Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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◆現在の仲間
ルイ、バーン


133.奪還

「カニバルって人を食う種族なんだろ?4人で大丈夫なのか?」

 

ルイは横にいるピアに問いかけた。

 

「カニバルは数が多いが、防具もつけていないし、剣術も素人レベルだ。連携もない。ミスったりしない限り大丈夫だろう」

 

「ふーん……」

 

カニバルについては文献で読んだ知識はあったがルイは一度も会ったことはない。言葉も通じず旅人などを襲ってはミンチにして食すという食人種族である。同類を食べているせいか人にしては知能が低いままであり、建築物なども掘っ立て小屋レベルから一向に向上する気配はない。衣服もボロ切れであり、肌にペイントをして見た目は原始人のような風貌だ。ただ、その中の力の強い者や少し知能が高い者が指導者やリーダーになっているようで彼らの指示の下、集団で行動している。この集団というのが厄介で多い時は20人、30人単位となり、襲われた者も多勢によりやられてしまうことが多い。

 

 そんな相手に4人で大丈夫なのかルイは不安になっていた。それにレヴァからは敵対視されており窮地で助けてくれる可能性も低い。マニやピアも1人で数十人も相手にしていたらルイをフォローしている余裕などないだろう。

 

「奴らは浮浪忍者村の施設をそのまま我が物顔で利用している。闇夜に襲撃し、まずはリーダーであるカンヘッドを討ち取る」

 

「カンヘッド?」

 

「文字通り缶のようなヘルムをかぶった奴だ。見つけたら優先して排除しろ。こいつを殺れば奴らは浮足立つ」

 

作戦はそれだけであり、基本はカニバルを隣の地域にある元浮浪忍者村から追い出せれば良かった。そして最速で任務を完了させるために4人で現地まで走って移動することになった。

 

 道中、会話もなくただひたすらと目的地へ急いだ。ルイにとっては見知らぬ土地でありいつ到着するのかもどんな敵が現れるかも分からないため、気が抜けない移動となった。そしておよそ走り続けて2時間後。森の奥に城壁と思わしき朽ちた壁が見えるところで待機する。

 

「中にいるようだな」

 

マニが村の中心から僅かながら立ち込める炊煙を見て呟いた。あの煙は人間を焼いて出たものだと思うとゾッとする。いくら修行して強くなったからと言ってまさか本当に人食い種族の拠点に少数で攻め入るメンバーに選ばれるとは今更ながら恐怖感が芽生えてくる。

 

「……大丈夫か?」

 

ルイの表情を見て、隣にいたピアが声をかけてきた。

 

「あ、ああ。久しぶりの実戦なんで少し緊張してっけど」

 

「仮に捕まっても最初は牢屋に入れられるだけだから脱獄して逃げるチャンスはある」

 

「そ……そうなのか」

 

ピアは割と寡黙なほうだが、意外と相手を思いやる人なのだと知った。ただ内容的にはあまり気休めにはならなかった。

 

 元浮浪忍者村には入口が1つしかないが、見張りはいない。ボーガン砲台も破損し使われている形跡もないため、4人は入口の狭い個所を陣取って敵を削ることにした。

 早速、入口まで移動し、村の中を見るが多勢の気配はない。マニは奥の方に目をやりつつルイに指示を出す。

 

「ルイ、奥に行ってあいつらを引いてこい。我々との戦闘が開始されたらそのまま自由に動いて戦うといい」

 

「え?私が連れてくるんすか?」

 

「そうだ。お前はモールから推薦されたが、正直なところ力量が読めない。残った3人で入口を塞ぎながら戦うがここは絶対に崩せないからな」

 

正論だった。ルイとしても無想剣舞は広い場所のほうが効力を発揮する。ここは腹をくくって引き連れる役を全うするしかない。

 

 自分1人で戦うわけでなく連れてくればいいだけだ。ルイは意を決して恐る恐る一歩前へ進んでいく。炊煙が出ている元に奴らはいるのだろう。辺りを警戒しながら一歩一歩近づいていくが中々接敵しない。

 

(数は少ないのか……?)

 

奥に行く前に早いところ出くわして下がりたい気持ちを他所に、ルイはついに炊煙の元へ辿り着いてしまう。

 そこには4人の旅人風情の者が火を囲んで座っていた。ある者はドライミートを食し、ある者は本を読んでいる。どう見てもカニバルとは思えない風貌でありグリーンランド人やシェク人も混ざっている気がする。

 

【挿絵表示】

 

 ルイがポカンとしてその光景を眺めていると、その内の1人がこちらに気づいて声をかけてくる。

 

「浮浪忍者か?遅かったな」

 

女の声だ。声の主は燃えるように赤いショートヘアをなびかせて近づいてきた。どう見てもカニバルとは思えないが、ルイは念のため問いかけてみる。

 

「カ…カニバルか?」

 

対して4人は一瞬キョトンとした表情をした後、爆笑する。

 

「あーはっはっはっ!私たちがカニバルだってさ!ひー!」

 

「入れ墨しておいたほうが良かったかな!」

 

赤い髪をした女性は大笑いして涙を拭いながら前に出てくる。

 

「ごめんごめん、もしかしてあなた迷い人?」

 

「い、いや……浮浪忍者としてここに来た……」

 

これを聞いて後ろにいる別の者が驚きの声をあげる。

 

「おいおい、マジか。浮浪忍者は実戦経験ない者を戦闘に投入しているのか」

 

これにルイもカチンと来る。

 

「いや戦ったことあるよ。カニバルとはないけど」

 

「ふむ。まぁいいわ。それよりマニあたりが来てるんじゃないの?会わせてよ」

 

どうやら浮浪忍者と関わりのある者たちのようだが、得体が分からずルイは警戒する。

 

「ああ、来てるけど、あんたら何者だ?」

 

「あなた達の同盟者ノーファクよ」

 

「ノーファク?」

 

「ノーファクションよ!新兵さん!早くマニを呼んできてくれない?」

 

「あ、ああ。分かった」

 

また突如目の前に父親の組織の生き残りと思われるメンバーが出てきてルイは面食らった。しかしこれまで会ってきたチャドやグリフィンのような人たちとは違い、人を小バカにしたような態度やバーンとの関係性も不明であったため、ルイは敢えて名乗り出ることは止め、言われるがままにマニを呼びに戻った。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「なぜお前たちがいる?カニバルはどうした?レッド」

 

マニの第一声はノーファクションの面々を知っていながらも予想外といったところであった。これに先ほど喋っていた赤い髪の女が応える。

 

「あなた達がそろそろここに来ると思ってね」

 

「こたえになっていないな。お前らがカニバルから浮浪忍者村を解放したのか?」

 

「ああ、そうだ。ノーファクションと浮浪忍者は同盟関係だからな。拠点の奪還を支援してやったんだ」

 

「お前ら4人でか?相変わらずぶっとんでるな」

 

「あなた達こそ4人じゃない。しかも1人は新兵のようだし」

 

レッドと呼ばれた赤い髪の女はチラリとルイのほうに目をやるが、マニはニヤリと笑ってルイを突き出した。

 

「ああ、こいつのことか。ふふふ、お前は元頭領の娘の顔を忘れたのか?」

 

「何を言ってるの?……ん?」

 

レッドはルイの顔をマジマジと観察する。

 

「あなた……どこかで……」

 

つられて後ろにいるサングラスをかけたスコーチランド人も茫然としながらもかすれた声を出す。

 

「あの娘じゃないか?」

 

レッドも目を見開いていたが、ついに察したようでルイの両肩をバンバンと叩く。

 

「おおー!ルイか!大きくなったわね!目もとはルミ似か?」

 

全員の視線が自分に集中している事に耐えられなくなったルイは思わず違う話を切り出す。

 

「あ!あの、それより聞きたいことがあるんですけど!」

 

「ん?何よ?」

 

「毛皮商の通り道にあるグリフィンさんのノーファクションとは関係あるのですか?」

 

「!」

 

このルイの質問にノーファクションの面々は顔を見合った。

 

「あー……グリフィンが何かやっているのは知ってるけどあそこはホリネになったしなぁ」

 

「同じグループではないってことですか?」

 

「堅苦しいの嫌なんだよね」

 

「じゃあ!バーンは?私をここに連れてきたのはあなた達ですか?」

 

「何の話だ?私らは自由気まま!お気楽に動いているだけよ」

 

チャドやグリフィン等、これまで会ってきたノーファクションのメンバーは使命感を持って動いていたが、いま目の前にいる者たちは何かノリや興味だけで動いているような節を感じられる。しかし、ノリだけでカニバルを追い払った実力は相当なものだ。特に後ろで腕組みをしているシェク人はルイから見ても只者ではない雰囲気を纏っていた。

 

「で、援護するってことは見返りを求めてるんじゃないのか?」

 

マニが横から口を出すと、レッドはニヤリと笑う。

 

「別に求めてないよ。私らはただ浮浪忍者がここで力を取り戻しておいてほしいだけさ」

 

「お前たちはそんなに献身的ではないだろ」

 

「まぁそうなんだけどさ。私らも道中で息苦しくない地域を増やしておきたいのよ。上から目線の大国や話が通じないカニバルを相手にし続けるのは疲れるじゃん」

 

「そりゃそうだな。ではどうだ?このまま浮浪忍者に入ってカニバルを根絶やしにしないか?」

 

さすがは浮浪忍者の幹部とあってマニは勧誘活動にも余念がないようだ。

 

「んー、戦争の結果がどうなるか見たいから、これからワールドエンドに行くんだ。悪いな」

 

「そうか、残念。お前らは参加しないのか?」

 

「はははは、奴らの戦争にか?参加する意味がないじゃない。きちんと潰し合ってもらえばいいのよ」

 

「ふっ、やはりそういうことか。まぁ取りあえず助かったよ。ホーリーネーションが気を取られている間に我々はこの地域を制圧する。悪いがルイにも手伝ってもらうことになっているから引き渡せないぞ」

 

「ああ、別にいいよ」

 

あっけらかんとしたレッドの回答にルイは拍子抜けをした。てっきり自分に用がありバーンとも繋がりがあると思っていたが、どうやら本当に何もないようだ。グリフィンとも関連がないところを聞くと、ノーファクションの生き残った者たちであってもそれぞれの道を進んでおり必ずしも一枚岩ではないのかもしれない。ルイもこれ以上何かを聞きたい気持ちはなくなった。

 

「意外だな。では遠慮なく借りるとしよう」

 

「何ならカンを置いていこうか?」

 

レッドの提案にマニは驚きの表情を見せる。

 

「カン?ノーファクションの猛者じゃないか。いいのか?」

 

「どうせ私らは戦争見学しにいくだけだからね。カンも戦っているほうがいいだろ?」

 

そう言ってレッドは後ろにいるシェク人の男に声をかけた。

 

「ん。まぁな」

 

シェク人も残ることに抵抗がないようだ。

 

「よし。じゃあ私らはもうワールドエンドに向かうよ。モールに宜しく伝えておいてくれ」

 

「ああ、じゃあな」

 

カンを除く3人のノーファクションメンバーはそのまま浮浪忍者村を颯爽と出ていった。

 

思わぬ形で浮浪忍者村の奪還に成功した一行は、この後そのまま村を拠点にして周辺のカニバルを一掃することになった。そこでルイは新しく加わったカンと組み任務を続行することになった。





「131.修行」を編集し、以下の一文を後ろのほうに追加しました

また、スケルトンの記憶域の保存年月は約500年分のようで、それより昔の事はバーンも覚えておらず、過去にこの世界で何が起きたのかは謎に包まれたままであるようであった。

※話の根幹に関わるわけでもないかもしれないですけど……
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