Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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13.賞金首ハンター

「ルイ・・・。起きて。」

 

トゥーラは中々起きないルイを揺すっている。

 

「う、うーん・・・カニですって・・。」

 

「寝ぼけてないでそろそろ行くわ。残る工程は一気に走りきるわよ。」

 

追っ手を回避するためウェイステーションに向かい始めてすでに2日が経過していた。

 

「おーし、じゃあ競争すっか?」

 

と言いつつ先に走り出すルイを見てトゥーラは呆れながらついていく。

 

「あなた本当にポジティブだったのね・・。」

 

そしてしばらく走った時であった。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・

 

大地を引き裂くような轟音が聞こえ2人は思わず足を止める。

 

「何だ・・あれ・・雷・・・?」

 

視線の先には天空から一直線に地上に降り立つ一筋の光があった。

 

1kmほどの遠くでも肉眼ではっきりとわかるその光線は大地を焼き付くしながらゆっくりと移動を続けている。

 

光線が通った後にはしばらく灼熱の炎が残り上空に陽炎を作り出している。

 

「ジ・アイという古代兵器ね。詳しくは知らないけどなんでも星の上空を回っていて空から地上に攻撃する機械らしいわ。今は制御が効かなくなっていて暴走して遠い昔からヴェンジ地方に光線を延々と撃ち続けているみたい。あの地域はまさに生き物がいない地獄と化しているわね。」

 

「こんな物が昔からあるのか。高い技術力があったはずなのに古代文明はなんで滅んだんだろうな・・。」

 

狙われたら逃げ場すらない地獄の業火。直撃すれば為す術もなく燃え尽きるのだろう。

ルイは逆にこの兵器を制御していた時代に恐怖を感じた。

 

その後、降り注ぐ光線を横目に数十キロ走り続けると小高い丘の上に小さな基地のような施設が見えてきた。

 

「見えた。あれがウェイステーションよ。」

 

中は建物が三軒ほどしか入らないような小さな前哨基地のようだ。

 

門をくぐると小ぢんまりとしたBARと道具屋、住居があるだけだった。

 

テックハンターが運営しているため身元不明の放浪者でも立ち寄りOKらしい。

 

「BARで休みましょう。たしか2階に貸しベッドがあって200cat払えば睡眠もとれるわ。テックハンターが守っている基地だから安全なはずよ。」

 

「寝る前に腹ごしらえしよーぜ!ほとんど食ってなくて腹ペコだよ!」

 

「ふふ、そうね。じゃああそこのテーブル使わせてもらいましょう。」

 

トゥーラはそう言ってBARの入り口が見えるテーブルに座る。追っ手が万が一入ってきた時に認識するためだろう。

 

「おっちゃん、水とダストウィッチ2つ頼む!」

 

「あいよー。」

 

ルイはクラブタウンを離れておよそ2ヶ月が過ぎ、カニ以外の不味い食糧にも慣れてきていたが、探し求めたおいしい食材とはかけ離れた食生活に失望を感じていた。

 

「しかし世の中はその日の食べ物にさえ困っている状況だったんだな。」

 

「そうね。大地は荒れ果てる一方でさらに食糧不足は加速しているわ。」

 

「このままだと本当に世界から人はいなくなるんじゃねーか?」

 

「そうならないように我々テックハンターがこの状況を打開する技術を見つけ出さなければならないわ。」

 

「だな。しっかし俺たちは当分金策に集中しなきゃなんねーな。」

 

「ええ、私達にかけられたであろう懸賞金の時効もここで待たなければならないし、少し出遅れたわね・・。」

 

「まぁここで情報集めながら気長に鉄堀修行してよーぜ!」

 

「うう・・テックハンターなのに情けないわ・・。」

 

しばらくして食事も食べ終え一息入れている頃、ルイはテーブルにうつ伏せでウトウトしていたが、トゥーラは一人BARの出口を出入りする人々を注視していた。

 

そこに一人、麦わら帽子をかぶった痩せた人間が入店してくる。

 

トゥーラと似たロングコートを着ているが足は靴を履いておらず何より足の平がない。それはまるで松葉杖のような棒先で竹馬の乗っているかのようだった。

 

麦わら帽子の下に隠れる顔をよく見ると目はサメのように黒目でぼったりとした口をつけている。

 

そんな人間が入店してきても酒場の人々は誰一人騒がない。

 

この世界ではさほど珍しくないからだ。

 

彼らはハイブ人と呼ばれ多くは大陸から遠く離れた島や辺境に巣のような家を作って集団で暮らしているが、たまに群れから離れたハイブ人が単独で生計をたてたりしているのだ。

 

ハイブの多くは知能が低いせいか群から離れると大抵は目的を失い路頭に迷ったあげく奴隷にされるか搾取されて命を落としているようだが、まれにハイブの中でも知能が高いハイブプリンスという種族が世に出て生き長らえる事例があった。

 

なお、ハイブの出生も文献が残っておらず謎に包まれている。

 

いま入店してきたハイブは頭の形状からハイブプリンスと見受けられた。

 

トゥーラはそのハイブ人の動向を目の端で追う。

 

コッコッコッコッ

 

足音はゆっくり近づいてくる。

 

店内で暴れた場合、即座にテックハンターのBAR護衛が取り押さえるため、戦闘になるとは思えなかったが、近づいてくる足音に警戒し刀に手をかける。

 

「お嬢ちゃん。ここのテーブルに座っていいかな?」

 

トゥーラがちらりと見上げると黒い瞳はじっとこちらを見ている。

 

(礼儀正しい物言いね。ただの放浪者?)

 

「他が空いていないのならどうぞ。」

 

「ありがとう。」

 

ハイブ人は一言いうと背中に背負った細長い棒を壁にかけ椅子に座った。

 

【挿絵表示】

 

(武器がただの棒ならさすがに追っ手ではないか・・・。)

 

トゥーラがほっとしている最中、椅子に座る音で起きたルイはビックリしている。

 

「うわ!お前誰だよ!」

 

初めて見る人種に驚いたのだろう。

これにハイブ人は大人の対応をする。

 

「ああ、悪いね。驚かせたかな。我々を見るのは初めてかね。」

 

「あ、ああ。本では読んだことあるけど見るのは初めてだ・・。」

 

「そうかね。以後、お見知り置きを。」

 

敵対的な言動は一切なくむしろ社交的に感じる。特徴的な外見なためルイは興味が優先して自分から話しかける始末だ。

 

「でさー!危うく奴隷にされそうだったのよ!」

 

「ふむふむ。それで奴隷商から逃げてきたのかね。大変だったね。」

 

「そうなんだよー!あいつらマジで汚い奴らでさー!」

 

すっかり打ち解けたようなルイとハイブ人の会話をトゥーラは横で聞いているだけであったが、次のハイブ人の一言に驚愕させられる。

 

「なるほどね。外見も素性も一致する。君たちで間違いなさそうだ。」

 

2人を認識しているハイブ人のこの唐突な言葉にトゥーラが即座に反応する。

 

ダン!

 

片足を椅子に乗り上げハイブ人の襟元を掴む。

 

驚いて周りの人たちがトゥーラに注目した。

 

テックハンターのBAR護衛は鋭い目付きで監視している。

 

「おいおい。こんな所でやりあっては迷惑だろう。まぁ座りなさい。」

 

ハイブ人は襟元を掴まれても澄ました様子でトゥーラをなだめる。

 

「・・・・っ!」

 

明らかに追っ手だ。しかし店内での戦闘行為は客含めて全員を敵にまわすことになる。この世界において様々な組織が出入りするBARという空間は暗黙の了解で戦闘禁止地域として認識されているのだ。

 

トゥーラは冷静になって座り直す。

 

「あなた追っ手よね?ばらしてどういうつもりなの?」

 

「ああ、そうだよ。落ち着いたようだね。」

 

ルイはやっと事態を飲み込んだようだ。

 

ハイブ人は2人のの正面に居直ると話を続ける。

 

「君達に提案があるんだ。大人しく捕まってくれないかな?そうすれば傷つかなくて済むだろうし。」

 

2人は絶句した。

到底受け入れがたい申し出を平然と言っきたのだ。感受性に乏しいハイブ人らしい特徴ではあるが、状況が状況なだけに不気味だ。

 

「おま、何言ってんだ?敢えて捕まるはずないだろう?」

 

ルイもヒートアップし始める。

 

「私はね。君たち若者に危害を加えたくないんだ。君はなんか昔の友人に似てるし。大人しく捕まれば数日のムショ暮らしで刑期終わるよ?そこでおおいに反省して人生の再出発をすればいいじゃないか。未来がある君たちに比べ私なんか小物の懸賞首ハンターに成り下がってて羨ましいよ。」

 

一見、相手のことを気づかった発言のように見えるが実はまったく自分勝手な内容に2人はさすがにのせられない。

 

「他人事だと思って勝手言いやがって!」

 

「ルイ!相手の挑発に乗っちゃだめよ。どうせここにいればこの人も手が出せないわ。」

 

しかしハイブ人は動じていない。

 

「ふむ。持久戦か。いいだろう。こういう多くの人がいてガヤガヤしているところは好きなんだ。」

 

こうして唐突に追手一人とテーブルを囲んだ奇妙な駆け引きが始まった。

 

BARの外に出ると追っ手は斬りかかってくるだろう。対する追っ手も2人から目を離せない。

 

しばらく3人とも喋らず無言の時間が続いていたがハイブ人が切り出した。

 

「君たちはどこの生まれだい?」

 

「敵とは喋らねー!」

 

「ルイ、相手にしなくていい。それよりちょっとこっちに来て。」

 

トゥーラはそういうと2階に上がり始めた。

 

「そっちからじゃ出れないだろ?」

 

「いいのよ。とにかく来て!」

 

ハイブ人は特に気にする様子もなく水を飲みながらルイ達を見送っていた。

 

2階に上がるとトゥーラは小声で喋り始める。

 

「交代でベッドで睡眠をとりましょう。それを何回か繰り返して相手が疲れるのを待つの。頃合いが来たら2階から向こうの城壁に飛びうつってハイブ人をまくのよ。先にあなたが寝ておいて。」

 

「おお!分かった!いい考えだな!」

 

2人は早速行動にうつる。

まずトゥーラは一人で一階のBARに降りた。見るとハイブ人はまだ呑気に食事をしているようだ。

 

(一人で来たのは間違いだったわね)

 

なに食わぬ顔でトゥーラは席に座る。

 

それをハイブ人はただジッと見ていた。

 

交代の時間が来るとトゥーラはルイを起こしにいき代わりにルイはBARに戻る。

 

それを2回繰り返しておよそ4時間が過ぎ夜も更けた頃、トゥーラは行動に出る。

 

「ルイ!起きて。今回でここを脱出するわよ。」

 

「おし。もうあのハイブ人へとへとだろ。」

 

「麦わら帽子を深くかぶって座ってたけどもしかしたら寝てるのかも。チャンスよ。」

 

2人はBARの2階から一番近い城壁にジャンプし壁づたいに出口を目指す。

 

「行けそうだ。ちょろいな。」

 

こうしてついに2人は見つからずにウェイステーションの外に出ることができた。

 

「はははは!あのハイブ人の追っ手結構間抜けだったな!」

 

「ふふ、一人じゃちょっと重荷だったようね。取り敢えず裏手に回るわよ。」

 

裏手の崖裏から都市連合の他の都市を目指す算段であった。他の都市に到着する頃には懸賞金の時効も過ぎているだろう。

 

トラブルから始まった二人の旅だが、追っ手の裏をかき、ようやく軌道にのると思うと自然と笑みがこぼれた。

 

しかし、若者2人が簡単に相手を出し抜けるほどこの世界は甘くなかった。

 

「やぁやっと出てくれた。待ちかねたよ。」

 

聞き覚えのある乾いていて無感情な声質だ。

 

丘の裏手には既に先ほどのハイブ人が待ち構えていたのである。

 

ハイブ人は長い棒を両手で横に掴みながらスーッっと広げはじめた。

 

暗闇ではあるが棒からは妖美に輝く刃先が姿を現した。




あとがき
ハーメルン自体初めてですが、「文章特徴量」というのを発見し見てみたら、
マイナスのスコア項目が複数あり、、
読みづらい文章なんでしょうね(汗)
(読んでくれている方、本当にありがとうございます)
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