Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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◆現在の仲間
ナパーロ/ラックル/694番、サッドニール

◆支援者
サスケ


121.特憲会議

 

【挿絵表示】

 

首都ヘフト

空席が目立つテーブルを囲い特憲会議が始まった。互いに会うのが初めての者もいるのか、緊張感が場を満たしている中で、中央に座っている隊長は予定の時刻になるとおもむろに喋りだす。

 

「実に20年ぶりの開催となるが、皆、よく集まってくれた。これより特憲会議を始める」

 

「その前にいいか?」

 

リドリィが遮るように問いかけた。

 

「何かな?」

 

「あんたは初めて見るけど隊長ってことでいいのかい?そのマスクは取らないのか?」

 

隊長が公にメンバーの前に姿を現したのはこれが初めてであった。誰とも分からない仮面を被った得体の知れない男が隊長の席に座っていることに特憲メンバーは疑念を抱いていたのだ。

 

「私が隊長だ。証明も出来る。マスクは任務の都合上外せないがな」

 

「へぇー。仲間にも顔を見せたくないんだ」

 

リドリィの小言に隊長は応えなかったが、このやり取りを隣で見ていたフグも口を挟む。

 

「隊長、私からもいいです?」

 

「なんだ?」

 

「この方どなた?」

 

フグが末席に座っている男に目をやった。皆の視線もつられて隅にいる女性のように端正な顔立ちの男に集中する。

 

「ああ。新規メンバーだ。ネムラ、軽く自己紹介しろ」

 

隊長からの振りで隅にいた男は長髪を掻き分けながら恐る恐る声を上げる。

 

「あ、ネムラと言います。以後、お見知りおきを……」

 

それ以上の発言はなく部屋は一瞬静まり返ってしまう。

 

「どなたからの推薦です?」

 

フグは誰もが最初に知りたがっている質問をした。

 

「あー……えっと」

 

ネムラという男はその質問に応えられずモジモジしている。外見も大人しそうな者であり特憲の任務をこなせるのか心配になるレベルだ。そのためスケサーンが業を煮やしたのか机を叩く。

 

「おいおい、お前大丈夫かぁ?そんなナヨナヨしてて特憲やっていけんのかよ?答えたくないならそうはっきり言えばいいだけだろが」

 

「は、はい。すみません」

 

この成り行きを見守っていた隊長であったが、こうなることを予想していたようで、会話に加わる。

 

「スケサーン、新人をそうイジメてやるな。私から補足しておくと、彼は奴隷マスターワダの特憲ロッテリアの後継者だ」

 

「ロッテリア?ポートサウスでチャドに殺されたと聞いていましたが……」

 

ワダ推薦のロッテリアは特憲によるポートサウス殲滅作戦に従事しており、三羽烏カマルク邸にあるトゥーラの独房を守る任務についていた。キンブレルとカマルクの対立を煽る任務であったが乱入してきたチャドに討ち取られていた。後継者がいたことなどは誰も知る由もなかった。当然、古株のサスケであっても同様であったが、サスケは別の部分を問題視した。

 

「いや、それよりワダ氏は既に亡きお方。後継者であったとしても誰が特憲になることを許可したのだ?」

 

推薦者自体が存命ではないため、推薦制を取る特別憲兵隊に入る条件を満たしていなかったのだ。

 

「これから正式に申請予定です。この会議は立会人も傍聴できるレベルなので、特憲として出席を許可しました」

 

「そうか。で、この会議の主旨は何だ?今更定例会でも復活しようと言うのか?モリやカクノーシンがいないようだが、彼らなしで開催する意味があるのか?」

 

当事者以外は特別憲兵隊に起こった一連の出来事を知らないようで、特憲の顔と言うべき2人がいないことを不思議がっていた。

 

「彼らはもう来ない」

 

隊長はそれに素っ気なく応えた。

 

「どういうことだ?」

 

「2人とも死んだ」

 

「!!」

 

当然ながら特憲の最高戦力と認識されていたモリやカクノーシンの訃報はメンバー全員を動揺させる。

 

「死んだだと!?あり得ない」

 

「相討ちだ。カクノーシンがモリに仕掛けたらしい」

 

「!!!!」

 

「ええ!?どういうことです?まさか特憲同士が決闘したのです?」

 

さすがのフグも大分驚いている様子だ。

 

「長年の因縁ではないかと想定している。彼らは武を競い合ってきた間柄だ」

 

「いやそれは知ってますけど、まさか戦うなんて……」

 

老齢となり技が衰えて満足に戦えなくなる前に最後に決着をつけた。と捉えようと思えば捉えられるが、世界情勢が動き何者かに特憲が狙われている現状で、事を起こしたのは疑問があった。そして何より相討ちでは真相を聞くことも出来ない。顔も分からない隊長の言葉ではなおさら疑念は深まった。

 かつてカクノーシンの弟子であったリドリィはこの話を表情を変えずに聞いている。皆、同じように押し黙ったままであったが、その空気を嫌ったフグがまたもや話題を振る。

 

「いやしかしそうなると特別憲兵隊が始まって以来の由々しき事態なんじゃないですか?大分減ってしまっている上にあの2人がいなくなるなんて」

 

事情を知っているスケサーンは敵対派閥のフグが状況を把握していないことに優越感を持ちつつも応戦するように反応する。

 

「欠席もいるだろ。いちいち騒ぐことじゃねぇ」

 

「でも欠席と言ってもスワンプにいるグレイさんだけでしょう」

 

フグの返しに対してイラついているスケサーンを他所に隊長は話を進める。

 

「フグ。すぐにでも特別憲兵隊になれる実力者は立会人の中にもいる。案ずることではない。それより例の件はどうだった?」

 

この言葉にフグは何かを思い出す。

 

「あー!そういえば急に目の前に十志剣の方々が現れた時はビックリしましたよぉ。私に貸してくれるなら先に言ってくれれば良かったのに。早速、裏切り者(・・・・)も殺れて大いに役立ちました」

 

フグから発せられた言葉は特憲の面々を驚かせた。十志剣は特別憲兵隊隊長の秘蔵の戦闘部隊であり滅多な事では動員されないし、特憲メンバーに貸し出されることなどこれまでなかった。また、十志剣が10人必ず一緒に行動している理由は主に戦闘における優位性を保つためであるが、彼らの対象は都市連合外部に限らない。つまり都市連合内部にいる裏切り者やスパイを抹殺する際にも使われることがあったのだ。そして十志剣の連携攻撃を単独で凌げる特別憲兵隊はモリかカクノーシンぐらいしかいなかった。

 それを隊長は一時的とは言えフグに託し、裏切り者を殺ったと言うのだ。否が応でも全員の内心は穏やかではなくなる。そんな胸中を知ってか知らずかを隊長もフグの話を続ける。

 

「そうか。早かったな。やはりお前が次のターゲットだったのか?」

 

「どうでしょうね。むかーし調査していたポートサウスの残党が偶然、私の横を通りましてねぇ。その残党はその後ルイ一派に入った後ヒガキに殺されたはずだったのですけど、生きていたようでして。おやぁと思って、予め外で待機していた部下に遠目から尾けさせたのですよ……そしたらなんとそこに立会人が来たんですよぉ〜」

 

「ほう」

 

「それで折角なので十志剣さんにやってもらったわけです。こっちに持ってきて〜」

 

フグは後ろに立っている立会人に指示を出すと、何やら布で包まれたボール大の大きさのものを持ってきてテーブルの上に置いた。

 

「ほら見てください〜裏切り者のジュウゾウさんです〜」

 

「!!!!」

 

フグが布をほどくとテーブルの上にジュウゾウの生首が登場した。日がたっているのか少し腐敗も進んでいる。目を背けるような者はさすがにいなかったが、リドリィ等は怪訝な表情をしていた。特にサスケに至っては目を見開いたままだ。スケサーンも鎧兜で表情は見えなくも軽蔑の言葉が出てくる。

 

「フグ……お前頭イカれてんな」

 

「とんでもないです。私は正常ですよぉ。これは2度と裏切り者が出ないように見せしめの効果を兼ねているんです」

 

この行為に対してはさすがに隊長も呆れたような口調で話し始める。

 

「特別憲兵隊の中にそれほど志の低い人間はいない。だが立会人はまだ教育が必要だったようだな」

 

「はい。そういやジュウゾウさんはサスケさんの直下でしたねぇ」

 

立会人の一部は特別憲兵隊それぞれ直下に配置され手足として自由に使える仕組みとなっているが、その中でも一目置かれていた立会人は誰に配属されたのか等の情報が自然と特別憲兵隊の中でも出回っていた。

全員の目が自然とサスケに集まる。

 

「……それは面目ない事態にしてしまったな。監督不行き届きで裏切られてしまったようだ」

 

サスケの第一声は実に気の抜けた声であった。腹心の生首がテーブルに置かれ心中は穏やかではないはずだが、そんなことは気にしていないかの如く振舞いで済ませて見せたのだ。その反応を保留してフグも続ける。

 

「ジュウゾウは忍者出身なので不意打ちならヒガキらを殺れるぐらいの力量はありましたし、ある程度、特別憲兵隊の場所も把握できる立場でした。一連の特別憲兵隊暗殺に彼が関わっていた可能性は高いと見て良いでしょう」

 

「ふむ……。で、ポートサウスの残党はどうした?いや、今はルイ一派の残党か」

 

「大物が釣れないかと泳がせていたのですが、それっきり動きがないです。もうそろそろ殺してもいい頃かなと。スケルトンも一体いるようですがこちらも大した話ではないです」

 

そこにガルベスが口を挟む。

 

「おいおい。なんだよルイ一派の残党って?」

 

隊長は目の前のグラスに注がれた水を一口飲むと静かに口を開く。

 

「……お前には報せていなかったがルイ一派は念のため排除した」

 

「え!?」

 

「どうした?所属していた時の未練でもあったか?」

 

「いや……まぁ……問題ねぇが。俺はルイにしか興味がなかったし」

 

「そう聞いている。ちなみにルイはホーリーネーションで行方不明になったまま消息は掴めていない。もう殺されているかもしれないが」

 

「……かもな」

 

以降押し黙るガルベスをよそに隊長は話を続ける。

 

「残党にはまだ裏の首謀者がいるかもしれない。万全を期して4人ペアで行ってもらう。フグはスケサーンと、リドリィは顔を知っているガルベスと行け。殺さず生け捕ってこい」

 

突然の特憲隊長の命令に目を丸くしたのはスケサーンであった。

 

「ええ!?何でこいつと?」

 

「今後、特別憲兵隊はノーブルサークルの意向を気にすることなく任務にあたる。お前たちは過去のしがらみは忘れて協力しろ」

 

「宜しくね、スケサーンちゃん」

 

「〜〜〜!」

 

「立会人も連れて行け。彼らのスキルアップにもなるだろう」

 

特憲隊長、フグ、スケサーンのやり取りがほぼ会話の中心となっており、その他の特憲は聞いているだけであったが、遮るように話の中に入っていく者がいた。

 

「待て。最近発生した行商の一行が何者かに全滅させられていた件はどうする?」

 

リドリィだ。すっかり特別憲兵隊として定着しているようで毅然と意見を言うようになっていた。

これに特憲隊長は少し考えた後に応える。

 

「……そちらは私が調べる。お前たちは残党を追え」

 

「本当にいいのか?切り口を見た所、鋭くて重い武器が素早く叩き込まれていた。相当な手練れの犯行だぞ。特憲殺しと関連があるかもしれない」

 

「連続するようなら優先度を上げるが、今は一つずつ事案を対処する。今は残党が先だ」

 

「……了解だ」

 

リドリィはそれ以上食い下がらなかった。

指示を受けた特憲メンバーは会議の主題が終わったと思い、それぞれ席を立ち始めるが、特憲隊長はそれを制するように言葉を付け加える。

 

「それと今日この場を開いた理由は今後の特別憲兵隊のあり方を意識合わせするためでもある」

 

皆、訝しげに隊長を見やるが、隊長は構わず続ける。

 

「今後、特別憲兵隊は帝国を第一として動いていくことになる」

 

当然これにすぐさま反応したのはサスケであった。特別憲兵隊としてのあり方に言及されて黙っているはずがなかった。

 

「これまで通りではないのか?」

 

「違う。皇帝やノーブルサークルの意味のない指令よりも国を優先にして動けということだ」

 

貴族から推薦を受けた特憲メンバーにとってこの思想は全く受け入れられる物ではない。特に皇帝に忠誠を誓っているサスケは現状の体制でさえ納得いかず変えようとしていたのだ。

 

「馬鹿を言うな。帝国は皇帝の下に成り立っているだろう。それより優先するものはない」

 

「忠誠を誓うのは構わない。だが勝手な指令で特別憲兵隊の稼働を使うなということだ。国は礎、基盤だ。それがなければ皇帝も成り立たないだろう」

 

「貴様は帝政を理解しているのか?指揮系統のトップが皇帝だろうが」

 

「皇帝の愚策により国が危機に瀕した際はその愚策を改める時もある」

 

「それはノーブルサークルが行うことで、特別憲兵隊がやることではない」

 

「いや、特別憲兵隊は今後、国のあらゆるリスクに対処する機関になっていかなければならない」

 

モリ、カクノーシンを失った特別憲兵隊において現存する最大戦力はサスケであった。そのサスケと隊長がただならぬ雰囲気となり、思わずフグが間に入る。

 

「仰りたいことは理解できますが、皆それぞれ事情がありますしー……徐々に意識合わせ出来ればよろしいかと」

 

当然、ロンゲン派フグもノーブルサークルと言うよりロンゲン派トレーダーズギルドの意志で動いている節があり、さり気なく現状維持の方向でまとめようとした。

 

「ふむ。では少し帝国らしく力により求心力を見せるとするか」

 

突拍子もなく隊長は続ける。

 

「サスケさん。あなたの考え方はやはりこれからの特憲には不必要と判断した。特別憲兵隊隊長の判断の下、ここで排除させて頂く」

 

「!!」

 

隊長による突然の排除宣告。それも都市連合の古株としてこれまで名を馳せてきた忍のサスケに対して正面から申し渡したのだ。戦闘は避けられない。

その場にいる誰もが直感し凍りついていた。




ジルさんのお顔を借りております('ω')
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