Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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17.追及

「シルバーシェイド!?貴様、裏切ったのか!?」

 

意外な人物の登場にガルベスは一瞬困惑したが、ここまでの経緯を振り返り苦い表情をしている。

 

ルイとトゥーラの2人に固執し3人目の存在を疑わなかったからだ。冷静に思えば兆候はあった。

なぜ最初に2人はBARでスタンバイできていたのか。

それは3人目が遠くからガルベスが来たことを合図していたからだろうし、あんなにたくさんの罠をすぐ来るか分からないガルベスに用意する必要があるか。

否。確実に来ると聞いていたから用意周到に迎え撃つ準備して待っていたのだ。

大岩を落とす仕掛けも少女2人で準備するには時間と労力が必要な罠だった。

全力で相手を倒すポリシーを掲げていたにも関わらず心のどこかで自分を過信し少女2人の力量を見誤った結果であったが、それが自分の中で認められず自然と何でも屋の裏切りが招いた事と言わんばかりに問い詰めたのだ。

 

対して何でも屋シルバーシェイドはいつもの調子で飄々と言葉を返す。

 

「裏切り?私はフリーの何でも屋だぞ。前の契約が無効になり終了すれば次の契約をするだけさ。契約期間は懸賞金がついている間までだと取り決めていただろう。」

 

「・・・!」

 

そこにルイも便乗する。

 

「それでもなぜ契約出来たのか解せないようだな。たしかに俺たちもシルバーシェイドを雇うには抵抗があったよ。騙してまた俺たちを捕まえようとするかもしれないしな。しかし、裏切らないだろう根拠はあった。こいつは俺たちとの戦いが終わった後、ブリンクではない都市の方角に向かい始めていた。それはグンダーとの契約はもう切れているか無効となったことを示していた。それに契約金も妥当だった。ガルベスの撃退を依頼した場合10000catとる反面、石運びや罠を作動させるだけの仕事なら500catの見積りだ。簡単な依頼に対して撃退する依頼には死ぬかもしれないリスク費を真面目に入れているってとこが逆に信用できたのさ。まぁ金次第という面でコイツ自体を信頼することはできねーがな。」

 

「君ねぇ、年上に向かってコイツって・・」

 

ガルベスも金で雇う何でも屋を信用はしていなかった。

これまでもシルバーシェイドは比較的安い価格で仕事を請け負ってくれていたが、その分全てを任せるようなことはできず、実際今回のように後始末としてガルベス自身が赴いてきている。

しかし金で如何様にでもなる人間ならば逆に買収合戦も可能ではないか、想定外なこの状況をひっくり返すのにガルベスも必死だった。

 

「こいつらに加担してお前も今後ろくな仕事にありつけんぞ!?今からでもいい!俺に加勢する契約をしろ!」

 

このガルベスの提案にルイたちは一瞬凍りついたがこの展開をルイは予め予想し、かつ危惧していた。

金の出しあいになった場合恐らくガルベスの資金力には到底かなわない。

となればそれを防ぐ方法は何かを考えると選択肢はあまりなく、シルバーシェイドのプロ意識に任せ契約終了タイミングを自分たちが安全になる状態までに設定し、次の契約をさせない。

それが唯一の回避策だったのだ。しかしこの点はルイにとっての賭けだった。

シルバーシェイドが高い金額を提示された際に今の契約を破棄し、ガルベスになびかないとは限らなかったからだ。ただ、『これからは仕事を選ぶ』というシルバーシェイドの言葉を信じて彼を採用したのである。

むしろこの問題があったため性格を知らない彼以外を雇う事のほうがリスクであった。そして次の言葉でそれが正解だったことがわかる。

 

「いやいや、お前が抜け出そうとしたら殺すとこも私の契約なのよ。それに私はもうお前たちとの仕事からは足を洗おうとしてたとこだったんだよね。」

 

500catという少ない契約金であるがシルバーシェイドは最後まで履行してくれることを選択してくれたのだ。

 

「・・・ふざけるな、そんな簡単に抜けれるはずないだろう!」

 

最早状況は覆らないと判断したルイは、興奮するガルベスの言葉を遮り質問を切り出した。

 

「ガルベス。そんなことよりお前にいくつか聞きたいことがあるんだ。返答次第では殺さずに逃がしてやる。」

 

「ああ!?」

 

腕力で自分より遥かに劣る少女に見下されるように喋りかけられガルベスの怒りも頂点に達している。しかし、それをお構いなしにルイは続けた。

 

「お前はアイゴアの部隊にいたと言ったな。いつ頃所属してたんだ?」

 

ガルベスに問いただしたかった事。やはりそれは父親の組織を襲撃したアイゴア部隊のことであった。しかしガルベスは唐突な質問で面食らってはいるが怒りの形相は変わっていない。

 

「一体何だ!?そんなこと聞いてどうする?」

 

「いいから答えろ。」

 

「馬鹿か!?この縄をほどいたら考えてやる。」

 

一筋縄では答えてくれる気配はないがルイは続けた。

 

「15年ほど前ぐらいに毛皮商の通り道にいた組織と戦っただろう。その時にお前は既に所属していたのか?」

 

「・・・・。」

 

「答えないのは自由だが今の自分の立場を分かっているのか?最後の質問だ。お前はこの世にやり残したことはあるか?大切な人はいるか?」

 

「問答は無用だ。早く殺れ。生き恥をさらしたくはない。」

 

ルイはため息をついた後しばらく考え込んだ。

ただでさえこんな負け方をしたガルベスが素直に話してくれるはずはないとは最初から思っていた。しかし肝心なアイゴア部隊の件。毛皮商の通り道にいた父親の組織を襲った都市連合の最強部隊の中に恐らくガルベスはいただろう。

これだけでも容易に殺意が込み上げてきていた。

 

トゥーラもこの後の判断はルイに一任しているため処刑するかどうかはルイに委ねられていたのだ。

 

だが、いざ目の前にいつでも殺せる状態で人の命を握ってしまうと決心が鈍った。

 

ガルベスは好きでこの道を選んだわけじゃないと言っていた。

実は父親の組織との戦いには参加していなかったのではないか

何か戦わざるを得ない事情があったのではないか

 

相手を許せるような理由をあれこれ考えてしまう自分がいるのだ。

何より無抵抗な人間を処刑するという儀式自体が初めてであり決断を鈍らせていた。

 

ルイは上を見上げ何かを決心したのかゆっくり口を開いた。

 

「ガルベス。お前の戦闘力に俺たちはまだ到底及ばないが、今回は知恵を絞った俺たちが勝利した。次にまた来たとしても同じ結果になるだろう。ただし今度は容赦せず殺すからな。シルバーシェイド、残りの報酬だ。受け取れ。後は頼んだ。」

 

そう言うとルイは小銭が入った袋をシルバーシェイドに投げ渡した。

 

「おいおい、君たちこの男を許すつもりかい?殺せる時に殺しておいたほうが君たちにとっては都合がいいと思うけど。」

 

「ルイ、私もそう思うわ。いま逃がしてもまたガルベスは追って来るわよ?」

 

周りの仲間はむしろ処刑をあと押ししている。

しかし、ルイはこの自分の決断を貫きたかった。父親は食糧問題で人が争わないような豊かで平和な世界の実現を目指していた。

自分はそんな大それた目標を掲げられるほど力がないけど共感することは出来る。やはり簡単に人を殺すことは性にあわなかったのだ。

この判断で今後仲間が危険な目に遭ってしまうかもしれない。

でも人として命をないがしろにすることはどうしても許せなかったのだ。

 

「トゥーラごめん。間違った判断になるのかもしれないけど、やはり俺はここでガルベスを処刑する気にはなれない。」

 

「いいわ。あなたの作戦が上手くいったからこの結果があったのだし。次もこの調子で撃退しましょう。」

 

トゥーラも笑顔で同意してくれた。

 

「まぁお嬢ちゃん。こいつはもうたぶん来ないだろうな。ミッションで失敗したことなど報告できんさ。自分の身を案じて嘘の報告をして終わりにするだけだろう。念のためこいつを殺しておくに越したことはないのは変わりないが。」

 

「そ、そうなの。もう来ない可能性が高いなら尚更無理にやらなくても良さそうね・・・。」

 

トゥーラとシルバーシェイドの会話にも反応することもなく無言を貫いていたガルベスだが、帰り支度をする2人に静かに喋りかける。

 

「お前ら本当に俺を逃がすつもりか?敵に情をかけていると自分が生き残る確率が減るんだぞ?」

 

ガルベスは自分が気づかぬうちに自らが歩んできた経験に基づく真実を言っていた。

これまで敵対する相手は友人であっても全て殺してきた。

そうしなければ自分が殺されていたからだ。

しかし目の前の若者たちは今それをしようとしていない。

このまま甘い気持ちでいるといつか裏切られ取り返しのつかない失敗をしてしまうだろうという現実の厳しさを無意識に伝えようとしているのだ。

それは格上の自分を破ったルイたちに対する無意識ながらの称賛の念だったのかもしれない。

 

そしてそれでもそのまま立ち去ろうとするルイたちを見てついには大声を張り上げる。

 

「待ちやがれ!くそ、何なんだお前らは!?借りは作りたくねぇ!質問に答えてやる!それでチャラだ!いいな!?」

 

それを背中で聞いていたルイは目を見開いて振り向き様に問いただしはじめる。

握りしめられた拳は少し震えていた。

 

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