fortissimo EXA Diejenigen, die den Kampf fortsetzen(戦い続ける者)   作:鴉鍵

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招かざる来訪者
接触


「………………」

 

 商店街を一人黙々と歩く一人の少女黒羽 紗雪。

 

「兄さん……」

 

 ふと、口に出た最愛の人……だった人物の名前を呟く。

 

「っ……いけない、兄さんはもうサクラちゃんがいるもの」

 

 まだ、零二に対して兄と妹を超えた感情を捨てきれない自分を戒めるかのようにそう自分に言い聞かせた。兄の零二にとって、私はもう妹でしかすぎないのに……

 

「……はぁ」

 

 しかし、頭では分かっていてもどうしても心がその現実においつかない。

 

「……善(ヴァイス)もなく、悪(シュヴァルツ)も無く、ただ私の大切な人を護るため……」

 

 常日頃から口にしていた言葉を無意識のうち口に出てしまう。

 

「健気なものだな」

 

「……っ!」

 

 不意に話しかけられ、思わず距離を取る。

 

 気配が……しなかった?

 

 紗雪は戸惑っていた。恐らく声をかけてきたのは目の前に立つ長い髪を一つに束ねた長駆の男性であろう……

 

 しかし、彼からは何も感じられなかった。人間である以上必ず存在するはずの存在感を全く感じられなかった。まるで無……そこに何も無いかのように……

 

「あなたは……何者?」

 

「その質問、これで何度目だろうな」

 

 黒衣を着た長髪の男性はまたかと言わんばかりに溜息をつく。

 

 どうやら、何者かと問われた質問はこれが初めてでは無いようだ。

 

「質問に答えて……あなたは何者?」

 

「……瀬道 灼(セドウ アラタ)だ」

 

 長駆の男性はそう名乗る。もちろん紗雪には聞き覚えの無い名前だ。恐らくこの島の住人ではないだろう……

 

「瀬道 灼、あなたはどうしてここにいるの?」

 

「ただの……観光さ」

 

「こんな辺境の島に観光なんてあり得ない……本当はなんなの?」

 

 紗雪の言うとおり、月読島は俗に言う田舎だ。対した娯楽施設も無く、特にこれと言った観光スポットなど無い。自然豊かで昔の面影を残すいい島ではあるが、日本本島ではここ月読島の存在など全く知らないであろう。

 

「疑り深いな君は……正直に言おう、私は元々この島に住んでいたんだが、幼い頃に離れてな、またこうして戻ってきたというわけなんだが……」

 

「………………」

 

 しかし、紗雪は灼に対する警戒心を解くつもりは無い。何故なら目の前に立つ灼と名乗った男には何も感じられない……かつて対峙したオーディンは畏縮するほど強圧な威圧感を放っていた。だが、灼はその正反対……言葉通り何も感じられない。まるで生きていないかのように

 

「鋭いな」

 

「っ!」

 

 観念したのか、灼は溜息をついた後、まるで檻に閉じ込めていた猛獣を解放するかのように潜めていた気配を解き放つ。

 

「怪しまれないよう、なるべく気配を消したと言うのだが、それがむしろ怪しまれる元になるとはな、失策だよ」

 

 気配を露わにした灼は禍々しいと言えるほどの殺意を身に纏っていた。近くにいるものは灼の殺意の嵐に空気と言う名のヤスリに身体中を削られているかのように皮膚がヒリヒリ痛む。

 

 それは紗雪のみならず、ありとあらゆる生き物が灼に恐れおののき、その身を畏縮していた。

 

「……っく!」

 

「禍々しいだろう?」

 

「……っ!」

 

 殺意の嵐を直に浴びて声を出すことすらままならない紗雪に灼は平然と話しかける。

 

「大人しく、私を見逃していてくれれば、こんな事にはならなかったと言うのにな、『召喚せし者(マホウツカイ)』よ」

 

「……っな!」

 

 紗雪はまだ自らの正体を表していないと言うのに、灼はさも当然のように『召喚せし者』と言い当てた。こんな禍々しい気配を持つ者が当てずっぽうで言い当てたまぐれとは考えにくい。

 

「あなたも……『召喚せし者』なの?」

 

 殺意の嵐に少し適応し、声を出せるようになった紗雪は灼に問いかける。

 

「ああ、そうだろうな……いや、かつてはそうだったと言うべきかな」

 

 灼の答えは曖昧な物だったが、紗雪にははっきりと理解できた。過去に一度見たことがあるからだ。『召喚せし者』にしては恐ろしいほど圧倒的な力を誇る"究極"の『召喚せし者』を……

 

 だが、目の前にいる者は例えるなら……"究極"や"最強"では物足りない……まるで地獄から現れた悪魔そのもの。

 

「『召喚せし者』の力は巨大で絶対的な力を持つ……反面、危険な存在にもなる」

 

 灼は瞳を閉じ、静かに話す。まるで死刑者に対して話す最後の別れを告げるかのように……

 

「だから、私はこの世に現存する『召喚せし者』を一匹残らず……殲滅する」

 

 それはすなわち、『召喚せし者』である紗雪の死を告げているようなものだ。つまり、紗雪の持つ力は危険だ。だから殺す……例え紗雪が誰一人殺めていなくとも、灼にとっては持っているだけで罪なのだ。

 

「故に私は……処刑する……断罪などと生ぬるいものでは無く、純粋に余地も残さず、希望を与えず、その罪を持つ者を処刑する」

 

 そう、今ここで灼は紗雪の死刑執行を宣言した。それは紛れもない『氏刑執行人(エクゼキュータ)』の姿。

 

「……ぐっ、動いて……早く!」

 

 一歩、一歩と近づく『死刑執行人』

 

「く、うっ!」

 

 地獄行きの切符を渡される直前

 

「はぁぁぁぁ! 『瞬間魔力換装(フリューゲル・ブリッツ)』」

 

 紙一重……まさに触れかかる寸前に殺意の束縛から逃れ、一気に魔力を発動する。

 

 もし、そこにいたのが紗雪では無く、他の『召喚せし者』であれば、結末は既についていたであろう。

 

「くっ……『魔術兵装(ゲート・オープン)』

 

 回避した紗雪はすかさず己の『戦略破壊魔術兵器(マホウ)』白と黒の拳銃うたまる&アルキメデスを顕現させる。

 

「『魔術兵装(ゲート・オープン)』」

 

 対峙する灼もまた、紗雪と同じく己の『戦略破壊魔術兵器』を発動する。




iPhoneからの投稿ですので、ルビ字とか書けなくて、辛いです。

Fortissimoの特徴の一つであるルビ字が……くそっ泣
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