fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者)   作:鴉鍵

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アストレ対紅葉

「さぁーてと、第二ラウンドと行きますかねぇ?」

 

 まるで命懸けのこの戦争すらアストレにとってはただの戯れのように感じさせる緊迫感の無さ。

 

「やってやろうじゃないの!」

 

 紅葉の掛け声と同時に六つの砲台が煌き、一斉射撃を放つ。仮にそこに爆撃の壁があっても一斉射撃の威力なら爆撃の壁を乗り越えるはずだ。

 

「ははっ」

 

 それでも、アストレはどこか余裕そうな表情のまま先ほどと同じ爆撃の壁を作り、身を守る。

 

「もらったぁ!」

 

「ぐっ!」

 

 固有感覚と視覚を失っているにも関わらず、紅葉の六つの光線の射線上を防ぐように発動した爆撃の壁。しかし、紅葉にとってそれはただのフェイクに過ぎない。

 

 本命は……アストレの背後に忍び寄せていた『acedia(ベルフェゴール)』であり、その緑色の光線はアストレの右脇腹を貫く。

 

「あれ……何も……聞こえない」

 

「かかったわね、『acedia』は聴覚を奪うのよ、外界の情報を手に入れるために必要な感覚である固有感覚、聴覚、視覚を奪われたあんたにはもう為す術もないわ、大人しくやられなさい……って、もう聞こえないよね」

 

「ぐあっ、がっ! ぐっ!」

 

 固有感覚、聴覚、視覚を奪われたアストレはもう紅葉の放つ七色の光線を完全に避け切ることが出来ず、次から次へと光線を身に浴び、醜いダンスを踊る。

 

「あっははははは! これで終わりだ! 消えてなくなれぇーー!」

 

 紅葉は砲台を自分のそばに戻すと、両手をアストレに向け、光の収束を始める。

 

 そして、七つの砲台が紅葉の背中で煌き、まるで虹色の翼が生えているかのように見える。

 

「これで……終わりだぁぁぁぁ」

 

 紅葉の掌に翼と同じ虹色の光が渦巻き、標的をアストレに向ける。

 

「『断裁者の…(ジャッジ…)』」

 

 しかし、紅葉がその罪人を裁く極光を放つ前に、あまり聞くことのない重い破裂音が響き渡る。

 

「いっ!」

 

 悲鳴をあげたのは紅葉であった。脇腹に何らかの激しい痛みを感じ、思わず膝をついてしまい、紅葉の必殺技である極光は宙へと走って消えた。

 

「っはは……」

 

 痛むわきばらを抑えつつ、アストレの方へ目をやると、そこには銃を握りしめていたアストレの姿があった。

 

「銃? なんでそんなものが」

 

 その銃は警察官が持つ拳銃に似ており、恐らく『戦略破壊魔術兵器(マホウ)』などではないだろう。

 

 痛みはあれども、脇腹の傷は既に回復しており、一瞬の隙を作るために使われたと思われる。

 

「この……」

 

 だが、それよりも里村にはアストレの反撃に驚く要素がまだ残っていた。

 

 どうやって……当てた?

 

 そう、アストレは今固有感覚、視覚、聴覚を奪われた状態にある。また、嗅覚、痛覚を除く状態異常も与えており、本来なら自分がどこにいるのか分からない状態に陥っているはずなのに、アストレはものの見事に紅葉に銃弾を当てたのだ。

 

「いったい、どういうこと?」

 

 と、紅葉が不思議がっていると、アストレは紅葉の疑問を"分かっているかの"ように嘲笑う。

 

「里ちん、俺をここまで追い詰めた褒美だ。ネタバラシしてやるよ」

 

「え?」

 

「俺にとっちゃ相手の場所を探るのに目も耳もひつよーない、ただ一つ、"匂い"さえありゃーいーんだよ!」

 

「んなっ!」

 

 だが、これ以上の討論は必要ないと言わんばかりに、銃を紅葉に向けて放つ。

 

「っ!」

 

 迫り来る銃弾を防御用の砲台である青、藍、赤の三色の砲台で防ぐ。

 

「このっ!」

 

 反撃と言わんばかりに七色の光線を放ち、アストレを射抜こうとするが……

 

 アストレは予測していたかのように人体には避けきれないはずの光線を容易く躱してしまう。

 

「ど、どうして?」

 

 仮にアストレが"匂い"で敵の動きを察知することが出来たとしても『七つの大罪(グリモワール)』の動きや光線まで嗅ぎ分けるはずがない。

 

 ましてや光の速さの光線を避ける事など、常識ではあり得ないはずだ。

 

 

「ぶはっ、ざーんねん! 俺の鼻はあらゆる物の匂いを嗅ぎ分け、動作から生じる微かな匂いの変化で次どうくるか分かるんだよねぇ!」

 

 だが、常識が通じない者がそこにいた。『執念深き狩り(ベンテクディヴ・ハンツ)』……それはアストレの能力であり、持ち前の鼻の良さを魔力で補完したのが『執念深き狩り』である。それはありとあらゆるものの匂いを嗅ぎ分け、状況を察知するという予測に近い能力。

 

「だからぁ、里ちんの攻撃はぜぇーーんぶ!丸見えなんだよ……ははっ」

 

「っ、この……冗談じゃないわ!」

 

「いいねぇ、その顔だよ! さぁ、もっと俺を愉しませてくれ」

 

 先ほどの続きを開始するかのように銃を構え、紅葉へと放つ。だが、今度は弾丸に交じって、『戦略破壊魔術兵器』である爆弾のジェノサイドストームが紅葉目掛けて飛んでいる。

 

「しまっ!」

 

「………………」

 

 咄嗟に反応し、避けようと身体を無理やり慣性の法則に逆らってでも避けようとするが、やはり、近くまで接近を許してしまった爆弾の爆風からは逃れられなかった。

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!」

 

 爆風に耐えきれず、後方へ激しく飛ばされる紅葉。

 

「っ、やるわね…………え?」

 

 藪の壁に思いっきり突っ込み。背中に多少の擦り傷と破けた服が目立つようになる。

 

 それでもなんとか立ち上がり、アストレの方へ睨みつけようと視線を向けるが、目の前には信じられない光景が写っていた。

 

「なによ……これ」

 

 アストレの微かな自然動作、辺りを漂う虫、風にそよぐ花々、空の動き……あらゆる動きがまるで倍速のように早くなっていた。

 

「さて、これで仕上げは完了、後はおいしく、頂くだけ」

 

 アストレの口が異様なほどに釣り上がる。

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