ファイナルファンタジー14 異譚 獅子の子タジムニウス 作:オラニエ公ジャン・バルジャン
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クーロンヌ郊外
タジム
(ブレトニア王にはなりたいわけじゃ無い。
ただその方が多くの人間が喜ぶ。
ただそう思っただけだった。
……だが今は、俺は玉座を望んでいる。
今までの言い訳は全て俺の野心を隠す為の…自分が見て見ぬ振りをする為の詭弁でしか無い。
自分の野望の為に玉座は必要だったのだ…。
俺は…いや、私は冒険者では居られないのだ。)
タジムは自身をブレトニア王と呼ぶ将兵達の声に包まれながら王都クーロンヌに入城した。
クーロンヌ公の死は王都中に伝わり、民は涙を流さぬ者など居ないかの如く咽び泣きに包まれた。
継承順位的にタジムは王国騎士になって、直ぐにクーロンヌ公爵領を継承する事になり、この時点でタジムはクーロンヌ公爵となった。
ブレトニア内のガレマール帝国軍が一掃され、再統一された事で各地の公爵と伯爵、そして男爵が集められ、王城内は老若男女の貴族や各町村の長や有力者が集められた。
王城内にて今後の動向が話し合われたが、此方は変わらず、ライクランド帝国の奪還、再びブレトニア王国とライクランド帝国を一つの国として束ね、超大国アルトドルフ帝国の復興。
これにまとまったがいかんせん、未だ兵力が足りぬ状況であった。
ブレトニア王国全土が支配下に入った今、遅かれ早かれ力最盛期の力を取り戻すだろうが、それではやはり元々国力差があるライクランド側…つまり選帝諸侯軍が有利になってしまう。
結果、クーロンヌ包囲を大損害を与え、撃退した勢いのある今のうちに、山岳城砦オヴェリアを落とし、ライクランド公爵領、そして王都クーロンヌよりマリエンブルク公爵領の双方に軍を侵入させるべしという事になったのだ。
オヴェリアを抜けば、帝都アルトドルフを打通出来る他、帝国中枢を一挙に叩けるという心理ダメージを与える事になるのだ。
次にマリエンブルク領に関しては元々貿易港として名を馳せたマリエンブルクはクーロンヌより北側、川を少し登った所に位置する内海に面した要衝であり、ここを取る事は経済的にも軍事的にも有利に立てる事が見込めるからである。
軍事的メリットはボリス・ドートブリンガーの所領ミドンランド公爵領に隣接している為、ミドンランド公領首都ミドンハイムを射程に収められるという事、経済的メリットは先に述べた様に大貿易港という事で交易等で外貨を得る事が出来る為、まさしく富を生み出す地なのである。
然し当然それは敵も承知している。
マリエンブルク領侵攻に際して最初にして最後の難関である城塞都市マリエンブルクは要衝だけあって堅城であり、その兵も優秀である。
しかも、ライクランド、ミドンランド、ノルンランド(ライクランド帝国北方の領土、ここに存在するもう一つの内海を挟んでガレマール帝国領が有る)からの援軍が到着しやすいので、実質大規模決戦を起こしやすい為、兵力の優位がある選帝諸侯軍は有利である。
次にオヴェリアは山脈を二つに隔てた渓谷を丸々使った城砦である。
強固な要塞として建てられた為その設備を優秀であり、建築上の都合で大兵は収容出来ないが、その為か比較的兵も精鋭が集められている。
更にもっと言ってしまえばブレトニア側はこのオヴェリア要塞を落とす事にメリットはあまり無いのだ。
確かにこの強固な要塞が手に入れば心強い事は明白だ。
されどライクランドに侵攻するとなると話は別である。
むしろその狭い峡谷は大軍を進ませるにはキツイものがあり、一度に渡れる兵が少ないのだ。
つまりこの要塞は守備のみにしか使えず、攻勢に転じにくい拠点なのだ。
しかも選帝諸侯軍はブレトニア側へ侵攻するならわざわざこの要塞を通る必要が無いので、無視される可能性が極めて高い。
この要塞に関しては周辺地域の安全の為に取りに行くという事だけなのだが、然し生半可な兵数では落とせない為、これがブレトニア側のストレスを産んだ。
結果ブレトニア王国首脳陣の会議によってマリエンブルク領に大規模進軍する構えを見せ敵にも敢えて情報を流し戦力を集中させている間にオヴェリア要塞を落とし、敵の兵力撹乱を狙う二正面作戦通称『双頭の獅子作戦』が立案されたのである。
大兵を持って、敵主力軍を抑えている間に、精鋭軍を以ってオヴェリア要塞を陥落せしめ、後方より敵を威圧、後方を遮断する作戦である。
幸いにも先のクーロンヌ包囲戦により、敵軍もかなりの損害を被った事は間違いなく、四万から五万弱(オヴェリア要塞を堅実に陥落せしめる為に必要な兵力)の兵が後方に現われば敵の混乱を招き、ライクランド陥落の危機や補給線にも影響を及ぼす為、敵はマリエンブルクに兵を置けなくなる。
つまりそれら一帯を奪取しやすい様に環境を作るのが目的であった。
実行にあたっての様々な問題を解決しなければならないので会議は暫く続いたという。
軍を動かす為の補給物資や、武器弾薬、更にオヴェリア要塞攻略の為の精鋭抽出等やる事は沢山あった。
結果として、山岳戦に強い、パラヴォン公、オリオン公がそれぞれ25,000の兵を率いて攻略に当たり、残りの各領主の軍を一挙にクーロンヌに集め、タジムを総大将にして約20万(今日迄に集まった各地の残党とブレトニア国内の軍や志願兵、帝国軍に徴用された兵達を集めた数。)を以ってマリエンブルクに進撃する構えとなった。
然し、それでも不安が残る。
あくまでブレトニア側は戦える兵は確保しているのみであり、確実に勝てる兵力を持っていなかったのだ。
兵数が絶対的な戦争の勝利の要因となる訳ではないが、所詮戦は数である。
タジムはカルカソンヌ公の勧めで、各国に向けて再び自身の正統性を訴え、尚且つ助力を求める演説を行う事にした。
未だ各地に離散したままのブレトニア・ライクランド軍の残党や遠い地に布教活動に出て行った遍歴騎士団、そして各国の義勇心に熱い者達が義勇兵として集まってくれるのを狙った行為である。
タジムは確実を極める為に会議の後、ある国に書状を送る事に決め、これをアルフィノに託した。
アルフィノ
『これをエオルゼアに送れば良いのかい?』
タジム
『そうだ、私が立った時にああ言ってしまったが、エオルゼア諸国同盟にブレトニア王国は少なくとも現時点では帝国以外と刃を交える気がない事を証明したい。
そこで、今渡した書状とアルフィノ、君の暁の血盟としての口添えを頼みたい。』
アルフィノ
『私からも書状を…確かにその方が効果はあるか。』
タジム
『エオルゼア諸国間ではあくまで中立の立場にあるべき諸君にこんな事を頼むは迷惑だとは分かっているが、我らはあまりにも嫌われ過ぎている、きっとエオルゼアでは俺はもう光の戦士じゃなくて凶暴なブレトニア人の親玉と揶揄されている事だろうよ。』
アルフィノはこれに対しては返答を控えた。
タジム
『だが、君が言うのでは話は別だ。
演説を行う前に彼らの心境が変われば、聞く耳位は持ってくれるかも知れない。
引き受けてくれるだろうか?』
アルフィノ
『タジム、いや陛下。
お受けいたします、然し一つ条件を提示してもよろしいでしょうか?』
タジム
『まだその呼び方は慣れぬな。
聞こう、私に出来る事であれば、な?』
アルフィノは一枚の紙、それも上等な羊皮紙を取り出した。
アルフィノ
『此方に陛下自身の字で自分はエオルゼア諸国同盟及び東方連合に対し、野心は無く攻めるつもりは無いその証として不可侵を結び、自身が約束を違える事はしないと言う事を証明する血判を押して頂きたいのです。』
タジム
『これは…用意周到だな、成る程確かに一番ロジカルな方法だ。』
タジムは羽根ペンを手に取り、一筆描くと、クーロンヌの剣を少しだけ引き抜き、自らの親指を斬ると、血が垂れ出した親指を羊皮紙に押し付けた。
羊皮紙を受け取ったアルフィノが中身を確認すると頷いてそれをしまった。
アルフィノは一礼して立ち去ろうとするが、タジムはアルフィノを呼び止めた。
タジム
『アルフィノ、一つ訂正しておくよ。』
アルフィノ
『?』
タジム
『私はまだ、陛下では無い。』
アルフィノ
『心得ました殿下。』
アルフィノは会議室より立ち去るとこう一人で漏らした。
アルフィノ
(相変わらず素直じゃない。)
アルフィノが賢人達の為に用意された宿舎に戻り、事の次第を話した。
現在、シドがオルカル山地の空中艦隊の整備の為に出ているので、書状は中立国ラザハンの飛行商船に託し、エオルゼア同盟の一角、グリダニアに運んでもらう手筈を賢人達は話し合いの末取り決めた。
その夜、アルフィノはアリゼーの部屋に向かったがそこから喧騒の声が聞こえたのでギョッとしたが、どうやらその声はアリゼーとグ・ラハ・ティアの物であると分かったがどうやら言い争いをしているらしい。
流石に捨て置けないので、アルフィノは部屋を開けると、グ・ラハの手には何か書かれた手紙が握られており、アリゼーがそれを取り戻そうとしているようだった。
グ・ラハはアルフィノの姿を見るや荒々しくこう言い放つ。
グ・ラハ
『アルフィノ!
これは君も承知している事か‼︎』
そう言うと握られた手紙をアルフィノに投げる。
アリゼー
『ラハ!
返しなさいよ、アルフィノも受け取らないでよ‼︎』
アルフィノは手紙の内容を見て驚愕した。
それはアリゼーの直筆で書かれたブレトニア王国の危険性とタジムニウス・レオンクールという英雄が狂気に満ちた人殺しに堕落したという内容が書かれ、エオルゼア諸国に決してブレトニアと手を取る事の無いように危険喚起を促す事と恐らくゼノス・イェー・ガルヴァスとアシエン・ファダニエルによって再編されるであろう帝国と共倒れさせる方が良いと献策する旨が書かれていた。
アルフィノ
『アリゼー…これは一体…どういう事なんだ?』
アリゼー
『二人は何とも思わなかったの⁉︎
ここ最近のあの人の言動を‼︎
えぇ、そうね側から見ればみんなの為に戦ってるように見えるでしょうね。
でも、あれはそんな物じゃない、あの人は自分の為に、自分の欲望の為に戦ってる‼︎
自分が人を斬り殺して、斬り殺させて、斬り殺されるのを見て楽しんでる‼︎』
グ・ラハ
『違う‼︎
あの人はそんな人じゃない‼︎
もしタジムが本当にそんな奴ならあんなに多くの人々が付いてくるものか。』
アリゼー
『あんたも、ここの人達もみんなタジムの英雄としての偶像に眼を奪われてるだけよ‼︎
私は見たの、オルカル山地で一人で盤上の駒を動かしながらまるでゲームをしている様なタジムを…あの恐ろしい笑顔を浮かべたタジムを…あれじゃあまるで…』
アルフィノ
『ゼノス・イェー・ガルヴァスの様だった。
そう言おうとしたんじゃないかい?』
アルフィノがまさか自分の言おうとした事を先に言い出すとは思わずアリゼーは驚いた。
アリゼー
『知ってたの?』
アルフィノ
『ああ、彼は自身の内にある狂気や凶暴性に気がついていた。
そしてそれが、自身の制御を超える事も。』
アルフィノはかつてタジムより打ち明けられた事を二人に話した。
自身の戦を何処かで楽しんでいる沙河や寧ろそこにこそ生の充足を得られる場所がある事を。
だが、それに飲み込まれてはいけないという事も理解していた事も併せて話していた事も伝えた。
アルフィノ
『今の状況になった時にきっとそれが災いを呼ぶと分かっていたんだと思う。
だけど、彼の野心については分からない。
アリゼー、本当に彼はエオルゼアに侵攻の意がある事を君に言ったのかい?』
アリゼー
『いいえ、そういう訳ではないけど彼は自分がやると言った事は必ずやるって言っていたから…あの時の演説で言っていたことは決して誇張なんかじゃないと思ったのよ。』
アルフィノ
『正直、アリゼーの見解もグ・ラハの見解もどれも正解だよ。
彼は二面性を持っている、だけど一つわかっていて欲しいのは結局タジムニウス・レオンクールと言う一人の人間なんだって事。
そしてアリゼー、彼はその凶暴性と向き合う努力を怠ってはいないが、必要であればそれを使う覚悟はある、そしてそれを使わせない、少なくともエオルゼアに向けられないよう為に私達が居るんだ、それを忘れてはいけないよ。』
アリゼーはそれを聞くと書いた手紙を蝋燭の火で燃やした。
心の内より響く裏切り者を王にするのかという自身の声音に良く似た気味の悪い声を掻き消すように…。
アルフィノは二人が仲直りした事を確認するとお開きにしてグ・ラハと部屋を出ようとした時だった。
自身を呼ぶ女性の声が廊下の先から聞こえてきた。
声の主は黒い葬儀用のドレスを着たレパンであった。
その目は泣き腫らしたのか赤くなっていた。
先代クーロンヌ公トロワヴィルは陣中葬を行ったので恐らく誰かの葬儀に出ていたのであろうが、今はそれを言及する必要はないだろう。
レパン
『す、直ぐに城門においで下さい。
タジムニウス殿下が王都を出ていかれてしまったのです!』
グ・ラハ
『な、なんだって⁉︎
どうしてそんな事に、そもそも一体どこに⁉︎』
レパン
『詳しい話はタナトス卿より説明されるそうです、皆様念の為武装をしたうえで城門に。
ヤ・シュトラ姉様は既に城門においでです。』
3人は頷き合うとそれぞれの得物を持って城門へ集まった。
城門前は慌てる騎士や兵達が走り回り、怒号が飛び交っていた。
ヤ・シュトラ
『貴方達も来たのね。』
ヤ・シュトラは四人を見つけると手を振った。
アルフィノ
『タナトス卿、一体殿下はどちらに行かれたのです?』
カムイ
『………。』
アルフィノ
『タナトス卿‼︎』
カムイ
『信じては貰えぬと思うが…私と殿下は大広間で双頭の獅子作戦の為の布陣や補給線の確認などを行っていたのだが…そこに再び現れたのだ…緑の騎士が。』
その場にいた全員が驚愕した。
レパン
『ば、馬鹿な⁉︎
あれは神話の世界の存在では無いのですか!』
カムイ
『いや、あの方は決してその様な物では無い。
実は30年程前に一度だけ私と陛下の前に現れた。
尤も、当の本人に口止めをする様に騎士の誓いを結ばされたので記録はさせてない。』
ヤ・シュトラ
『それよりもその緑の騎士がなんなのか教えてくださらないかしら?』
カムイは緑の騎士について話した。
緑の騎士
ブレトニア神話に於いて、ある日突然現れた全身をまるで植物のような色と装飾の施された古代の騎士の鎧と装束で身を包んだ騎士である。
しかし、その体は実体を持たず、剣で斬っても、槍で刺してもその身には当たる事が無かったという。
首を斬り飛ばしたのに、その首まで歩いていって何事もなかったように身体にくっつけた辺り不死身である事は間違いない為人々はそれは神の使いや亡霊の類と認識していたと云う。
聖杯の力を求めて旅をする騎士の前に現れ、一騎討ちを所望し、一騎討ちの末敗れると聖女フェイ・エンチャントレスの居場所を教え去ってゆくと云う。
その事から聖杯の力を得て、人智を超える力を得ようとする騎士(聖杯騎士)達の最後の試練を与える存在として何度も現れるのだという。
そしてブレトニアに恐ろしい危機が迫った時も現れ、騎士や兵士達を鼓舞し、その力を以って外敵を屠ったとも言われている。
カムイ
『緑の騎士の神話の全てが事実だ。
ブレトニアの史実に於いても緑の騎士は何度も現れ、その度に数々の偉大な騎士や王達に試練を与え、国難を救ってきた。
この事実は王の側近を務めた貴族や騎士にしか伝えられぬ事だ。
聖杯の力も本当だ、聖杯騎士は決して長き遍歴によって武勇を磨いた熟練の騎士では無く、本当に聖杯の力を持って人智を超える力を発揮したという…尤もこれは最後にそれらしい記述があるのも一星暦も昔だがな。』
グ・ラハ
『じゃあ聖杯騎士が超える力を持ってるかも知れないという話は本当なのか⁉︎』
カムイ
『真実だ。
あくまで昔はな、だがそれ以降は緑の騎士は現れる事も無く、フェイ様が聖杯の水を飲ませる事も無くなった為、次第に遍歴騎士はそういう扱いになった。』
アルフィノ
『だが、その緑の騎士は現れた。
タジムに用が会って現れたという事は…』
カムイ
『うむ、何かしらの試練を与える為に現れたのだろう。
緑の騎士は殿下に剣を向け振り下ろしてきた、突然殿下も剣を抜き、応戦する。
剣が打ち合った時に緑の騎士が殿下について来いと言ったのだ、そして馬で空を駆けたと思ったらそのまま灰色山脈の方に向かって行ったのだ。
殿下も馬で駆けて行ってしまったと云う訳だ。』
灰色山脈にはカムイの領地であるブラックバス城とそれらを支えるドワーフの小地下都市が二つを要する灰色山脈東部公爵領があり、どうやらその方向に向かって緑の騎士は飛んでいったと云う。
カムイ
『飛んでいった方向を見るに山の上とかではなく、せいぜい山の麓辺りに向かった可能性が高いが、我が領地はマリエンブルク領と接する為、何かあれば一大事、直ぐに探さねばならん。
申し訳無いが貴君らの力を借りたい。
レパンも済まぬ、父君が亡くなったというに。』
皆がレパンの方を見た。
その喪服も泣き腫らしたような顔もそれが理由であった。
レパン
『父は最期まで私にブレトニアの騎士である事を求めました。
その務めを果たさねば父に顔向けが出来ませぬ、どうかお気になさらず。』
カムイ
『…そうか。
では参ろう、国境線にはカルカソンヌ公の軍が張ってくれているので何かあればそちらに向かい助力を乞う事も出来るだろう。』
一行は馬で山脈に向かう。
道中で騎士や兵士達が主君の名を呼び探し回る姿を何度も見ながら馬を走らせた。
結局、山に着くまでタジムの姿は見つからなかった。
山に着いた時ドワーフの炭鉱夫達が下山してくるのを見たカムイは声を掛けた。
カムイ
『その方ら、少し待て。』
ドワーフ
『む…、おお御領主様じゃ‼︎』
ドワーフ
『お帰りなさいませ、ワシら民草一同20余年この日が来るのを…。』
炭鉱夫達はおいおい泣き始めてしまったので話の腰が折れてしまったが、カムイはここに騎士が来なかったかと聞くと確かに立派な装束を着た騎士が剣を持って走り去っていくのを彼ら見たと話した。
走っていった場所を聞くと、少し行ったところに使われてない洞窟があり、そこに向かったと言ったが炭鉱夫達はそこには魔物が住み着いていて危険だとも話した。
アルフィノ
『魔物程度じゃ彼は倒れない。
人の寄り付かぬ所が果たし合いの場か。』
カムイは頷くと炭鉱夫達に懐にあった銀貨の入った小袋を手数料と仲間や家族に美酒や食事でも振る舞ってやれと投げ渡してやった。
一行は炭鉱夫達と別れるとその例の洞窟に辿り着いた。
洞窟からは微かに剣戟の音が聞こえてきた。
間違いなく二人はここに居る…一行は迷わず洞窟に入った。
洞窟内は魔物の死体が散乱していた。
中に入った二人に襲いかかった魔物は一匹残らず斬り伏せられたのだろう。
奥に進めば進むほど剣戟の音が大きくなっていった。
そして広い広間に出ると、そこは人工的に作られた決闘場であり、燭台には緑色の火が灯り、決闘場を照らしていた。
二人はまるで踊る様に戦っていた。
その様子を見たヤ・シュトラは言葉を漏らした。
ヤ・シュトラ
『これは…どういう事なの…⁉︎』
アリゼー
『どうしたのよ急に?』
ヤ・シュトラ
『緑の騎士の話や、文献に載っている事を調べて行くにつれて、私は彼は蛮神の様な存在だと思っていたのだけれど…アレはクリスタルを喰らってなどいない、アレは純粋に魔力で呼び出された存在…つまり緑の騎士は…召喚獣よ。』
彼女の言葉に一同は驚愕する。
だがそんなわけが無い、数百年から数千年もの間召喚していられる召喚獣なんて存在する訳が無い、それこそクリスタルを喰らう蛮神の様な膨大な魔力供給源が必要な筈だった。
ヤ・シュトラ
『でも、あの魔力の流れは人為的に生み出された存在そのものよ…残念だけれどそうとしか考えられない。』
そんな彼らを尻目に戦っていた二人であったが何合、何十合とぶつかっても勝負がつかない。
二人は後ろに飛び下がり、仕切り直す。
緑の騎士は盾を捨て剣を両手で構える、然しタジムは剣を下ろしてしまったのだ。
カムイ
『な、何を⁉︎』
緑の騎士が走り出し、タジムの首を切り飛ばそうと横に切り払う。
だがタジムはなんとそれを体を後ろに仰け反らし寸前のところで回避し、緑の騎士が振り返った瞬間に懐に入り込み、緑の騎士が持つエメラルド色の剣を跳ね飛ばすと、その騎士の首を跳ね飛ばしたのだ。
首を失った緑の騎士は倒れ、光となった霧散したが、何処からか声だけ聞こえてきた
『再び、まみえようぞ。
次は其方らに真実を話さん…。』
するとタジムは過去視の衝動に襲われる。
だが、それだけでは無い。
それと同時に周辺の空間まで歪み出したのだ。
アルフィノ
『これは…一体⁉︎』
一行は決闘場ではなく、何処かの平原に立っていた。
その平原ではどうやらブレトニアとライクランドの軍勢とガレマール帝国の軍勢が大戦をしている最中の様だった。
タジム
『一体今度は何を見せるというのだ…?
…っ⁉︎
これは…過去視では無いのか?
何でみんながいるんだ‼︎』
普段の過去視であれば光の加護を持つタジムにしかこの光景は見えない筈だった。
だがその場にいたアルフィノ達もどうやらこの光景を見ている様だった。
そしてこの光景に見覚えのある男がいた。
カムイ
『ここは…キスレヴじゃ無いか…⁉︎
しかもこの有様…まさか25年前の…戦いか…?』
後ろから馬の嗎声が聞こえ振り向くと騎士の一団が戦場のど真ん中で停止していた。
カムイはあっと声を上げた騎士達の先頭で馬を立てるのは他でも無い若かりし頃の自分とタジムニウスの父フィリップ九世だった。
アリゼー
『あの人ってタジムのお父さん?』
アルフィノ
『フィリップ九世…本当にそっくりだ。』
フィリップ王とカムイは会話していた。
フィリップ
『戦況は我が方が有利か?』
カムイ
『はっ、皇帝陛下直属兵団が中央を突破、このまま進撃できれば、敵将ヴァリス・イェー・ガルヴァスの頭蓋にガール・マラッツを叩き込むことも叶いましょう。』
フィリップ
『うむ、では早く終わらせよう。
ブレトニア全軍‼
これより第二突撃に入る、皇帝陛下の邪魔をする者を生かして帰すな‼︎‼︎︎』
鬨の声が上がり、次の場面に移った。
乱戦の最中、血みどろになりながらも馬上で剣を振るい続けるフィリップ王と騎士達が映し出された。
すると敵側から凄まじい鬨の声が上がった。
ブレトニア騎士
『敵の本陣辺りから鬨の声が挙がってるぞ?』
ブレトニア騎士
『きっと皇帝陛下が敵将に鉄槌を喰らわしたに違いない‼︎』
だがフィリップ王は異様な空気を感じ取っていた…。
そして一気に絶望が襲い掛かる。
伝令
『急報‼︎
皇帝陛下が…皇帝陛下が…!
お討死あそばれたよし‼︎』
ブレトニア軍将
『ば、馬鹿な‼︎‼︎』
カルカソンヌ公
『本当に陛下がお討死あそばされたのか⁉︎』
伝令
『さ、更に…ライクランド帝国ルーンファング十二公爵の内八名、ミドンランド公、オスターランド公、ナルンランド公、タラベックランド公、バットランド公、ハーフランド公…敵軍に寝返ったよし‼︎』
クーロンヌ公
『おのれ‼︎‼︎
帝国貴族筆頭にして皇帝を守る12振りの聖剣を持つ者達が主君を裏切るのか‼︎‼︎』
フィリップ王
『……陛下。
これよりアルトドルフ帝国軍全軍権は大将軍フィリップの名に於いて掌握する‼︎
敵に裏切った八公爵は賊軍である‼︎
残る全軍は各公爵軍事に別れ、それぞれの所領に撤退せよ‼︎
そして各首都に民衆を集め籠城すべし‼︎
帝国軍が到達した際は降伏せよ。
ガレマール帝国軍も長い戦闘で疲弊しているだろうし、降伏する敵を無理に撃つ愚行はせぬ。
今の命令が気に食わぬ者は同志と家族を連れ、各地に離散せよ‼︎
中立国や、親アルトドルフ帝国の国々は迎え受けてくれる。
捲土重来の時来る迄、雌伏せよ‼︎
これはジギスムント陛下より事前に賜りし詔である‼︎‼︎』
敗走するブレトニア軍を追うガレマール帝国軍とライクランド帝国軍。
土煙と悲鳴と共に場面は入れ替わる。
次の場面はクーロンヌ城だった。
城の中は慌しい喧騒に包まれていた。
フィリップ王はある一室に入る。
フィリップ
『戻ったぞブリジット。』
タジム
『母上だ…死ぬ時と変わらぬ綺麗なお顔をしている。』
王と王妃は熱く抱擁する。
王妃の腕には一人の赤子が抱かれていた。
ブリジット
『陛下…私は命を惜しみません、でもこの子だけは…この子だけは敵の手に委ねるなど出来ませぬ、それだけは断じて。』
フィリップは抱かれた赤子を見た。
スヤスヤと眠る赤子の額にキスをすると赤子の手に短剣を握らせた。
フィリップ王
『我が子タジムニウスよ、不甲斐ない父を許してくれよ。』
フィリップ王
『ブリジット、お前とタジムニウスはこの国を出てくれ。
奴等はお前達を生かしておく事を良しとしないだろう。
遠い西の地…エオルゼア小大陸のイシュガルドという国がある。
そこに我が王家の縁のある者がいる、その人達を頼れ。』
ブリジット
『陛下は…陛下は如何するのです!』
フィリップ王
『ブレトニア王として、アルトドルフ帝国軍大将軍として最後の務めを果たす。』
ブリジット
『陛下‼︎』
フィリップ王
『私は父親にはなれぬ、だが反対にそれに値する者が居る。
タナトス卿、ここへ。』
カムイ
『はっ。』
フィリップ王
『汝の王の盾、獅子心騎士団総長の任を解く。
これよりは王太子タジムニウスの供回り、教育係、そして王妃ブリジットの専属の護衛に任命する、我が王国最強の騎士として、友として頼む
どうか二人を守ってくれ。』
カムイ
『……畏まりました。
ですがどうか陛下も何処かに落ち延び、生き延びて下さい。
王太子殿下には父親が必要です。』
フィリップは優しく微笑むと、ヘルムを被り、ランスを手に出ていった。
そして場面は変わり、数百騎の騎士団の先頭に立ちランスを構えて突進するフィリップ王が映った
フィリップ王
『進めェェ‼︎
ガレマール帝国の者共よ、ブレトニア王の道連れにしてやる故光栄に思うが良い‼︎』
獅子心騎士団員
『うおおおおおお‼︎‼︎
陛下に続けぇぇぇ‼︎‼︎‼︎』
ガレマール帝国兵
『ひぃ⁉︎』
ガレマール帝国兵
『逃げろ殺されるぞ‼︎』
たった数百騎の騎士団が敵の大軍を切り刻みながら暴れ回るが多勢に無勢。
獅子心騎士団は全員が討ち取られたが、1人につき数十人の帝国兵が討ち取られ、帝国軍は一度後退を開始した所で場面が変わった。
次の場面は何とこの決闘場であった。
血みどろになり、血を流しながらフィリップ王は決闘場の奥の壁に座り込む。
フィリップ王
『これだけ時間を稼げば…ハァ…ハァ…もう逃げ延びたであろう。』
するとフィリップ王の前に緑色の光が現れ、やがてそれは人の形をし、光は金髪の白いドレスを着た美女に変わった。
フィリップ王
『モルギアナ…来てくれたのですね。
我が淑女よ、私は聖女の騎士としての務めを果たせたのでしょうか?』
過去視を見ていたアリゼーは口を開く
アリゼー
『アレが泉の女神の代弁者、泉の淑女フェイ・エンチャントレス。』
ヤ・シュトラ
『ミンフィリアにそっくりね。
それにこの感覚、彼女も光の巫女だと言うの?』
カムイ
『殿下、彼女が先代のフェイ・エンチャントレス、モルギアナ様です。』
タジム
『彼女が…。
先代はこの直後に亡くなられたそうだな?』
カムイ
『はい、病を経ておりまして、もう動けぬ程であったはずでしたが。』
過去視の方に振り向くと、モルギアナはフィリップ王の前に腰を下ろし、その白い手をフィリップ王の頬に当てた。
モルギアナ
『フィリップ、貴方は最後までブレトニアの騎士としての務めを果たしてくれました。
女神様も…ハイデリンもきっと御喜びになるでしょう。
貴方のおかげで希望は繋がった。』
そう言い終わるとモルギアナは嗚咽し、涙を流した。
もう既にフィリップ王は瞼を閉じ、息絶えていたのだ。
モルギアナは魔法でフィリップを浮かせるとタジム達の方に向かってきた。
そしてタジム達の後ろにある壁に椅子を作ると彼を座らせた。
モルギアナ
『でも、貴方がここにいると言うことはまだ使命があるはず、緑の騎士、ここに来なさい。』
緑の騎士が同じ様に光から現れた。
モルギアナ
『時が来れば、ジルの血を引く者がまた現れるでしょう、その時は貴方が試練を与えなさい。
この場で、そして貴方に彼が勝ったら事の顛末を彼に伝えるのです。
私が本来やらねばならぬ事ですが、もうそこまで肉体が持ちません。
心苦しいですが、お願いしても良いですか?』
緑の騎士
『承知。』
そう言うと緑の騎士は消えた。
モルギアナはフィリップの亡骸を翡翠色のクリスタルに変えるとそれを壁に隠した。
そしてこう言い残し去った。
モルギアナ
『良い旅を…。』
そして過去視は終わった。
アルフィノ
『泉の女神がハイデリンだって…⁉︎
じゃあブレトニア王国はハイデリンが作ったのか…ジル王や聖杯騎士達はハイデリンの加護を受けた光の戦士と言うことになる。』
アルフィノを尻目にタジムは壁に剣を突き刺す。
すると音を立てて、壁は崩れ去り、そこにはクリスタル化したフィリップの亡骸が過去視と同じ形で鎮座していた。
タジム
『父上…そして王家の鎧。
ガレマール帝国の手にこの聖剣と鎧が渡らぬ様に父上はここ迄来たんだ。
死ぬ為に。』
?
『そしてもう一つの役目を果たす為に。』
一同は声のする方を見ると何とフィリップ王が立っているでは無いか。
だがそれは翡翠色に光る霊体であった。
タジム
『父上…なのですか?』
フィリップ
『大きくなったな。
私にそっくりだが、目元だけは…嗚呼ブリジットと同じだ。』
タジムは涙を流した。
タジム
『25年ぶりです父上。
お会いしとうございました。』
フィリップ
『モルギアナ様が、最期の力を使って、私の魂をエーテルに同化させたのだ。
私とお前がもう一度会う為に、そしてこれを渡す為に。』
フィリップは壁に向かって手を翳すと、別の壁が崩れ、そこには一振りの大剣が台座に刺さっていた。
それは銀色に光り輝き、その長く太い見た目をしていたが、その大剣には柄が付いていなかったがそれ以外は正しくそのまま巨大化した剣であった。
フィリップ王
『ライオン・ハート。
ルーエン・レオンクール王の秘宝にして、大神シグマーがてずからに作り上げた、もう13本目のルーンファングだ。』
タジム
『ルーンファングですと、ですがアレは12振りでしょう⁉︎』
フィリップ王
『そうだ、これはシグマーがハイデリンの為に打った大剣なのだ。
シグマーの時代も、始祖王ジルの様にハイデリンは肉体を持ち、私たちと同じ時と場所で生きていたのだろう。
だが剣は受け取られる事なく、この様な形で放置される事になってしまった。
刀身だけが有りとあらゆる変遷を受けて、遂にルーエン王に手に渡った、そしてその刀身から並々ならぬ力を感じ取った彼は当代のフェイ・エンチャントレスつまり泉の淑女に助言を乞うた。
そしてそれがライオン・ハートであると知った泉の淑女はこう言ったのだ。
『その刀身を貴方のクーロンヌの剣の為の巨大な鞘に造り替えなさい。そして作り替えたら時が来るまで誰にも知られぬよう封印するのです。』とな。
ルーエン王はその通りに従い、この地にライオン・ハートを隠し、淑女に決して誰にも口外せぬと誓った。』
ヤ・シュトラはそれに疑問を覚え、口を挟んだ。
ヤ・シュトラ
『少し良いかしら?
誰からも秘密にする様にしたのに、なぜ貴方はその事実を知っているのかしら?』
フィリップ王
『私は死んだ時にモルギアナの最期の力でエーテルと一体となったと言ったな?
そのお陰で私は星海を征く歴代の王や泉の淑女の魂と交流できたのだ。
そしてその大剣を知る事になった。
私がハイデリンより賜りし最後の使命はタジムニウスよ、お前にこの剣を渡す事だったのだ。』
タジムは大剣の前に立つ、だが柄が無い以上引き抜く事はできない。
タジムはクーロンヌの剣を取り出した。
まるで使い方を知っている様な所作でライオン・ハートにクーロンヌの剣を鞘に収めたまま刺しこんだ。
するとクーロンヌの剣は刀身と鍔に固定され、剣の柄が伸び、伸びた部分を鍔が保護する様に折り畳まれ、大剣用の柄に変形したのだ。
ライオン・ハートは大剣に相応しい柄を手に入れたのだ。
ズラァァァンンと鉄の擦れる音を立てながらライオン・ハートは抜けた。
タジム
『この剣から感じる…クーロンヌの剣を持った時よりも強く歴代の王達の想いが。』
するとフィリップ王の霊体が少しづつ光に還り出したのだ。
フィリップ王
『時間切れか…タジムニウスよ、最後にもう一つだけ教えておく。』
タジムは真剣な面持ちで耳を傾けた。
フィリップ王
『良いか、我らブレトニア王は決して孤独ではない。
歴代の王達の魂や、生きとし生けるものの想いがその大剣を通してお前に伝えるだろう。
常に共にあれ、それらは常にお前と共にある。』
フィリップ王は言い終わると父親らしい優しい笑顔を浮かべた。
そしてカムイとアルフィノ達に礼を述べた。
フィリップ王
『ありがとう我が友よ、ここまで良くタジムニウスを育ててくれた。』
カムイ
『陛下…フィリップよ…。』
カムイは咽び泣く。
フィリップは今度はアルフィノ達に頭を下げた。
フィリップ王
『エオルゼアの方々よ、父として我が子の傍に居てくれた事を心よりお礼を申し上げる。
どうかこれからも我が子と接してやってくれ。
親と言うのはどんな状態になっても、子供が心配なんだ。』
そう言うともう一つの光が現れた。
それはタジムの母ブリジットに変わるとフィリップ王に抱擁した。
タジム
『母上…父上…。』
タジムは涙を流しながら走り出した消えようとする二人に追い縋ろうと。
ブリジット
『ああ…泣かないでタジムニウス、私の可愛い子大丈夫よ。』
フィリップ王
『また会える。
魂の声を聞け、そうすれば私達はいつでもお前に応える。
忘れるな光の加護は常にお前と共にある…。』
二人は光に還った。
泣き崩れたまま動かなくなったタジムにアリゼーは近寄った。
アリゼー
『タジム、大丈夫?』
アリゼーが肩に手をやると、タジムはアリゼーのの肩に手をやり、抱き寄せた。
アリゼー
『えっ…///
ちょっとタジム⁉︎』
タジム
『ありがとうな、アリゼー。』
タジムはそう言ってふっと笑うと、立ち上がった。
タジムのその顔は泣いていたとは思えぬ程快活になっていた。
タジム
『タナトス卿‼︎』
その活気と覇気に満ちた呼び声にカムイは我に変える。
カムイ
『はっ‼︎』
タジム
『城に戻り、全世界に向けて我が意を示す演説を行う。
各国に助力もその時に求める、自らの意志と思いで、誠意を持って彼らに伝える事がある。』
カムイ
『御意‼︎』
タジム
『アルフィノ達も同席してくれ、君達が居てくれる方が心強い。
頼めるかな?』
アルフィノ
『ああ、任せてくれ。』
一行はこうして城に戻った。
他の者達はどこに行っていたのだと聞こうとしたが、城に戻ったタジムが国王の正装をして玉座の間に向かっていく事のでそれも出来ず、寧ろ新たな王に対して首を垂れるしか出来なかった。
城の窓からは朝日が登り、その光が差し込んでいた。
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世界各国はブレトニアからの演説に注意を向けた。
エオルゼア諸国の盟主達や人民は映像機に視線を向け、東方連合や各地に離散したガレマール帝国軍や、各地の勢力も同様であった。
タジムは父より受け継いだ王家の鎧と青地のトガとマントを身につけ、それらには金獅子の刺繍が施されていた。
そして聖大剣ライオン・ハートを床につけ、演説を始めた。
『この声を聞き、映像機の前にいる人々に早朝からの無礼を許して頂きたい。
私は王太子…いやブレトニア国王、タジムニウス・レオンクールです。
私はここに自身のブレトニア王即位の決意を表明すると共に、ミドンランド公ボリス・ドートブリンガー率いるライクランド帝国選帝諸侯連合に対し、改めて宣戦を布告する為に此度の会見を開く事に至った次第です。
私がこうして立った理由は先に述べたと思うが、私は改めて王国の為、帝国の為、そして我らが母なる星の為に戦う事をここに決めた。
諸君、もう一度考えてみてほしい、今の我らの有様を。
あまりにも長い戦乱の世で、世界各地は荒廃し、星の命を喰らい尽くそうとしている。
木々は枯れ、水は干上がり、空は火薬と焼けた死体の匂いで充満しようとしている。
そしてそんな状態になった星を破壊しようとする輩とそれに組み従う者が居る。
私はそう言った愚か者共をこれ以上野放しに出来ぬとこの王土再統一の中で確信したのである。
私はこの星に生きる一人の人間として、ゼノス・イェー・ガルヴァスとアシエン・ファダニエル、そしてそれらに組み従う者に決して降伏しない‼︎
今、誰かが立たねば世界は滅びてしまう。
だからこそ私は立つ、両親と、歴代の王達の想いを背負って立つのだ。
だが私だけは彼等には勝てない。
そこで皆様にお願いしたい。
どうか私と共に戦って頂きたい。
知っての通り、我々は互いに血を流し、その怨恨は凄まじい、だが今は過去よりも未来が大切な時である事は皆様も承知しているはず。
当然我が国にもこれに対し反対する者も居るでしょう。
ですが、我らの代でこの怨恨を止め、巨悪に立ち上がらねば生まれてくる子らに平和な世界を残してあげる事が出来なくなるのだ。
だが我らが立ち上がれば、彼奴等など物の数では無い、手遅れになる前に止めねばならない。
今もこうしている間に正体不明の塔は世界各地に出現している。
刻一刻と世界の破滅の時が迫っている。
私はその破滅を決して受け入れる気は無い。
その為に先ず、その尖兵たるボリス・ドートブリンガーを倒し、そして必ずゼノスとアシエンを再び我が手で倒す‼︎
だから、その為にどうか皆様の力を貸していただきたい。
みんなの想いの為に立ち上がってほしい。
常に闇を払うのはその心に光を宿す者だけ、だがそれは光の加護を受けた超える力を持つ者や私だけでは無い、みんなにその光は宿っている。
今こうして生きるみんなが光の使者であり、ハイデリンの子供達なんだ‼︎
一緒に戦ってくれ、愛すべきものを守る為に‼︎
今全てに終止符を打つんだ‼︎』
城に整列した兵や騎士達は雄叫びを挙げる‼︎
将兵
『ブレトニア王タジムニウス陛下バンザーイ‼︎』
将兵
『俺達も最期までお供しますよ陛下ぁ‼︎‼︎』
だが、歓声は城の中からだけでは無かった。
王都中の民草達も雄叫びを挙げた‼︎‼︎
民衆
『国王陛下に続け!』
民衆
『俺達の妻と子のために戦おう‼︎』
民衆
『私達の夫と子のために戦おう‼︎』
______________________
『アラミゴ王宮』
そしてそれはブレトニア王国の外でも起こった。
ラウバーン
『貴様らどうする?』
メルヴィヴ
『決まっている。』
二人はフッと笑うその様子をカ・ヌエは微笑んで見守っていた。
ナナモ
『あやつは結局変わってなかったのだな。
我らの英雄殿はあの時のまま皆の為に戦う気高き騎士のままか。』
ピピン
『如何程送りましょうか?
残念ですが大軍は送れませぬが?』
カ・ヌエ
『あまり大軍を送っても英雄殿も困惑するでしょう。
各勢力一個大隊程抽出して急造の旅団を編成し、義勇軍として派兵しましょう。』
アイメリク
『尤も、抽出するより、彼らを宥めるのが骨が折れそうだがな。』
アラミゴ王宮の前にも民衆と将兵がごった返していた
同盟軍将兵
『英雄殿に続けぇ‼︎‼︎』
アラミゴ市民
『そうだ、いがみ合ってる場合じゃない。
今こそ一つになるんだ‼︎』
アラミゴ市民
『俺たちの国を守る為に‼︎‼︎』
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『アラミゴ某所』
同盟兵
『隊長。』
リセ
『うん、あの人は変わってなんていなかった。
(パパリモ、私達の英雄は本当に凄いよ)』
リセは天幕を出ると隊員達に喝を入れた。
リセ
『良しじゃあ、チャチャっと調査を終わらせようか。
さぁ、やっちゃるよ!』
同盟軍
『オオオオオ‼︎‼︎』
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『東方』
ヒエン
『こちらから動く事は出来ないが、それでも武運を祈る事は出来る。』
ユウギリ
『……本当は今すぐにでも飛んでゆかれたいのでしょう?』
ヒエン
『ワシが今向こうに行ったらタジムに役目を放棄したのかとドヤされるだけだろうよ。』
ヒエンは歩き出した。
ユウギリもそれより3歩後ろより付いてくる。
ヒエン
『ワシにはワシにしか出来ぬことをするぞタジムよ…だからお前も負けるな。』
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『クーロンヌ城』
歓声が上がり、お祭り騒ぎとなった玉座の間からこっそりテラスに出たタジムはライオン・ハートを眺めていた。
そして意識を集中した。
すると微かだが声が聞こえた様な気がした。
____忘れるな我らは常に共にある_____
タジムはまるで何かに挑発する様な不敵な笑みを浮かべ、朝日を見つめていた。