Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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◆現在の仲間
ルイ、バーン、ピア、レヴァ、ジュード


139.襲撃

星光が空に輝く夜。

数人の集団が広大な砂漠を横断していた。

 

先頭を行くのはテックハンター十傑のバーン。

フラグメントサークルを背負い悠々と闊歩する様は絶対無欠の風格を感じられる。

 

そしてそれに続くのはシェク4人衆の1人カン。かつてノーファクションの武闘派シェク人として名を知られていた4人の中の筆頭だ。さらに槍の達人シュライク。スナイパーのグリーンという者が続く。どの人物も現ノーファクションから選りすぐられた猛者であった。

 

「ノーファクの猛者も大分減っちまったなぁ。武闘派はこれだけか」

 

カンがメンバーを見て嘆いた。

 

「離散して20年経っている。散り散りの中むしろよく繋ぎ止めているものだよ」

 

シュライクがトレードマークのサングラスをクイッと上げて応えた。

 

「まぁこの4人であればポートノースぐらい落とすのはわけが無いだろう」

 

グリーンというハイブ人が特有の無表情ながら会話に参加した。

 

「というか街一つぐらいバーン1人でいけるだろ。もしや特憲がいるのか?」

 

「いる。が我々の協力者だ。戦うなよ」

 

会話に無関心を貫いていたバーンが始めて口を開いた。

 

「協力者ってことは味方なのか?そんなことあり得るのか?」

 

「過去に特憲が裏切った前例はない」

 

「マジかよ。誘い出す罠だったりしないよな?私たちがやられたら、ノーファクションの戦力がほぼ壊滅的な状況になるようなものだぞ。計画自体が一気に破綻しちまう」

 

「これまで()が提供してくれた情報は本物であり、その中には計画遂行に必須な情報もあった。それが彼が味方である証拠ではあるが……念には念を入れたほうがいいのは確かだな」

 

「ああ。ここは先陣をきってもらおう。それぐらいしてもらわんと信じられないな」

 

「静かにしろ。彼が来た」

 

闇夜の中で一人の影が4人に近づいてくるのが分かった。その者は風貌からシェク人のようだ。

 

「ノーファクションの者たちか?」

 

「いかにも。会うのは初めてだな。君が協力者かね?」

 

「ああ。チャドから聞いているだろ?」

 

「いや、我々はチャドとは直接連絡が取れていないから、出来れば君が協力者であることの証明が欲しいね」

 

「ちっ……まぁそりゃそうか。この集合場所に来ていることがーって言っても弱いしなぁ。俺が目の前でポートノースを壊滅させたら信用するか?」

 

「無論だ。しかし君の動機は何だね?なぜそこまでしてくれるのかね」

 

バーンはシェク人に対して懐疑的に質問した。

 

「お前らに説明する理由はないが……特別憲兵隊という組織を前からぶっ壊したいと思っていてそのチャンスが到来しただけだ」

 

「……ふむ。では申し出通り君からポートノースで暴れてもらいたい。場の混乱に乗じて我々も参戦する」

 

「了解だ。敵の戦力は立会人が10名程度と後は雑魚の兵士だけだ。あっという間だろうよ。奴隷は手を出さずとも勝手に逃げる」

 

そう言ってシェク人はまた一足先に闇夜に消えていった。その様子を見てカンは感心しているようであった。

 

「我々を騙すつもりならもう少しマシな理由を用意していただろうな。潔い奴だ」

 

「うむ。彼1人で立会人10人はさすがにきついだろう。ああは言っていたが我々もすぐに加勢できるようにしておこう」

 

これにシュライクが槍を回しながら応える。

 

「おう。とうとう始まるんだな」

 

「これでほぼ後戻りは出来なくなるが、君らにとっては長い年月であったな。よくぞここまで耐え忍んでくれた」

 

「別にお前の為じゃないし、我々から全てを奪っていった奴らに仕返しが出来るんだ。これ以上の喜びはないさ」

 

「これは報復という短絡的な行為ではないが、こと戦闘においてはその程度の動機で問題ない」

 

「は!スケルトンが知ったような口を聞くな」

 

バーンとシュライクが言い争うのを他所にカンは斬馬刀を持ってウズウズしていた。

 

「動機なんて人それぞれ違っても関係ないだろ。いくぞ」

 

こうしてノーファクションの4人もそれぞれまた闇夜に消えていった。

 

 

 

 

 

ポートノース

 

表向き資源発掘現場であるこの地は、ラックルが異質な雰囲気を感じた通り、裏の顔を持っていた。

 

「ガルベス様。どちらにいらしていたのですか?」

 

「あー?見回りだよ。ここも昔とあんま変わってねぇなぁ」

 

「まぁ目立ちたくもないですからね。特別憲兵隊養成学校であること(・・・・・・・・・・・・・・)は隠す必要があります」

 

「にしては昔より人が減ったか?」

 

「そうですか?取りあえずあなたが護衛に来ていただいてレディー・カナも喜んでおります」

 

「……そうか。校長はいまここにいるのか?」

 

「はい、いつも通りノーブルハウスにおられます。会っていかれますか?」

 

「ああ、ここまで来て会わないのも変だろう」

 

ガルベスはそのままノーブルサークルの貴族カナがいると思われる屋敷へ歩を進める。

 

玄関にはエリート侍が衛士として立っているが、ガルベスだと気づくとそのまま通した。

 

「校長。お久しぶりです。お元気でしたか?」

 

ガルベスはレディー・カナに会うなり挨拶をした。

 

「あら、ガルベス。ここを守りたいだなんて言いだしてどういうつもり?特別憲兵隊になったからにはそのような私情は本来すてるべきよ。まぁあなたの忠誠心には感謝しているけれど」

 

「ここで育てて貰った恩ですよ。おかげで奴隷マスター・ミフネに目をかけてもらいました」

 

「ふふ……お前はここの傑作よ。外にも出したことで時流も読めるようになり特憲として最適な兵士に育った。成功事例としてここでの教育にも取り入れているわ」

 

「蠱毒方式は今もやっているんですかい?」

 

「ああ、殺し合いね。いらない感情を捨てさせるには良いプログラムだからね。続けているわよ」

 

「そうですか。やはり何も変わってないということっすね」

 

言い終えたガルベスはおもむろに長剣を抜いた。そして躊躇うことなくレディー・カナを斬り捨てる。

 

「!!」

 

周りにいたエリート侍たちは急な出来事に何が起きたのか理解できていない様子であった。その間ガルベスはノーブルハウスの外に出る。室内戦を避けたのだ。我に返った侍たちはぞろぞろと追うように出てきて刀を抜く。

 

「ガルベス殿!血迷ったのか!?なぜレディー・カナに手をかけた!」

 

「うるせぇ。ずっと考えてきたことだ。やっと成就してあの世にいるダチも喜んでいるだろうよ」

 

「何てことだ……!皆の者、こやつを討ち取れ!」

 

「はたして上手くいくかな?」

 

ガルベスは外に出ると同時に背負っていた板剣を抜いていた。それを振り回し襲いかかる侍を逆に攻撃し始めた。

 

「であえー!であえー!ガルベスが乱心した!反乱だ!」

 

ポートノースは蜂の巣をつついたような騒ぎになる。それを見計らってバーン、カン、シュライク、グリーンがここぞとばかりに乱入する。バーン等はガルベスの手引きの元、ポートノース(特憲養成学校)を襲撃したのだ。

 中でもバーンは異質な動きを見せていた。フラグメントサークルを棒きれのように回転させ、まるでドリルのように近くの侍たちを触れた瞬間に粉砕していく。その様子を見てガルベスは唖然として独り言を呟く。

 

「マジか……チャドが言っていたことは本当だったのか。これなら本当にやれるかもしれねぇ……」

 

あっという間にポートノースは地獄絵図と化した。至る所に人間のパーツだっと思われる肉片が散乱し鼻をつく血の匂いを放っている。

 

「ガルベスとやら。レディー・カナを殺ったのか。これで君が協力者であることがハッキリした。まずは礼を言う」

 

バーンは大方抵抗がなくなったポートノースを見渡すとガルベスに向けて言い放った。

 

「ああ。これで俺も後戻りはできなくなったぜ。あんたチャドより強いってのは本当だったんだな」

 

「彼が言ったのか?最早身体中にガタがきているのだがね」

 

明確な否定をしないバーンの返答にガルベスは確信する。

 

「は……。何なんだよ、ノーファクションは……。まぁこれでついていく決心はついたぜ」

 

「資料室は分かるか?特憲について調べておきたいことがある」

 

「恐らくレディー・カナの部屋だ。ついてこい」

 

バーンはカンたちに後の掃討を任せてガルベスの案内のままノーブルハウスへと向かった。

そして中にある机から書類を漁りだした。

 

「ふむ。特別憲兵隊の歴史は古そうだな。結成はちょうど都市連合が出来た時代に遡るようだ」

 

「奴隷戦士を使った候補者の選定も古くからずっとしてきたのか。殺し合いをさせて落選者を間引いてきたんだ。ふざけやがって……」

 

「より強い剣士を作り上げる実験のようなこともしていたようだな。主導していたのは……やはりノーブルサークルか」

 

「そうだろうよ。ここの校長が上位貴族の1人だった」

 

「特憲メンバーになった者のリストがないか探してくれ。またその間に君の知っている特憲の情報を全て教えてくれないか?特憲を潰す利害は一致しているのだろ?」

 

ガルベスも特憲の詳細について知りたいらしく、机や棚を漁りながら会話を続ける。

 

「いいぜ。特別憲兵隊は知っての通りノーブルサークルの上位貴族ごとにしか選出できない。だからMAXでも20人だ。その他は選ばれなかった者は立会人という立場で伝令などの役割で特憲メンバーをサポートする」

 

「そこまでは知っている」

 

「俺も入ってから知ったのだが、この他に十志剣という立会人から選び抜かれた猛者たちで構成されるチームが存在していた」

 

「ああ。実力面では特憲にも劣らないと噂されている特憲隊長専属の実行部隊か」

 

「こいつらの数人は知っている顔だった。恐らく俺と同じように奴隷戦士から命がけで叩き上げられた者たちなのだろう」

 

「ふむ……」

 

「そしてイレギュラーとしてアイゴアがいる」

 

「ほう。アイゴアはここ出身なのか?」

 

「ああ、アイゴアについては候補生だった頃よく聞かされていた。養成学校において優秀な成績で将軍まで上り詰めた完成形だったとな」

 

「む。これだな」

 

目を通していた資料からガルベスは古い報告書のような物を取り出した。そこにはピンク色をしたハイブ人の顔写真とアイゴアの名前と伴に評価結果が記載されていた。

 

「養成学校における戦闘兵士育成プログラムの最高傑作とあるな。こいつも相当メンタルに来ることやらされたみたいだぜ。何々……友人への拷問、赤ん坊殺害……まじか……」

 

「それで人格と感情をなくし、ただ相手を殺害するだけの戦闘マシーンが出来上がったわけか」

 

「俺の経験した事のほうがマシなほうだとはな……。こっちにも厳重に管理されてる資料があるぞ」

 

ガルベスはもう一つ厳重に封がしてある資料を見つけ出した。その報告書の顔写真や名前には墨が入っており顔を見ることは出来なかった。

 

「何だ……こいつ……?」

 

「見せてみろ」

 

バーンは興味深げにガルベスから資料を受け取った。

 

『登録No.562

名前:■■■

評価:保留

小柄で腕力に乏しく戦闘適性は低いが、状況に応じた人格の形成、それに伴う話術や読心術に長ける一面を持つ。その成り変われる範囲は狂人から貴族まで多種多様であり潜入調査任務の適性が限りなく高い。また論理的思考に基づく分析力や対応力は群を抜いている。よって、戦闘スキルの習得を中断し、敵性国家ホーリーネーションにおける諜報活動員として配置する。また、合わせて西方にて行方が分からなくなっているアークの捜索任務も兼任させる。なお発見した際は都市連合への召請を優先する。判断及び現場における決定権は隊長支援の元、この者に一任する。

 

追記

成長が著しいノーファクションを特定脅威組織とみなし、監視任務に切り替える。速やかに対象組織に潜入させ、可能であれば頭領ローグの抹殺を試みさせる』

 

「こいつで確定だな」

 

「いったい誰なんだ?」

 

「ノーファクションの裏切者だ。私たちはかつてノーファクションに潜入していた裏切者を追っており、いま全ての情報が一致した」

 

「だ、誰なんだ?」

 

「君は知らないだろうし、ここで言うわけにはいかない」

 

「へっそうかい。まぁいいや。俺は特憲潰しを手伝ってくれるなら文句は言わねぇ」

 

「よし、撤収するぞ。ここからは本格的な闘争に向けて備えるぞ」

 

バーンたちはガルベスを加えて早々に引き上げていった。ポートノースには累々たる死体が残されたままであった。

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