Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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◆現在の仲間
ナパーロ/ラックル/694番


129.新生ノーファクション

「おい……あのフード野郎の動き……モールの?」

 

スケサーンは前を見据えたままフグに尋ねた。

 

「ええ……無想剣舞よ。まさか……あいつモールではないわよね……」

 

特憲2人の視線の先にはラックルを介法するフードを被った者がおり、その横でキアロッシが倒れていた。

 

キアロッシがラックルの首を刎ねようとした刹那、突然フードをかぶった者が現れて、キアロッシに対し忍者刀による高速の峰打ちをした。そしてその俊敏な動きはモールの無想剣舞そのものであったのだ。

 

薄れゆく意識の中でラックルはフードの中の素顔を見て驚きの表情をする。

 

「どうして……ここに……?」

 

「動くな。いま止血する」

 

【挿絵表示】

 

フードの者はラックルの無くなった片腕の先をきつく布で縛り上げる。

 

「う……!今までどこに……?」

 

「すまん、それは後で話す。それよりニールはどこだ?一緒にいたんじゃなかったのか?」

 

「サッドニールさんは……」

 

声を振り絞って喋ろうとしたラックルであったが出血による貧血と疲労により、ついには白目をむいて気を失ってしまった。

 

「……ここまでよく頑張ったな」

 

フードの者はラックルに優しい言葉をかけるとゆっくり地面に寝かせた。

一連のやり取りを黙って見ていた特憲連中であったが、痺れを切らしたスケサーンが声を張る。

 

「おーい、そこのフード野郎。お前、都市連合に手を出したんだぜ?分かってんのか?」

 

話しかけられたフードの者は立ち上がるが、黙って見据えたままであるためスケサーンはさらに続ける。

 

「浮浪忍者か?お前らは実質都市連合の下請けだろぉ?何とか言えよこらぁ」

 

これにフグも反応する。

 

「ちょっと。本当にモールだったらどうするのよ。S級クラスよ?面倒事は避けてよね」

 

「それも見込んで十志剣を連れてきたんだろ?丁度いいじゃねぇか」

 

しかし2人の予想とは裏腹にフードの中からは若々しい女の声が返ってきた。

 

「お前ら特憲だな」

 

「あん?なんだ?お前モールじゃないのか?一体誰なんだよ?弟子か?」

 

スケサーンの問いかけには応えることなくフードの者は質問を返してくる。

 

「……ニールはどこだ?」

 

「ニール?って誰だ?お前……以前に会ったことあるか?」

 

「サッドニールだ。スケルトンの。どこへやった?」

 

ナパーロと一緒にいたスケルトンのことを言っているであろうことはすぐに連想できたが、スケサーン達が驚愕したのはそこではなかった。

 

「その生意気な口の聞き方……お前……まさか……」

 

この言葉に横にいたフグも察したようだ。

 

「え!?……ルイ!なの!?ホーリーネーションに捕らえられていたのではなかったのですか?」

 

対するフードの者は静かにその被り物を脱いだ。

 

【挿絵表示】

 

その姿は紛れもなくルイでありスケサーンは思わず声を上げる。

 

「やっぱりお前か!いや……しかし……本当にルイだよな?」

 

スケサーンが疑問形になったのは無理もなかった。その者は少し伸びたシルバーの髪をなびかせ片目は眼帯をしていた。一目見てルイだと分かった。しかし、どこかかつてのルイとは違うと感じ取れたのだ。

 

「浮浪忍者襲撃後に行方をくらましたってアマネから連絡が入っていたが、まさか生きていたとは……」

 

「…………」

 

「浮浪忍者に拉致られたか?それとも自分からついてったか?お前女が好きそうだもんなぁ」

 

相手がルイだと確信したスケサーンは安心したのか挑発を続ける。

 

「お前の仲間は離散したらしいぜぇ。いつまで経ってもお前が帰ってきてやんねーから」

 

スケサーンが仲間の事に触れるとルイは鋭い形相を見せる。

 

「お前ら相変わらず好き勝手やっているみたいだな」

 

「あん?人間社会に悪さしそうなゴミを片付けているだけだが?」

 

「自分の既得権益を守ることに必死なだけだろ。お前たちが私らにしてきた事は把握している。他にも無害な人間も相当殺めてきたんじゃないのか?」

 

「はぁ?これだから害悪は自分たちがそうだと認識していなくてタチが悪い」

 

「……まさにお前たちの事だな」

 

ピキッ

 

スケサーンの額には血管が浮かび上がる。

 

「お前も相変わらず口は達者のようだなぁ。で、どうすんだ?土下座でもすんのか?」

 

その横でフグは神妙な面持ちで口を挟む。

 

「スケサーン。取りあえずここであの娘を殺っておきましょう」

 

「は?なんだお前……ビビってんのか?」

 

「馬鹿ね。キアロッシをやった時の動きを見たでしょ。それにあの娘の親は…」

「んなこた分かってるって。だがあいつ1人だぜ?」

 

「だから確実に殺っておくと言ってるの」

 

スケサーン達が話しているのを見てルイは倒れているラックルを担ぎ上げようとする。

 

「あ!おいおい!何勝手にトンズラしようとしてんだ!立会人に手を出しておいてそのまま行かせるわけねーだろ!」

 

「……だったら早くかかって来いよ」

 

ルイは再びラックルを地面に寝かせ戦闘態勢に入った。

 

「てめぇ……調子に乗るのもいい加減にしろよ!」

 

スケサーンは怒りで語気がいつにも増して荒くなっていた。

 

その要因に彼自身も気づき始めていたからだろう。

ルイは戦闘態勢に入りつつも、怒りに我を忘れて無謀な戦いを挑んできた以前のような気配はない。闘気をたぎらせてはいるが、それでいてそれを内に抑え込むような静かな威圧感を携えている。そして今回も特憲2人と十志剣を前にして全く引く気がない様子だ。

 

(馬鹿な……!奴は後先考えずに突っ込むだけの無能だった……。しかし、いま俺が感じているこの感覚はなんだ?)

 

スケサーンは自分の手を見ると微かに震えているのが分かる。

 

恐怖心?

 

あり得ない。認めたくない感覚であった。それほど今のルイは圧迫感をまとっていたのだ。

 

「クソが!早いとこ十志剣にやらせろ!」

 

「言われなくてもね。十志剣!ルイを討ち取りなさい!」

 

フグはらしくもなく真面目な顔つきで命令を下した。

 

フグの後ろにいた商人風情の男たちはフグの命令を聞くと直ぐ様、それぞれの武器を取り出し前に出る。そして先頭を行く2、3名がルイに襲いかかる。

 

対するルイは背中にデザートサーベルを背負っていたが、それには手を付けず冷静に腰にさしている忍者刀を抜いた。

 

 

ー無想剣舞 序式ー

 

 

何をしたのかハッキリ分からなかった。ただルイは風のように先頭の十志剣をすり抜けただけのように見えた。しかし、襲いかかった十志剣は振り返ることもなくその場に倒れ込んだのだ。

 

「く……黒い死神……」

 

十志剣の誰かが呟いた。先に我に返ったスケサーンが怒号を飛ばす。

 

「馬鹿野郎!1人ずつ行ってんじゃねぇよ!対仮想モール隊形とかあるんだろ!?それでいけ!!」

 

その横でフグもボーガンを組み立て始める。

 

「ちっ!あの娘、格段に腕を上げているわ。あなた達、本気でやりなさい!我々も加勢するわよ!」

 

フグはバックパックを降ろすと中からボーガンのパーツを取り出し組み立て始めた。しかし十志剣の長テネンバウムに呼び止められ固まってしまう。

 

「フグ様!あれを……!」

 

「何よ!?」

 

見上げた先にはルイの後ろに数名の剣士が山から降りて来るのが見えたのだ。それはフグにとって見覚えのある者ばかりであった。

 

テックハンター十傑バーン

シェク四人衆筆頭カン

浮浪忍者三忍ピア

 

「ノ……ノーファクション……やはりここに集結していたのか……」

 

テネンバウムはすぐさま残る十志剣の進軍を止めた。その様子を見ていたスケサーンもボソリと呟く。

 

「あのスケルトンはバーン……か」

 

バーンはガチャリと武器を地面に刺しルイに話しかける。

 

「ルイ、1人で先走るなと言ったろう」

 

「悪い。危なかったんだ。ピア、先にこの少年を連れて帰って手当てしてくれないか?」

 

「了」

 

ピアと呼ばれた後ろにいる別の剣士はラックルを抱えるとそのまま山を登っていった。フグやスケサーンは何もせず見送ることしか出来なかった。

 

「三忍のピア……。浮浪忍者とも繋がっていますか……。こりゃあとんでもない勢力が出来たかもしれませんね。どうしたものか」

 

フグが悩んでいる横でスケサーンは前に歩み出る。

 

「テネンバウムさんよ。同時にあいつらを相手出来ると思うか?」

 

「……無理ですね。恐らくこの状況、戦力は互角か、もしくは劣勢です」

 

テネンバウムは即答した。

 

「ちっ……仕方ねぇ、ここは引くぞ。いいよな?フグ」

 

「やむを得ませんね。もう西を調査する理由もなくなりましたし」

 

「こりゃあ特定脅威組織の認定待ったなしだな」

 

「ええ、20年前と同じですよ」

 

スケサーンは少し考えた後、ルイ達に向って大きな声で勧告する。

 

「おい、ルイ!最後にお前に聞いておく!」

 

「……なんだ?」

 

「都市連合に帰順する気はないか?武器を捨て一般市民を脅かすような行為を止め、誠意ある謝罪と賠償金を支払えば懸賞金を掛けずに済むぞ」

 

「……ほんと相変わらずだな。まずはお前らが心を入れ替えるべきだろ」

 

「そうか。俺たちのこれまでの善意を無下にしやがって、馬鹿な奴だ。ここは仕切り直しだがいずれ確実にお前たちは潰す。覚えておけ」

 

そう言うとスケサーン達特憲はキアロッシ等倒れている者たちをおいてもと来た道を引き返し始めた。

 

「…………」

 

ルイは追おうとしなかった。そこにバーンが歩み寄ってくる。

 

「これからどうするつもりだ……?」

 

バーンは言いながら倒れているキアロッシにフラグメントアックスでトドメを刺す。ブシューと血が吹き出ると同時に手足がビクつき、やがて動かなくなった。絶命したのだろう。ルイはその様子を無表情で見届けると静かに切り出す。

 

「ナパーロと一緒にニールもいたはずだ。散らばった昔の仲間も含めて全員、都市連合から連れて帰る」

 

「テックハンターを目指すのではなかったのか?」

 

「それは後回しだ。私は罪のない人々が理不尽に搾取され、命を奪われることがない平和な地域を造る」

 

「……都市連合を相手にする覚悟はあるのか?」

 

「ああ。邪魔をするならば戦うまでだ」

 

自らを奮い立たせるかのように宣言された言葉とルイの片目に宿る決意の眼差しを見て、その場にいた者たちは一瞬、遠い過去の頭領ローグの面影を思い出していた。

 

時が経ち、行方不明となっていたルイはいま再び姿を現した。

出自と経歴から目をつけられ、妨害を受けていたこれまでの道のりは彼女にとって過酷なものであった。その過程で夢を絶たれた者、師弟関係を壊された者、理不尽に命を奪われた者もいた。それら多くの経験と仲間を失った悲しみ、怒り、哀れみ、様々な感情を胸に秘め、いまルイは再び立ち上がったのであった。

 

 

 

『都市連合』編 上

 

 

next to episode8 『都市連合』編 中

 




都市連合編は上中下の長さになります('ω')

また充電期間に入りますが復帰はちょっと未定
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