Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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◆現在の仲間
ナパーロ/ラックル/694番、サッドニール


123.追跡者

長く在席してきたサスケが死に、特別憲兵隊の古株は一人もいなくなった。

傷を負うこともなくサシでサスケを退場させた隊長の実力が本物であることも分かった。

これで特別憲兵隊は求心力を高めた現隊長の下で一丸となって進んでいくことになるだろう。

 

(失脚さえしなければだが……。ロード・オオタには報告出来ないな……)

 

スケサーンはオオタが推薦する特憲としてこの状況をどう対処すべきか悩んでいた。

 

明らかに隊長が進めようとしている施策はノーブルサークルの考え方とは異なっている。実際に皇帝派のカクノーシンとロンゲン派のモリを殺っていることもあり、全てを暴露した場合、ノーブルサークルと隊長の対立は間違いない。

 

(隊長はノーブルサークルを相手に出来る自信があるっていうのか?どうやったか分からないがアイゴアも手懐けているだろう隊長を確実に殺れる手段は、今の弱体化している都市連合の戦力だと思いつかない……)

 

ここは一定期間大人しく隊長に従っておき、様子を見る。そして勝つと思える方につけばいい。

スケサーンは考え抜いた末にそう結論づけた。

 

 

 

隊長の特技が読心術に通じていると知った特憲メンバー達は心穏やかではなかったが、スケサーンのようにすぐに切り替えて、それぞれの思惑の下に動き出す。フグもそのうちの一人のようだ。

 

「いや〜サスケさんを倒しちゃうなんて隊長さんものすごくお強かったのですねぇ」

 

ゴマをするように隊長を労い始めたのだ。スケサーンから見ても如何にも胡散臭い近寄り方であった。これに対して隊長も何を思っているから定かではないが、刀をしまうと軽い皮肉を言う。

 

「ここにいる多くの者は私ではなくサスケが勝つイメージをしていただろう。だから戦闘を止めに入ろうとしなかった」

 

「え!?いやいやそんなことは……」

 

「まぁこれも想定通りだ。おかげで私の力を良いタイミングで誇示できた。サスケの遺体は丁重に弔ってやれ。特憲として栄光ある門出の礎となったのだ。終わったら残った特憲メンバーは各自すぐに行動に移せ」

 

「隊長はどうするので?」

 

「私は別行動する。十志剣は引き続きフグが指揮をしろ」

 

隊長が行方をくらますには理由があることを特憲メンバーは語らずとも悟っていた。

一番大きな理由は今回の件を経た上で各メンバーがどのような動きをするのか外から監視することである。

表向きは全員従っているが、密告される可能性は充分あるのだ。隊長としても今ノーブルサークルに告げ口をされたくはないのかもしれない。特にカクノーシンとモリを退場させたことを知っているスケサーンは隊長にとっても意識するところであった。恐らく十志剣はフグとスケサーンを監視する役目なのではないか。と皆、内心考えていた。

 

 

 

「さてと。では行きましょうかね。スケサーン」

 

そんな思惑を知ってか知らずかフグがニコニコしながらスケサーンに言い寄ってくるが当の本人は慌ててリドリィに声をかける。

 

「いや、待て。リドリィ、お前ガルベスと行動すんだろ?替わってくれよ」

 

「ん?そんな気持ち悪い奴と一緒なんて嫌だね」

 

リドリィは即答すると、さっさと荷物をまとめガルベスを連れて出ていってしまった。

 

「失礼な方々ですねぇ」

 

フグが憤っている横でスケサーンは諦めがついていないようで目につく相手に手当たり次第声をかける。

 

「クジョウ、お前が行ったらどうだ?」

 

「隊長の命令だろ?それに俺は別の任務がある。ああ、そうだ。お前らに同行させたい新人の立会人がいる」

 

クジョウはスケサーンの申し出を軽くいなすと思い出したように呟いた。

 

「あ?なんだよ。めんどくせぇな……」

 

「キアロッシ・バートという奴だ。こいつもルイ一派残党の顔を知っているらしいから使ってくれ」

 

「なんか聞いたことある名だな。まぁ使えない奴だったら殺しておくからな」

 

クジョウも後ろでモジモジしているキアロッシを引き渡すとそそくさといなくなってしまった。隊長もいつの間にかいなくなっており、周りにはフグ、スケサーンそして同行する立会人数名だけになっていた。

 

「はぁ……。んで、どこ行くよ。あたりはついてんのか?」

 

「サスケが所持していた拠点一覧を手に入れましたのでしらみ潰しですかね。大体、北西バスト方面に固まっているのでストートに向かい、他の立会人は各都市に分散させておきましょう。少年とスケルトンの2人組がいれば捕らえさせます」

 

「ちっ。ストートか……遠いな」

 

こうして特憲会議は終わり各メンバーは会議室を発ってゆく。スケサーンはフグら立会人そして十志剣たちと。リドリィはガルベスとで別れて動き出した。

 

 

 

 

 

フグは重そうな商人バッグを背負うと目配せするが、それをスケサーンは怪訝そうな表情で見ていた。

そしてヘフトを出るとフグは早速スケサーンに喋りかける。

 

「いや〜しかし、隊長がサスケさんより強かったとは驚きでしたねぇ」

 

「まぁ……そうだな」

 

「スケサーンさんはモリさんとカクノーシンさんの件、どう思います?」

 

「どうって何だよ」

 

特憲メンバーにとって越えられない壁であった2人の悲報は当然、話の種であった。武の頂点として最強でありつつもそれほど好戦的でもなく、変わり者が多い特憲メンバーを今日まで纏めて来れたのも2人の功績と言っても過言ではなかった。そのため今後の特憲の行く末を踏まえて興味深い内容であった。

しかし、スケサーンは敢えて何も知らない。何を聞かれているか分からない振りをした。

 

「本当に相討ちだったと思います?そもそもこんな時に戦いますかねぇ」

 

「知らねーな。それよりお前も俺の隣にいていいのか?俺は途中でバッサリやるかもしれねーぜ」

 

派閥が異なる特憲同士がペアとなり同行することはこれまであまり前例がない。ノーブルサークルから推薦され選ばれた面子なだけあって大抵は1人で任務遂行できる能力を持っていたため、単独行動が主で、たまに合同任務があっても派閥事情を顧みた編成であった。それがいま対立する派閥同士の特憲がペアを組んでいるのだ。牽制し合うのは当たり前であった。

 

「大丈夫ですよぉ。背負った状態の抜刀なら殺気に気づいた後でも避けれますから。その後は私の立会人があなたを殺ってくれます。そういえばあなたの立会人が1人もいないけれど平気なんですか?よく1人でのこのこと私達についてこれましたね」

 

「……十志剣もついてきている中で殺れる勇気はお前にはないだろ」

 

「ふふ、十志剣を使ってあなたの抹殺司令が私に出ているかもしれないじゃないですか、能天気ですねぇ」

 

「何だとぉ?」

 

「隊長は今回自分にとって邪魔な特憲メンバーを排除しているように見えます。目的は意思統一ですかねぇ。我々も下手に隊長から嫌われないように気をつけないといけませんよ」

 

「…………」

 

フグに言われスケサーンは考え込んだ。

フグはオオタ派によるモリ襲撃からの一連の内容を知らないようだが勘付いてはいる。さすがに隊長も会議の場で真実を言わなかったのは皇帝派とロンゲン派の最強の駒を独断で排除したからであり、フグ等からノーブルサークルにバレた場合、隊長と言えど立場は悪くなる。そしてこの件を恐らく知っているのは(スケサーン)だけだが、俺が事実を漏らしたり、また真実を知ったフグが離反の動きを見せた場合、隊長は十志剣を使ってスケサーンとフグをまとめて消す可能性がある。

 ただ、少なくとも今はまだ俺を信用しており、また俺に存在価値を見出している。俺が喋らないかどうか同行している立会人が密命を受けて監視しているだろうが、発言に気をつけていれば問題はない。

 

(つーか、実は隊長自身が同行する立会人の中に紛れてたりしないよな……)

 

 仮に戦うことになるならば他の特憲と組む等して隊長を抹殺できる状況を作り出せてからでないと到底勝てない。そしてロンゲン派のフグも俺と同じような立場だ。今は取りあえず隊長の指示通りルイ一派残党の排除任務に注力し信用を得たいところだろう。

 

お互いここで派閥争いをしている暇はないのだ。フグの表情はそれを訴えているようでもあった。

 

「2トップがいなくなり特憲も弱体化しています。隊長は立て直すため私たちに期待しているかもしれませんね」

 

「ちっ……」

 

スケサーンは今後はフグと上手く付き合っていかないといけない思うと、自分の置かれた境遇に嘆いた。

 

 

「あ……あのー。お取り込み中のところですが宜しいでしょうか?」

 

特憲2人が話していたところに自信なさげな声が入ってくる。振り返るとクジョウから預けられた立会人キアロッシが佇んでいる。

 

「何だよ。特憲の会話に割って入るとは礼儀がなってない奴だな。お前、最近入ったのか?前は何してた?」

 

苛ついているスケサーンは当たり散らすようにキアロッシに反応すると、キアロッシもビクついて縮こまってしまう。

 

「す、すみません!」

 

「謝ってないで質問に答えろよ。グズ野郎」

 

「は、はい……!あの……自分は最近立会人にならせて頂きました!以前はバート家に……おりました」

 

「ん?あー!思い出した。お前、ロジャー・バートの息子じゃん。ロンゲンに家を潰されたんだってな!それで立会人になったんか。貴族でも落ちぶれる時は早いんだなぁ」

 

「…………」

 

キアロッシは何か言いたげであったが、押し殺すように下を向いてしまった。

 

「で?何か用か?」

 

「あ、いえ……今追っている者なんですが、知っている奴でして」

 

「んなことは分かってるって。お前に顔判別させるために同行させてんだよ」

 

「は、はい。それで、そいつ……俺にやらせてもらえないでしょうか?」

 

思い切って打ち明けるように喋るキアロッシに対してスケサーンは笑い出す。

 

「ははは!お前も必死なんだなぁ。さすがバート家は貪欲な遺伝子を持っているようだ。でー?なぜやりたいんだ?」

 

「そ、そいつは俺も絡んだことがありまして生意気な奴だったんです」

 

「ふーん、まぁいいか。じゃあそいつはお前が殺せ。自白させやすいスケルトンのほうを生け捕ることにするか?フグ」

 

スケサーンはフグのほうを見やったが、フグはニヤニヤしながら応える。

 

「いいんじゃないですか。スケサーンさんは後輩想いですねぇ」

 

「ああ!?立会人を育てるって話を隊長がしてたろが!」

 

「ふふ、照れちゃって!いつかあなたのその面の中の素顔を見てみたいものだわ」

 

「…………!!」

 

スケサーンは絶句し、それ以上喋れなくなってしまった。

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