執筆環境の都合で、約1か月周期の更新にさせていただこうと思います。
ですが、場合によっては早めることもあります。
今後ともよろしくお願いします。
「いやー、たすかったぜ……」
ブスロリ達のチームを打ち倒し、縄で自由を奪われていたダニエルを救出すると、ダニエルはため息まじりで俺とミツルにそう言った。
「ホントだっつの、よりにもよってあんなリアルモンスターチームとデュエルすることになろうとはな」
俺はそう言いながら解いた縄をミツルに渡した。その意味を察したミツルは何も言わずともゴミ箱へ向かう。さすが幼馴染といったところだ。
2人っきりになったからだろうか。ダニエルがゴキゴキと首を鳴らし、こんなことを言い出した。
「いやー、にしても、正直ユートみたいな初心者にもやしが生えたような野郎がここまで戦えるとは思ってなかったぜ」
なんと失礼な……。
「んだとこのマッチョ、助けられておいてなに言ってんだよ」
「だから言ってんだ、見直したってな」
「……」
ダニエルはそう言い、無邪気にはにかんでいた。
……くっそ、照れんじゃねぇか。どうしたんだ急に。
「お前キモイなー」
「なんでだよヒデェぜ!!」
素直に悲しむダニエル。正直面倒だ。こんな時にこそミツルがいてほしい。
「ミツルはまだか? おせぇな」
「ゴミ箱っつーと、あの受付したあたりまで戻るんなんねーよな?」
ああ、道理で遅いわけだ。俺たち二人は待ち時間に暇を持て余すことに。
話題を探してみると、俺はダニエルについての情報をまるで持ち合わせていないことに気付く。デュエリスト歴やアダムとの関係など、訊きたいことは山ほどあるな。
「なぁダニエル、お前なんでダニエルなんだ?」
「は?」
おいおい俺。なんでよりによって最初に出てきた質問がこれだよ? あだ名の起源とかどうでもいいだろ。いや、正直超気になっていたとは言っても、なんでこれが最初に出てきたかな……。
ま、いきなり住所とか訊くよりはいいだろうと俺は自分に言い聞かせ、返答を待つ。
「俺がなんで俺かってか、ひじょーに哲学的だぜ……」
頭を抱え、うんうん唸りだすダニエル。
ズレてるズレてる。
「そうじゃねぇよ。お前がなんでダニエルって呼ばれてんのかって。いつ誰がそんなピッタリなあだ名考えたのかって話よ」
「ああ、こいつぁそもそも……」
答えを言いかけ、フリーズするダニエル。何か、忘れていたことを思い出したかのような硬直と表情だ。
「どうした?」
「……あ、わりぃ。そういやあいつ、いつもこの時期は静かだったっつーか、いや、まさかとは思うけどよ……」
なんだかわからないが、『そういや最近も見かけねぇし……』と言いながら思考にふけるダニエル。
そんな時だった。
「ユートー、ダニエルー!!」
ミツルが手を振りながら帰ってきた。走っているところを見ると、そこそこ急いで戻ってきたようだ。体が強くないのだから、あまり無理はしてほしくないものだが。
「おーミツルー……って、ん!?」
ミツルの背後に1人、2人、3人、4人……。
「なんかあいつ大量にオマケ引き連れてきてねぇか!?」
「どーやら、うまそうなエサに獲物がかかったってとこだろうな」
ダニエルの見解では、デュエル・イクイップメントをつけた弱そうなヤツが一人でいたというだけで、あれだけの人数が目を付けたわけらしい。だからミツルは今追われているということか。
「たすけてユートーぉ……!」
息を切らしながら助けを求めるミツル。こうなってしまっては仕方がない。
「やるか」
「そうだな、やるっきゃねーぜ」
そう言い、ダニエルはメントを携帯モードからデュエルモードへと変形させた。
さて、やられたいヤツからかかってこい!!
「いくぞダニエル!」
「おうよ!」
☆
「やっと終わったか……」
俺は誰もいなくなった周囲を見渡し、やっとそう確信することができた。
5戦連続チームデュエル。5戦5勝。
「っあー、なかなかにハードだったぜ」
ダニエルは眠たそうに伸びをし、首を鳴らした。
それにしても、『助けてもらったお礼』だということで5戦全ての先鋒をダニエルに担当してもらったわけだが、ダニエルのデュエルには改めて驚かされた。
ダニエルは全てのデュエルを自分のターンで数えて3ターン以内で勝利して見せたのだ。全勝したことも凄いことだが、その速攻で相手のライフを焼き切るダニエルのデュエルスタイルの強さを痛感した。
ダニエルは5戦にも及ぶデュエルを一気にしたせいか、疲れ気味にミツルに話しかけた。
「にしてもラッキーだったぜ。ミツルの連れてきた連中が、言っちゃ悪いが弱いヤツばっかでよ」
「ダニエルが強いんでしょ、相手に反撃のスキを与えずに倒すなんて僕には無理だもん」
「そうか? だったらミツル、お前も強いだろ。今んとこ3戦3勝だし」
「そうかなぁ? だったら嬉しいけど」
さっきの5戦連続チームデュエルでは、ダニエルが5戦、ミツルが2戦、俺が3戦を担当した。当然全勝し、5戦に及ぶチーム戦は全て2回のデュエルで済んだわけだ。
しかし、残念なことにさっき戦った5チームは全て初戦だったようで、1チームにつき1勝しか手に入らなかった。弱そうなデュエリストを狙うような連中だし、当然と言えば当然か。
今のところ6勝。制限時間は、約2時間経過し、残り約6時間。その時点での俺たちの順位は……俺はタブレットで確認する。
「残りチーム231チーム中……おお! 6位か!!」
この予選に参加したチームは500チームを超えていた。この2時間で半分以上のチームが脱落したわけか。
タブレットは思っていたより様々な機能が搭載されていて、自チームの勝数と順位に加え、上位10位内に入っているチームのチーム名と勝数を見ることができた。
さっきの5勝が効いてかなりの上位に……と思ったが、なるほど、同率6位が23チームもある。ちなみに1位のチームは11勝で、5チームいた。
「にしても結構減るもんだな」
「そうだね。でも積極的に戦うチームもあれば、隠れて様子見をするチームもあるわけだし、今後どうすればいいんだろうね……」
「んなもん、勝ちまくって1位狙うしかねぇだろ。このサバイバルで1位にならなけれゃ予選の決勝にすら出れねぇんだからよ」
「そうは言ってもね……」
ミツルによれば、この大会は大きく分けて2つのタイプのチームがあるようだ。
1つは、簡単に言えば今の俺たちのようなタイプ。来るものは拒まず、むしろ自分たちからデュエルしに行く、攻めのチーム。
そして2つ目は、極力デュエルを避け続けるチーム。ミツルによれば、このタイプのチームが危険らしい。
「今隠れてるチームは、今後どうすると思う?」
「ん……確かにそうだよな。サバイバルっつっても生き残ればいいわけじゃねぇ。要は勝数で順位が決まるんだもんな」
「そう。で、その勝数の決め方は憶えてる?」
「おう、負かしたチームが持ってた勝数も勝数に加えるんだよな。2勝してるチームに勝てば、3勝みたいな」
「そうだね。じゃあ効率よく勝数を稼ぐにはどうしたらいいかな?」
「んなもん決まって……あ」
「そういうこと」
なるほど、そういうことか。
今デュエルを避けているチームは、多くのデュエルをすることで起きうるリスクを避けている。つまり、誰もが持つ『負ける可能性』を恐れているわけだ。その『負ける可能性』はどんなに低くとも、多くのデュエルを重ねればそれだけ引き当てる可能性は上がる。例えれば、10枚中1枚ハズレがあるくじを、1回だけ引くのと、何度も引くかの差。1回引くだけなら単純に10分の1の確率。しかし、10回引けば確率的に1度、ハズレを引くのだ。
そして、少ないデュエルで多くの勝数を手にする方法は……。
「大会終了間際で、多くの勝数を持つチームと戦うってわけか」
「そうだね。そして狙われるチームは必然的に、その時上位にくい込んでいるチームってこと」
『現在6位っていうのは、もしかしたらピンチなのかもね』とミツルは付け加えた。だが、俺はそうは思わない。
「んなコソコソ隠れるようなチームに負ける気はしねぇけどな」
「強い上隠れてるチームもないとは言えないけどね」
確かにそうだが、そんな細かいこと考えていても仕方がない。とにかく、たくさんの『勝利』を重ねればいいのだ。すでに6回もの勝数を稼いでいる。十分優勝も狙える。
「ミツルがどう思おうが、俺はもっとデュエルしてぇな」
「実を言うと、俺もだぜ」
ダニエルが俺に賛同する。どうやら方向性は決定したようだ。
「まぁ……そうだよね。このチームのメンバーを考えれば当たり前か」
ミツルはあきれながらも、どこか嬉しそうだった。
「さて、俺たちのやり方が決まったってことで、対戦相手さがすか!」
「よっしゃ、行こうぜ!!」
ダニエルのハイテンションな返事を聞き、俺は適当に歩き始めた。さて次の相手は……。
『対戦を申し込まれました。デュエルを開始してください』
「…………え?」
小脇に抱えていたタブレットから音声が流れた。どうやら、通信で挑戦者が現れたようだが、一体相手はどこに……。
「ユート、見て!」
「ん?」
ミツルが指さすのはタブレットの画面。対戦相手の情報が表示されていた。
相手のチーム名はその名も、『デイビスブラザーズ』。
「ダニエルみてぇなネーミングだな」
「そこじゃないよ!」
「は?」
どうやらミツルが見てほしいのはメンバーと勝数。それは……。
「2人組で、9勝だって!?」
「うん。これは油断できないよ……」
このサバイバル戦は2人で参加した場合、3人の相手との対戦になれば、当然相手は1人不戦勝。圧倒的に不利になる。その上3人でチームを組めば最低でも3種類のデッキから選んで選出できるのに対し、2人では最低2勝しなければチーム戦で勝つことができないのだから、選ぶ余地がない。
つまりだ。
「実力派ってことか」
「そうだね」
今回の対戦相手は弱いヤツらをたくさん狩ったのか、強いチームを倒したのか、どちらにしても弱いわけがない。
さてどんな奴らが来るのか……。
ガサガサッ!
草の茂みが揺れ動く、どうやらそこか。
「さっさと来いよ、待ちくたびれたぜ」
ダニエルが挑発する。
その時だった。
「フッハアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「「「!?」」」
妙に耳に残る謎の奇声が響いた。俺たち3人は困惑を隠せない。
同時に茂みから黒装束に身を包み、長く伸びたストレートの金髪を後ろで縛り、それをなびかせた男が飛び出してきた。
「ついに見つけたぞおおおおおお!!」
空中で意味もなく1回転してのアクロバティックな登場。そしてなぜか出会い頭に殺気をバリバリ振りまく黒衣金髪野郎。
「間違いねぇ、来いワトソン!!」
ガサガサ。
「コー、ホー、コー、ホー……」
今度は甲冑で顔を隠しているが、首から下が南国チックな私服の超シュールな野郎の静かな登場だ。
おいおいまさか……。
「お前らが対戦相手か!?」
「そぉの通りだああああああああ!!」
黒衣金髪がキレながら肯定する。
「さっきからなんでキレてんだよ!!」
よく訊いた、ナイスだダニエル。その理由がわからなければ俺がコイツらをぶん殴るところだ。
「んなもん決まって……」
「コーホー」
「うん? おっとそうか」
甲冑野郎が何かを言ったようで、黒衣金髪が冷静さを取り戻す。甲冑野郎が何を言っていたのかは俺たちには解らなかった。
黒衣金髪はにやりと笑みを漏らし、自己紹介を始める。
「悪いな、まずは自己紹介からだ。俺の名はデイビス。こっちはワトソンだ」
「お前は
「え……なぜわかったあああああああああああああ!?」
いや、タブレットにそう表示されてるぞ? それよりまたこういうパターンのあだ名か、マジで流行ってんのか?
「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「コホ、コーホー」
「ワトソン……そうだな、この程度でくたばるデイビス様じゃないぞ!!」
よく会話できてるな……あの甲冑、コホコホ言ってるだけなのに。対戦相手であるにも関わらず、俺は謎の感心を抱いていた。
「とにかく、俺たちはデイビスとワトソン。よっっく憶えとけよ!」
「お、おう」
わけわからん。俺たちがそう思ったその時、デイビスから気になる質問が飛んできた。
「まず1つ聞く、お前らあの『死神』ことアダムの仲間だな?」
それどっちもあだ名だろうが。俺が『いや、むしろ敵だ』とでも言ってやろうかと思ったその時、ミツルが先に答えていた。
「そうだよ、アダムは僕たちの友達だよ」
「そうか、なら問題ない。敵の友は敵だ。デュエルといかせてもらう!」
どうやらコイツらは過去にアダムと何かあったようだな。そんなことを考えていたら、ダニエルが口を開いた。
「ま、問題ねぇよな? よくわかんねーけど、どうせもう対戦は決定しちまってるぜ?」
ダニエルはやれやれといった感じで、俺たちに同意を求めてきた。当然答えは、
「もちろんだ」
「ま、しょうがないよね」
俺もミツルも、準備は万端だ。
「1戦目は僕が行くよ。さっきは弱気なこと言っちゃったからね」
「先鋒はミツルか。よし、行って来い!!」
俺はスポーツの試合前のように、ミツルの背中を叩いた。
対して相手は……。
「よし、ワトソン。出番だ! いってこおおおおおおおい!!」
「コー、ホー、ホー!」
「『昔アダムにボコられて今でも根に持ってるけどアダムには勝てないからその仲間をボコりたいんだよね』って何言ってやがる!! 通訳はしてやるから早く行け!!」
そんな理由だったのかよ、とんだとばっちりだな!
アイツらの動機はさておき、デュエルが始まる。
「コホー!」
「『ちなみにデイビスとかワトソンもアダムに憧れて考えたんだよね』って今はそんなことどうでもいいだろ!! デュエルだ!!」
「え、あの、いいんだよね……? でゅ、デュエル!!」
チーム『∞』
十花ミツル
『LP:4000』
チーム『デイビスブラザーズ』
裸隙ナツカゼ
『LP:4000』
色々と不安が残るが、デュエルが始まる。
間抜けだが、油断できない相手だ。
~続く~
感想お待ちしています。