Kenshi -20years later- 作:さわやふみ
ルイ、バーン、ピア、レヴァ、ジュード
新しくルイチームに合流した者は燃えるような赤い髪の少年であった。年はシャイニングやナパーロぐらいと思われた。そして誰かに似ているのである。
「君……もしかしてさ……」
ルイは確認せずにはいられなかった。
「ん?何すか?僕の顔に何かついてます?」
「いや……レッドとどういう関係?」
「ああ、レッドは僕の親ですよ。名はフレイムって言います。よろしくお願いします」
「やっぱりかぁ〜〜〜!そっくりじゃん!ジュードもそう思うよな?」
「うん。似てるね。髪赤いし」
同意を求められたジュードも迷うことなく即答した。あの適当そうなレッドが子供を産んでいたこと自体も驚愕であったが、フレイムは気にすることなく飄々と応える。
「そりゃそうですよ。それよりこのチームでの僕の仕事は何ですか?そこそこ剣術はかじってきましたので護衛とか出来ます」
若いながらも自分の腕前に自信があるようだ。
「いやー……私たち割と暇を持て余しているというか、今の仕事は買い出しと資材整理しかないんだよね。あ、あと料理もか」
「ええ!”メガクラブ喰いのルイ”さんが雑用やってんすか!」
「うお……その通り名は久しぶりに聞いたな……。つーかレッドの子が何で私のチームなんだ。サボってないか見てこいって言われたか?」
「いや、若い者同士のほうがいいだろって言ってました」
「ふーん……。今日は偵察任務に行ってる仲間が帰ってくる予定なんだ。それまで取りあえず腕前を見てやるよ。こっちきな」
「え!いいんすか!」
ルイが稽古つけてくれるのが嬉しいようでノリノリだ。早速ルイたちは人気のない広い場所に出た。
フレイムは母親と同じ長巻を所持しておりおもむろに正眼で構えた。悪くはない。が、もはや多くの修羅場を潜り抜けてきたルイである。ちょっとした仕草や何気ない動きにより、ある程度相手の力量を見抜けるようになっていた。
「うーん……。君、人を殺したことはないよね?」
「え。どうしてそれを!」
「構えた時の気迫とかで分かる。真剣になると最初はどうしても心の余裕がなくて落ち着かない感じになるんだよ。よし、もういいよ」
「え!もういいって……手合わせもしないんですか!?」
「うん。真剣だと危ないじゃん。それに大体分かったから」
「そんな……」
流石のフレイムも男だからなのかプライドに触ったようで納得がいかないようだ。懇願する眼差しでルイをジッと見ている。
「よ、よし。じゃあ私に斬り掛かってみろ」
「あ、いや……でも危ないと……」
「やりたいんだろ。早くしなよ。ピアたちが帰ってきちゃう」
フレイムの心配そうな様子を他所にルイは全く意に介していない。腰に片手をあてていつでも来いという状況だ。
「では……いきますよ……たぁーーー!」
何とも気の抜けたかけ声と伴にフレイムはルイに襲いかかった。しかし斬撃はむなしくも空を斬り、フレイムはいつの間にか天空を仰いでいた。
「精進あるのみだな!」
ルイはフレイムの顔を覗き込むように声をかけた。
「何を……されたか分からなかったです。すごいっす」
「相手の攻撃のタイミングでカウンター入れているからな!無想剣舞っていうんだぜ!すごいだろ!」
ルイが屈託のない笑顔ではにかむと、ボンという音がフレイムの頭から聞こえた気がした。起き上がらずにぼーっとルイを見上げている。傷を負わせたつもりはなかったが転んだ時に頭を打った可能性はあり、ルイは心配になり声を掛ける。
「お、おい。どうした?大丈夫か?」
「強くて可愛い女性……好きっす」
一時そこにいる全員の時間が停止した。
「は、はぁ!?何言ってんだ!ジュードこいつ置いて行こうぜ!」
突然の告白にルイは困惑してしまった。歳下とはいえ同世代から告白を受けることなど年頃のルイにとって初めてであったのだ。ルイは戸惑いを隠すようにそのままノーファクションの拠点に向かった。
「おう、ルイ。フレイムはちゃんとやれそうか?」
先ほどのやり取り等知る由もなくレッドが話しかけてくる。
「あんたの息子なんだろ?色ボケしすぎじゃないか?」
「色ボケぇ?はははははは!私に似てきたかなぁ。父親が誰かは分からんけど」
「……!」
父親不明とはつまりどういうことなのかとルイは頭の中を整理しようとした。
「その分、甘やかして育ててしまったんだよねぇ。ビシバシ鍛えてやってくれ」
フレイムを気づかう様子にルイは心にモヤモヤを感じる。自分は物心つく前に本当の親を失っており、親の愛情を直接受けたことはない。生きていればこのように心配してくれたのだろうかと想像しながら少し羨ましく思ってしまったのだ。
「で、バストの情勢は調べられたのか?」
「あ、ああ。今日偵察隊が帰ってくる予定だ」
「おう、そうか。それまでここでだべっていくか?」
「忙しいんじゃないのかよ……チャドさんのこと何か分かったのか?」
「いや、依然として行方不明だな」
あまりにも即答であったので本当に調査しているのかすら不安になってくる。
「そうか。なぁ、今あんたらいったい普段何してんだ?ワールドエンドの外でてんの?」
「んーいいや?外回りの役目を持つ者は他にいる。私はここで司令塔だ」
「ふーん、大層な身分だな」
「ふふ、司令塔もやってみると大変なのだよ」
「そうは見えないぜ」
「そういやお前の父親も昔、一生懸命にリーダーをこなしてたわ」
「あんたと父親を一緒にすんな」
「あら?もしかして私、嫌われてる?」
「ふん。嫌いというより私とは性格も考え方も合わなそうだ」
「へぇー。あなたとは上手くやっていけそうと思ったのに残念ね」
「つーか私はあんたらのことなんてどうでもいいんだよ。早く仲間のことを突き止めてくれ」
「分かった分かった。それよりお前のメンバーが帰ってきたようよ」
言われてルイは窓から外を見ると、レッドの言う通りピアとレヴァが家に入ってくるところであった。
「いまバーンがいないようだけど、取りあえずあんたに報告しておくか?」
「ええ、ここに呼んで頂戴」
指示通りにルイはそのままピア達に調べてきた事を話してもらうよう伝えた。
「全く簡単な任務だった。ほとんどの者は田畑を耕したり建物を建てたりで復興に勤しんでいて殺伐としていない。カニバルも来ないから平和そのものだ。そもそも兵士自体が大分少ないようで、今なら私らでバストを奪えるかもしれない」
ピアの報告はルイにとって割と予想外な内容であったが、レッドの方はあまり食いつく様子もなく反応する。
「そ。まぁ私らが領土を持ってしまうのは今は得策じゃないかなー。国として意識されて面倒くさくなるからね。大国が不可侵にしているワールドエンドに籠もってたほうが割と安全だし」
「なるほど。ただそれよりも、別件で気になる報せがある」
ピアはそう言って手紙を広げた。
「これは?」
「都市連合で浮浪忍者の情報屋をやってくれてるハーモトーからの手紙だ。浮浪忍者村に向かっている伝書鳩を途中でキャッチした」
「ハーモトーさん!?」
また懐かしい名前にルイは反応したが、ピアは気に留めることなく続けた。
「手紙によるとサッドニールとナパーロという者が特憲に追われているから浮浪忍者で匿ってやってくれ、というものだ。サッドニールは元ノーファクションだろ」
「ああ、そうだ。もう一人はルイの仲間だな。ほらやはり特憲に狙われてただろう?ちょうどいい。こっちに向かっているなら保護してやろう」
レッドが呑気に得意気な表情をしているがルイの内心は穏やかではない。
「なんで追われてるんだよ?迎えに行ったほうがいい!どこにいるか分かるか?」
「手紙にはそこまで書いてない」
「たぶんここに向ってるだろうし、待つしかないでしょ」
「くそ!しかし、特憲って奴らマジで何なんだよ。こっちは何もしてないのに!何で私らを追いかけ回してくんだ」
「禁忌の島に行ったからよ」
レッドの指摘にルイはハッとなった。
「な、何で知ってんだよ」
「だからヘッドショットから情報貰ってたんだって。実際に大量の鉄蜘蛛が置いてあるのを見てきたんじゃないのか?」
「いや、そうだけど……。もしかして事情知ってるの?」
「ああ、都市連合が秘密裏に研究している大量軍事兵器だ。過去の技術だから制御できるかは微妙だが、極秘ゆえに知っている奴は消されるだろうな」
「もしかしてその研究している奴ってミズイか!?」
「ああ、そうだ。最近バスト領主に着任したから、まだ続けているのか、誰かに引き継いでいるのかは不明だ」
「あいつ……それで結局俺らの仲間に危害を加えたのか……!」
「……いや、特憲を貴族1人で動かせるものではない。恐らくノーブルサークルの上位貴族が絡んでいるのだろう」
「くっ……秘密を見たからずっと追われなきゃなんないのかよ……」
「まぁ嫌なら都市連合と関わりがない所にいきゃいいじゃん」
「……そうだな。仲間を助けたら浮浪忍者の所でお世話になるか……」
「そーそー人生楽しまないとね。特憲は私らが遊んでおいてやるよ」
この言葉は冗談とも受け取れそうであったが、あながち本気のようでレッド等は実際にワールドエンドで戦力を増強しているようで屈強な剣士はもとより、バーンやカン等に加えて名前も知らない手練れが交代でワールドエンドに常駐しているように見えた。
そして数日後
事態は彼らの思惑とは違う方向へ推移する。
ナパーロが麓で襲撃されている様子を、視力が良いルイが先に見つけたのである。
ルイは誰にも相談することなく真っ先に街を飛び出し、怒涛の速さで山を駆け下りていく。その異変を察した者が後に続く形となった。
そしてワールドエンド麓でルイ等とスケサーン擁する特憲がぶつかった。
スケサーン達特憲を追い払ったその夜。昏睡するナパーロが眠る部屋の横でノーファクションの緊急会議が開かれる。
「ではルイがここにいると特憲にバレたということか?」
レッドはいつもとは違って怪訝な面持ちをしていた。
「ああ、私がガッツリ喋ってきた。特憲は私が全員殺す」
「!」
重傷のナパーロを見て、これまでの平和主義な主張を変え攻撃的なルイの様子にレッドは驚きの表情を見せた。
「ふむ……。継続で問題ないな?バーン」
「ああ。計画に支障はない」
「よし。ルイ、言いたい事は分かった。しかし特憲は私たちがやるから、お前は手を出さなくていい」
「……?あんたらとの目的とそれほどズレてないだろ?それに私の仲間にも関わることだし素直に聞き受けることは出来ないな」
「お前らしくないね。心変わりでもしたの?」
「……ああ。お前らが言う通り簡単に争いがなくならない理由が分かったからな。言葉が通じない奴らは武力で排除するしかないと理解した」
「ふーん……。ただ特憲はやはり私たちが想定した順序で葬るわ。お前は邪魔せず見てなさい」
「何だよ順序って……?つーか、あんたら特憲とそんなに関わりあるのか?」
「ええ。というより特憲を飼っているノーブルサークルと長い因縁があってね」
ノーファクション残党レッドが急に見せた鬼気迫る表情にルイは思わず気負わされてしまった。
物語を収束に向かわせるのムズイです・・・