ファイナルファンタジー14 異譚 獅子の子タジムニウス    作:オラニエ公ジャン・バルジャン

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2話 ブレトニア王国と賢者達

ブレトニア王太子…生まれた時からこの肩書きを持っている。

簡単に言えば王子様だが、童話に出てくるような白馬に乗った王子じゃない。

これから滅ぼされた祖国を恐らく今まであってきた人は誰一人望んでなどいないであろうが蘇らせようとする、どちらかと言えば悪役だ。

世界を相手にしてでもやると啖呵を切った。

切ってしまった。

私の戦友、愛した人々は、私の愛しい怨敵と化すのだ。

聖女よ、これは私に与えられた試練なのですか?

______________________

『クーロンヌ城』

カムイが書類を持って自身の君主、そして本当の息子の様に育てて来た青年の元に来たときには当の青年は瞼を閉じ夢現の中にあった。彼が居眠りをしているデスクの上には幾つかのブレトニアの伝説や歴史が書かれた書物が散乱していた。

それはタジムが探しているある物の手掛かりを見つけようと奮闘した跡であった。そして見つからなかった事も周りのくしゃくしゃに丸められた紙屑達からも見てとれた。

 

カムイ

(やはりアレを探しておいでだったのか。いや正確には行方が知れぬ前に着ていたであろう先王陛下を探しておいでなのだろう。)

 

カムイは書類だけ置くと、起こさないように外套だけ肩に掛けてやると静かに部屋を出た。

カムイは自身が所詮義理の親でしかないのだと再認識し、そしてもう一つタジムの心境を理解してしまったのだ。

 

カムイ

(殿下は自身がブレトニア王足り得ぬ、いや寧ろ王太子としてすら自身のその資格無しと考えているのでは無いか?)

 

自身の力ではなく物の価値によって人間の格を示そうとする人間は大概それ無くば大した事はない。

自分に自信が無いと返って喧伝しているような物だ。

そして自身を卑下するものは決して悪く見られないがそれが過ぎると自身にも他者にも悪影響しかない。

君主とは程度はあるが少し傲慢不遜で独善的な方が良いのだ。

少なくともタジムは今までやってこなかったであろう指導者の務めをちゃんと果たしているし、分からないことが有れば周りに聞いて回るなど、全力で取り組む姿勢はこのクーロンヌ城で知らぬ者はいない。

決断においての明敏さはやや欠けてしまって居るが状況判断能力は目を見張る物を持ち、内政面においても様々な国士を重用、ないしは挙兵と共に解放し、それに当てるなどもう既に国家運用に関してのノウハウも持ち合わせて居た。

これに関してはタジムがカムイから手解きを受けて更に二十四年の遍歴で出会った君主の立場にある人々から見て学んだ事だった

つまり少なくともこの城の中でタジムニウスは王の器では無いと思っている人間はいない。

だがそれでは足りぬと考えているのだろう。

そもそもタジムには自身がブレトニア人を名乗る資格があるのかどうかすら分かって居ないのかも知れない。

 

カムイ

『………認識いただかねばならぬ。殿下は王たる者である事を。だがアレを発見することは決して蔑ろには出来ぬ…。アレを渡すか?だがいかんせんまだ時が早いし、そもそも殿下が受け取ってくれるかどうかすら解らぬ。』

 

カムイは一人頭を抱え廊下を歩いていると声を掛けられた。

振り返るとクーロンヌ公爵が会釈しながら近づいて来た。

 

カムイ

『おはようございます公爵。』

 

クーロンヌ

『おはよう伯爵、殿下はもうご寝所から出られたかな?』

 

カムイ

『いえ、むしろ陽が登る手前で入られたと言った方が正しいかも知れませぬ。結構な時間までブレトニアの伝説や言い伝えを調べておいででした。散乱していた書物等を見るに恐らく王家の鎧を探しているのかと。』

 

クーロンヌ

『そうか、先王陛下が行方不明になった時も身につけられておられたからな。探す事はつまり父を探す事…。そして自身の実績として御立場を確保する事に繋がるか。』

 

カムイ

『公爵もそう思われますか?』

 

クーロンヌ

『うむ…殿下のお姿や立ち振る舞いは正しく若かりし頃のフィリップ様だ。武勇は申し分なく、民への温情や家臣への配慮などは正しく君主としての愛情の籠った物だ。だがそれ故に決断において優柔不断な面も有ればフィリップ様と比べられてしまうと言うジレンマが有るからこそ、焦りが生まれるのだろう。それではいつかご自身の足元を掬われかねぬ、ましてや殿下は今日まで続くブレトニアの平民の生活を圧迫する騎士の立ち振る舞いを改善し、平民全員の生活水準を底上げすると仰せだったな?』

 

カムイ

『はい、ですが騎士達の中にはやはり自身の面子や見栄を大事にして領民の生活を圧迫してまで高価な鎧を手に入れて馬上試合に挑んだり、その成果を以って国政に参加せんとする者も多く、他国にブレトニアの騎士はやれ義理だの正義という気持ちの良い言葉で着飾った強欲な者達と罵られるのも致し方ない面が存在しているのは事実です。ですが当然多数派の騎士は古き良き清廉な騎士道を求める者達で彼らは皆殿下を支持して居ます。』

 

クーロンヌ

『殿下にはそう言った連中がいる事をご理解頂かねばならぬ。臣民無き君主などおらん、多くの民や臣に慕われる事こそ君主の質を大いに表しておるのだからかな。』

 

カムイ

『殿下には出立前にも同じ事を言ったのですが、殿下は指導者は孤独たるべしと思う節があるようですね。もうそう言う時ではない』

 

カムイの言葉は若い女の声に遮られた。

 

?

『クーロンヌ公閣下、カムイ師範。』

 

呼ばれた二人が声のする方向に向くと一人のヴィエラの騎士が立って居た。大剣を背負い、ヴィエラ特有の褐色の肌をしている。鎧姿に金髪を靡かせた美しい女性だった。

 

カムイ

『ん?貴女は…?』

 

クーロンヌ

『そうかカムイ卿はもう最後に会ったのは二十年も前か。彼女はリヨネース公爵の息女、レパン・リヨネースだよ。』

 

カムイ

『思い出した!…失礼をレディ・レパン。女傑レパンス・リヨネースの武勇が貴女にも受け継がれている事を。』

 

レパン

『やめて下さい、師範。昔みたいにレパンと呼んでください。』

 

カムイ

『そうはいきませぬ。その大剣、お父上よりリヨネース公爵領を継ぎましたな?リヨネース家始祖レパンス・リヨネースが受け継ぎし、太陽の光を鍛えたる聖なる剣『リヨネースの剣』こうしてみると見事な剣だ。』

 

クーロンヌ公

『お父上はまだ壮健かなレパンよ?』

 

レパン

『はい、ですが病も重く命数も少ないだろうから殿下の為には剣を振るう事は敵わぬと言って私を跡目に。殿下は何処に?ご挨拶致さねばならないのですが?』

 

カムイ

『殿下はまだお休みでな、陽が登る直前まで調べ物を…』

 

またしてもカムイの言葉は遮られる事になった。すると今度は伝令の兵士が血相を変えて走ってくるではないか。

 

伝令

『報告ー‼︎報告ー‼︎公爵様、クーロンヌ領内にいた敵の残存兵力がアルトワ領内の残敵と合流した模様です。数は四千程になりアルトワ城に向かっております‼︎』

 

クーロンヌ公

『馬鹿な、四千で落とせる訳ないだろうに…。あれは公爵領首都を担う巨大な城砦だぞ。』

 

カムイ

『ですがアルトワ公の兵も二千ほど、アルトワ城を守り切るには足りぬでしょう。しかも敵は不可能ならろくに兵のいないアルトワを荒らすなりして傷物にして目下帝国の支配下にあるパラヴォンかボルドローに戻ることも可能ですからどう転んでも我らに益はありませぬ。』

 

クーロンヌ公

『追討のために兵は用意して居たが、逃げるで無く、攻めて来るとはな、ナメられている事が良くわかるな。』

 

タジム

『ならば後悔させてやろう。どのみちそろそろ掃除せねばならん相手だ。』

 

カムイ

『殿下。』

 

諸将達がタジムの姿を見るや跪くがタジムは良いと手を出して合図し諸将は立ち上がった。

 

タジム

『リヨネース卿、クーロンヌ城のクラリオンコールを鳴らせ、これよりアルトワ公を救出する。』

 

レパン

『御意。』

 

タジム

『大叔父上、クーロンヌ公は此度は留守居をせよ、城を抜け殻にするわけにはいかん。』

 

クーロンヌ公

『殿下の御心のままに。』

 

タジム

『カムイ卿、騎士と兵達を集めよ。獅子の旗の下に戦をすると者どもに伝えよ。ブレトニアが天下を取る為の戦、ここから始まると‼︎』

 

カムイ

『承知。』

 

かくして騎乗した騎士250騎、徒歩騎士100、徒士350、白兵・投射歩兵900そしてたまたま訪れていたレパンの護衛として同行したペガサス騎士、レパン含め101騎の小規模軍が編成された。目標はアルトワ城を包囲する帝国軍ブレトニア駐屯兵団の一部、しかし帝都ガレマレド直属の近衛軍の麾下機甲兵団であるから、そこらの帝国部隊よりかは強いのだ。

 

カムイ

『もっと時と武器を大量に用意できる環境さえあれば、往時の時と同じく一公爵領二万の兵で蹴散らせたものを…』

 

タジム

『ぼやいても仕方ない。むしろ我らがそれだけ動員出来るのなら敵もそれに拮抗するだけの兵力で掛かってくる。ブレトニア中が戦火に焼かれて独立どころじゃ済まなくなるぞ。』

 

そう言いながらタジムは馬を軍の先頭に立て、剣を引き抜いた。

 

タジム

『聞け‼︎ブレトニアの獅子達よ、今我らが同胞アルトワ公爵領が危機に瀕している。このままではアルトワは落ち、領内一帯に広がるアルデンの森は悉く切り落とされ、土地は穢れてしまうだろう。知っての通り、アルデンの森は始祖王ジルが泉の聖女より加護を賜った湖があり、そして不埒な者により暗殺された際に亡骸をそこに沈めよと言い残され、その通りにご遺体は沈められた。つまりジル王の神聖な眠りを妨げる事は末代までの恥となる‼︎ブレトニアの獅子達よ、この戦は奴等に聖女の御心を騒がせ、我ら最高の英雄の眠りを邪魔だてする者を成敗する戦ぞ!』

 

ブレトニア軍

『オオオオオオオオオオオォ‼︎‼︎』

 

タジム

『出陣ー‼︎‼︎』

 

クーロンヌ城より高らかなラッパの音色が鳴り響き、タジム麾下ブレトニア軍が出撃した。

戦役期間の驚異的な短さとは裏腹に戦役に参加した人員と死傷者の数が昨今の戦役と比較にならないと言われたブレトニア王国独立戦争の幕が切って落とされたのだ。

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『アルトワ城』

四千の兵に目下包囲されているアルトワ城は戦火に焼かれていた。

流石に帝国軍は攻城塔等の攻城兵器を持っては来れなかった様だが主力魔導兵器リーパーによる魔道カノンの砲撃で城門を打ち破ろうと鶴瓶撃ちしていた。

城壁ではブレトニア常備軍通称メン・アット・アームズと徒歩騎士達が敵を阻まんと弓やらクロスボウやらアーキバス(先込め銃の事だがここでのアーキバスはブレトニア製の主力ボルトアクションライフルを意味する)を撃ちまくっていた。

 

アルトワ兵

『だめだ‼︎いくら撃っても引かないぞ!なんだコイツら死ぬのが怖くないのか?』

 

アルトワ兵

『矢やボルトはあるがアーキバスの弾がないぞ!もう無いのか⁉︎』

 

アルトワ兵

『ダメだ!奴等(ガレマール帝国)に無理やり出征させられた連中に優先的に渡されてるから足りん。これでも城や街にある鉛を溶かしてきたんだ。』

 

騎士

『泣き言を言うな平民ども‼︎まだ連中の梯子も辿り着けてない。重装兵にのみアーキバスを放て、それ以外は軽装の兵と飛行魔導兵器に集中しろ!手隙のハルバード騎士達と槍兵は城門前に集まり、陣形を組め‼︎城門が破られるぞ!』

 

『帝国軍』

帝国軍士官

『梯子を無理にかける必要はない、城門を破ればそこから一気に崩れる!騎乗していない蛮族の騎士など恐るに足らんわ‼︎』

 

帝国通信兵

『工兵隊は第六リーパー小隊の排熱作業を急がせろ!臨界したら使い物にならんぞ‼︎』

 

帝国通信兵

『第七リーパー小隊砲撃不能寸前、後退を要請しております。』

 

帝国通信兵

『第二歩兵小隊が猛烈な銃撃を喰らい、被害甚大です。第三メディクス分隊は救護に当たってください。』

 

この帝国軍は良くやっている事は間違いない。帝都近衛軍の一部という事もあるが、ちゃんとした攻城兵器を持たず、魔導アーマーリーパーの魔導カノンだけで城門、城壁を破ろうとするのだから健気な者だ。最も臨界覚悟で撃てばアルトワ城の城壁や城門を打ち破るのは幾らか楽になるが、やはり彼らは敵中に孤立している事実と本国の混乱でマトモな支援や補給も得られる状態ではない。

本来なら彼らの拠点となる筈のボルドロー(ブレトニア沿岸の城塞都市ボルドロー公爵領首都、沿岸にある為ブレトニアの交易や海軍の拠点であり、ブレトニアワインの最高峰ボルドローワインの産地でもある。)、

バラヴォン(ブレトニア東北の城塞都市パラヴォン公爵領首都、ライクランド帝国領への北東側の出入り口であり、ブレトニアとライクランドを隔てる灰色山脈に生息するペガサスやピポグリフといった飛行巨獣を調教する技術を確立させたことから空の街とも言われる。)

のどちらかにさっさと退却するべきだった筈だが、帝都の混迷と各地にて発足した軍閥等の派閥争いの影響を受け、自分達の上官の私利私欲の糧となってしまっている。

しかし彼らの健気さはアルトワ城陥落寸前まで追い詰めていた。

そして遂に城門は打ち破れ、帝国軍が雪崩れ込んできた。

しかし歩兵はハルバードで武装した徒歩騎士団とメン・アット・アームズ剣兵に阻まれ歩兵と戦線を構築する魔導アーマーヴァンガードもハルバードに刺されるか斬りつけられ前進出来なかったが、この帝国軍は虎の子である大型人型魔導アーマーコロッサスをニ体、部隊に組み込んでいた。

騎乗した騎士達であれば四人いればコロッサス一体と同等、精鋭騎士であれば一人か二人で相手出来るコロッサスだが歩兵のみでコロッサスを相手取るのは無茶もいいとこであった。

騎士

『怯むな‼︎槍の数で圧倒しろ‼︎数本も刺されば止まる‼︎行けぇ‼︎』

 

しかし健気にも突撃するも大剣に薙ぎ払われる騎士と兵達、戦線は崩れ、コロッサスを筆頭に再び帝国兵が殺到するが第二線を形成していた銃兵と見習い魔道士(ブレトニアに於ける対人用の魔法のみが使える魔道士)、そして唯一アルトワ城で帝国の摘発を免れたライクランド式の24ポンド野砲が火を噴き、コロッサスとその周りにいた兵達を吹き飛ばした。

 

帝国兵

『おい‼︎ブレトニア人は火器を無理に使わない様にしてる蛮族じゃなかったのか⁉︎』

 

帝国兵

『一星暦前の話だろう、そんなの‼︎早く重装歩兵は前に出て盾を構えてくれ‼︎』

 

帝国士官

『無駄口叩かず行けい‼︎敵は崩れてる今が好機ぞ‼この勝利を亡き皇帝陛下に捧げるのだ!』

 

コロッサスと敵兵を無力化したが、再び騎士と兵達が陣形を組み直してももはや手遅れであり、野砲は味方が前にいる限り撃てぬし、ブレトニアに於いてライクランド式の火砲以外で最も破壊的な威力を誇るトレビュシェットも城内ではおいそれとは使えない。

 

アルトワ公はもはやこれまでを死を覚悟し、剣を引き抜き敵に突貫して死ぬ事を決意した。

 

アルトワ公

『もはやこれまで…皆剣を抜け‼︎せめて…せめてブレトニア人らしく死のう‼︎』

 

騎士

『公爵様…剣を抜け騎士達よ、兵士達よ‼︎農民共の糧となるぞ‼︎』

 

アルトワ公

『突撃ー‼︎』

 

アルトワ公が走り出したその瞬間だった。

 

高らかなラッパの音色が聞こえてきた。

それはアルトワ城のラッパの音では無い。

それは明らかに帝国軍側から聞こえてきた。

そしてそれは無数の蹄の音と現れた。

 

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『帝国軍本陣』

帝国通信兵

『隊長、左翼側より軍勢が。』

 

帝国士官

『左翼?ライクランドの連中か?だがそんな報告は…』

 

受けていない。そう言おうとした士官は頭からランスで串刺しにされた。

帝国本陣は男も女も帝国人も非帝国人も関係なく殺戮の惨劇に沈んだ。

101騎のペガサス騎士の突撃を止められる物など存在しないのだ。

そして一部の兵達は失明して死亡している、それはレパンの大剣『リヨネースの剣』の効果であり、太陽そのものを鍛え上げて造られたと云われる太古の剣は眩い光を発することが出来るのだ。

 

レパン

『此処の敵は全員死んだな?我々はアルトワ城の城壁に至った敵を後ろから討つ。他の敵は殿下達が相手してくれる。他には目をくれるな、アルトワ公をお救いするのです‼︎』

(殿下どうか御武運を)

 

その頃タジムは他の騎士達と共に馬上にあった。

隣で馬を走らせるカムイは後方の兵達の布陣が完了した事を伝えた。

 

タジム

『いよいよだ、騎士達よ!ブレトニアの為、聖女の為、私に力を貸してくれ‼︎』

 

騎士

『おおおお‼︎‼︎』

 

タジムが剣を引き抜くと、カムイも刀を引き抜き、他の騎士達もランスを構えるか、剣や斧を構えた。そして乗り手に呼応する様に馬達も足を早め真っ直ぐ敵の只中を目指した。

帝国兵も慌てた迎撃の体制を取るがもう既に本陣は亡く、城の者達も希望を見出しガムシャラに暴れ出して身動きも取れなくなってしまった。

とにかく止めねばと銃弾と砲弾、そして矢が飛んでくるが銃弾や矢では鍛え上げられたブレトニア銀製の鎧や馬の装甲を抜けず、砲撃で騎士や馬が吹っ飛ぶも残った者達は突撃をやめないし、後方からも馬に乗らない騎士や兵達が怒号を挙げて迫ってくるし、既に援軍の弓兵が援護射撃を開始して突撃される前から帝国軍に被害が出始めていた。

 

タジム

『聞け!我が咆哮を‼︎』

 

ブレトニア将兵

『オオオオオオオオオオオ‼︎‼︎』

 

タジム以下騎乗ブレトニア騎士達の突撃は凄まじい破壊力であった。

むしろこれこそブレトニアの真骨頂であった。

馬の体格と蹄で人間を吹き飛ばし、鍛え上げられた鉄(ランス)を以って魔導アーマーや筋肉を貫く。

正しく古き良きブレトニアであり、そしてこの優秀な軍馬とそれを扱うことのみに追求した訓練を施された騎士達の突撃は正しく世界中の悪夢として記憶されているのだ。

 

哀れな帝国兵達は数メートルから数十メートル、場合によっては百メートル弱の距離を吹き飛ばされ、魔導アーマーは乗り手ごとランスで貫かれ、再突撃の為、騎士達が離れていくと思いきや今度は徒歩騎士達や従士、そして兵達が狂ったようにぶつかってくる。

歩兵同士の乱戦の間隙を縫って騎士達は側面突撃を繰り返し、突撃される度に最低でも100人弱が死んでゆく。

そして終始、ブレトニアの王太子を名乗る若者が騎士達の先頭で剣を振るい、鼓舞し続け、馬も騎士達ももはや疲労すら無視し出した。

更に奇襲を担当していたペガサス騎士達も戦場に合流し、城壁に登っていた敵兵を駆逐して行った。

かくして帝国兵の大半が討ち取られ、残りは全員捕虜になるという大勝利で戦は締め括られることとなった。

 

兵・アルトワ城の民衆

『タジムニウス殿下万歳‼︎聖女様万歳‼︎ブレトニア王国万歳‼︎』

 

兵と民衆の歓呼の声はアルトワ城から鳴り止まぬ事なく聞こえ、それは遠くから観察していた者達の耳にも届くほどだった。

 

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『アルトワ城近辺の廃屋』

アリゼー

『アレがブレトニア王国…イシュガルドよりも古い騎士の国。…めちゃくちゃね、あんなのとまともにがっぷり4つなんて死んでもごめんね。』

 

アルフィノ

『騎士達や民衆の奮闘にも目を見張るものが有るのは間違いないな。彼らは自身の領地と畑を守る為に必死になれる、相手が誰であろうと。…それよりも相変わらず元気そうだったね。タジムは思った以上に王太子をやれてる様じゃ無いか。』

 

アルフィノ

『これからその王太子になったアイツの顔を思いっきりブン殴ってやるのが楽しみだわ!』

 

アリゼーはゴキゴキ指を鳴らしながら言うもんだからアルフィノは何も言えずただ笑うしかなかった。

 

アルフィノ

『アハハ…国際問題だけは起こさないでくれよ?(二度とエオルゼアに戻れなくなる。)』

 

リンクシェル独特の電子音が鳴り、アルフィノが応答すると通信相手は二人に戻る様に伝えてきたのでアルフィノは軽く返答すると、血気盛んな妹を連れて廃屋を後にした。

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『アルトワ城城門前』

入城したタジムは被害状況の確認を行っていた。生き残ったものにはそれなりの褒美を与えねばならぬし、今後の作戦にも影響が出るかも知れないからだ。

主だった騎士達と被害の確認をしていたタジムの元に若い騎士が走ってきた。

 

騎士

『殿下‼︎ほ、捕虜が…‼︎』

 

タジム

『捕虜がどうかしたのか?逃げ出せるとは思えないが?』

 

騎士

『騎士の一部が正しき信仰の為にと称して捕虜を皆殺しに、それを見た他の騎士達や兵達がそれを咎め、そこから悪い事に乱闘騒ぎに‼︎』

 

カムイはゾッと寒気を感じた。

それは覚えのある寒気だった。

タジムには頭に血が昇ったり、興奮すると両眼の翡翠色が血の色が混じって黄色、いやこの場合は黄金に光るという癖がある。

そしてそうなった時は手がつけられなくなる事も意味していた。

 

カムイは慌ててタジムの怒りを鎮めるべく誅言した。怒り狂った獅子を野放しにすれば獣が居なくなってしまうのと同じ様にタジムの周りから人がいなくなる事だけは避けねばならぬからだ。

 

カムイ

『殿下!先ずは冷静に事の次第を問い正されませ。

無闇に捕虜を殺めた騎士や兵は当然裁かれねば成りませぬが殿下自らが手打ちにしたと有れば話が変わります。どうか何卒‼︎』

 

しかしタジムは目を光らせたまま馬に跨り捕虜達の骸のある方に駆けてしまった。

 

カムイ

『嗚呼…殿下。良くも悪くも真っ直ぐすぎる…これでは却って…ええい‼︎そこの騎士と従士は私とこい、殿下をお諌め致す。』

 

騎士と従士達

『ハハッ‼︎』

 

タジムが目を光らせながら馬で城壁を超え、城門から少し離れた一角迄走ると、騎士と兵たちが双方取っ組み合いの乱闘を繰り広げていた。

 

兵士

『殿下だ‼︎』

 

騎士

『おい、殿下が参られたぞ!』

 

取っ組み合いをしていた兵や騎士たちがその場で乱闘をやめ、整列した。

タジムは馬上にて問うた。

 

タジム

『捕虜達を殺した者とそうでない者に分かれよ、今すぐに。』

 

騎士と兵たちがその様に分かれるとタジムは口を開いた。

 

タジム

『では捕虜を殺めた者達以外の者はこの者らを引っ捕らえ首を刎ねよ‼︎』

 

その場にいた兵と騎士達は凍りついただが忠実に命令を果たすべく捕虜を殺めた者達を捕らえた。

 

騎士

『殿下、お待ち下さい!我らは聖女の名の下に正しき信仰に則って行動したまでの事。何故我らをお咎めになるのです‼︎』

 

タジム

『分からぬか?では教えてやろう。一つ、私の許しなく捕虜を殺めたことは私に対する反逆であり、獅子の旗を汚す行為である事。一つ、無抵抗の人間を一方的に殺すなど騎士道にも劣る行為だ。この二つだけでも私が貴様らの首を刎ねるだけの理由になる。』

 

兵士

『そんな‼︎俺達は聖女の名の下に異教徒と蛮族を浄化しただけだ‼︎聖杯の教えは殿下には酷い仕打ちとしか見えないのか‼︎』

 

騎士

『ハッ‼︎無理もない、他国でぬくぬくと暮らしてきた王子様だもんな‼︎聖杯の教えなど知りもしないだろうよ!それで映えあるレオンクール家の後継とはお先が知れておるな‼︎』

 

タジム

『貴様らのいう信仰の名の下に無作為に人間を殺す方が何倍も聖女も聖杯も忌避されるだろう。

そも貴様らは教義を傘にしたがガレアン人でだけでなく他の種族の兵達も皆殺しにしたではないか…それを聞けば聖女様も王墓にて眠りにつかれているルーエン王も怒り狂うであろうな。』

 

騎士

『獅子心王様は最高の名君と言われているがな、その事で聖女様から怒りを買った時点で真の信仰を掲げる騎士達からは破門者も同然‼︎それをさも信仰に篤き仁君と讃えるとは流石アバズレ女の股から産まれた偽の貴族らしい考え方だな』

 

この時…彼は知りもしなかったがタジムにはどうしても怒りを抑えられない事が一つあった。

それは父フィリップ王と母である王妃ブリジットを愚弄される事であった。

特に母親のブリジットに対しては取り分け手に負えなくなるのだ。

 

タジム

『もう良いわ、お前達は抑えるだけで良い…この不埒者共は騎士の風上にも置けぬだけでなく我が母までも愚弄しおった。この者達は私自らの手で首を跳ね飛ばし、首を城壁に吊るし、体は杭で貫き、腐り果てるまで我がクーロンヌ城の門の前に飾ってくれる‼︎‼︎』

 

タジムは剣を引き抜き、振り下ろした。

だが肉が斬れる音ではなく金属音が鳴った。

それはカムイが刀でタジムの剣を払い除けた音だったのだ。

そしてそのままタジムを殴り飛ばしたかと思いきや、ブリジットを最も愚弄した者の顎を砕いた。

 

カムイ

『双方いい加減にせぬか‼︎君臣一体となって事にあたればならぬこの時にこの様な事でしこりを作りおって‼︎』

 

カムイはタジムを引っ張り上げるとヘルムを脱がせ更に一発鉄拳を頬に喰らわせた。

 

カムイ

『頭を冷やせタジムニウス‼︎王国全体が団結しなければならぬ今、国を背負って立つ者が臣民を恐れさせる様な真似をするなど愚の骨頂ぞ‼︎信賞必罰を君主自ら蔑ろにするなど示しがつかぬわ‼︎』

 

タジムは久しぶりにこの親代わりの初老の騎士に怒られて面食らったのか眼も金色から元の翡翠に戻っている。

 

タジム

『悪かった…いえ、申し訳ありません義父上。』

 

すっかりしおらしくなってしまっている。

 

カムイ

『先王陛下より賜りし権限によりキングス・ガード(ブレトニア国王親衛騎士団)・グランドマスターの名に於いて、タジムニウス・レオンクール殿下には自室謹慎を言い渡す、お前達(捕虜を虐殺した騎士と兵士)には今回は極刑こそ無いものの騎士爵の剥奪は覚悟した上で後日出頭せよ、良いな。では解散とする。』

 

これを遠くで見ていたレパンと騎士達はあまりの迫力にその場から離れられなくなっていた。

 

騎士

『あ、あれがカムイ・タナトス卿ですか。幾ら養育をしたからって殿下にすらあの物言いと仕打ち、よく死罪にならないものです。』

 

レパン

『カムイ先生、いやタナトス卿は先王陛下の半身です。フィリップ様の隣には常にタナトス卿が居ました、陛下は常日頃からタナトス卿に子が産まれた暁には教育をして貰うと言い続けて居ましたし、必要であればいかなる事も許すと言ったそうです。

そしてそれを自身の私利私欲に決して使わないというタナトス卿の忠義は本物であると殿下にも分かっているからこそ素直に言うことを聞くのです。我々は、彼を見習わないといけませんね。』

 

するとカムイはレパンに気が付いたのか指示を飛ばした。

 

カムイ

『レパン、戦は終わった。これよりクーロンヌ城に帰還する。それに貴女も同行するのだ。殿下にちゃんと挨拶もしてはいまい?』

 

レパン

『ああ、そうでした!ではお供致します!貴方は皆を集めなさい。』

 

騎士

『はっ!総員撤収‼︎』

 

アルトワ城攻囲戦はガレマール帝国軍が返り討ちに合うという結果で幕を閉じた。

 

後にこの戦いを記した騎士はこう述べたという。

 

『今にして思えば戦った帝国軍は不運であった。我らが援軍に来なくてもあの兵力では到底アルトワ城を落とせたとは思えぬ。それは彼らにも分かっていたかも知れないがそれでも彼らは軍人としての責務を放棄しなかった。正しく彼らは我らにとって最も名誉ある敵であったのだ。』

 

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クーロンヌ公爵領第二都市港湾都市ランギーユ郊外…。

 

アリゼー

『戻ったわよー。』

 

ヤ・シュトラ

『あら、お帰りなさい。戦いはどうなったのかしら?』

 

アルフィノ

『ブレトニア軍の勝利だ。元々ガレマール帝国軍の戦力が少な過ぎるのも原因だが。』

 

アルフィノ達はシドの飛空艇エンタープライズで密かにブレトニアに入国しており、このランギーユ郊外の森に野営している。

本来ならブレトニア領海に近づけば周辺を警戒するブレトニアの飛空艇か飛行駆逐艦、ないしはパトロール中のペガサス騎士に発見されるがたまたまアルトワ城攻囲の知らせを受けていたことや、そもそもブレトニアが帝国に対しての叛乱を起こして間もないことからその混乱が彼らを助けたのだ。

 

アルフィノ

『シドとグ・ラハはどうしたんだ?』

 

ヤ・シュトラ

『二人ともエンタープライズの調整で離れてるわ。ウェルリトで整備中のアラグの兵器を改造した人型兵器…Gウォーリアーって言ったかしら?アレに搭載されていた大型ブースターをエンタープライズに増設して飛んだことで船体に負荷が掛かったのとブースターにも故障が生じたようだからまた飛べる様に修理してるわ。』

 

アリゼー

『その本は?』

 

ヤ・シュトラ

『近くの村で手に入れた物よ。この国と隣国ライクランド帝国の歴史。この国には多くの神話とそれを裏付ける考古学的建造物が数多く存在していて、それらもいつかは解き明かしたいと思っているの。』

 

ヤ・シュトラが貴女もどう?っと言わんばかりにアリゼーに本を手渡したのでアリゼーもペラペラと適当のページを読み出した。

 

アリゼー

『ふーん。あっやっぱりこの国って騎士が何でもかんでも関わってるのね。あとこの泉の聖女とか、フェイ・エンチャントレスとか言う女の人は何かしら?光の巫女や超える力を持った人間と言う事かしら?』

 

ヤ・シュトラ

『可能性はあるわね。ルイゾワ様はブレトニア史の研究をしていた時にこの泉の聖女やフェイ・エンチャントレスは明らかに人のそれを超えた力を持っていたから超える力やそれ以上、例に挙げるなら、ミンフィリアの様な光の巫女に近しい存在では無いかと睨んでいたの。』

 

アリゼー

『お祖父さまが…。』

 

するとエンタープライズの修理を終えたシドとグ・ラハが戻ってきた。

 

シド

『おっ、戻ったのか。コッチは粗方終わった所だ、後は幾つかの必要なパーツが手に入ればまた飛べるぜ。』

 

グ・ラハ

『ブースターの方は流石アラグの文明といった所だ。魔力回路を少し弄っただけで問題なく稼働したよ。』

 

アルフィノ

『後は船体を治す素材か。』

 

シド

『そこで提案なんだが、明日、王都クーロンヌに入ってみないか?そこならパーツも手に入るだろうし、この国についてもっと知る事も出来るだろう。』

 

アルフィノ

『それは良い。ずっとこのままという訳にもいかないし、ブレトニア最大の都クーロンヌとそこに住まう人々の営みや文化を見るいい機会だ。』

 

ヤ・シュトラ

『リオルが用意してくれたリヨネース領とランギーユ領の住民票を使う時が来たわね。それさえあればブレトニア領、少なくとも独立派のクーロンヌ、アルトワ、リヨネース公領に入る事が出来るという代物なら使わない手は無くてよ。』

 

______________________

翌日早朝…王都クーロンヌ城門前…

 

王都クーロンヌの城門には大勢の人間が集まっていた。各国から逃れてきた難民、帝国支配下にある他のブレトニア公爵領からの逃亡者、各地に散らばっていた旧アルトドルフ帝国軍各残党勢力やその使者、そう言った連中がクーロンヌの城壁の前に列をなしている。

集団、個人、訪れる人の規模に応じて掛かる時間は変わるが、入城理由や敵の間者では無いか?ないしはその疑いのある者は居ないか?と門番達が精査し、彼らの目に引っかかる事となれば牢にしょっ引かれる事になるのだ。

そういう意味ではアルフィノ達もその類である。彼らはエオルゼアの使者としてと言うよりやはり間者気質が強い。

下手をすれば即刻斬り捨てられる可能性もあるのだ。

何しろ彼らは不法入国者でもあるから罪の重さは尋常では無い。

 

そうこうしているうちにアルフィノ達の番になった。

因みに彼らの仮の身分はこうである。

アルフィノとアリゼーはランギーユから出稼ぎに出た農民の兄妹、ヤ・シュトラ、シド、グ・ラハはリヨネースから来た魔道士見習い、鍛冶屋、従士志望者という事になっている。

その為に彼らはそれなりの格好をしている。

そして先程から他人のふりをしている。

 

門番

『ランギーユから出稼ぎか…まだ未成年なのに偉いな、何処で働くつもりだい?』

 

アルフィノ

『兵舎での下男でもして当面は食い繋ごうかと思っています。何処か貴族の方や騎士の方のお屋敷で働くにしても学もなければ卑しき身分の私達には無理な話。』

 

門番

『なら妹さんは女性騎士の官舎で働いた方が良いなぁ。いま殿下も公爵も帝国に連れて行かれた連中や各地で潜伏していた連中とは別に各領地の志願者や犯罪者や乱暴者も兎に角集めて兵士にしようと躍起になってるし、騎士達も皆が清廉潔白な訳じゃ無い。』

 

アルフィノ

『ご忠告感謝します。』

 

門番

『王の住まう城砦、クーロンヌにようこそ。』

 

門番が次と手を振ると同時にアルフィノとアリゼーは門を潜り、人の中に溶けていった。

 

門番が次に相手をしたのはヤ・シュトラ

 

門番

『んでミコッテ族のお姉さんは何様でここに?娼館って感じでは無さそうだな、学者さんかい?』

 

ヤ・シュトラ

『魔道士見習いよ、正式な魔道士としての資格を殿下より賜りたくて来たの。レオンクール家の宮殿で試験を行うのは知っているのだけれど私、王都に来たのは初めてなの。宮殿までの道筋を教えてくださらない?』

 

門番

『ああ、それなら簡単だ。門を抜けたら大通りをずっと真っ直ぐだ。この巨大城砦都市クーロンヌの特徴は入り組んだ数多の道に沿って屋敷や民家が立っているが城と正門は一直線になっているのさ。』

 

ヤ・シュトラ

『どうもありがとう門番さん。もう一ついいかしら?試験はすぐに執り行うものではないでしょう?何処か図書館の様な所は近くにあれば教えてほしいのだけれど?』

 

門番

『なんなら城から出なくても良いぞ。クーロンヌ城には王立大図書館があって、魔道士見習いや魔道士、騎士や貴族達だけでなく平民や農民にも解放されてるからお姉さんも問題なく入れるはずさ。外国の本なんかもあるから興味があれば読んでみるといい。』

 

ヤ・シュトラは礼を言うと前の二人と同じ様に人の波に溶けていった。シドやグ・ラハも同じ様に身分を明かし、それぞれの行きたい場所を聞き、それに対して門番の兵士が丁寧に教えるという流れを終えた五人はそれぞれの身分に沿って行動を開始したが五人は歩きながら同じ事を考えたと言う。

 

五人

『すごいフレンドリーな門番だったなぁ…。』

______________________

クーロンヌ城下町

 

アルフィノとアリゼーはクーロンヌの街を見て回った。見た目こそイシュガルドに近いがそれよりも少し古い時代の様式の建物や空気を感じたがそれは外側であり、中側はガレマール帝国と互角の戦いを繰り広げただけはあると納得させる程の文明の進歩を感じさせた。

 

窯や街の明かりはは青リン水を利用したガス式だったり、道全てが舗装されていた。

身分制度や貧富の厳しい国というイメージの強いブレトニアであったが…いや王都クーロンヌだからと言うこともあるだろうがウルダハとは違い、(彼の国は致し方ない事情が有るが)街のどこにも浮浪者は無く、皆がそれぞれ家や家族、友人、恋人を持ち、町民として街で働く者、住まいこそ街にあるものの街を出て外の農地で畑を耕す者、ないしは兵士や騎士として戦う者という風に仕事や使命を持ち、皆が明るく、穏やかにそして豊かに暮らしていた。

とても戦争中という風に見えなかった。

勿論、皆で暗き時代を乗り越えるべく空元気になっているという見方もあるが彼らは現に気高く生きていた。

 

アルフィノ

『我ら、諸悪に決して屈せぬ、か…。』

 

アリゼー

『何、それ?』

 

アルフィノ

『ブレトニア始祖王ジル・ル・ブレトンが掲げたスローガンさ、諸悪とは当時この地を巡って争っていた非ヒューラン種族の事で当時圧倒的劣勢だったジル王が泉の聖女の祝福を受けた時に騎士や兵士、そして民衆の前に立ち、自身の旗と槍を掲げて叫んだのがこの言葉だったそうだ。以降彼らの決意を示すスローガンになっていったんだ。』

 

アリゼー

『アルフィノ、あんたブレトニア史取ってなかった筈よね、あの本読んだの?』

 

アルフィノ

『ああ少しだけね。』

 

この時アルフィノはタジムニウスがブレトニア人ではないかという疑念を実は以前から持っていた事を妹に話そうと思ったが、言ったところで信じてもらえまいという考えと疑念を抱いて彼自身が正体を明かすその時まで証拠を掴むことが出来なかった事から黙る事にしたという。

 

______________________

クーロンヌ城内

 

ヤ・シュトラは魔道士としての試験をあっさりパスして図書館の中で本の虫になっていた。

本来ヒューランの中では魔力に秀でた種族であるブレトニア人でも数十人から百人規模を殺傷する魔法を放つのは大変な事であるが、元々魔女マトーヤから手解きを受けたヤ・シュトラは非凡な才能の持ち主でもあった。

試験を受ける前にブレトニアの魔術書と自身の前に試験を受けた魔法使い達の様子を観察した結果合格ラインを優に超える結果を出したのだ。

後の世が戦乱の世になる可能性が有ると考えていたヤ・シュトラにとってこれは必要な力であったが当の本人も流石に一発で合格するとは思っていなかったので少し面を食らったがそれでも平素を装い会場を後にしていた。

 

ヤ・シュトラ

『最初はどうやってブリザシャ(氷系魔法、巨大な氷塊を敵に落とす呪文)をあんな広範囲にするのか検討がつかなかったけど一度に使う魔力と詠唱量を変えるだけだったのね。魔力の消費が激しいからおいそれとは使えないけど…それに見合った威力、ブレトニア軍の魔法使いは戦略兵器扱いされる理由も分かったわ。』

 

ヤ・シュトラは聞こえぬ程度の大きさで独り言を呟きながらページを捲っていた。

因みに彼女が今読んでいる本はブレトニアの神話の本であった。

図書館にはブレトニアやライクランドの歴史、周辺国の歴史や経済、科学、宗教に関する本や、様々な物語の小説、魔導書に兵学書、万人向けの童話や英雄譚など数多の本が身分問わず皆が閲覧できる様になっていた。

この場では種族、身分関係なく皆が同じ場所で本を読み、感想や問答で花を咲かせていた。

正しくここはブレトニア王国最大の知識と啓蒙と思想のサロンであった。

 

ヤ・シュトラ

『聞いていたよりも遥かに素敵な国じゃない、タジム。』

 

そう呟きながら彼女は茶に口をつけ、また1ページを捲るのだった。

 

______________________

クーロンヌ城下町工房区…

 

その頃シドは異国の技術に目を奪われていた。古臭いながらも他国では考えもつかない技術の宝庫だったのだ。ガレマールやエオルゼア諸国と違い、魔法と化学が完全に分離した文化を持つブレトニア、ライクランドの技術は世界広しと言えど

稀有であった。

武器、防具店では鍛治職人たちが売り物の実演販売をしていた、超サーメット合金(ガレマール帝国にてしようされる古代アラグ帝国の合金。しかし本家ほどの精度は無い。)も同等の硬度を誇るブレトニア銀製の剣で魔導アーマーの装甲板を貫いて見せたり、拳銃で鎧を撃って跳ね返す様を見せたりで有る。

しかもそれがプレートアーマーではなく、チェーンメイルときたものだからシドは面食らってしまっていた。

 

シド

(凄まじい冶金技術だ、幾ら王都とは言え、一小規模工房でこれか。ならライクランドの工房はもっと凄まじいに違いない。)

 

他にも目を疑うものはいくつもあった。

この古風な街並みに確かに存在するガレマール製の機械をブレトニア風に改め直した建物群、蒸気駆動の自動車、馬車の荷台、王立、公立の学校、騎士・士官学校。更には街中に飛空艇発着場と大中小の飛空軍艦の造船所まであった。

ブレトニアという古代の国の姿を全く変えずも当代の国々の中でも高い水準の文明と尋常ならざる速度で古今に渡り抱えていた他国との文明の遅れを取り返した事が見て取れた。

 

シド

『この国が本当の力を取り戻したら…エオルゼアへの侵略も決して辞さぬだろう、それが出来るだけの力がある。』

______________________

クーロンヌ城中央練兵場…

 

グ・ラハは騎士見習いとしての身分である従士志望者としての身分を持っていた為ヤ・シュトラと同じ様に城の中にいた。

それもブレトニアの軍事の中心でも有る練兵場である。

多くの若い男女が種族の垣根を超えて集まっていた。

ヒューラン、エレゼン、ララフェル(ブレトニア、ライクランドではドワーフと呼ばれている)、ルガディン、アウラ、ロスガル、ヴィエラといった主要民族は勢揃いしていた。

そして大勢の若者の前に指導役の騎士達が数人とそのリーダー格の騎士が一人立っている。

 

騎士

『よく来たな子獅子共‼︎これより貴様らは従士見習いとして数週間この映えある王都クーロンヌの練兵場で過ごす。貴様ら、騎士になりたいか‼︎門地を持ち、領地を統治し、王の為に剣を振るう騎士になりたいか‼︎』

 

グ・ラハ&ブレトニアの若者達

『なりたいです‼︎‼︎』

 

騎士

『よく言った‼︎貴様らは卑しき平民、農民だけでなく、門地を告げぬ次男坊や三男坊、次女、三女と言った連中だ‼︎そんな貴様らが一旗揚げるにはただ一つ、敵を殺し、己が生き残る術を身につける事だ‼︎まず己の得物を見定め、それぞれの部隊に配属を待て。配属されたら生まれや種族を忘れ、同じ兄弟、同志として騎士の道を志すのだ。私は最初からそこらの騎士を育成するつもりは無い!国王陛下より伯爵号、ないしは公爵号を戴くに値する騎士、そしてあわよくば泉の聖女様より聖杯を賜る事の出来る騎士…つまり未来の聖杯騎士になる事の出来る騎士を私は育成するつもりだ。聖杯騎士はこの国おいての最高の栄誉、公爵号も夢では無いぞ!皆覚悟を決め、望んで貰いたい‼︎尚、本来であれば銃士隊の希望者はここで申請し、バストンヌ公爵領へ移送するのだが、現在のバストンヌの状況は貴様らも知っての通りだ。よって此処で簡易的では有るが銃士隊向けの訓練も行うので希望者はこの場に留まるように。それ以外の者は武器庫に集合‼︎』

 

グ・ラハ&若者

『はい‼︎‼︎‼︎‼︎』

 

グ・ラハ

(凄い…昔読んだ騎士物語の騎士そのまんまだ…勇敢と不屈をモットーとするブレトニア騎士…仮とは言え、本当に騎士になれる様にやってみよう!そしたらあの人に…タジムに騎士に叙勲してもらえるかもしれない。そしたら冒険も戦いも一緒に行ける!憧れの英雄の隣で‼︎)

 

グ・ラハは綻びそうな口元を締め、武器庫に向かった。

 

そして各々がそれぞれの仮の身分で過ごして一、二時間経った頃だった。

王都中から勇壮なラッパの音が響き渡った。城へと一直線の大通りは封鎖され、儀仗兵が両翼に整列し、武器持ち栄誉礼で待機する。

王都中から『殿下が帰ってきた‼︎』、『英雄が帰ってきた‼︎』と口々に群衆が集まってきた。

アルフィノとアリゼーは群衆の最前列で、ヤ・シュトラとシドは偶然合流し、その後近くの路地で、そしてグ・ラハは教官の騎士に連れられ他の見習い従士と共に整列した。

 

ファンファーレが角笛とラッパによって奏でられ、ドラムがけただましく叩かれた。

そしてそれに合わせて道化の格好をした饗宴士が現れ高らかに声を上げた。

 

饗宴士

『皆の者ー‼︎アルトワ城を囲いし三つ目の化け物の軍勢はタジムニウス殿下とそれに従う騎士達の正義の鉄槌に敗れ去ったー‼︎』

 

そう言うと帝国兵の姿をした藁人形が四人の男に抱えられて出てきた。藁人形はガレマール人とわかる様に額には恐ろしい眼が描かれていおり、そしてランスが頭から刺さっており、剣が首に刺さっていた。

そして男達がおっとっと人形を落とすと群衆は笑い声を挙げ、更に落ちた人形の首を饗宴士が思いっきり蹴り飛ばすとその倍近い大きさの笑い声が群衆を包みこんだ。

 

ガレマール人はブレトニア人にとってその程度でしか無いのだ。

化け物…彼らの敵意の源はそこなのだ。

ヤ・シュトラは目を背け、そしてシドを見た。

シドは何とも言えぬ表情を浮かべていたが、大丈夫だと身振りで示した。

 

饗宴士

『悪は去った!皆で殿下を迎え入れようー‼︎‼︎』

 

再びラッパが鳴ったがそれは外からでは中からだった。

留守居をしていたクーロンヌ公が大通り中央の壇上に登っていたのだ。

民衆は歓喜の声を挙げた。

 

民衆

『公爵様ー‼︎』

 

民衆

『公爵閣下ー‼︎』

 

クーロンヌ公はニコリと笑い、民衆に手を振ると民衆の声はより大きくなった。

 

クーロンヌ公

『さぁ、我らが子ら、父、母、友、恋人を迎え入れよう。』

 

軍楽隊がブレトニアの行進曲を奏で出すと堂々と歩兵が行進しながら入城してきた。

それを民衆は歓喜の声で出迎える。

先頭を歩く鉄砲隊が行進しながら空に空砲を撃つとまた銃を肩に抱え、抱えたと同時に指揮官が剣を抜き号令した。

 

指揮官

『頭ァァァー、右‼︎‼︎』

 

指揮官が敬礼し、騎手が旗を下ろし、兵達がクーロンヌ公の方に向く。

まるで生き物とは思えぬ規律を持った足跡が大通りを埋めた。銃兵、槍兵、剣兵と行進すると遂に騎士達の列になった。

まず徒歩騎士達が行進し、騎乗騎士達が槍を堂々と立て、馬を歩かせてきた。そしてその間を魔道士達が歩いていた。クーロンヌ公から門までを兵で埋めた所で行進が止まり、儀仗兵の前を行進していた兵達が並びその間を徒歩騎士達と魔道士達が等間隔を空けて並び騎乗騎士達が数人ずつで集団を作りながら両側に並んだ。

それと同時に静寂が訪れ、馬の嘶き声のみが残った。

するとさっきの饗宴士がクーロンヌ公の前に立つと再び口を開く。

 

饗宴士

『頭を垂れよー‼︎跪けー‼︎畏れ多くも畏くも、始祖王ジル・ル・ブレトンの子孫、泉の聖女の一の騎士、我ら人類の守護者、光の戦士…‼︎』

 

暁の賢者達がその声にハッとする。

 

饗宴士

『タジムニウス・レオンクール王太子殿下…ご入来である‼︎‼︎』

 

それに合わせて軍楽隊がブレトニア国家を奏で出し、護衛だからか、先程の騎士達よりも豪華かつ強力な鎧を纏った騎士達とレパンのペガサス騎士達が列を為して、豪華な装飾を身につけ街を闊歩し、そしてその間を傍をレパンとカムイに固められ、堂々とそして優雅に馬を立てるタジムが入城してきた。

そしてその瞬間、民達の興奮は最高潮に達した‼︎

 

民衆

『タジムニウス・レオンクール王太子殿下万歳ー‼︎我らが偉大なる主人に幸あれ‼︎慈しみ深きロイアークに栄光を‼︎‼︎』

 

タジムはその声に応える様にヘルムを脱ぎ素顔を露わにすると剣を抜き天に掲げてみせた。

民達の興奮は限界を超えた。

 

暁の賢者達は自分達の前に立つのはかつての仲間、冒険者タジムンティス・フェデリウスでは無く、ブレトニア王太子タジムニウス・レオンクールなのだと理解した瞬間でもあった。

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