ファイナルファンタジー14 異譚 獅子の子タジムニウス 作:オラニエ公ジャン・バルジャン
ブレトニアの鬨の声を聞きつけた選帝諸侯軍も準備万端で待ち構える準備を整えた。
ブレトニア騎士団が並大抵の騎馬戦力ではない事を緒戦で学んだ彼らは槍兵を先頭に剣兵、銃兵、弩兵の順に並べ、中央最前列は全身を鎧で身を包んだ重装槍歩兵で固めた。
更に今この場にある魔導アーマーも全ての戦線に再配置し、完全に受け止める形を作った。
タジムニウスは全軍の準備が出来た事を確認すると、自身の本陣旗を付けさせたランスを持つと叫んだ。
タジムニウス
『いざぁぁぁぁ‼︎』
全将兵
『いざぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎』
タジムニウスが拍車を入れ軍馬は走り出す。
それと同時に騎士と騎兵達が馬を走らせ、ランスとガンランスを堂々と構えた。
整然と並び、ランスを掲げ猛進する騎士達のランスチャージはまさに高名な画家が書くそれと全く同じ光景だったと後に本陣にて聖女を守るシスターがそう回顧録に記したという。
敵の阻止射撃と砲撃が雨霰の如く降り注ぐも彼らは怯まない、いや騎士達が怯まずとも元来臆病な馬はそうはいかない筈だった。
だが彼らもまた主人達がそうである様に戦う為に育てられた彼らに恐れと言う感情はなかった。
そして何より聖水の魔力は銃弾や矢を弾き返し、砲弾の爆風から守ってくれたのだ。
だが直に喰らえば肉片に成り果てるのは変わらないのだから当然犠牲者も大勢出た。
そしてその砲弾はタジムニウスに目掛けて飛んできた。
だがその前にランスと盾を持ったカムイ、レパン、ジャンが馬を立てる。
そして彼らは同時に詠唱した。
カムイ&レパン&ジャン
『我ら騎士の決意と高徳を盾に乗せて今示さん‼︎
ディヴァインズ・ソウル‼︎‼︎』
三人の盾から魔法のフィールドが現れ、砲弾は全てそのフィールドに触れ爆発し、誰一人傷を負う者は居なかった。
黒煙を切り裂き馬を走らせるタジムニウス、その手に握るランスは敵兵の首を捉えていた。
最前列の騎兵達が最前列の敵兵達を捉えた同時に鬨の声が再び上がる。
タジムニウス&騎士達
『ウオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎‼︎‼︎‼︎』
気圧された敵兵達は槍の穂先が揃わずもはや槍衾とは言えず、次から次へと逃亡し、遂にはその騎兵の波がぶつかって遙か彼方に肉片として飛ばされた。
敵の老若男女が踏み潰され、槍に串刺され、切り刻まれ、叩き潰された。
ララフェル族は馬にペシャンコにされ、アウラ族は鱗ごと叩き潰され、ルガディン族はその首を跳ね飛ばされ、ヒューラン族は槍に死体を掲げられた。
だがそれと同時に落馬した騎士は強硬状態の敵兵に滅多刺しにされ、馬ごと焼き殺された。
そして死ぬ間際に王と聖女に万歳と叫び生き絶え、ただの肉袋と化した。
凄惨な殺戮劇は繰り広げている最中、その真横を縫う様に走る二つの中集団が居た。
______________________ナルンランド公急襲部隊
アルベルト
『今しかない‼︎
敵兵の殆どが今中央に集中している今の内に敵将を討つ‼︎』
アルフィノ
『絶対に倒すんだ今ここで‼︎』
アルベルト
『行くぞ、銃士隊の諸君‼︎』
銃士隊員たち
『応ッ‼︎‼︎』
______________________
オストランド公急襲部隊
カタリナ
『我が子に恥ずかしない戦いをしなければ。』
アイアンロック
『おお、わしもオヴェリウス要塞の方に娘と息子が初陣でしてな。
親というのはどうしても子の前で見栄を張りたくなる物ですからな!』
シド
『けっ、何処の親も一緒だな‼︎
AK隊出るぞ‼︎』
AK乗り達
『『『応っ‼︎』』』
______________________
マリエンブルク近郊…中つ運河(クーロンヌの海岸からマリエンブルクや帝都アルトドルフを含むライクランド帝国を北に横断する運河)
マリエンブルク沿岸警備兵
『ん?
なんだあの船は…。』
士官
『あの国旗は…直ぐに本陣に通信を繋げ‼︎』
______________________
ライクランド平原・ブレトニア軍本陣
通信兵
『聖女様、マリエンブルクより緊急入電です‼︎』
セレーネ
『何事です。』
通信兵
『大型輸送艦が数隻、及び護衛の軽武装船十数隻が接近中との事です。』
セレーネ
『所属は?
敵なのですか、味方なのですか?』
通信兵
『電文が届いております、読み上げます。
我、貴国ニオイテ、一ノ忠臣ト思ワレル、タジムニウス・レオンクール王ニ、義理立テスベク、参上シタ次第、我、イヤ我ラ、共ニ、獅子ト鷲獅子ノ旗ヲ仰イデ戦エル事、誇リニ思ウ。
エオルゼア同盟軍遣アルトドルフ帝国旅団長トウカ・ホークハント准闘将。』
セレーネ
『返信を…。
我、王に変わり感謝を述べる、我らは貴君らを末代まで誇りに思う、貴君らに女神ハイデリンの御加護があらん事を。ライクランド公女セレーネ・フォン・アルトドルフ。』
通信兵
『はっ。』
セレーネは最前線で戦う者達を見守りながら心の中で呟いた。
セレーネ
(勝機は今正しく我らにあります。
これも貴女のお導きなのですかハイデリンよ。)
その頃ナルンランド公を討つために左翼から突撃したアルフィノらは敵の精鋭部隊に阻まれていた。
中央突破に釣られ敵の大半が中央に殺到したは良いが本陣守護の精鋭だけは未だ公の陣を離れず、僅かな兵だけで奇襲したアルフィノ達を弾き返そうとしていた。
ナルンランド騎士
『公爵には指一本とも触れさせんぞ虫けら共‼︎』
アリゼー
『なら力づくで退かすまでよ‼︎』
ヤ・シュトラ
『退きなさい、火傷じゃ済まないわよ‼︎』
ナルンランド騎士
『小娘が粋がりおって‼︎』
奇襲部隊と直営騎士団は乱戦を繰り広げる事になり、結果として賢人達は散り散りになってしまった。
もうすでに乗っていた馬は死に、彼らは徒歩で戦う事を余儀なくされた。
アルフィノ
『あまり時間を掛けてられないというのに…‼︎』
焦るアルフィノは自身の真横からルガディン族騎士の斧が迫っている事に気が付かなかった。
アリゼー
『アルフィノ‼︎‼︎』
アルフィノは妹の叫びでそれに気がついたがもう遅い。
自身の死を覚悟した刹那…
斧は宙で砕け、騎士は胴と脚を切断され倒れる。
目の前に立つのは蒼い髪のミコッテ族の青年、腰に刀を佩き、他の騎士を威圧する様に上段に構えていた。
?
『さぁ、アルフィノ様立ってください。
ここは俺が食い止めます!』
アルフィノ
『君は…⁉︎
そうか君達が来てくれたのか。
後は任せても良いかい、アイリス・ティアドロップ。』
アイリス
『承知。』
アルフィノは賢人らを集めナルンランド公目掛けて走り出す。
だがアルトワ公サイラスは脚を止め、振り返った。
アルベルト
『アルトワ公、何故立ち止まります⁉︎
急がねば、陛下達が‼︎』
サイラス
『だからこそだ、卿は賢人方を守り、先を急げ‼︎』
アルベルト
『先生(サイラスはアルベルトの師)‼︎』
サイラス
『行かぬかアルベルト‼︎
陛下を待たせるでない‼︎
そして良いか、敵将を討ったら本陣旗は燃やせ、それが合図だ‼︎』
アルベルトはその言葉の意味が分かったのか無言で頷くと片手に拳銃、片手に細剣を持ち、賢人達の前を走る。
アルベルト
『皆さま、参りましょう。
ナルンランド公など我らの敵ではありません。』
ヤ・シュトラ
『いいの…?』
アルベルトは少し間を置いて答えた。
アルベルト
『我が師程剣の扱いに長けた騎士はおりませぬ。』
ナルンランド公直属の騎士団の前に立ち塞がったアイリスとサイラス、そして彼にずっと付き従ってきた初老の騎士達は追手を睨みつけた。
サイラス
『かたじけない、異国の侍よ。
この老骨も付き合わせてくれませぬか?』
アイリス
『こちらこそ宜しくお願いします、俺はアイリス・ティアドロップと言います。
高名な騎士とお見受けします、お名前をお聞かせ下さい。』
サイラス
『サイラス・ド・アルトワ、アルトワ公です。』
アイリス
『アルトワ卿、共に戦える事を誇りに思います。
今宵は貴方の王と我が友の為に‼︎』
サイラス
『共に征こうぞ‼︎』
アイリス達と騎士達がぶつかったその頃…。
右翼戦線でも強力な助っ人が現れていた。
オストランド騎士
『あの女を止めろ‼︎』
オストランド兵
『無理だ早すぎ…ゴハァ‼︎』
オストランド公
『ええい何をしているか⁉︎
相手は丸腰の女一人だろう‼︎』
?
『あら、丸腰だからって舐めて掛かると痛い目見るわよ。』
そのピンク色の耳と尻尾の生えたミコッテ族の女闘士は襲い掛かる騎士達を鎧ごと一人残らず倒してしまった。
中には首の骨や、全身の骨を折られて息絶えた者もいた。
?
『そういう貴方は彼らよりやれるかしら?
ルガディン族の貴方がミコッテ族の私に力で勝てない訳無いわよね?』
オストランド公
『下郎が…ワシを馬鹿にしおったな‼︎』
オストランド公は剣を引き抜き、盾を構え馬を降りた。
それと同じ位にカタリナやシド達が到着した。
シド
『ん、お前は…ユイコ・フォックスか⁉︎
お前がエオルゼアからの援軍だったのか?』
ユイコ
『こんにちわ、ガーロンド博士。
積もる話も有るでしょうけど、向こうの男の人を待たせているの。
貴方達も彼に用が有るのでしょうけれど、先に私が済まさせても良いかしら?』
カタリナや途中から妻の元へ合流したフーセネガーは一瞬態度を硬直したが、シドが心配ないと合図したのでこのピンク色のミコッテの女性を信じると頷いた。
アイアンロックとアレクサンドルはこの異国の戦士が拳だけでフルプレートの騎士を打ち倒した事を信じられずにいた。
ユイコとオストランド公はガントレットと剣をぶつけ合う。数合から数十合ぶつかるも片やエオルゼアでも指折りの格闘士、片やライクランド帝国貴族達を束ねる選帝侯の一翼。
武の頂点に立つ者達の戦いは激しさを増した。
だがその戦いに水を差すべく現れたオストランド軍将兵達が殺到した。
オストランド兵
『公爵閣下をお守りしろ‼︎』
オストランド騎士
『反逆者共を殺せ‼︎』
カタリナ
『増援⁉︎
皆迎撃を、あの格闘家殿に近づけてはなりません‼︎』
然し、多勢に無勢とはこの事であり、いくら熟練の戦士達といえど雑兵に圧されてはどうしようもなく、シドも自分用にカスタマイズし、此処に至るまで大立ち回りを披露したAKを失って銃とスパナだけで戦っている状態だった。
そして何人かの兵がユイコに迫った。
シド
『しまった⁉︎
フォックス気をつけろ敵が行ったぞ‼︎』
ユイコは迫り来る敵兵を打ちのめすが兵達の背後から同時に迫るオストランド公と騎士達には対応が出来なかった。
だが彼らの凶刃がこのミコッテ族の女を傷つけることは無かった。
騎士達は断末魔を挙げて倒れる。
そしてそこからひっきりなしに銃声が聞こえ、鉛の弾が飛んできた。
何と飛んできた方向は中津運河に沿って出来ている森から出会った。
だがそこは敵地であったはずだった。
然し、タジムニウスはその認識を覆させたのだ。
アルトワ・レンジャーを始めとした精鋭散兵部隊を伏兵としてこの為に迂回させて、虎の子のヘルブラスター9連装砲を分解させて隊員達に持たせ、渡河、配置を成功させたのだ。
これを成功させた兵達の勇気と気力は尋常では無かったが、彼らはそもそも元は獲物を狩ることに全力を注ぐ狩人で有り、獲物を担いで遠路を歩く事も日常茶飯事の彼らにとっては朝飯前だったのだ。
思いがけない伏兵にオストランド本陣は壊滅的被害を被った。
とりわけ数門のヘルブラスター9連装砲の砲撃は効いた。
やっと邪魔がいなくなったユイコは型を構え直す。
ユイコ
『次で終わらせましょう、時間を掛けるのは無駄でしか無いわ。』
オストランド公
『何処までもおちょくりおって女‼︎』
オストランド公は雄叫びを上げながら剣を振り上げ迫るが、何とユイコはその場で両手を広げ跪いたのだ。
剣がユイコを斬りつけるかと思いきや、何とユイコは剣を振り下ろす敵の手を受け止めてしまった。
そしてそこから剣を奪い去ると、その場で跳躍し高く跳び上がりそこから踵落としを喰らわせ、オストランド公のヘルム諸共頭蓋骨を粉砕してしまった。
そしてその衝撃は凄まじかったのか頭部は破裂し飛び散り、ユイコに幾らか掛かった。
ドッと倒れる死体からユイコは鞘を取り去ると奪った剣を鞘に収めた。
ユイコ
『きっとこれはタジムニウスにとって必要になるでしょうね。
選帝侯、強かったけどその傲慢さが仇になったわね。』
少し時を戻して反対の左翼戦線では賢人達とアルベルトがナルンランド公とその精鋭騎士団と戦闘を繰り広げていた。
ナルンランド公自体は大した事ない…だがそれを守る近衛騎士達はボリス・ドートブリンガー生え抜きの連中であり、これらを突破するのは至難の業だった。
ナルンランド公
『フハハハハ、馬追共が‼︎
貴様ら農民崩れがワシに敵うと思うたか‼︎』
アルベルト
『黙れ、裏切り者‼︎‼︎
貴様のような俗物が居るから我が帝国はこうなったのだ‼︎‼︎』
然し、アルベルトはその自慢の剣技も銃の腕も嘲笑う宿敵に見せつけることは出来なかった。
敵兵に守られたナルンランド公を仕留めるにはあまりにも距離が離れていた。
すると、ヤ・シュトラが地面に杖を突き刺し、魔力を溜め出した。
ヤ・シュトラ
『アルフィノ様、少し時間を稼いで貰えないかしら?
あの男をやっつける方法を思いついたから邪魔してほしくないの?』
アルフィノ
『…分かった。
グ・ラハ・ティア、君はヤ・シュトラを守ってあげてくれ‼︎』
グ・ラハ
『ああ‼︎』
アルフィノ
『アリゼーとバストンヌ公は私と共に迫る敵兵を食い止めます。』
アリゼー
『分かったわ‼︎』
アルベルト
『承知、行くぞ銃士隊‼︎』
銃士隊一同
『『応ッ‼︎‼︎』』
皆がヤ・シュトラを囲むように円陣を組む。
するとアルベルトはアリゼーを呼んだ。
アルベルト
『アリゼー殿、これを‼︎』
アリゼーはアルベルトから投げ渡された物を受け取るとそれは彼の細剣だった。
アルベルト
『今は貴女の元にあった方が良かろう。
その剣は赤魔導士の力を高めてくれる加護が付いている。』
アリゼー
『でも貴方はどうするのよ⁉︎』
するとアルベルトはフッと微笑すると腰にぶら下げていた2丁の拳銃をガンスピンを披露しながら取り出した。
アルベルト
『私は銃士ですよ?』
アリゼーも微笑を浮かべると二人は二振りの剣、2丁の拳銃を構える。
ナルンランド公
『奴らの最後の足掻きだ、奴らを押し殺せ‼︎
だがあのミコッテ族の女とエレゼン族の娘は殺すな身ぐるみ剥いで我が元に連れてこい‼︎』
ヤ・シュトラ
『まぁ、下品な人ね、豚みたいとは思っていたけど。
さぁ、みんな始めるわよ。』
ナルンランド騎士
『奴等を討ち取れ‼︎』
騎士達は斬りかかる。
然し、円陣を組んだ事で互いを補えるアルフィノ達は騎士達を連携で打ち倒していった。
その中でもアリゼーは凄まじかった。
赤魔導士の力が一時的に増幅しているとはいえ繰り出す魔法も桁違いだった。
アリゼー
『光よ、我が敵を焼き尽くし我の道を照らさん‼︎
ヴォルフレア‼︎‼︎』
本来なら4、5人が吹き飛ぶ程度の魔法の筈だったが、魔法を喰らった騎士の周りにいた不幸な十名ほどの騎士が吹き飛んでいった。
アリゼー
『なんて威力、これが本当に赤魔導士の魔法なの?』
アルベルト
『その剣は使用者の魔力を増幅する物、使用者が優秀であれば有るほど効果を発揮する。
流石、賢人ルイゾワ殿のお孫さんだ。』
そう言われたアリゼーは悪い気はしなかった。
アリゼー
『当然よ、お祖父様の孫だもの‼︎』
アルベルト
『では、小生も…。』
アルベルトはそう言うと二丁拳銃で数人の騎士を屠りだした。
しかも確実に急所を射抜き、ガンスピンを決めながら立ち回る姿は敵と味方を魅了した。
アルベルト
『この程度かナルンランドの野郎共‼︎
お前達の国は銃火器の本場じゃなかったのか?
馬追いに銃の腕で負けて悔しくないのか?』
アルフィノ
『ヤ・シュトラまだなのか‼︎』
ヤ・シュトラ
『お待たせ…。
我ら育し大地よ、その偉大な力を今我らに、アースシェイカー‼︎』
すると急に地震が起き、ナルンランド公の周りの土地が隆起した。
騎士達は密集した陣形を組んでた事も災いして隆起した地面に押し飛ばされたり、地割れが起きて穴から落ちていった。
一人残されたナルンランド公は今まさに手薄であった。
それを見逃さず迫るグ・ラハ・ティア。
エーテルで作り出した盾を捨て、剣を両手で掴み走り出す。
ナルンランド公も肥満体の体を持ち上げ、手斧を引き抜き応戦する。
数合のぶつかり合いの末、グ・ラハは手斧を弾き飛ばした。
ナルンランド公は跪いた。
ナルンランド公
『こ、降参だ。
命だけは助けてくれ‼︎』
グ・ラハ
『っ⁉︎
なら今すぐ戦闘を中止させて軍旗を燃やせ。
そうすれば助けてやるぞ。』
ナルンランド公
『分かったわかった。』
とグ・ラハが目を離した時だった。
何とこの卑劣な太った男は銃を隠し持っていたのだ。
そしてグ・ラハに向け、引金を引こうとした。
だが、銃弾は出る事なく突如火だるまになったナルンランド公は悲鳴を上げながら倒れた。
目を離さなかったアリゼーがナルンランド公にとどめを刺したのだ。
アリゼー
『下品でおまけに最低ね。』
こうして二人の大将がほぼ同時に討ち取られ本陣旗は燃やされ二つの狼煙が上がった。
そしてそれは中央で乱戦しているタジムニウスの目にも入ってきた。
タジムニウス
『みんなやってくれたか…。
敵味方問わず触れ回れ、敵将は討ち取ったと‼︎‼︎』
ナルンランド公、オストランド公討死。
これはあっという間に広がった。
ありとあらゆる方法でそれは伝達され、すぐに戦場一帯に伝わった。
何より本陣旗が燃やされ、穂先には二将の首が刺さっているのが何よりの証拠であった。
おまけに将を失ったナルンランド軍、オストランド軍は戦意を喪失し、敗走。
それに合わせこの二人が動き出した。
ソルランド公オットー・フォン・ゲルト
『ソルランドの兄弟姉妹達よ、魔術師の学友、同胞達よ‼︎
今や忍従の時は去った‼︎
先帝陛下の仇をとる好機は今ぞ鷲獅子の元へ‼︎』
ソルランド将兵
『ウオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎‼︎』
ノルドランド公アウグスト・フォン・ブラードフィッシュ
『行くぞ野郎共‼︎
義理堅きノルドランド船乗りの力を陸の碌でなし共に見せつけてやれぇ‼︎‼︎』
ノルドランド将兵
『ウオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎‼︎』
オットー&アウグスト
『軍旗を、いや帝旗を掲げよ‼︎』
両軍の陣地から上がった旗は赤と白地に金の鷲獅子、そして大神シグマーの名が綴られたライクランド帝国の帝旗だった。
それを見たブレトニア軍は指揮は爆発した。
ブレトニア兵
『帝旗が上がったぞ‼︎‼︎』
ブレトニア騎士
『王国旗と一緒に帝国旗を掲げろ‼︎』
その様子を中央第二線で見ていたワルドー伯は狼狽していた。
ワルドー伯
『どうなってんだよ⁉︎
二人とも同時に討ち取られたって何なんだよ⁉︎』
取り巻きの貴族
『敵軍、第一線を粉砕し我らの方に一直線で向かって来ます!』
ワルドー伯
『に、逃げ、いや本陣まで後退すれば指揮は出来る。
レマー、奴等を、帝国の敵を討ち取ってこい‼︎』
レマー
『御意。』
そう言うとレマーは拳銃を引き抜くとワルドー伯に向けた。
ワルドー伯
『ヒッ!
何のつもりだレマー‼︎』
レマー
『閣下は帝国の敵を討ち取ってこいと仰いました。
帝国の敵とは先帝陛下を亡き者にし、ディッターズ・ランド公を暗殺した貴方方の事ではないですか。』
取り巻きの貴族
『貴様ッ‼︎』
取り巻きの貴族達が武器を構えようとしたが周りの騎士や兵達がそれよりも早くそいつらを剣で斬り殺すなり槍で突き殺すなり、銃で撃ち殺すなりしてしまった。
そして騎士の中には昨日のカタリナからの使者が混じっており、ヘルムのバイザーを上げ、会釈した。
ワルドー伯一人残され、レマーに向かって命乞いを始めた。
ワルドー伯
『な、なぁレマー将軍殿、僕ちゃんのこと殺したりしないよね?
帝国貴族の一つが潰れたら何かと困るよ?
ねっ、あのブレトニアの王様に取り次いでよ、ねぇ?』
レマーは銃を収めようとしワルドー伯が安堵の顔をした瞬間レマーは構え直しワルドー伯に一発食らわせたのだ。
それに続き兵と騎士達から鉛のシャワーを喰らったかつてワルドー伯だった肉片は陣中に撒き散らされた。
レマー
『帝旗を掲げろ‼︎
今こそ再びシグマーの御為に‼︎‼︎』
デイッターズ・ランド将兵
『ウオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎‼︎』
デイッターズ・ランド帰陣の報は直ぐにタジムニウス達に届いた。
タジムニウス
『そうか…かたじけない…。
皆、良く決心してくれた。』
ジャン
『水を差すようで悪いですが、兎に角急いで此奴らを破りませんと折角帰陣してくれたレマー将軍達が孤立してしまいますぞ。』
と言いかけた刹那、タジムニウスとレマー達の間に配置されていた敵兵達に無数の光弾が襲い掛かった。
大規模魔法を使える魔導士はそう多くない。
だがこの乱戦では詠唱する暇もないことから使える魔導士達は本陣に残され、敵も同様であった。
今から詠唱するにしても戦場を移動しなければならない上、距離もある。
間に合わない可能性が高いのだ。
とある一人を除いては。
敵の死体と大地が焼け更地になった戦場に一人の白衣の魔道士が舞い降りた。
味方ではないと悟った敵兵が斬り掛かるが杖から放たれた魔弾で穿たれその後に続いた二人も同様になった。
だが今度は4人がかりで斬り掛かってきたのでその魔道士は杖を地面に突き刺すと懐から2丁の自動拳銃を取り出し四人に弾丸をお見舞いしてやった。
その様はまるで踊るようだったとブレトニア側の兵士が後に書き記している。
ガンスピンしながらホルスターに収めた青毛のミコッテ族の女は、タジムニウスを見た。
タジムニウスの前を遮る様にレパンが馬を立てようとするが、彼女の主君は手で遮った。
?
『馬子にも衣装ってか?
似合うじゃ無いかタジムンティス。』
タジムニウス
『30にもなっても独り身で居ることに焦りを覚えて、見境なく口説く気にでもなったかい、トウカ。』
トウカ
『相変わらずの減らず口だなぁ。
そんな王様だとそこの騎士さんと言いお国と言い何かと苦労しそうだね。』
レパン
『貴様何者か‼︎
この方をどなたと心得る、畏れ多くもブレトニア国王タジムニウス・レオンクール陛下であらせられるぞ‼︎』
トウカ
『ああ、私とした事が礼儀を忘れていたよ。
私は冒険者にして、エオルゼア同盟の一翼、ウルダハ王国不滅隊第501突撃魔道士大隊の長、そしてエオルゼア同盟軍遣ブレトニア王国義勇旅団旅団長のトウカ・ホークハント、よろしくね?』
レパン
『こ、これは失礼致しました!
レパン・リヨネースと申します、助力感謝します‼︎』
トウカ
『素直な子はお姐さん嫌いじゃないよ?
ってかタジム、アンタまた女の子ナンパしたの?』
レパン
『なん…』
そう言いながらトウカは立ち上がってきた兵士を横目で杖で打ち据えていた。
タジム
『彼女は大事な家臣にして同志だ。
そんなんじゃないよ、ってかトウカ、彼女はブレトニア公爵家の一翼リヨネースの当主だ。
今の物言いは失礼に当たるぞ。』
そう言いながらタジムニウスも横目で敵を切り裂くなどおおよそ常人とは思えぬ光景が騎士達の眼前で起こっていた。
トウカ
『だってアンタ私たちに何も言わず出てったじゃないか、そりゃあ疑うに決まってるじゃん。』
タジムニウス
『巻き込みたくなかった、彼の国はこれからが大変…まぁ今や全世界がそうだが、兎も角気乗りがしなかったんだ。』
トウカ
『良く言うよ、アタシらよりももっと一声掛けなきゃいけない娘が居たのに…』
タジムニウス
『ああっと、その話はだんまりで頼む。』
トウカ
『かの有名なボルドロー産最高級ワイン2ダース。』
タジムニウス
『3ダース出すから取りなしも宜しく。』
と言う様なやり取りをしながら残敵を倒していくので周りはもう何が何だかと言った感じであった。
一人事情を知る、カムイに至ってはトウカが言い掛けた話題が他の連中にまで聞こえてないかヤキモキしながら戦わねばならなくなったので気が気では無くなった。
そんなこんなしているうちにレマーと合流したタジムニウスは全軍に現地点から総突撃を伝令、方々にリンクシェル通信、届かぬ所には伝令を走らせた。
ジャン
『現地点より全軍による総突撃ですか?』
タジムニウス
『敵の第二線は戦わずして崩壊した。
第3線、第4線は見てくれこそ準備万端だが、実際は第一線、第二線の崩壊と敗残兵が殺到して混乱している。
今この瞬間に破れば、敵将の、ボリス・ドートブリンガーの首にも届く‼︎』
この一戦で内戦を終わらせられる…。
これは諸将、将兵全員が頭によぎった。
だが至難の業で有ることには相違なかった。
左右の戦力は中央突破の為に兵の数が元々少ない上に精鋭を集めたとしてもこの時点でかなり消耗していた。
中央も犠牲を顧みない中央突破で夥しい敵を屠ったがその分消耗していたし、何より後ろから走ってついてきた歩兵達は限界に近かった。
何より発案者のタジムニウス自身の消耗が激しい、細かいとは言え傷だらけな上、返り血に混じってはいるが中なり小なりの傷口から流れ出た血で真っ赤に染まっていた。
そして何より馬だった。
なんとタジムニウスの馬がその場で倒れてしまったのだ。
もうとっくに潰れていてもおかしくなかったが乗り手の為に無理をしていたのだ。
タジムニウスはクーロンヌの剣を抜くと馬を楽にしてやった。
そして剣を大剣に収めるとそのまま大剣を構えた。
タジムニウス
『私はこの状態でも行くが、諸君はどうする?』
すると公爵達をはじめとした騎士や騎兵が馬を下り、刀剣の礼を示した。
そしてそれは歩兵も同じであった。
カムイ
『反対の者はおりません。
皆、最期まで国王陛下のお供を勤めさせて頂きます‼︎』
すると通信兵達が気を利かせてリンクシェルと拡声器を繋いでその場にいる者達に聞こえる様に音量を調整してタジムニウスの方に向けた。
アルベルト
『こちら右翼部隊、こちらはいつでも準備出来ています‼︎』
アルフィノ
『タジムニウス、君が行くなら私達は何処へでもついて行くよ。』
シド
『左翼連中の準備も万端だ、AKも修理完了。
いつでもぶっ放せるぜ。』
トウカ
『私達エオルゼアのみんなもはなからそのつもりで来た。
無理をするのは君の専売特許だもんね。
付き合うよ、冒険した時みたいに。』
すると後ろから馬を走らせてきたセレーネも現れた。
セレーネ
『私も行きます。
よもや拒みませんねタジムニウス王?』
タジムニウス
『身命を賭してお守り致します、ブレトニアに…アルトドルフ帝国に、シグマーに、ガール・マラッツに栄光を‼︎』
一同
『栄光を‼︎‼︎』
タジムニウス
『ASSAUT‼︎‼︎(突撃)』
ブレトニア勢なりふり構わずの突撃が始まった。
各地で兵達が勝った勝ったと騒ぎ立てながら走り回り手当たり次第殺しまわると言う狂気の光景であった。
ボリス・ドートブリンガーの本陣では貴族や士官達が慌てふためていたが当の大将は眉一つ動かさずこの殺戮劇を眺めていた。
そして、退屈そうに出した指示は『全軍戦場を離脱、事前に決めていた通りに行動し、ナルンランド、オストランドを除く支配地域に撤退、道中の敵支配地域、ないしはそうなる可能性の高い地域は根こそぎ破壊、民衆も強制退去、従わねば処分し、徹底的に焦土化すべし。』というものであった。
そして何より予備戦力が到着した事もあって少なくとも彼のいる第四陣の兵力は無傷で退去出来る事もあって無理に戦って損害を出す必要がないと判断したのだ。
ボリス
『あの小僧は分かっておらん。
我らに勝ったとしても彼奴等の戦力では広大な帝国領を収めることはできぬ。
何より我らがただで明け渡すと思うのか?
我らは帝都を失えど戦力は未だ優勢、国力差も所詮微々たるものよ。
彼奴等は割に合わぬ勝ちを得ただけに過ぎぬ。』
ボリスは士官を手招きすると、第一、第二線の敗残兵を生贄にして、第三線の兵も可能な限り退かせろと伝えた。
哀れ彼らは無理矢理立たせられ、従わぬ者は銃殺され、前からは狂乱状態で突っ込んでくるブレトニア勢に跳ね飛ばされてしまった。
だが流石にボリスが敗残の兵を犠牲に全軍を後退させていることに気がつかない者は居なかった。
タジムニウス
『走れ走れ走れ‼︎
ボリス・ドートブリンガーを逃すな‼︎‼︎』
セレーネ
『逃がさない‼︎
『木々よ、その根を伸ばし、我らを助け給え』。』
セレーネが詠唱すると地面から木々の根や蔓が敵兵の足元から生えてきて、それらは巻き付いたのだ。
身動きの取れない敵を容赦なく斬り伏せ、遂に彼らはボリス・ドートブリンガーの前に辿り着いたのだ。
ボリス
『…遅かったな小童。
もう我が軍は大半が撤退した。
これが貴様の父やジギスムントであればこうはいかなかったが、貴様の力などやはり取るに足らん。』
タジムニウス
『で、あろうな。
我らは馬無しで走ってきたのに敗残の兵を肉壁にしてやっと時間を稼げたんだ。
父上や先帝陛下であれば貴様はとっくに死んでおろうな。』
ボリス
『その減らず口もここまでだ。』
タジムニウス
『諸君、手を出すなよ。
俺の獲物だ。』
ボリス
『おっと、ワシがお前の相手をしてやる道理はないぞ。』
ボリスは手を叩くと件の黒騎士が現れた。
黒騎士
『レオンクール‼︎‼︎』
タジムニウス
『また、お前か。
この前も言ったがアレを克服出来なきゃおれには勝てな…』
そう言い掛けたが黒騎士は問答無用で斬りかかってきた。
タジムニウスもすかさず応戦する。
鉄と鉄のぶつかる音が戦場に木霊する。
タジムニウス
『無礼者‼︎
人の話は聞かぬか‼︎‼︎』
黒騎士
『ブレトニア人など人では無いわ‼︎‼︎
貴様らは悪魔だ‼︎』
タジムニウス
『もう容赦せぬぞ…貴様を打ち負かし、その素顔を曝け出させたら戦鎚で潰してその上で磔にしてくれる‼︎‼︎』
その様子をセレーネは見ていた。
彼女は胸元に当てた手を堅く握りしめていた。
ジャンはその様子に違和感を覚えた。
恐らく彼女は二人の無事を祈っているのでは…?
だが、陛下は兎も角あの黒騎士は何者なのだ?
セレーネ様に問い質せば分かるのか?
いや彼女がすんなりと明かすとは思えない…。
陛下の命を受けた事もある、腰を据えて調べねばならぬ。
と思ったが、今は主君とその謎の騎士の一騎討ちの方に集中した。
この時既に両者は幾つかの軽傷を負っていた。
両者共に一太刀、一太刀に魔力を込め、それが大剣を振るう時の力で鎌鼬の如く飛翔する為彼らは刃を受け止めても魔力の刃を受けながら戦っていたのだ。
すでに何十合とぶつかっても勝負はつかない。
タジムニウス
『貴様は何故そこまで我らを憎む?
我らが一体何をしたというのだ‼︎‼︎』
黒騎士
『貴様らは私から父と母を奪った‼︎
貴様らはやれ名誉だ、高潔さを謳うがその実、傲慢で狡猾、他者を貶めることに余念の無い薄汚い屑どもだ。』
タジムニウス
『否定はせぬ。
だが、義理を弁えぬ畜生に言われる筋合いは無い。』
黒騎士
『人殺しの悪魔が、私を畜生呼ばわりするか‼︎』
二人の騎士の決闘を周りは固唾を飲んで見守っている最中、ボリスは側近達を連れ、密かにそこを離れている事に誰も気づかなかった。
両者は血みどろになりながらも戦い続けた。
互いが互いを弾き飛ばすたびに血飛沫が飛び、地面は血溜まりだらけになった。
タジムニウス
『貴様が我らをどう思うと正直関係ない。
私は貴様を倒して、帝都を取り戻す。
これは決定事項だ、決して覆らん‼︎』
黒騎士
『貴様が帝都に足を踏み入れることはない、次で貴様は死ぬのだ。』
タジムニウス
『それは貴様の方だ、貴様の体から飛ばされた首を後で拾い上げ素顔を見てやるぞ‼︎』
両者の大剣はぶつかり合う、そして黒騎士の大剣は砕け散った。
タジムニウス
『その怨念を抱えたまま消え失せろ‼︎
『諸王の魂よ、我に力を与え、我が祖国の敵を喰らい尽くさん‼︎』
獅子王剣・滅‼︎‼︎』
ライオン・ハートに魔力が集まり、振り下ろされると同時に炎で出来上がった獅子が黒騎士に襲い掛かった。
黒騎士の断末魔が上がり、燃え尽きるかと思いきや、炎は消え去った。
そしてボリスの声が聞こえてきた。
ボリス
『黒騎士よ今は退け。
退かねば復讐は為し得ぬぞ。』
すると黒騎士はボロボロの身体を引きずり、アシエンの様に闇の力を使ってこの場を逃れてしまった。
タジムニウスはただ一人立ち尽くし、
タジムニウス
『俺も未熟だな…殺しきれんとは。』
と呟くとその場で倒れた。
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ライクランド平原の戦いは、ボリス・ドートブリンガー率いる選帝諸侯軍の戦線離脱を以って終結した。
ブレトニア側は大勝利と報じたが選帝諸侯側に参加した東方、中東諸国の観戦武官、危険を顧みず戦闘の成り行きを見守っていた各国の記者や、諜報機関により、実際は辛勝であると直ぐに知れ渡ってしまった。
ブレトニア軍は華々しく帝都に入城とは行かず、昏倒した総大将に代わって各将は、領主を失った、ナルンランド、オストランド、およびこちら側についた三公爵の領土内に敵が侵入して占領ないしは破壊活動に及ばぬように追撃する事を合議で決めたが、ボリス達の行動は早くこれら領土の占領こそされなかったものの各地の市町村は略奪、凌辱、破壊、殺戮の憂き目に遭ってしまった。
幸いにもソルランドの魔道学院、ナルンランドの大工廠などの重要拠点は早急に確保するべく動いた諸将の働きによって大した損害を被る事は無かったが、むしろこれがブレトニア側は民衆よりも兵器を優先としたと捉えられる結果になってしまい、国内外に不満を持たせる事になってしまったのだ。
決して大手で喜べる状況ではなく、敵の兵力は未だ健在という事も彼らの顔を曇らせた。
然し、オヴェリウス要塞も大過無く落とした、オリオン公とパラヴォン公シグルドも合流した事で幾らかの兵力は戻ってきた。
確かに状況は辛いままだ、だがここで踏ん張れば必ず好機が現れる、あきらめない事が肝心なのだと態度で示すが如く目を覚ましたタジムニウスは包帯に巻かれていたが、鎧をつけ、天幕で諸将を出迎えた。
諸将の報告を聞いたタジムニウスは宙に祈りを捧げるとすぐに紙とペンを取り出し何かを書き始めた。
内容はこうであった。
命令書
全ての帝国貴族、王国貴族は財を投じて領地の再編を行うべし、第一優先は民衆の居住地の復興、第二に食糧生産地、第三に軍事建造物とする。
必要予算が用立てられなければ、ブレトニア国王の名の下に王がそれを用意する事を約束する。
尚、マリエンブルク公カタリナ、ブラックストーン伯シリュウの両名に本件に関する財政の全てを委任、必要な人事、物資調達も一任する。
ブレトニア国王 タジムニウス・ド・レオンクール
と同じ内容でもう一枚認めるとカタリナとクーロンヌよりやってきたシリュウに渡した。
タジムニウス
『この復興事業をやる為には帝国全土の国政を再編しなければならない、この大任を二人に任せたい。
帝国一の商人と王国の誇る財務、兵站の天才の手腕、期待させてもらう。』
カタリナ
『畏まりました陛下。』
シリュウ
『ブレトニア騎士の名誉に賭けて、必ずや。』
すると何人かの騎士達が異議を唱えた。
それは復興の順番であった。
先に居住地や畑等の復興を優先するのでは無く、軍事関連を復興させるべきだと。
ましてや国内外の卑しい百姓共は自分たちが命懸けで戦ってやったのに不平不満をぶつける恩知らずの恥知らずではないかと。
誰のために戦ってやっているのかも分からず、我らに不満と敵意の目を向けてくる。
そんな奴らの為に国庫を擦り減らす必要は無い。
タジムニウスは彼らの発言に同意した。
だが、復興の順番を変えることはしなかった。
タジムニウス
『確かに卿ら言う通りだろう。
彼らは自ら思考を止めた腰抜けの卑しい畜生共よ、今ここにいる兵達の様に自らの家族と畑を守る為に武器を取らず、戦う事もしなかった連中だ。
されど私にとっては大事な民草だ。
彼らがおかしな事をしない様に導くのも我ら高貴な者達では無いのか?
我らにはその身分に伴う責任があるはずだ。
我ら騎士は民草の為に戦うのではないのか?
ジル・ル・ブレトン王が何の為に聖女の加護を得て戦ったのか、それを忘れてはいかん。
如何なる時も。』
諸将は頭を深く下げた。
賢人達も何処か胸が熱くなるのを感じた。
タジムニウスはまだエオルゼアの英雄であった事を忘れてはいない。
困っている人々のために剣を取る。
その姿勢は死んでいないのだと。
尤もタジムニウス自体は兵站維持の為にやっているだけであり、正直戦災した民草には何の同情もしていなかった。
そもそも戦災したのは自らの土地を一所懸命に守らなかったからであり、自業自得ではないかとすら思っていた。
彼自身、ただ助けを乞い、自力での解決を試みない人間が嫌いというのもあるが彼の壮絶な半生期で培った価値観を他者に押し付けてはならないという事も弁えていたし、何より一回それをやって養父(カムイ)に鉄拳制裁され懲りているというのあった。
タジムニウス
(弱き民を導く、まさかあのガイウス・ヴァン・バエサル(ガレマール帝国第十三軍団軍団長、エオルゼアに侵攻したがタジムニウスに敗れた。アシエンに利用されていた事を憎み、彼らの眷属を狩り続け、今はウェルリトの反帝国組織に身を置いている。)と似た様な、というより同じ理想と主義を持つ事になるとは。
あの時は否定したが、彼の言うことも正しかった、特にここではな。)
タジムニウスが心から民草を思いやる様になるのはもう少し後の話である。
すると大事な話は終わった様だと思ったアイリスが挨拶がてらタジムニウスに問う。
アイリス
『若、いえタジムニウス王、お久しぶりにございます。
急に不躾な質問をしてしまうのですが、奥方にはお会いになりましたか?』
タジムニウスは紅茶のカップを落とし固まってしまった。
トウカは口をあんぐり開けて慌てふためき出した。
トウカ
『ああ、待ってアイリッス‼︎
それまだ言ってない…嗚呼私のワインケース3ダースがぁぁ…。』
タジムニウス
『彼女、ここに居るの…?
アイリス君…?』
アイリス
『えっ、はい。
えっーと言っちゃダメだったかな?』
そう言われたタジムニウスは満身創痍にも関わらずそこにあった樽の中に身を潜めようと飛び出した。
だがそれを説明を求める諸将達が抑える。
レパン
『陛下、どういう事か説明していただきましょう?』
アルベルト
『そちらの侍殿が申すに奥方と申しましたな。
よもや我らに断りなく祝言したと言われるのではありましょうな?』
タジムニウス
『ま…待て。
は、は、話せば分かる。』
シグルト
『王族の婚姻は、我ら公爵家にも一声掛けるのが習わしですぞ、タナトス卿が居て知らない筈はありますまい‼︎』
ジャン
『タナトス卿、卿は知っていたのか?』
カムイは顔を背けたまま冷や汗をボタボタと落としていた。
ジャン
『聖杯教大司教の権限を以って、王陛下とタナトス卿を審問する皆二人を拘束なさい。』
カムイ
『何故、私まで⁉︎』
レパン
『なんでそんな大事な事を黙っていたのです⁉︎
話してくれていたら…国を挙げて祝福の宴を開催しましたのに‼︎』
アレクサンドル
『マリエンブルク公、幾らかの用意は出来ますか⁉︎』
カタリナ
『急過ぎて何も持ち合わせが有りませぬ。
ていうか会場はどうするのです‼︎
ご祝儀も‼︎』
ジャン
『すべての責任は王とタナトス卿に有ります。
縄を持ちなさい。』
タジムニウス
『待て待て待て、ちゃんと言おうと思ったんだ、待ってなにその縄⁉(痛そう)︎』
賢人達はもう勝手にやってくれと呆れ、シドは大笑いし、アイリスはやってしまったかと頬を掻き、トウカはガックリと肩を落とし、ユイコはそんなトウカの肩を叩きながらクスクス笑っていた。
天幕内で皆が大変騒々しい声をあげているのを止めたのは一際大きな声であった。
?
『貴方達怪我人になんて事してるんですか‼︎‼︎』
全員が驚愕したの言うまでもなく、天幕の出口を見ると一人の東方の巫女風の衣装を見に纏う一人の栗毛のミコッテ族の女が薬と包帯を抱えて立っていた。
騎士達に怖じけず道を開けさせると縄で縛られかけたタジムニウスの前に座って包帯で巻かれた所を掴んだ。
?
『包帯を変えます。
腕を上げてください。』
タジムニウス
『あ、あの。』
だが女は一言も返事をせず仕事を終えるとさっさと帰ってしまった。
タジムニウスは首を落とした。
タジムニウス
『そりゃそうか…。』
レパン
『まさか今のって…?』
タジムニウス
『私が旅先で出会った女性だ。
名はキアラ・ヒナサキ。
東方で巫女をやっていた人だ。
すごい美人だろ?』
レパン
『えぇ…じゃなくって‼︎』
レパンは縄を解くと天幕の出口を指さす。
レパン
『追いかけなさい‼︎』
タジムニウス
『えっ…?』
レパン
『良いから、駆け足‼︎‼︎』
タジムニウス
『ウィ・メー‼︎‼︎』
タジムニウスは大急ぎで追いかけていった。
天幕に残された諸将はため息を吐くが満足した表情を浮かべた。
タジムニウスは負傷兵達の中を掻い潜って彼女を追いかけた。
タジムニウスが負傷兵に声をかけられる度に律儀に答えてる所為かキアラは意図して足を早めている様であった。
タジムニウス
『待って…待ってくれ。』
キアラはやっと足を止めた。
振り返ると病み上がりということもあって息が上がっているタジムニウスがいた。
キアラ
『何ですか?
そんなに走っては傷が開きますよ。』
タジムニウス
『怒ってます?』
キアラ
『怒ってなんかいません。』
タジムニウス
『兵達が言ってた。
とても丁寧に治療してくれたって。
俺も目を覚さなかった二日間懸命に診てくれたって。』
キアラ
『仕事ですから。』
タジムニウス
『ありがとう。』
キアラは、一瞬頬を赤らめたが直ぐに無表情に戻った。
キアラ
『どういたしまして。
もう良いですか?』
タジムニウス
『もう一つだけ、君が許すか許さないかは俺が決める事じゃない。
だけど分かって欲しい事があるんだ。
ここの戦や負傷兵達を見たろ?
エオルゼアでの戦いとは段違いだ。
幾ら君や、トウカ達だって命を落とすか分からない。
エオルゼアには君たちが必要なんだ、俺じゃない。』
キアラ
『じゃあ私は貴方には必要ない人間だったって事ですか?』
タジムニウス
『違う…目の前で君が討ち取られるのを見たくないし、討ち取られる所を見せたくなかった。
死んでほしくなかったんだ。
それに…俺はもう冒険者タジムンティスでは無い、居られないんだ。
自分でも嫌になるくらい冷酷な男になりつつある、そんな様を見せたくなかった。』
キアラ
『グリダニアの教会で言いましたよね?
同じ道を歩いて行くって。
久遠の絆はそんなものだったんですか?
貴方が私の前から居なくなる訳でもないでしょう?』
タジムニウスの顔を手で包むとキアラは続けた。
キアラ
『聞いて、旦那様。
私はあの時から貴方と運命を共にするってこの指輪に誓ったの。
貴方がこれからどうなろうと関係ない。
私にとって貴方は一人の冒険者、なけなしの勇気を振り絞って私に好きって言ってくれた年下の変な男の子のまんま。』
タジムニウス
『キアラ…俺は…。』
キアラ
『約束して、もう次は置いていかないって。』
タジムニウスとキアラはそのまんま抱擁を交わす。
そしてその一部始終を見ていた傷病兵達は最初何が何だかと言う感じだったが、段々事情を理解し、そして最後には涙流して歓声と拍手を送った。
傷病兵達
『ブレトニア国王万歳‼︎
王妃万歳‼︎‼︎』
キアラ
『そっか…私王妃様になるんだね…エヘヘッ。』
少し気恥ずかしかったのか、キアラは笑って応えた。
二人は天幕に戻ると天井にぐるぐる巻きにされ吊るされたタナトス卿が残されていた。
カムイ
『あっ、お帰りなさいませ。』
タジムニウス
『えっー…と…。
まだみんな怒ってる?』
カムイはそれを聞くや否や口笛を吹く。
するとあっという間に礼装に身を包んだ諸将達が二人を特にキアラを囲む。
諸将
『これより我ら忠誠を誓います王妃殿下。』
キアラ
『えっ…えっ‼
あの、私いきなり言われてもなんて答えて良いか分からないし、それに私は皆様の様な大層な身分でも無いし、東方人だし、なんていうかその…。︎』
レパン
『キアラさん、いえ王妃様。
陛下が伴侶にとお選びになった方を何故我らが拒めましょうか?』
カタリナ
『聞けば、ここ二日間陛下の事を診てくれていたと聞きます。
これだけでも我らからしても貴女は陛下の命を救って下さった恩人です。
王妃として貴女を仰げる事はこの上ない喜びなのです。』
セレーネ
『私からもお願いします。
タジムニウスの隣にいるべきは私ではなく、貴女なのです。』
キアラ
『えっと…不束者ですがよろしくお願いします!』
諸将
『王妃陛下万歳‼︎‼︎』
タジムニウス
『皆、すまない。』
レパン
『さっ、陛下?』
レパンの手には縄が握られていた。
レパン
『まさか自分だけ逃れられるとは本気で思ってはいないでしょう?』
タジムニウス
『はぁい…』
哀れタジムニウス。
彼はその後カムイと共に小一時間程吊るされていたという。
そしてアリゼーやトウカに暫く揶揄われたという。
更に言えばトウカは結局ワイン3ダースが取りなし費用の1ダースに減らされアイリスに八つ当たりするのだがそれは別の話である。
そして暫くしてから号砲が鳴る。
帝都凱旋の合図であった。
先程まで縄で吊るされ諸将に弄くり回されていたとは思えぬくらい威厳を持った出立ちでタジムニウスは馬に跨ると後ろを振り返った。
諸将の顔、将兵達の顔。
それらを見てとった彼は剣を引き抜き、馬を後ろ足で立たせた。
馬の嗎声が静寂に包まれた戦場跡に響く。
タジムニウス
『行こう、諸君。
出来る限り、陽気かつ盛大にな。
我らがどんなに暗い顔しても、帝都の民からしてみれば我らは勝者だ。
なら、笑って、歌って帝都の門を潜ろう。
我らは勝ったのだ‼︎』
おおっ‼︎という声が軍勢から次々と上がり、兵達は武器や足を踏み鳴らす。
タジムニウス
『さぁ、帰ろう。
帝都へ‼︎』
全軍
『おおおお‼︎‼︎』
帝都凱旋の様子はこう記録されている。
先頭をブレトニア国王と聖女が馬に跨り、その後ろを公爵や騎士達が騎乗しついてきた。
兵達は堂々と歩を進め。
帝都の民は万雷の拍手と歓声で迎えたと。
王宮アルトドルフに入城した彼らが真っ先に向かったのは皇帝の間であった。
そこには主人なき玉座が置かれその後ろにグリフォンに跨りガール・マラッツを掲げるシグマーの金の像があった。
セレーネが跪くとタジムニウス達も続いた。
玉座には誰もいない。
だがそこには確かに歴代の皇帝達の魂がある。
セレーネ
『お父様…。』
セレーネは涙を流した。
彼女はやっと父を弔う事が出来たと感じたのだ。
セレーネは立ち上がると皆の方を振り返った。
セレーネ
『本来、私は皆様に傅かれる人間では有りません。
されど帝国が存在する以上、皇帝も必要です。
カルカソンヌ公は聖杯教の歴史や緊急時の法律等を調べ、女神の代理人である聖女が貴族、王族出身だった場合の継承権、参政権、及び王権の行使が非常時のみ可能である事を調べてくれました…。
私は今を持ってアルトドルフ皇帝の継承権に則り、女帝セレーネを名乗ります、どうか皆様には私について来て頂きたい。』
タジムニウス
『女帝(カイザーリン)セレーネ陛下に栄光あれ‼︎』
諸将
『ジーク・カイザーリン‼︎
ジーク・カイザーリン‼︎
ジーク・カイザーリン・セレーネ‼︎‼︎』
セレーネ
『ですが、私は仮の皇帝、私以外にこの玉座に相応しい者を見つけたら私はこの座を明け渡すでしょう。』
セレーネは頭を下げ、皆に乞うた。
セレーネ
『どうか、皆様それまで不甲斐ない私を支えて下さい。』
すると外から鬨の声が上がったので皆が慌ててテラスに出ると民草達が口々に女帝セレーネ万歳と叫びながら大歓声を上げていた。
偶然だが、王宮内の通信機がタジムニウス達の侵入騒ぎで全開になっており、それが帝都中に流れていたのだ。
タジムニウスはセレーネの方を見て、どうか応えてやって下さいと合図の代わりに頷いた。
セレーネが手を振ると民草達はより一層歓声を上げた。
すると誰が歌い出したか知らないが帝国の国歌を歌い出し、民草達は挙って歌い、演奏した。
ライクランド帝国国歌
『シグマーの子の歌』
『
我らの唸りは
皇帝を栄光の門に導く
皇帝シグマーは神の意思で我らを導く
そして東から西まで
戦争の吶喊は
戦いの時の合図を知らせる
震えよライクランドの敵よ
悪魔達は血と驕りに酔っている
我ら帝国民は前へ進み
敵の首を父に捧ぐ
』
その夜、祝宴をあげる事になり、帝都アルトドルフは久方振りに賑わっていた。
帝都は勿論、王国と帝国中の民草達は飲めや歌えやの大騒ぎであり、しかもその金はブレトニア王が負担するというのだから余計である。
マリエンブルクから派遣された役人達はホクホクになりつつ王からの支払金を国庫に入れる分、いずれ自分の懐に入ってくる分、再興事業に当てる分と忙しなく分けていた。
そんな状況の帝都なら帝城はもっと賑やかであった。
王国、帝国の文官、武官達が豪華な食事に美酒で呑み食いし、踊り、歌い、今が戦時である事を感じられない程であった。
セレーネの周りには大勢の貴族や地元の有力者が集まり、共に帝都に入城出来た事を喜ぶ者、あるいは敵側、ないしは今日まで日和見していた為ゴマを擦る者達で一杯であった。
タジムニウスは後者の連中で利用価値のある者、全く無い上に汚職まみれなので後々粛清する者を見分けながらワインを片手に見守っていた。
そこにキアラがやってきた。
キアラ
『楽しんでます旦那様?』
タジムニウス
『その上目使いに乾杯、まぁそれなりかな。
先程、カイザーリンより帝国元帥の辞令も頂いたし、嬉しいんだけどなんかどうも気が抜けないや。』
キアラ
『確かにこの宴の主役はあの人かも知れないけど、ここまで頑張ってきたのはタジム、貴方。
そんな貴方がそんなんじゃ他の人も楽しめないわ。
他の人も何処か気負いしてるもの。』
タジムニウス
『…そうだな。』
キアラ
『ねっ、この戦いが終わったら結婚式やるってカタリナさんが言ってたけど本当?』
タジムニウス
『ゲッ…そんな所まで話進んでんのか。
やる暇ないと思うけどな…ってかやったしね。』
タジムニウスはグラスを干すと、少し物思いに耽るとキアラの手を取り
タジムニウス
『君のいう通りだな。』
と笑った。
タジムニウスは使用人に鐘を鳴らすように言うと使用人は持っていた鐘を鳴らした。
鐘の音に気づいた者達は一斉にタジムニウス達の方に向く。
タジムニウス
『皆、ご苦労である。
だが、この調子で宴をやるのは頂けん。
そこでだ、ブレトニアの宴は古来より無礼講、折角遙西方の地エオルゼアより来たりた我が友人達もいる。
肩肘張らず、威張らず、我らの本当の宴をお見せしようではないか?』
タジムニウスはセレーネの方を見た。
セレーネ
『女神様も大神シグマーもお喜びになりましょう。
盛大にやりなさい元帥!』
タジムニウス
『御意、では皆、ウィスキーを持て、ここに入るだけ帝都の民や兵達を入れてやろう‼︎
楽器を鳴らせ、歌え、飲めのどんちゃん騒ぎじゃい‼︎‼︎』
一同
『ウオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎‼︎』
すると陽気な音楽が帝都中で鳴り響き帝城のホールは農民、町民、軍人、騎士、貴族の入り乱れる陽気な宴の場になった。
騎士や町民達が肩を組み酒を飲み、貴族達が農民に日頃の苦労を労う為に杯を注いでやっていた。
エオルゼアの賢人達も大いに楽しんだ。
先ずヤ・シュトラとシドだが、ヤ・シュトラがパラヴォン公シグルトとラ・フェール公アレクサンドルに飲み勝負に誘われ、シドもそれに参加する形になったが…
アレクサンドル
『…。』
シグルト
『ゥ…ウゥ…。』
シド
『も、もうだめだ…。』
ヤ・シュトラ
『あら、もう潰れちゃったのかしら?』
他所を見ると、アリゼーとレパンとセレーネはカタリナに彼の亭主フーセネガーとのなり染めを聞いていた。
カタリナ
『私とあの人が会ったのは今から30年も前の話、私が九歳の時、あの人は11か12の時でしたわ。
そこから何をするにしてもずっと一緒、遊んで、喧嘩して、仲直りして。』
アリゼー
『じゃあ将軍とは幼馴染?』
カタリナ
『そう、幼馴染よ。』
セレーネ
『プロポーズはどちらから?』
カタリナ
『ボーアンからです。
満月の夜のアルトドルフで。』
レパン
『なんてプロポーズされたんですか?
宜しければ教えてください!』
カタリナ
『『子供の頃からずっと貴女を愛しておりました。
どうか我が心の主人として永遠に隣にいてくれませんか私だけの女神として。』って。』
三人娘
『キャー///。』
尚、話を聞いていたフーセネガーは、『人のプロポーズをバラす妻が居るか?』と顔を真っ赤にして話し、それを聞いたアルベルトとカムイとジャンの三人は笑い出した。
他にもワインボトルを2本持ってどか飲みするトウカに、潰れたアイリスを介抱するユイコ。
広場は陽気な空気に包まれた。
我らがタジムニウスはと言うと…。
キアラ
『はい、あーん。』
タジムニウス
『あーん、ウマァァイ。』
アルフィノ
『何をしているんだコレは。』
グ・ラハ
『何も言わずに出て行った罰だってさ。』
アルフィノ
『こんな公衆の面前で…当の本人は満更でもなさそうだね。』
て言うか何を見せられているのやらと二人は思い、そして何を思ったのか二人はワインボトルを一本掴むとそれをラッパ飲みしてしまったのだ。
しかしそれはワインではなく、ラム酒だった。
二人は一気に酔っ払った。
アルフィノ
『ぢぐしょう‼︎
わたひたちになにをみせるだぁ‼︎』
タジムニウス
『おお、良い具合に酔っ払ったな良いぞ。
よし早速そのノリで女を口説いてこい‼︎』
グ・ラハ
『おお、きょれでも百数十年生きてきたら、女一人簡単に口説いてくれるわぁ〜。』
タジムニウス
『いや、二人ともエライ酔い方してんな、いや良いよこれ。』
もう全員アルコールに頭をやられ出し始めた位だろうか。
タジムニウスはアルベルトを呼び出すと歌の上手さを褒めちぎり一曲頼むと気を良くしたアルベルトは自身の兵達に楽器を持たせると演奏し始め自ら歌い出した。
アルベルト
『メリー村とケリン村の間にある山に向かう途中で
俺達ブレトン人から奪った金を勘定してるファレル卿に出くわしたぜ
剣と矢をちらつかせてやったぜ
言ってやったさ、その金を寄越しな、大神の元に税金泥棒として送り込んでやるぜ
マッシャーリン ダマドゥ ダマダー(ドンジャラドンジャラ)
父さんのためにエンヤコラ
父さんの為にエンヤコラ
ウィスキーを呷ろう。』
タジムニウス
『奴の綺麗な金を踏んだくってやったぞ
奴の金を巻き上げて、マリーに持っていたんだ
彼女は俺に愛してる、絶対離れないっていったさ
でも悪い悪魔が囁いて彼女は俺を簡単に裏切っちまったよ
マッシャーリン ダマドゥ ダマダー(ドンジャラドンジャラ)
父さんの為にエンヤコラ
父さんの為にエンヤコラ
ウィスキーを呷ろう。』
タジムニウス&アルベルト
『酔っ払って疲れた俺はマリーの部屋に行ったよ
金を返してもらうつもりがまさかあんな事になるなんて
7時か8時かファレル卿が乗り込んできたから
俺ぁメチャクチャに剣を振り回したぞ
マッシャーリン ダマドゥ ダマダー(ドンジャラドンジャラ)
父さんの為にエンヤコラ
父さんの為にエンヤコラ
ウィスキーを呷ろう。』
一同
『畑いじりが好きな奴や馬に乗るのが好きな奴もいる
トレビュジェットと大砲の唸りを聞きたい奴もいるぜ?
俺か?俺ぁマリーの部屋で乳繰り合うのが好きさ、
でもなんてこったい
足枷つけられた暫くお預けだい
マッシャーリン ダマドゥ ダマダー(ドンジャラドンジャラ)
父さんの為にエンヤコラ
父さんの為にエンヤコラ
ウィスキーを呷ろう。
マッシャーリン ダマドゥ ダマダー(ドンジャラドンジャラ)
父さんの為にエンヤコラ
父さんの為にエンヤコラ
ウィスキーを呷ろう。』
皆の笑い声と軽快な音楽は夜通し続いた。
これが済めばまた泥沼の戦場へ行かねばならない。
みんな気のいい奴らだが明日には死んでいるのだから
悲しみを晴らすのは酒だけなのだから…。