メインイベントへの繋ぎ的な回ですが、読んで下さるとうれしいです。
ダニエルは強かった。想像以上だ。さすがアダムの練習相手をしているだけはある。それとも、俺は所詮ミツルに偶然勝った程度、という事だったのだろうか? ともかく俺から見ればダニエルは十分すぎるほど強い。
アダムを倒すと言った手前、情けなさ過ぎて泣けてくる。
「あーあ、負けた負けた! 想像以上に速攻で負けた!!」
「そう拗ねるなよ。お前も意外にやったって」
「なにを?」
「えーと、あれだ、その……」
「ねぇじゃねぇか!」
「ちょ、泣かれても困るぜ……」
泣いてねーよ!! ぐすっ。
お前の強さを認めて訊くが……。
「……俺の敗因はなんだ?」
「は?」
「勝負には必ず『敗因』と『勝因』がある。そうだろ?」
「まぁ、そうだわな」
「だったら、お前から見て、俺のデュエルはどうだったよ?」
「……はぁ、なんだかな……?」
ダニエルはわざとらしくため息をつき、俺を一瞥。すると観客の方へ向き、アイツを呼んだ。
「おいミツル」
「へ?」
「お前、今のデュエル見て、どう思ったよ?」
「うーん、なんというかね……?」
ミツルは首を傾げ、考え込む。言葉がまとまらないといった感じだ。
「ま、ちょっと話してみるといいと思うぜ。あ、あと……」
ダニエルは俺の目をしっかりと見て、こう言った。
「正直、今のお前は弱かったぜ」
ダニエルは俺にそういい残し、どこかへ行ってしまった。
「……へへ」
俺の顔から自然に笑みが漏れてきた。自分でも何が可笑しいのか理解できない。
「?」
「あ、あんにゃろおおおおお!!」
「ちょ、ユート落ち着いて!」
貧弱な体で必死に俺を止めようとするミツル。投げ飛ばしてもよかったが、ミツルが怪我でもしたら大変なのでやめておく。
「落ち着いてられるかよ、ザコ認定されたんだぜ俺!?」
「ダニエルが少し話してみなって言ってたでしょ、きっと今の言葉にも意味があったんだよ!!」
「……ったく、それはミツルが俺に言いたいことがあるってことでいいのか?」
「うん。まぁ」
「で、なんだ?」
なんで上から目線なんだ俺? いや、視界的な話もだけど、立場的な話ね?
「今のユートの戦い方、なんか違うと思うんだ」
「ん?」
どういう事だ?
「なんていうかな? 今のデュエル、見ててつまんなかったよ」
「そうか?」
まぁ、デュエルは見せ物としてやってるわけじゃないからな。
「あとユートもあんまり楽しくなかったんじゃないかな? 僕と初めてデュエルしたときはもっとこう……『単純だけど、想像もつかない』。そんな楽しいデュエルだったと思うんだよ」
……確かに。
ミツルとやった時は、なんというかこう、勝敗なんてあんまり気にしてなかった。
いや、アダムを許せない気持ちもあったが、初デュエルだった訳だし。正直、勝敗よりもデュエルというものを楽しみたいと思っていた。
「でも今のデュエルはさ、そりゃ勝ちたいって気持ちはわかるけど、ユートの戦い方じゃないと思う。そんなの僕が言うことじゃないって思うけど、言うよ。ユートはもっと真っ直ぐであるべきだよ」
真っ直ぐ……ね。
そういえば俺、どうしてデュエルしているのだろう? 確か夏休みになにもすることがないし、面白そうだから。そんな理由だった。で、実際どうだったよ。
超面白かった。ありえないくらいだ。周りを見ればダニエルは意味不明だし、アダムも超ヘンテコだ。アイツら絶対どっかおかしいだろ。デュエリストってこんなヤツばっかなのかよって、そう思った。だけど、『超おもしれぇ!』って、知らず知らずの内にワクワクドキドキして、思ったんだ。なぜなら、どんなにヘンテコでも、バカみたいでも、アイツら超本気だったから。
みんなでひたすらデュエルして、勝って、負けて、時には喧嘩したりして。そうやって互いに高めあって……そんな生活。なんで俺は悪くないって思ったんだよと訊かれれば、決まっているだろうそんなの。
「面白かったんだよなぁ……」
だが、今の俺はどうだろう?
ここにいる全員がそう思っただろうが、事実、俺は気が付けば『勝つために』デュエルしていたのだ。
ディメンション・マジックの発動タイミングを思い出せば明らかだが、きっと本当の俺なら、すぐにブラックマジシャンを出して相手モンスターを破壊し、ダイレクトアタックも決めた上でテスタロスを召喚させることもなかっただろう。
しかし、そのプレイングがダメだったという訳ではない。当然だ。デュエルには勝敗があるのだから、誰だって勝ちたいと思う。慎重にだってなるというもの。
だが、それは俺のやり方じゃない。
俺のやり方は……。
「『デュエルは楽しむもの』だもんね?」
「……ったく、また声に出てたか?」
「ううん、そう結論づけてほしいなーって」
「……そうか」
希望に答えられて、うれしい限りだ。
さて、よし!
「ミツル! 俺とむっちゃくちゃに興奮する『面白いこと』するか!!」
「え……ええっ!?」
ミツルの顔がボンと赤くなる。どうしたんだコイツ。赤面なんかして。
俺変なこと言った?
「嫌なのか?」
「いや、あの、その……嫌じゃないけどさ、その……」
「だったらさっさとデュエルしようぜ!」
「え……あぁ! もうっ、ユートのアホっ!」
なんで怒られてるんだ? 俺。ま、面白いから問題無しだ。
ミツルが固い『守り』のデュエル。ダニエルが燃える『速攻』。アダムが無限の『戦略』。とでもするなら、俺は楽しむ『魂』ってところだろう。
なんというか、地味だ。弱そうだし。
でも、
「……面白れぇじゃん?」
そう思っちまうんだよな……俺。
☆
数日後。
「…………っしゃあ!!」
「おー、やるじゃねーか!」
俺はダニエルへのリベンジに成功していた。
「どうだよ、前に俺んとこ弱いとか言ってたよな!? 取り消せオラァ!!」
「あ? 言ったっけ?」
「オイ、言っただろ! 1、2週間ぐらい前!!」
「んな前のこと憶えてねぇよ」
「く、畜生……」
1週間以上は時間がかかりすぎたか。仕方ないだろ? コイツ強くてさ、毎日やってもなかなか勝てねぇんだもん!
「(へ……ま、こんなもんだろ……)」
コイツ今、ボソッとなにか言わなかったか?
「なんか言ったか? ボケじじい」
「なんも。つーか誰がボケじじいだこの野郎!」
「お、やるか? 赤髪マッチョ!」
「んだよそれ悪口か!?」
「さぁな」
「ったく、1回勝ったからって調子に乗りやがって」
「あ? じゃあもう1回か!?」
「いいぜ。いくらでも相手になってやるよ!」
「「デュエル!!」」
こんな風に、デュエルができる。それだけで十分だ。だが、もっと面白いものがある。
世界大会、その日本代表を決める戦いの日が、もうすぐそこまで迫っていた。
~続く~
デュエルのプレイングに正解はありません。自分がどういうデュエリストで、どうすれば後悔しないか、というものは読みや駆け引きと同じくらい大切なことだと思います。
色々と伏線を張ってきました。
物語はまだ始まったばかりです。