fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者) 作:鴉鍵
その禍々しい魔力から現れたのは……
「爆弾……?」
アストレの掌に野球ボール一個分程度の大きさの手榴弾が握られていた。
ただ、手榴弾と呼ぶにはその形はあまりにも歪で強いて言うなら手榴弾よりガラス製のプリズム型から宝石のような印象を受ける。
だが、それからほんのりと嗅ぐよう火薬の匂いと赤と黒が渦巻いているような模様が不気味さと爆弾らしさを表している。
「こいつが俺の『戦略破壊魔術兵器(マホウ)』……ジェノサイドストームだぜぇ」
と、アストレは手にもっていたプリズム型の爆弾を零二目掛けて投げ出す。
「っ!」
咄嗟に零二は美樹を抱えて後方へ下がる。そして、危機一髪のところでそれは先ほどまで零二がいた場所を爆破する。
「あららぁ、外れちゃーった」
「まさか、これで終わりなんてわけじゃねーよな?」
「とーぜん」
アストレが指を鳴らすと虚空から無数の先ほどと全く同じ形状の爆弾が現れる。
「ジェノサイドストームは無限だぜぇ?」
両手にポトンと一つずつ落ちた爆弾を零二目掛けて再度投げ出す。
「そう簡単に食らうかよ!」
と、先ほどの繰り返しのように零二は美樹を抱えて後方へ下がろうとするが……
「いーのぉ? そのまま下がったら、ドカンだよ?」
「なっ!」
いつの間にか、零二の後方にはプリズム型の爆弾が数多く宙に漂っており、触れれば恐らく爆発するであろうその爆撃の壁は既に間近まで迫っていた。
「仕方ないわね!」
瞬間、七色の光線が光り、零二の背後に潜んでいた爆撃の壁を一つ残らず殲滅する。
「私を忘れてんじゃないわよ!」
「さんきゅー、里村、助かったぜ」
紅葉のおかげで何とか無事に逃げ切れた零二は抱えていた美樹をちらりと見る。
「ふきゅぅーーーー」
どうやら、気を失っているようだ。それも仕方ないだろう。ストーカーで切羽詰まった心情に突然爆撃音が鳴り響いたら誰でも気を失うだろう。
「すまねぇ、里村、少し時間を稼いでくれ!」
「さっさとしなさいよ!」
と、零二は美樹を抱え、その場から去って行った。
「さて、これで心置き無くあんたをぶっ殺せるわ」
「くくっ、その顔……いいねぇ」
互いに悪魔と呼ぶにふさわしい笑みを浮かばせ、それぞれの『戦略破壊魔術兵器』を稼動させる。
「『七人の断罪(グリモワール)』!」
紅葉の声に呼応し、七つの砲台は宙を翔け、対象に光の光線を浴びさせる。
「ジェノサイドストーム!」
対するアストレは迫り来る光線の射線上に爆弾を召喚し、直撃をまぬがれる。それと同時に爆煙が巻き起こり、煙幕の役割も果たす。
「俺を愉しませてくれよ、里ちん!」
爆煙の中から不愉快な笑い声と共に手榴弾が次々と投げられる。
「そんなもの……効くか!」
当たり前のごとくそれを撃ち落とす紅葉。
「もらったぁぁぁぁぁ!」
爆煙の中からほんのり見えた人影に橙色の光線と黄色の光線を放つ。
「っがぁぁぁぁぁぁぁっ」
爆煙の中からアストレの叫び声が響き渡る。その声を聞いた瞬間、紅葉は勝利を確信したと同時に底知れぬ不安も襲いかかってきた。
「呆気……なさすぎる」
あり得ないほどスムーズに上手く行った。以前の紅葉ならぬか喜びしていたところだが、ラグナロクにて強敵、特に紗雪との戦闘を経て、相手の死体を確認するまで警戒を解かないようになっていた。
アストレの扱う『戦略破壊魔術兵器』である"ジェノサイドストーム"の能力もまだ明らかになっていない。
「すげぇなぁ……この感じ、くくっ、はははっ!」
「なっ……なんなのよ」
爆煙がなくなり、露わになったアストレは右肩と左の太ももを光線に貫かれていた。
だが、それ以上に、橙色の『invidia(レヴィアタン)』と黄色の『Ira(サタン)』に当たり、固有感覚と視覚を失っているはずなのに、アストレは何食わぬ顔で佇んでいた。いや、むしろこの状況を楽しんでいるあのように笑だ出す
その不気味な笑みに、紅葉は先ほどの底知れない不安が正しかったと判断する。
「あんた……いったい、何なの?」
「何って……アストレだよ」
「そんな事を聞いてるんじゃ!」
「.そう? まぁいいや! なーーに、ただの『召喚せし者』さ……」
と、プリズム型の手榴弾を手の中でコロコロさせながら、紅葉を獲物を舐め回すような視線で睨みつける。