fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者) 作:鴉鍵
「……おい」
「なんや?」
「なんだぁ?」
星見商店街を渋々歩く少年有塚 陣。かつてラグナロクのゲームマスターであった陣は戦後、芳乃 創世ことオーディンに弟子入りし、学校の帰りに修行に向かっていた。しかし、今日は休日……何もすることなく辺りを適当にぶらついていたら
「どうしてお前らがいるんだよ! 同盟は終わったはずだよ」
陣の背後には二人並んで陣の後を追いかける二人の男。霧崎 剣吾と轟木 鋼がいた。
「つれないこと言わんといでや、陣やん」
「俺たち、仲間だろぉぉぉぉ?」.
「……ったく」
能天気な二人に頭痛がする陣。しかし、そんな陣の心境など関係ないと言わんばかりに二人はさも当然かのように陣の発言を待っている。
「勝手にしろ!」
「ほな、勝手にさしてもらいますわ」
「おう!」
と、満足げに頷く霧崎と勢い良く返事する鋼。
「で、どこに行くんで?」
「行く当てなんか無い、だからこうしてぶらついてるわけだよ」
「はっ! 暇だな」
「君程では無いけどね」
「まぁまぁ、陣やん、鋼ん、暇ならちょーっとワイに付き合うてくれるか?」
「……ふん、いいだろう。王たる者臣下の頼みを無碍には出来ないからね」
「おう! いいぜぇ」
「おおきに」
そう言って、霧崎に連れて来られた先はひと気のない自然の庭だった。
「ほら、ばーちゃん、来てやったで」
いつものひょろっとした能天気な声で庭園の奥に呼びかけると、一人の老婆がにこやかに現れて、おかえりと言ってきた。
老婆は霧崎の後ろにいる二人を不思議そうに眺めていた。
「ばーちゃん、こいつらはワイのダチや、仕事手伝いに来たんやで、感謝しぃや」
「誰がダチだよ」
ふて腐れる陣をよそに、老婆は嬉しそうに鋼、陣の順番に握手をする。
「こいつら、畑仕事はしろーとやから、色々教えてやってや」
分かりましたと言わんばかりに頷き、二人を連れて行く老婆。鋼は意味もわからずついて行き、陣は心底嫌そうな顔をしてついて行った。
「鋼ん、そこに畝(うね)作っといで」
「うねぇ?」
「ま、土の山ってとこやな、とりあえず土の山作っといで」
「任せろぉぉぉぉ! でけぇ俺様に負けねぇぐれぇでけぇのを作ってやらぁぁぁぁぁ」
と、スコップを二つ両手で持ち、えっさほっさとみるみる土の山を作る鋼。
「陣やんは、葉の裏側確認しといで……」
「まったく、なんで王たる僕がこんな事を……」
ぶつくさ文句を言いながらもしっかりやってくれている陣。
「だいたい、僕は……っ、うわぁぁぁぁぁ」
悲鳴をあげる陣。
「なんやなんや、何があったんや陣やん」
駆けつけた霧崎が見た物とは……
「虫?」
「こんなでかい虫なんか見た事無いぞ! 新手の『戦略破壊魔術兵器(マホウ)』か!」
「なんや、ただの虫かいな」
霧崎はうねうねと葉の後ろを闊歩する虫の幼虫を素手で掴む。
「あれ? もしかすると、陣やん、虫怖いんか?」
「はっ、そんなわけ無いだろ? ただ、大きすぎてびっくりしただげだよ」
「そうなんか? なら、ほら」
「投げるなぁぁぁぁぁぁぁ」
霧崎は摘まんだ虫をまるでパスするかのように陣に向かって投げ出す。そして、空中を飛び、近づいてくる虫に子供らしい悲鳴をあげる陣。
「やっぱ、苦手やないか」
「覚えてろよ、このエセ関西弁が!」
「ぬおぉぉぉぉぉ! でかく掘り過ぎてしまったぜぇぇぇぇぇ」
そのすぐ近くには掘り過ぎて、巨体な鋼の身長を追い越す穴が出来上がった。鋼はその穴から抜け出せずにいた。
「ほんま、こいつらといると飽きへんわー」
そんな中、霧崎だけは周りの滑稽な状況にクックックと一人笑みを浮かべていた。
「霧崎ぃぃ!」
「ちょ、陣やん」
命からがら虫から逃げ延びた陣の隣には空中に浮いている携帯電話のようなもの。それは陣の『戦略破壊魔術兵器』であるギャラルホルンと呼ばれるもの。
その能力(ちから)は陣が発した言葉が現実のものになるという強力な能力。
「霧崎 剣吾……」
「ち、ちょい待ち! タンマや」
「『無数の虫に僕がいいと言うまで追いかけられ続けろ』」
次の瞬間、まるで狙ったかのように木々から蜂やら様々な虫が羽音を響かせ、霧崎目掛けて突進して行く。
「ちょ、堪忍してや、陣やぁぁん」
一目散に逃げ出す霧崎。
「逃がすか! やれ! 霧崎に虫の恐ろしさを思い知らせてやるんだ」
虫の大群は羽音を鳴り響かせ、霧崎を追い続けた。
「ぬぉぉぉぉ、こっちに来るなぁぁぁぁら」
その先には鋼が掘った穴があり、余裕の無い霧崎はまんまとその穴に落ちる。そして虫の大群もその穴に飛び込む。
「ぎゃぁぁぁああああああああ」
「ぬわぁあああああああああ」
穴の中から男二人の悲鳴が聞こえてきた。
「ふん」
いい気味そうに鼻で笑い飛ばす陣。
「まぁ、たまにはこういうのもいいかも知れないね」
と、陣はまた作業に戻るのだった。