の関係は急接近し、恋人のような関係になった。
不器用なりに二人は互いに近づき、やがて身体を重ね、二人の間に絆を超える繋がりが生まれた。
「龍一?」
考え込んでいた龍一を心配するかのように顔を覗き込むなぎさ。
「なぎさ、僕はきみを愛している。この世の誰よりもきみを……愛している」
「り、龍一?」
龍一の熱烈な告白になぎさは頬を染めながらもその目はしっかりと龍一を見据えていた。
「だから、矛盾しているのは分かっているけども、きみだけは何があっても死なせない。それになぎさはその力を正しいことに使ってくれるって信じてるから」
即ちそれは龍一は零二や紅葉などの『召喚せし者』を倒すけど、なぎさだけは例外と言うことである。
「だから、なぎさ……僕と一緒に来てくれないか?」
「龍一……」
龍一の真剣な願いに答えようと、なぎさはその手を取ろうとする。例えそれが零二達の敵に回ることになろうとも……
だが、不意になぎさの脳裏に思い浮かんだのは親友の紅葉。それがなぎさを思い留まらせる抑止力となった。
「ダメ!」
「なぎさ!」
あと数ミリのところで手が届くはずだったと言うのに、なぎさはバッと手を庇うように自分の胸に押し付ける。
「どうして、どうしてなんだ?」
「ごめんなさい、龍一……でも私は紅葉を裏切れないの」
脳裏に浮かんだ紅葉は現在のような明るい表情ではなく、雨の中一人桜の木で泣き崩れる紅葉の姿。
あの日から、なぎさはどうしても紅葉を守りたくなった。いや、正確には一人にはさせたくなかった。
「だから、私は紅葉を一人にさせるわけにはいかないの」
「っ、きみは僕よりも紅葉の方が大切だと言うのか!」
龍一にとって、それはとてつもないショックだった。
「違うの、私にとって龍一は……龍一は……」
大切な人だと言いたかったが、言えなかった。なぜならなぎさは今の龍一など全く好きではない。
なぎさは龍一の優しすぎる性格に惚れたのだ。だから、己の理想の為なら他人を平気で蹴散らすような人を誰が好きになれろうか?
「だから、ごめんなさい……」
「っ、なぎさ!」
なぎさはただそれだけ言うと、龍一から背を向け、逃げ出した。
「そんな……なぎさ」
龍一は思わず膝を折る。
「それでも、僕はなぎさを……」
だが、それでもなぎさを守る。見てくれなくても、刃を交えようとも、龍一はなんとしてもなぎさを守ろうと決意するのだった。