そろそろ書き溜めが少なくなってきました。
「……んだとテメェ!!」
俺は食ってかかった。しかし、アダムは冷静に対処して見せる。
「聞こえなかったようなら、もう一度言ってやる。滑稽だと言ったんだ」
「それは聞こえてるっつーの! 俺はなんでテメェにそんなこと言われなくちゃなんねーんだってことを言ってんだよ!!」
するとアダムは例のポスターを指さし、軽く鼻で笑いながら言った。
「フッ……知っているぞ。貴様ら、あの大会に出るのだろう?」
俺はミツルとダニエルを順番に睨みつける。2人共首を振った。どうやらその辺のヤツが噂してるものでも聞いたのだろう。
「ちなみに、情報源はダニエル。貴様の枕の下にあったコレだ」
アダムが掲げたのは1冊の本。タイトルは『デュエルで勝った時に言いたい100の言葉~大会編~』。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
ダニエルは発狂し、ビクンビクンと悶絶している。どうやらダニエルの恥ずかしい私物が公開されてしまったようだ。
つーかお前か!
「漏らしたのテメェかよ、それになんだよあの本!!」
「漏らしたってクソッ、しょうがねぇだろ! 俺アイツと一緒に住んでんだし、それに俺だってカッコいいキメ台詞くらい言いてぇんだよ!!」
涙目のダニエルのくだらない願望はさておき、驚愕の事実を聞いたことを理解するまで数秒の時間が必要だった。
その、なんだって?
「えっと……なっ……はぁ!?」
「あ?」
ダニエルは俺の反応の理由が理解できていないようだった。俺は疑問をそのまま口に出す。
「お前たち一緒に住んでんの!?」
「おお、そうだぞ」
ダニエルはさも当然のように言った。なら俺も、当然のように出る感想を言おうと思う。俺は自分の体を抱き抱える態勢をとりつつ、その言葉を発した。
「きっ……気持ち悪っ!」
お前ら……ありえないわ。そんなことを思った瞬間、
バッキィイイ!!
鈍い打撃音が辺りに響く。
俺の右頬はアダム、左頬はダニエルが殴り飛ばしていた。
「ゴパァ!」
逃げ道を失った衝撃は俺の頭部を駆け巡った。まるで脳内に小宇宙でも生みかねない勢い。確実に今まで味わったことのない衝撃の伝わり方だ。
幼稚園時代、小学生時代と順にセピア色の思い出がフラッシュバックする。俺は頭を抱えてその場に崩れ落ちた。
「ぐおおおお……ってなにしやがる! 目ん玉飛び出っかと思ったじぁねえか!!」
アダムはこぶしをハンカチで拭きながら答えた。
「莫迦か人間。我とこの赤髪はルームメイト。それだけだ」
「そうだぜ。俺たちは簿駆革の寮で相部屋してるだけだ。何考えてんだぜコイツ」
ダニエルが俺を軽蔑の眼差しで見ている。な、なるほどね、ルームメイトだったのか。この2人。
俺はてっきり……おっと、これ以上はマズい。ミツルは少し離れた場所で笑っていた。どうやらこの事実を知らなかったのは俺だけらしい。
っと、話を戻そう。
「で、何で俺たちが大会に出るのが滑稽なんだ?」
「……チーム『零』。知っているだろう?」
「ああ。それがどうした?」
チーム『零』。その存在なら以前ミツル達に聞いたし、その後少し調べた。
世界の頂点に立ち続ける、世界最強のデュエリストチーム。常に顔を仮面で隠している。取材などにも一切応じず、出身地、年齢、経歴等の詳細は一切不明。
つまり、解っているのは世界最強というという事実だけだ。
「貴様ら程度が、そのチームを打ち破り優勝? ありえないな。鼻で笑うレベルだ。フッ」
ホントに鼻で笑いやがった……。
少しばかりカチンときたが、それは俺も自覚していること。抑えろ、俺。
「それがどうしたってんだよ。出場は俺達の勝手だろ?」
「人生において時間は限られている。そんな無駄なことをしてどうする?」
「無駄じゃねーよ。たとえ負けてもいい経験になるし、ひと夏の思い出にもなるさ」
「悪い思い出にか?」
……くっ……。
「つーかさっきから何が言いてーんだよこの野郎! 俺らの勝手だろって言ってんだろーが!!」
何なんだコイツは、いつもは『勝手にしろ』みたいな空気振りまいているくせに、今回に限ってぶつくさ文句つけてくる。俺はつかみかかろうとする自らの体を必死に抑えた。すると、そんな俺をよそにアダムの口から理解できない言葉が流れ始めた。
「我は忠告しているのだ。世界は広く、深い。そしてそれは常に暗き方向に伸びている。貴様らには荷が重すぎるのだよ」
アダムの表情が一瞬曇った気がした。無論、気のせいに違いないと思う。
「……以上だ。解ったら無駄なことはやめろ。仲良くデュエルできる今に満足することだな」
そう言い残し、アダムはショップの外へと去って行った。
「なんだったんだよアイツ」
言いたいこと言って出ていきやがった。
「アダムはいつでも意味不明だからな」
ダニエルがそう言うのだから、そうなのだろう。
「アイツってあんなんで日常大丈夫なのか?」
「結構ヤバいぜ? だって昔よ……」
ダニエルは回想を語り始めた。
☆
それは国語の授業中の事。
先生「……と、いう事があって、この『ぼく』は赤ちゃんはコウノトリが運んでくると勘違いしていたことが読み取れますね」
アダム「おい教師よ」
先生「なんですか? レ……いや、アダムさん」
アダム「この『ぼく』とやら、赤子が鳥によって現世に現れると勘違いしたそうだな?」
先生「ええ、小学2年生らしい、幼稚な可愛らしい勘違いと言えますね」
アダム「いや、おかしい。まずこの『お父さん』と『お母さん』。どうして息子がこんなオカルト的な話をしているというのに、笑顔で聞いている? まずどこからそんな誤った情報を得たのかを問いただし、真実を正確に教え、間違いを正すべきだ。何故それをしない?」
先生「いや、ですから相手は小さな小学生なので……」
アダム「……なるほど、この大人2人は子供のみ見ることができるという世界に関心がある。薄汚れた大人には見えない、純粋故に感じるという世界を研究してるという事か……」
先生「いや、あの……」
アダム「はっ! ということは前篇に登場した『ぼく』に誤った情報を植え付けた『ひーちゃん』。この女児も別世界を見ることができる所謂『能力者』だったということになるな。ということは『お父さん』と『お母さん』のもう一人の研究対象ということになる。なんという事だ! この町、いや、すでに町ではない! 町に似せることで秘密裏に『裏世界』の研究を進める広大な研究施設という事か! とすると、無論、何も知らない『能力者』の周りの人間は組織の人間のはず。つまりだ、この『おじいちゃん』や『たなかさん』も組織の人間という事か!! なんという残酷な真実……『ぼく』や『ひーちゃん』はこの世に生を受けた時から嘘で構築された世界に生きることを課せられ、大人になり、使い物にならなくなったら捨てられる運命。そんな世界に『ぼく』は価値を見いだせるのか……? 運命を変えることは可能なのだろか? そして組織のここまでする目的は……? 実に興味深い……」
先生「……」
☆
「……さすがにこの時は慣れてる俺でもドン引きだったぜ」
「なんかもう先生がかわいそうだな」
どうして子供の純粋な勘違いから『裏世界』が飛び出すんだ。俺が教師だったら速攻でカウンセラーに連行するだろう。
というか、アダムは先生にも『アダム』と呼ばせているのか? 何の意味があるのやら、意味なんて無いのだろうが。
「そういえば、僕も意味不明なこと言われたことあるよ」
「ふーん、ミツルもか。どんな?」
「えっとね……」
今度はミツルの回想が始まった。
☆
ミツルとアダムが知り合って間もない時のこと。
ミツル「あの……えっと、アダム?」
アダム「なんだ人間」
ミツル「その、デュエル教えてくれないかな?」
アダム「何故だ」
ミツル「だって強いんでしょ? デュエル」
アダム「当然だ」
ミツル「だったら……」
アダム「しかし我は女とて容赦はできない。貴様にその覚悟ができるとは思えないな」
ミツル「…………」
☆
「……なんか変なとこあったのか?」
普通すぎて何とも……。
「いや、あったじゃん」
「俺も全然わかんねぇぜ」
ダニエルは首をかしげた。
「いや、最後の方……」
「「?」」
俺とダニエルは二人して脳内に『?』を浮かべる。何だこの間違い探し。
「……ぐすっ……」
ミツルは袖で目元をぬぐった。
「おいおい泣くなよ……」
俺はアダムのセリフのみをピックアップしてみる。
『なんだ人間』
『何故だ』
『当然だ』
『しかし我は女とて容赦はできない。貴様にその覚悟ができるとは思えないな』
この中におかしい場所があるはず。まさか!!
「お前人間じゃないのか!?」
宇宙人……いや、幽霊!?
「ぎゃあああミツル怖ええええ!!」
ダニエルは酷い取り乱し様だ。コイツ幽霊とかオカルト系に弱いのかもしれないな。
弱点発見っと。
「僕は人間だよ、だから最後の方! じゃ、じゃあ大ヒント! アダムは『女とて容赦はできない』って言ったけど、僕は何?」
「「女」」
俺とダニエルは完全に声を合わせて言った。
「っ……ううぅ……」
ミツルは膝から崩れ落ちた。
「いやだから泣くなよ。冗談だって」
「そうだぜ。お前は女より女っぽいけど男でもあるんだぜ」
ダニエルもダニエルなりに必死にフォローしているようだ。全くフォローになっていないが。
「どうせ、どうせ僕は男らしくないよ」
「そんなことねぇよ。お前は昔から……」
「昔から?」
ミツルは期待と不安の入り混じった表情で俺を見上げる。
「……昔……から……」
な、なにも出てこない……。
「……無いよね。うん」
ミツルのテンションは絶望的なところまで下がっているようだ。原因は期待を裏切った俺だろう。
「いや、ちょっと待ってくれ!」
なにか出るんだ! 俺の思い出!!
「そ、そうだ、昔川に遊びに行った時によ。お前が1番最初に魚捕まえたよな?」
「どうせ捕ったのは網でメダカみたいなのだったさ……そのあとユートが木の枝ででっかいヤマメ突き刺して来たんだよね」
「そ、そうだった……っけか?」
完全に逆効果だ。ワイルドすぎだろ、昔の俺。
「そうだ! お前はデュエリスト。決闘者(けっとうしゃ)じゃねぇか。戦いをするんだぜ? 男の中の男だろうよ!!」
「女性にだってデュエリストはいるよ……」
「じゃあ俺とデュエルだ!!」
「?」
「この俺と同等以上に戦えるお前が女々しいわけねぇだろ。な?」
「そう……なのかな?」
「そうそう。俺がこのデッキで、目を覚まさせてやる!」
「一応デッキは完成してるけど、なんかもう自信ないよ……」
ミツルは『はぁ』とため息をついた。そんなミツルを見てダニエルは、
「自分のデッキも信用できねぇたぁ、本格的に女々しいヤツだぜ……」
ぼそっとそう呟いた。
「そんなことないよ!」
ミツルはデッキを取り出し、イクイップメントにセット。さすがにそう言われたらミツルも黙ってられなかったようだ。
ダニエルはこちらに親指を立てて見せる。どうやら、計画通りと言いたいらしい。
「よし、そういう事なら、お前の本気見せてもらうぜ!」
俺もまた、イクイップメントを構えた。
「「デュエル!!」」
ユート
『LP:4000』
ミツル
『LP:4000』
本気のミツルとのデュエルは初めてだ。
お前の男気あふれるデュエル、見せてもらおう!!
~続く~
アダムに厨二感を出すのが個人的に難しいですね。
それでも楽しんでいただけたら幸いです。
感想お待ちしています。