いわゆる処女作です。
何度も修正を重ねていますが、ストーリー上での矛盾、デュエル内容にミスなどを見つけた場合は教えてくださるとありがたいです。パソコンの前で土下座します。
前々から小説を書くことが趣味でしたが、投稿というものは初めてで、上記以外にも露骨なミスが多発するかもしれません。ご理解下さい。
この物語は書いていた時期の問題で、マスタールール2をデュエルに採用しています。しかし、ペンデュラム召喚の登場に伴い、ルールを途中でマスタールール3に変更することを予定しています。
2014、4/2 表記を一部変更しました。
2014、4/2 文章の表記など、大幅な修正を始めました。
2014、4/3 ↑の修正を完了しました。
「それでは皆さんに、楽しい日々が待っていますように」
その言葉を最後に、地味な学校生活から、しばらくの開放が約束された。
☆
夏。
恋愛するもよし。
部活や勉強に精を出すもよし。
新しいことを始めるもよし。
夏休みとなれば、祭りに海水浴に肝試しなどなどイベント盛りだくさん。
青春をガツンと謳歌するには一番丁度いい季節と言えるだろう。
「…あー……」
しかし俺、『一勇ユート』にはそんな楽しげな予定は入っていなかった。
なんというか……とりあえずつまらない。
俺は俺在校の高校『重奏高校(略して重高)』の冷房の効いた一角、つまり図書室にいた。
最近結婚した担任の言っていた『皆さんに、楽しい日々が待っていますように』という言葉に何とも言えない苛立ちを感じる。
冷房の効いた場所のはずなのに、怒りで涼しさを感じない。今すぐ壁を殴りつけたいという衝動に駆られる。
「ねぇ、なにしてるの……?」
何だ? この声は女子か、まったく面倒な……いや、違うな。
俺は顔を上げた。
「よお、ミツルか」
そこには見慣れた俺の幼馴染がいた。
紹介すると、この女みたいな男の名は『
幼馴染としては、もっと男らしくしてほしいと思うが、このままでもいい。面白いから。
「ヒマだからぐだーっとしてた」
「ふーん」
ミツルが俺以外のヤツと親しげに話したりしてるところは、ここ最近見たことがない。多分、明日からの夏休みの予定など、俺同様に無いだろう。
そんな事を考えていると、ミツルはテーブルに何かを広げ始めた。
「なにそれ? カード?」
「うん『
「遊戯王? お前、夏休みは?」
「夏休み? うーん……何もなければ、毎日友達とデュエルしてると思うよ」
「なっ……」
いつも俺とばかりいるあのミツルにすら予定が入ってるなんて……。まるで俺がクズだとでも言われた気分だ。
にしても、デュエルモンスターズか……。良くは知らないが、聞いたことはある。正式名称は『遊戯王OCG デュエルモンスターズ』。いわゆるTCG(トレーディングカードゲーム)だ。
デュエルモンスターズではないが、俺も昔やっていた経験がある。小学生ながらおやつを我慢したり、親の手伝いをしたりしてコツコツためた金でカードを買い、そこそこ強いデッキを作ったものだ。しかし、俺も含め自然にみんなやめていった。今では懐かしいだけの記憶である。
「あのカード、確か段ボールに……」
「そういえば、小学生の頃はPカードが流行ってたよね」
「そうそう。Pクリーチャーカードゲーム。ミツルに誘われてやってたっけ」
「そうだったね。そういえば誘った次の日、ユート、カード買ってきたじゃん? Pカードじゃなかったけどさ。あれがデュエルモンスターズだよ」
「え? そうだったのか?」
当時超少なかったこづかいをすべて費やして買ったカードをミツルに見せたら、苦笑いしながら『違う』と言われた憶えがある。その時にかわいそうだからと貰ったデッキ1つを強化して遊んでいたのだ。
うん。懐かしい。
「で、そのデュエルモンスターズってのはどんなもんなんだ?」
「やっぱり興味ある!?」
「うおっ!」
目を輝かせている。やっぱそういうことか。
ミツルは人を何かに誘おうとするとき、なぜか相手からその話題をふってくるようにする。
例えば俺を遊びに誘いたい時は、
ミツル『週末ヒマだよね?』
俺『そうだな』
ミツル『うん。ヒマだねー』
俺『おう』
ミツル『あーあ、ヒマだなー』
俺『……俺んち、来るか?』
ミツル『うん!』
俺『……(遊びたいならそう言えよ)』
って感じだ。
Pカードの時も近い手口だった気がする。まあ、引っかかってから気付く俺も間抜けなのだが。
で、今回はどんな要件なんだ?
「デュエルモンスターズは今一番熱いカードゲームなんだ。すごく面白いよ。やってみなよ!!」
それが要件か。
「ほぉー……」
ミツルがここまで言うんだ、凄く楽しいのだろう。
だが、カードゲームにはある問題がある。
「俺そんなに金持ってねぇぞ?」
経験者だから解るが、カードゲームはかなり金のかかる遊びだ。強いデッキを作ろうと思えばなおさらだ。
強力なカード、採用率の高いカードは争奪戦になり、高騰するもの。そこそこ強いデッキを作る程度でも、その高騰したカードが少なからず必要になるだろう。
大変だな……。
「じゃあ……」
ミツルはカバンからカードの束を1つ取り出した。
「これ、あげるよ」
「マジで!?」
それはお得だ。無料で楽しいことが始められるなんて!!
……いや、ちょっとまて。
でも……。
「いや、いいよ。Pカードの時もカードもらっちまったしな」
「え、そう?」
「始めたいのはやまやまだが、どっから金を持ってくるかね……」
「売れば?」
「は?」
「Pカード」
「ああ、なるほど……」
☆
その後、俺は明日ミツルとともにホビーショップへ行く約束を取り付けた。カードの買取りをしているらしい。
そして帰り際。
「ハイこれ」
手渡されたのは、ホチキスで製本された粗末な小さい本だ。
「なんだこれ?」
「デュエルモンスターズのルールブック。しっかり読んどいてね。僕はこれからホビーショップまでデュエルしに行くから」
そう言い残し、ミツルは去って行った。
どうやら、明日行くホビーショップがデュエル場らしい。
その後ろ姿だけでも、本人の高ぶった感情が読み取れるようだった。
「……さて」
なかなか、面白くなりそうだな。
☆
帰宅。
「ただいまー」
「お帰りユート」
帰宅した息子を母親が出迎える。
「今日はユートの好きなナシゴレンよ」
「えっと……なんだよそれ……」
帰宅早々、親から意味不明な単語が飛び出した。
好き嫌い以前の問題だ。
「?」
そして作った本人はそれに気が付いていない。ナシゴレンなるものが今まで一勇家の食卓に出てきた憶えはない。
俺の家族は度合いの差はあれど、どこか変だ。姉に至っては『悪を滅ぼす旅』とやらに出たっきり音信不通。生死すら不明だが、家族は気にするそぶりもない。
まあ、正直俺もあまり気にしてはいないのだが。
俺もどこか変なのだろうか?
☆
夕食後。
ナシゴレンとはバリ島風焼き飯の事らしい。スパイシーで普通においしかった。少し勉強になった。
「よっと……」
俺は押し入れをあさっていた。俺の記憶が正しければ……。
「よし、あった」
少し埃をかぶった段ボール。重さと大きさ的に間違いないだろう。俺はそれを部屋に持ち帰った。
さて……おっと、開ける前に風呂に入っておくべきか。
夢中になったら入るの忘れそうだ。
☆
風呂から上がった俺は、例の部屋の段ボールと対峙していた。
「さてと」
昔のカードが入っている箱を開けるだけなのに、少しワクワクする。経験はないが、タイムカプセルを開けるというのはこんな気分なのだろう。
俺は箱を開いた。
「おお、結構あるな」
カードケースやスリーブ、ファイルと共になかなかの量のカードが姿を現した。このケース1つに500枚入るから……3000枚は軽く超えているだろう。
いくらくらいになるのだろうか?
「ん?」
箱の中で、端っこの方にセパレーターで仕切られたカードが数十枚。俺はそれを手に取ってみた。
「こいつは……」
間違いない。
この裏面が茶色いという特徴は、CMで見たカードと同じ。デュエルモンスターズのカードだ。このカード達は一応とっておくとしよう。後々役に立つかもしれない。
俺は箱から全てのデュエルモンスターズカードを抜き取った。
「これでいいだろ」
その後、俺はミツルからもらったルールブックを読み、就寝した。
明日が楽しみだ。
☆
朝。
夏休みの初日。
俺は紙袋にPカードを詰めて家を出た。
一応、デュエルモンスターズもカードケースに入れ、カバンに忍ばせてある。10時ごろにホビーショップ前での待ち合わせだ。今は9時を少しばかり過ぎたところ。ホビーショップはそう遠くはない。気長に向かうとしよう。
☆
到着。
開店まではまだ少し時間がある。
ミツルは既にショップ前で待っていた。相変わらず、オシャレな私服だ。
ファッションの事はよく知らないが、今はミツルの服の様な明るい色が流行っているのだろうか?
まるで活発な少女の様な印象を受ける。
「よ」
「あ、ユート!」
「早いな。待ったか?」
「ううん。全然」
「そっか」
いつかの2人で遊園地へ行った時みたいにアホだろってくらい待ってはいなかったのなら、良かった。
しかし、ショップは10時開店だ。俺とミツルはその間を適当にしゃべって過ごした。
☆
開店。
とりあえず買取りカウンターに紙袋を出し、店内を見渡す。
小さい頃結構かよっていた程度だが、そんな古い記憶と照らし合わせても、店内が様変わりしたことは明白だった。
「プラモコーナーが小さくなってないか?」
「うん。その分TCGコーナーが増えたんだ」
「なんで?」
「増やさなくちゃならないくらい、人気なんだろうね」
「なるほど」
そんなことになっていたのか。俺が小さい頃もカードゲームは人気のある遊びではあったが、今はそれ以上に流行しているということなのだろう。
昔は誰もが思っていたであろう『TCGは子供の遊び』という考え方はいつの間にかなくなっていたみたいだな。なんて、俺もまだまだ大人と呼ばれるようなガラではないのだが。
俺は時を忘れ、様変わりした店内を見回していた。
☆
査定が終了し、金を受け取る。
売価は6800円か。高いのか安いのかは解らないが、満足はできる金額だ。何でも、ところどころに今は絶版の希少カードがあったらしい。それを聞くと少しもったいなかった気がするが、仕方ない。
さて、
「カード売った金でカード買うか」
まるでダメ人間みたいなセリフだな。
「そうだね。じゃあアドバイスするよ!」
ミツルはノリノリだ。楽しそうで何より。
「おう。頼んだ」
「どんなデッキがいい?」
「そうだな……」
どんなデッキって言われても、よくわからないのが事実。ただその辺のヤツと似たり寄ったりなデッキになるのは嫌だ。
「誰も使ってないようなデッキがいいな」
「誰も使ってないテーマのデッキか……」
ミツルはおもむろに1つの棚に歩み寄る。そこには手のひらサイズ程の箱に入ったカードが並んでいた。
あれは確か……。
「『構築済みデッキ』ってヤツか?」
「うん。一応デッキとしては成り立ってるデッキさ。改造は必須だけどね。初心者は大体ここから始めるよ」
「なるほどな」
いいと思う。
だが、
「そんな便利なデッキに使われてないヤツなんてあるのか?」
あるなら、相当不遇なテーマであることは容易に想像がつく。
「うん。一応」
「どれだ?」
「これ」
ミツルが1つの箱を俺にさし出した。
その箱のあった場所は、いわゆるゴールデンゾーンからは程遠い場所。子供でもしゃがまないと取れないような場所にあったものだ。
「これは?」
「魔法使いがテーマのデッキさ」
「なんで使われてないんだ?」
「それなりの理由があってね」
ミツルによれば、その理由はこうだ。
何でも、ただでさえこれといった特徴の少ないデッキだったに加え、近い時期に発売した他のデッキがかなり派手なテーマの上に新戦力となる強力な新カードを加えたデッキだったために印象に残らず、一応このデッキにも新カードが入っていたにも関わらずに、自然と人々の記憶から消えて行ってしまったらしい。
「限定版はすごく売れたらしいけど、再録カードもこれといって使用率の高いカードはないからね。正直、通常版は僕から見てもあんまり買ったって意味がないかな?」
ミツルは苦笑した。
「でもその、魔法使いデッキを作るには丁度いいんだろ?」
「うん。でも、収録されてないカードの専用サポートカードがあったりしてね、まぁ色々問題のあるデッキだよ」
「なるほど……」
つまりおすすめはできないと。
だが、
「よし、そいつを買うか!」
「えっ!?」
「なんとなくだが、俺はこの魔法使い達を使うべきな気がするんだよな」
「えー……どうして?」
「なんとなくだ」
出会いは一期一会。カードも同じだ。
同じ内容のデッキが売ってることはあっても、今俺の手の中にあるカードと全く同じものは2つと無いだろう。俺はそう思う。そしてなんとなく惹かれるものもあった。
最大の理由は何より、面白そうだから。
「まぁ、ユートがいいならいいんじゃないかな? あとここのオリジナルパックも買うといいよ。結構いいカードが入ってることも多いから。あとカードスリーブ」
「サンキュ、わかった」
俺は言われた通りにデッキの他、中古カードが200枚入っているらしいオリジナルパックに、売れ残りなのか半額で売っていたカードスリーブ(裏面はもやしラーメンの写真)をレジに通す。
「っしたー」
やる気のない店員の声を背に、俺は店の奥へ向かう。そこは『デュエルスペース』と言われる場所になっていた。
どうやらカードゲーマー、いわゆる『デュエリスト』と呼ばれる人々のための場所らしい。椅子とテーブルが完備されており、カードゲームをするには丁度よさそうだ。
プラモコーナーが狭くなった最大の理由は、この場所を作るためが大きかったみたいだ。
「じゃ、デッキをつくろうか」
「そうだな」
俺より楽しそうなミツル。
さて、じゃあさっさとデッキを作るとしよう。
そんな時だった。
「お? ミツルか?」
不意に声がした。
「あ、ダニエル!」
視線を移したミツルの表情が明るくなる。
今声を出したのはあの屈強な赤髪の男のようだ。そしてその背後にはもう一人、細身で深緑の髪の男。
何者だ?
「紹介するよ。彼は『
俺は一瞬、顔に驚きを隠せなかった。
簿駆革と言えば、勉強やらスポーツやらとにかく何かしらにずば抜けてるヤツが通うっていう学園だ。 つまりコイツらは、ものすごいエリートということになる。
……ま、そんなもの関係ないだろう、校外だし。それも関係ない気がするが。
「もう一人は?」
「彼は『
その後ミツルは俺のことも相手に紹介した。
しかし、なぜか不機嫌なヤツが1人。
「おい人間。誰が我が高貴なる真名を明かすのを許すと言った? 身分をわきまえろ」
「あ、ごめん……」
ミツルが申し訳なさそうに身を縮める。
なんだコイツ。レイガとか言ったか? いくら簿駆革生とはいえ、態度がひどすぎる。
正直コイツ、面白くない。
「おい、レイガ、だったか?」
「なんだ貴様? 我が真名は『アダム』。
「……」
何だ? コイツ。意味不明だ。
俺が困惑していると、赤髪……ダイキとか言ったか? ミツルに『ダニエル』とか呼ばれていた方だ。そいつが俺に近づき、耳打ちした。
「(いやぁ悪いな。あいつはあだ名の方がめっぽう気に入ってるらしくてよ、アダムって呼んでやってくれ)」
……あ、そんな事情があって真名がどうのとか言っていたのか。俺も耳打ちしかえす。
「(なるほど、サンキュ)」
「(ちなみに俺も、ダニエルで)」
「……」
そういうあだ名、流行ってるのか?
まあいい。あだ名にとやかく言う筋合いは持ち合わせていない。仮にも彼らはミツルと友好的な関係を持っているようだ。呼ばせたいように呼んでやるぐらい、全然かまわない。
「じゃあ、アダム」
「『様』を付けろ下郎」
前言撤回。許さん。
「殴っていいよな?」
「フッ、野蛮な考えだな。貴様もデュエリストなのだろう? なら……」
アダムは懐からカードケースを出した。
「これで決めようとは思はないか?」
「……デュエルか?」
「ああ」
なるほど、悪くない提案だ。
「じゃあ10分よこせ。デッキを組む」
「……どういう事だ?」
「俺のデュエリスト歴は0。ミツルに誘われて、さっきカード買ったばかり。そういうことだ」
アダムは切れ長の目を少し見開いた。どうやら驚いているみたいだ。
まじまじとアダムの顔を見て気づいたのだが、こいつの両耳の上の方の髪だけピンポイントで蛍光ピンクの様な色をしている。
……面白い髪の毛だな……。
少しの沈黙。
「フッ、成程。ならば、ミツルよ」
「なに?」
アダムが提案をした。
「お前がコイツの相手をしてやれ」
「え?」
「お前のデッキは今調整中だったな?」
「うん。もっとアタッカーを増やせたらなと思って」
「そのデッキで十分だ。初心者とは言え、ミツルの調整中のデッキにすら勝てないのなら、我とのデュエルなど神と雑草の差。やるまでもない。ま、勝てたところでも、初心者となど結局はやるまでもないがな」
おいおい、それは言いすぎだろ。
「まぁ、たしかにそうかもね」
納得するのかよ!
「では、決定だな。おいそこの愚民」
アダムは近くのテーブルでデュエルしていた二人組の片割れの男(デブ)に声をかけた。
「は、ははははいっ! なんなななんでしょうか!?」
テンパりすぎだ。
「あれを持ってこい」
「わっかりましたアダム様ぁ!!」
デブはその重そうな体にムチ打ちつつ、カウンターの方へ走って行った。
それよりアダム、本当に『様』
「なんだったんだ?」
「今に解る。いいから貴様はデッキを組め」
ホントにムカつく態度だ。
そうは思っても、他にやることがなかったので、俺はデッキを組むことに専念した。
☆
デッキを組み始めておよそ十数分。
あとはスリーブに入れて……。
「よし、できた!」
なかなかのデキじゃないだろうか?
ルールブックや店のポスターなんかに載ってた、いわゆる『汎用カード』と言われる代物が、昔買ったカードとオリジナルパックににそこそこ含まれていた。その上、エクストラデッキ(特別な召喚方法で場に出せる、メインのデッキには入らないカードを入れておくデッキ)のカードもちらほら発見できたのが幸運だった。
「にしても……」
昔買ったカードの中に、1枚気になるカードがあった。
魔法使い族だったためにデッキに投入したが、なぜか気になる。別段強力なカードなわけでもないのだが、なんて言うかな……こいつを見てると、ずっと何かが聞こえている気がするのだ。ほんの微かにだが。
……ま、気のせいだろう。
そんなことを思った時だった。
「アダム様~!!」
「遅すぎるぞブタ!」
デブの男が何かを抱えて帰ってきた。その男の尻にアダムが強めの蹴りを入れる。男は『ブヒィ!!』と一声鳴き、言い訳を始めた。
「すいません。しばらくご使用なられていませんでしたから、倉庫から探すのに手間取ってしまいまして……」
「
「なんだよって、うおっ!!」
アダムから何かゴツイものが投げ渡される。
これは……。
「『デュエル・イクイップメント』だ。これを使ってデュエルすれば、ファントム・ビジョン・システムという技術により、モンスターや魔法・罠の発動ををまるで現実のように見て、体験することができる。更にライフダメージもな。使い方だが……」
なんだかよく理解しきれなかったが、凄い機械であることは解った。今のカードゲームはテーブル以外でもできるようになっていたらしい。
そういえば、最近の裸眼3Dテレビのニュースで、ゲーム会社の技術の応用がどうとか言っていたはずだ。もしかしてその技術ってのがその、ナントカシステムのことなのだろうか? そんなことを考えている内に、アダムが説明を終える。
「おい貴様、理解できたか?」
「あ、お、おうよ!」
正直ほとんど聞いていなかった。だが、現物の形で大体の使い方は予想できる。このイクイップメントの板部分、これ全体が俺のデュエルフィールドなのだ。そして腕輪のような穴が開いていることから、これは腕にはめて使うようだな。
俺は左腕にイクイップメントを装着した。
「よし、ミツルも付けろ」
アダムに言われ、ミツルもイクイップメントを付ける。
そしてミツルがイクイップメントにデッキをセットしたため、俺もセットした。なるほど、ここにセットするのか。
「ユートよ。このデュエル、貴様が負けたら、我のことをこれからは大人しく『様』付で呼べ。いいな?」
「ああ。だが、俺が勝ったら……」
そうだな……よし!
「俺とデュエルしろ!!」
ミツルに謝罪させるのは、それに勝ってからだ。
口調的にコイツはプライドが高そうだし、俺が直々に倒して謝罪させてやろう。その方が面白そうだ。
「何故だ?」
「そんなの自分で考えろよ!」
少しは罪悪感を覚えるべきだ。
「……何だか理解に苦しむが、いいだろう。ミツル。手を抜いたら……」
「解ってる。抜いたらバレるし」
「ならば良い。よし貴様ら、デュエルを始めろ!!」
俺とミツルは対峙し、アダムの言った通りにデュエルを開始した。
これが俺の初デュエルになる。
同時のスタート宣言が、ショップ中に響き渡った。
「「デュエル!!!」」
ユート
『LP:4000』
ミツル
『LP:4000』
トランプとウノ以外なら数年ぶりのカードゲーム。少しずつだが、昔感じた感覚が蘇ってくる。
いや、昔とは少し違う感覚だ。だが、悪くない。そう思った。
この感覚を、毎日感じられるようになるのだろうか? それはとても面白い。
「じゃあ、お手本もかねて先攻はもらうよ!」
「いいぞ」
「僕のターン! ドロー!」
ミツル
『LP:4000』
『手札:6』
ミツルはデッキからカードを1枚引いた。
「知ってると思うけど、ターンの初めには、必ずカードを1枚ドローする」
「ああ」
もちろん知っている。TCGは大体そうだ。
「なら、僕は手札より『ゴブリン突撃部隊』を召喚!!」
『ゴブリン突撃部隊』
「地属性・星(レベル)4・戦士族・効果」
ATK2300
相手フィールド上にくすんだ緑色の肌をした数体のゴブリンが現れた。部隊とか言ってるが、一応あれでモンスター1体分らしい。
それにしても凄い。まるで本当にそこにいるようだ。これがデュエル・イクイップメントの力か……。
「今のがモンスターの通常召喚。自分のターンに1度だけ行える召喚さ。通常召喚の場合、出せる表示形式は表側攻撃表示と、裏側守備表示の2択。特殊な条件による特殊召喚には回数制限はない。だけど、表示形式は必ず表側さ。あと、先攻1ターン目は攻撃できないよ」
それもルールブックに書いてあったので知っている。だが、確認として聞いておこう。
「モンスターには効果を持った『効果モンスター』と、効果を持たない『通常モンスター』の2種類が存在するよ。差は効果の有無だけだけど、共通して通常召喚には星5、6は生贄が1体。7以上には2体必要だから、気を付けて」
うん、なるほど。
……晩飯なにかな……おっと、飽きたわけじゃないぞ。
「そして手札から魔法カード『強者の苦痛』を発動!」
俺の目の前に効果の説明文が現れる。
『強者の苦痛』
「永続魔法」
「このカードが場に存在する限り、相手の表側表示モンスターは星×100ポイント攻撃力がダウンする。」
「魔法、罠カードは発動できるタイミングさえ守れば、発動枚数に制限はないよ。あと、メントを使ってのデュエルの場合、モンスター効果はモンスターがいてもカード効果が発動するまで効果は相手には明かされないから、気を付けて」
「伏せたトラップと速攻魔法は1ターン経過しないと発動できないんだろ?」
「うん。そうだね。それだけ知ってればあと大丈夫かな? あと、基本デュエルは相手のライフを0にしたら勝利のゲーム。どう削り取るかがカギ。特例はあるけどね。そんなところかな?」
「おいおいミツル。大事なルールを忘れてるぞ」
「え? 他にあったっけ?」
ミツルは首を捻った。あいつは本当に基本的なルールを忘れてやがる。俺はこのためにお前の誘いに乗ってやったってのに。
「デュエルは全力で楽しむもの。そうだろ?」
「……ユート……うん、そうだね!! 僕はこれでターンエンドさ。手加減はしないよ!!」
ミツル
『LP:4000』
『手札:4』
「ああ。俺は全力で行く! だからお前も全力を出せ! ドロー!!」
ユート
『LP:4000』
『手札:6』
~続く~
まだ始まったばかりですが、感想、お待ちしています。
イクイップメントは原作と差別化するためのものです。デュエルディスクと同じと思っていただいて構いません。
Pクリーチャーカードゲームは架空のカードゲームです。