ですが、今回デュエルはありません。
「よおミツル、やっぱ強えじゃねーか! 楽しいデュエルだったぞ!!」
「うん、そうだね。僕も凄く楽しかったよ!!」
ミツルの口調が若干上から目線になる。この俺に勝ったんだ。当然だろう。
「ユートはやっぱり強いね。あそこまで追い詰められるなんて」
「そりゃこっちのセリフだ。お前の強さを確かめるつもりだったが、まさか負けるとは思ってなかったからな」
「僕は強いよ?」
「おう。それは完璧に理解したぜ」
「あと、僕は女々しくないよね?」
「ああ、それも間違いない」
と、一応言っておく。どう頑張ってもミツルから女々しさが抜けるとは思えない。ミツルの表情はさっきまでとは一転、晴れ晴れとしていた。これで女々しいどうこうの件は一件落着としていいだろう。
さて、ミツルの強さも十分理解した。あとは、予選当日を待つばかりだ。
☆
予選大会当日。
大会は
だが、
「山、か」
山だった。予選会場は町からかなり離れた地面の盛大に盛り上がった場所、すなわち山。
いや、おかしいだろ。カードゲームってこんな自然豊かな場所でするもんじゃないでしょ!? そんなことを考えていたその時、植物のツルで振り子運動をしている目障りなヤツがいた。どこのバカだよ、これから大会って時に……。
「あ─ああ──────……」
そのバカは赤い髪を有していた。そう、ダニエルだ。
「お前か、ターザンかテメーは!!」
「お前もやってみろって、野生に戻ったって感じがするから!」
「誰がやるかボケェ!!」
☆
「「あ─ああ──────……」」
意外に楽しかった。さて、気分転換も済んだところで、これからどうするかな?
「お?」
俺たちが遊んでいた中で、ミツルはシートの上でカードを広げていた。
「何してんだ?」
「最終調整。今日は絶対勝ちたいからね」
「そっか」
俺はどかっとミツルの隣に腰をおろす。
「どうしたの? 遊んできたら?」
「そうはいかねぇさ。俺だって勝ちたいからな。それに、チームリーダーが遊び呆けてたら、なんかアレだろ?」
まぁ、ついさっきまで遊んでいたわけだが。
「ははっ、そうだね」
俺とミツルは並んでデッキ調整を始めた。ここはこうだ、ああだと意見を言い合いながら同名カードの投入枚数などを微調整してゆく。
そして……。
「ま、こんなもんだろ」
「そうだね。そろそろ受け付けも始まるんじゃないかな?」
「そうだな。行くか」
俺はデッキをケースにしまい、残りのカードも片づけていく。そんな時、ミツルが唐突に2枚のカードをデッキに忍ばせているのが見えた。
「なんだ? 今のカード」
「ああ、お守りみたいなものかな?」
「ふーん……」
どんなカードだか気になるが、どんな仲良しでも相手のデッキのカードをしつこく問い詰めるというのはデュエリストにとってタブーな行為だ。いつか、お目見えする時を待つとするか。
☆
「チーム名を教えてください」
俺とミツル、ダニエルは受付のカウンターであるテントに来ていた。
「チーム名?」
「なんだそれ?」
カウンターのお姉さんから発せられた言葉を聞き、ミツルと赤髪マッチョさんは不思議そうに顔を見合わせている。
そんなに不思議がることだろうか? チームなんだからチーム名くらいあるだろうに。
俺はお姉さんの要求に答えた。
「『無敵デュエリスト戦隊☆ゴッドギャラクシーユートファイターズ』です」
「ああ……ぷっ……はい。確認しました」
よし、確認されましたっと。後は開会式を待つばかりだ。
「おい」
「ねぇ」
「なんだよ」
どうしたんだ2人とも。そんな怖い顔すんなよ……?
「「チーム名!!」」
「ああはいすいませんでした!!」
俺はその場で安い土下座をする。他の予選参加者達の視線が痛い。
「どうして相談してくれなかったのさ!」
「そうだぜ。よりによって受付のねーちゃんが吹き出しちまうくらいだせー名前だし」
「んなこたぁねぇだろ、超カッコいいじゃねぇか!!」
「どこがだよギャラクシーユートファイターさんよぉ!!」
ごめん、訂正。
「……やっぱダサいわ」
その名前で俺を呼ばんでくれ頼むから……さすがの俺でも恥ずかしいってどういうことだ。あのエントリー用紙書いてる時はカッコいいと思ってたんだが……。
俺は立ち上がってカウンターのお姉さんに話しかける。
「あのすいません。チーム名の変更ってできますかね?」
「はい、可能です」
「よし、ほらよ」
俺はお姉さんに渡されたチーム名を書き込む紙とペンをミツルに渡す。
「どうしたの?」
「お前らで考えればいいだろ。ったく……」
「……うん。じゃあそうさせてもらおうかな」
ミツルは意気揚々と紙とペンを手に取る。コイツは昔からこういう、名前を考えたりするの好きだった。
「よし、じゃあ『ダニエルブラザーズ』でどうだ?」
「真面目に考えなよ……」
「じゃ、そっちは任せたぞ」
「え? ユートも一緒に考えようよ」
「この件については、俺のセンスは役に立たなそうだからな。その辺にいるわ」
「そう?」
俺はミツル達を放置してその辺の奴らの観察に入る。受付を抜けた先は、かなり、開けた場所になっていた。
話によればこのブロック1つだけでも参加者は1000人を軽く超えるらしい。当然だが、知らない人間ばかりだ。
大体の参加者はレンタルのデュエル・イクイップメントを装備していた。中には俺ら同様、マイイクイップメントを持っているヤツも数人確認できたが、やはり持っていると目立つな。俺もかなり目立っている。ま、俺はメントとか関係なく、カッコいいからなんだろうがな!
「ちょっとすいませーん」
背後から女の声がした。
「なんだい☆」
ほら、俺がイケメンだから女子に話しかけられちゃったよ。俺はイケメンスマイルで振り返った。
「ちょっとメント見せてもらっていーすかー?」
「……ああ、いいですよ」
見せるくらいなら別にいいだろう。俺はイクイップメントを装備している左腕をさし出す。
なんだコイツら? 俺はてっきり『ザ・美少女』って感じなのを期待してたんだがな。コイツらあれだ、いわゆるコギャルだ。正直、決して可愛くはない。
よし、コイツらは今から『残念コギャルトリオ』と呼称するとしよう。
「チョーッ~~これマジパないんスけど~~」
残念コギャルトリオの1人、全身カリッカリに日焼けして髪型はあえてなのだろうがバサバサにしてあるヤマンバみたいなヤツが俺のメント様にべたべた触れてきた。因みにさっき俺になれなれしくも話しかけてきたのがコイツである。後で消毒してキレイに拭かないとな……。
コイツらは全員レンタルのメントを付けている。どうやら俺のメントが物珍しいようだ。
「これってあれしょ? 最新型のメントっしょ? マジクールすぎ~」
ヤマンバに続いて今度はアイシャドーが半端じゃないギガント目ん玉女が騒ぎ立てる。うおお……アイシャドーってこんなにデカ目効果があるんだな。一瞬何かと思った。
そして極めつけは……。
「……ワタシ、サワリタイ」
「ひ、ひぃ!!」
今片言のだみ声しゃべったコイツは前の二人とは格が違う。悪い意味で。確実に残念コギャルトリオのボスだ。この俺様がちょっと悲鳴を上げてしまうくらいだ。どの位ヤバいか解るだろうか?
この女……いや、コイツを女と呼称したら世界中の女性に一生かけて土下座して回らなくちゃいけなくなるレベルだ。
この謎の生物、何故かあの、いわゆるロリータファッションに身を包んでいる。カチューシャつけたりして、ひらひらふわふわした白とかピンクっぽい配色のを全身に装備してるから、多分いわゆる『甘ロリ』ってヤツだ。
だが言っちゃ悪いがコイツの素材が全てを台無しにしている。よだれ拭けって。目ヤニやべーぞ、顔洗え。あと痩せろ、その服サイズ合ってねーから。パッツパツだから。髪の毛どうしたよ、若干アフロ意識しているのか? 化粧酷すぎだろ。後正直整形した方がいいと思う。それから……いくら指摘しても足りない。そのファッションはミツルの方が億倍似合うと思う。
前にオタクなクラスメイトが『甘ロリとかゴスロリを色で判別しようとするヤツがよくいるが、それは間違っている。現に甘ロリの中にも『黒ロリ』があるし、白基調のゴスロリとかも存在しているからな。だから雰囲気で判別するのが正しい。ふわふわひらひらで甘いイメージが甘ロリ、それに対してホラーで退廃的なイメージのがゴスロリだ』とかなんとかドヤ顔で言っていた。だからお前のは甘ロリではないし、服はゴスロリでもない。ではなんだと聞かれれば、この俺は『ブスロリ』だと答えよう。
「ねぇアンナも触らせてもらったらぁ~?」
ヤマンバがブスロリにそう言った。
アンナ……この顔で、アンナ……全世界のアンナさん。俺が代わりに謝る。ごめんなさい。それより俺、ヤマンバにもギガント目ん玉にも触る許可出してないんだけど。
「……キョカ、ナイ、サワル、ダメデス」
ブスロリはそう言って首を振った。良かった……正直コイツにだけは触られたくなかった。
「じゃー許可、貰えばいいしょ~~」
ギガント目ん玉が余計なことを口走る。
「そーそー、この人いい人ぽいし~アンナくらい可愛ければ余裕系だしょ~~」
おいヤマンバ、今何に対して可愛いとか言った!?
コイツと比べればハダカデバネズミの方がよっぽど愛おしく見える。
「……ジャア、イッテ、ミル、サワラセテ、クダサイ」
「くっ……」
ブスロリが頭を下げる。ホントにどうしてコイツは片言なのだろうか。あと今更だがホントに人間なのだろうか。謎は深まる。
触らせたくないな……どうするか。
「ユート、どうしたの?」
別行動していたミツルがひょいと俺の背後から顔を出した。
助かった!
「ああ、ミツルか。じゃ、じゃあ俺はこれで!!」
「あ、ユート……」
俺はミツルの手を引いてそそくさとその場を去る。ミツルはどうしてか、頬を赤く染めていた。
背後から色々言われた気がするが、無視だ。
「よー、やっと見つかったか」
ある程度進むと、木陰で涼んでいるダニエルを発見した。
「何やってたんだ?」
ダニエルは俺たちが来た方を眺める。
「ん……? なんか凄いのが3人いるな。特にあの白とピンクのヤツ」
コイツ、中々目がいいんだな。そこまで見破るとは。
だが、そんなに視力を必要とせずとも、ここからでも変な3人組がいることくらいは確認できる。
「あの人達となんかしゃべってたみたいだけど、ユートの知り合い?」
ミツルもあの残念コギャルトリオが気になるようだ。
「え、お前って妖怪の知り合いがいるのか?」
違うに決まっている。でももっと言ってやれと思った。
「知らん奴らだ。俺がイケメン過ぎたせいで絡まれたんだよ」
「へー……お前、人間の女にはモテねぇのに、妖怪にはモテるんだな」
おいコラ、俺は別にモテねぇわけじゃない。多分。きっとそこらの女は自分はこの俺様には釣り合わないことを理解して、自重しているだけだ。
ところで、
「そういや、チーム名はどうなったんだ?」
「チーム名ね、それなら……」
ミツルはカバンからタブレット端末を取り出す。
「なんだそれ?」
「受付で借りたんだ。大会で使うって」
ああ、そういえばそんなことを紙で読んだ気がする。
「で、これがチーム名!」
タブレットに文字が浮かび上がる。その名も……。
「チーム……『
……チーム名の意味が全くわからない。一体どこからその数字が出てきたんだ?
「え? あ、ああ!」
ミツルは慌ててタブレットを持ち替えた。すると、別の記号が見えてくる。
それは……。
「……無限?」
「そう。チーム名は、『
「なんでだ?」
『8』よりはよっぽどマシだとは思うが。
「チーム『零』に対抗してるんだ。『0』に対して『∞』ってことでね」
「おお、そういうことか!!」
俺はポンと手を叩いて理解する。誰かさんが考えた無敵デュエリストなんとかっていう最上級にダサいチーム名よりは億倍カッコいい。なるほど、『零』に対抗しての『∞』。
いい名前だ!
「よし、じゃあチーム『∞』の旗揚げといこうぜ!!」
「え? 何かするの?」
「ダニエル!!」
「アイアイサー!」
ダニエルは白くてどデカい布にこれまたデカい筆を墨につけて走らせる。いわゆる書道パフォーマンス状態。近くにいた人々が集まりだす始末だ。
「うおおおおおおおっせええぃッ! そおおおいッッ!!」
全身を使って布に墨を叩きつけている。
そして……。
「……できたぜ!!」
布に描かれたのは大きな『∞』。それを俺は近場に会った木の棒に括り付けた。そしてそれを掲げる。
「どうよミツル、文字通り旗揚げしてやったぜ!!」
「ほ……ほんとだね。予定してたの?」
若干引き気味のミツル。
「いや、今考えた」
「その割には息ぴったりだったような……」
実は俺、さっきこっそりダニエルの荷物をあさってみていたのだ。
無駄にデカいリュックの上ぱんっっぱんに中身が詰まっていたもんだから中身が気になってつい、な。するとどうだろう、出てくる出てくる無駄なもの。その中に、布と筆、墨汁が入っていたのだ。
これはもしや……と思ったが、用途は間違っていなかったようだな。どうやら、旗を作りたかったらしい。
「そんなもんどーでもいいだろ。それよりホラ、今俺たち超目立ってんぞ!!」
俺はぶんぶんと旗を振ってみる。
「ちょっとやめてよ、恥ずかしいじゃん……」
ミツルは俺の行動を止めにかかってきた。
「なんでだよ、目立った方がいいだろ。世界最強になるチームだぜ?」
「そうなれればうれしいけどさ……」
「ギャアアあああ!! 恥ずかしいいいいい!!」
びくんっ! びくんっ! とのたうち回るダニエル。
「ほら、ダニエルも冷静に考えたら恥ずかしくなって悶絶してるじゃん、やめようよ」
「そ、そうだな……」
この赤髪ターザン、なんで今更羞恥心が芽生えてるのやら。なんというか、人類の進化を彷彿とさせる野郎だな。
『ザ……ピー……』
「あん?」
なにか変な音がする。あれだ……アナウンスか?
『……デュエルモンスターズ世界大会、日本国内予選、第2ブロック、開会式を始めます。選手の皆さまは、広場奥、ステージ前へとお集まり下さい。繰り返します、デュエルモンスターズ世界大会……』
広場に女の人の声が響き渡った。
「開会式が始まるってさ。ユート、いこう」
「ああ、そうだな」
俺はミツルに手を引かれ、広場の奥の方へと向かった。
開会式か。だんだんワクワクしてきたな!
☆
「うおおおおお恥ずかし……あれ? 誰もいねーぜ……」
☆
「いやー、スゲー開会式だったな!」
「うん!」
開会式は大盛り上がりの末、終了した。
まず最初に堅っ苦しいおっさんが出てきた時は、『さーて、どこで寝るかなー』とか考えたものだが、有名なデュエリストアイドル(今回の大会は不参加)の『
「今は9時50分……予選開始は10時からだったな。どうする?」
俺とミツルは大きな池の橋の上で相談していた。
「フィールドはこの山一帯で、今からでも移動は自由。だったよね?」
「おう。連戦を避けたり、特定のチームを狙うなら、山の中に隠れたりするのも作戦だよな・・・」
とは言っても、特定の狙い目なチームなんてない。隠れるのもどうかと思うし……ああだこうだと相談してはみるが、あまりいい案はうかんでこない。
「僕たちは開会式ですごい目立っちゃってたから、案外狙われてるかも」
「目立ってたか?」
「うん」
ミツルは俺の持っている旗を指さした。ホントだ、これはもの凄く目立っている。
「じゃあどっかに隠れるか?」
「人の少ない所に行った方がいいかもね」
その言葉を言いながら、なぜか恥ずかしそうにするミツル。理由は不明だ。
よし、まぁとりあえず移動だな。そんなに長時間考えていてもしょうがない。それにもうすぐで予選が始まってしまう。
俺はこの広場を離れようとした、が。
「まつっしょ」
「あ?」
ミツルの声じゃないが、聞き覚えのある声。この声は……。
「ヤマンバか。どうした?」
「ヤマンバとか初めて言われたんスけどぉ!!」
あ、ヤベ、つい心の呼び名が出てしまった。
コイツはさっきの『残念コギャルトリオ』の一人だ。その少し離れた後ろには、残りの2人がいた。
「あんたら、あたしたちとデュエルしなさいよ」
「やだ」
俺はその場から去ろうとする。
すると、
「たーすけてくれー……」
「ん?」
これまた聞き覚えのある声がした。
ヤマンバの後ろには残念コギャルトリオの残りのモンスター達が控えているだけではないのか?
俺は残りのモンスター達の背後に目を凝らす。
「つかまったぜ☆」
「お前何してんの?」
ダニエルが満面の笑みで人質にされていた。縄でぐるぐる巻きにされている。しばらく見てないと思ったら、なにゆえつかまってるんだアイツは。
よりによってコイツらに……。
「コイツを返してほしければ、あたしたちとデュエルするしかないっしょ」
……ったく、めんどくせーなー……。
「なんでだよ」
さっさとその赤髪マッチョ返せよ。
「あんたがリーダーのアンナのこと無視してどっかいっちゃうからさぁ~、さっきからアンナのテンションテラヤバスって感じなんスよ~。だから、かたき? とっちゃおうかってなって~、ん~そんでぇ~」
「……ああはい、大体わかった」
実はよくわかってないが、デュエルすりゃいいんだろ?
そうすりゃ俺たちのマッチョ返してくれんだろ?
「……いいか? ミツル」
「僕はかまわないよ。チームリーダーはあの人じゃないみたいだし、先鋒は僕かな?」
「そうか。じゃあいいぞ。俺たちの最初の相手はお前らだ!」
「おーけー、あたしらでボッコボコにしてやるっしょ~」
その時、丁度良くアナウンスが入った。
『────それでは只今より、デュエルモンスターズ世界大会、日本国内予選、開始してください』
よし、いけミツル!
「「デュエル!!」」
チーム『∞』
『LP:4000』
チーム『ゆとりっこぎゃるず』
『LP:4000』
俺たちの大会、1回目のデュエルが始まった。
~続く~
感想、アドバイス、お待ちしています。
ブスロリの名前がアンナであることにゼアルのアンナは関係ありません。意外性のあるかわいい名前を考えたらこうなりました。全国のアンナさん、ごめんなさい。
一度書き溜めしようと思うので、次回はしばらくお待ちください。