Kenshi -20years later- 作:さわやふみ
ハウラーメイズ古都。
いにしえの時代に半島の中心地として隆盛を極めたこの人工地帯は今や大自然に還りゆく工程の最中であった。数々の建物は崩れ落ち、形を残している廃墟に至っても外壁は錆び付き苔むしており内部はカニの巣となっていた。
そんな自然と一体化しつつある場所を遠くから双眼鏡を使いモーリスとワイアットが驚愕した表情で見ていた。
「…バカな。なんだあのサイズは…あり得ねぇ…」
ついに古都に住まうメガクラブの姿を視認したのだ。
「うむ。想像以上に大きいな。7メートル級か?」
「それぐらいだな。ついに対面出来たわけだが…あんなのやれるんか…?」
ベテランのテックハンターでさえも初見で驚愕するほどの規格外の大きさなのだろう。ワイアットの口から弱音が漏れる。
「…これまで数々の猛獣を打ち破ってきた隊長の腕に頼るしかなかろう。我々はいつも通りそのサポートだ」
「だな。取り敢えず討伐準備をする間に予定通り傭兵の皆さんに周辺のカニを掃討しておいてもらうか。というかもう来てんじゃん。仕事が早いねぇトリスラムさん」
気がつくと鎧を纏った数人の剣士が2人の後ろに控えていた。その中で大柄の剣士が大きな声でこたえる。
「ギシュバに頼まれちゃあ俄然気合いが入るからな!メガクラブも勢いで俺達がやっちまうかもしれねぇぜ?」
トリスラムと呼ばれた大柄の傭兵隊長らしき人物はメガクラブの巨体を見てもまったく動じずに短剣を砥石で研いでいる。配下と思わしき剣士たちもいたるところに古傷があるたくましいガタイと強面で、大口を叩くだけの実力は充分にありそうだ。
「ははは、やれそうならやってもらっちまったほうが助かるぜぇ。じゃあ俺たちは報告と準備のためにいったん港町に戻るから後は頼んだ」
そう言うとモーリスとワイアットはその場を去っていった。
そして残された傭兵集団の前にトリスラムと呼ばれた剣士が立ち全員に語りかける。
「メガクラブを討伐した者には10万catと恩賞、土地、貴族の称号である爵位が貰えるって話だ…。何もギシュバだけにおいしい思いをさせとく必要はないよなぁ」
他の剣士たちもそれに呼応して雄叫びを上げた。それを見てトリスラムはニヤリと口もとに笑みを浮かべた。
一方、港町はメガクラブ確認の報告を受け慌ただしく動いていた。
「やはり古都に巣くっていたか。ついに発見できた」
ワイアットから直々に報告を聞いていたアウロラはルイの前で独り言を呟いている。先日まではルイを庇って負傷した腕を気にしていたがそれも完治したようだ。
なお、いくらルイがその事に触れてもアウロラ本人はいっこうに認めようとしなかった。
「7メートル級って本当に倒せるんでしょうか…?」
「心配するな。ギシュバと我々ならやれる。それよりハーモトー達を呼んできてくれ。メガクラブ討伐班を結成する」
指示されハーモトーのもとへ行くとトゥーラやナパーロもその場にいた。なんだかんだルイだけ皆に数日間会えておらず久しぶりの再会だった。
「トゥーラ!ナパーロ!元気だったか!?」
「ルイ!大丈夫だった?あなただけ一人だから心配したのよ。なんかたくましくなってない?」
「トゥーラが替わってくれなかったからアウロラさんに滅茶苦茶しごかれてんだよ!」
「あ、あれは仕方ないでしょ!私もハーモトーさんにしごかれてるし」
トゥーラが申し訳なさそうに弁解していると後ろから聞き覚えのあるおばさんの声が聞こえてくる。
「トゥーラなんだって~?あんたそのお陰でやっとまともに刀を振れるようになったんじゃないの?」
ハーモトーだ。この人は年齢に見合わず地獄耳のようで会話が聞こえてしまっていたようだ。
「は、はい。そうです…すみません」
「んで?ルイが来るってことは何か伝令があるんじゃないのかい?」
「あ、そうだった!メガクラブを古都で発見したようです。討伐班を編成するから司令部へ来るようにと!」
「そうかい。とうとう始まるんだね。わかったよ」
「じゃあトゥーラ、ナパーロまた後でな!」
ルイは内心ウキウキで本部のほうへ戻った。
メガクラブの討伐班はギシュバと8人衆の少数精鋭により構成される。都市連合兵を下手に参加させると被害も増え場が混乱することを見込んでの判断のようだが手柄を一人占めするつもりだという批判の声も少なからずあった。しかしこの選択は間違っていないとルイは確信していた。長年カニと身近に接してきた自分ならばわかる。7メートルのカニなんてもはやカニではなく巨大な猛獣だ。充分に対策をしていない者が不用意にかかっても潰されて終わりだろう。それだけメガクラブとの戦いは常軌を逸した戦闘になるはずなのだ。そのためどうしても目視したいルイはアウロラに頼み込み、トゥーラとナパーロ含む3人の同行を特別に許してもらっていたのだ。
ただし、計画の妨害や不測の事態になることも想定し遠くからの見学のみとなっていた。もともと選抜組のテックハンターも同じ理由で見学に同行し、またロード・オラクルも討伐記録の証人という名目で同じく遠くからの観戦組となっていた。なお、都市連合組を一人も近づけないことはスパイによる妨害行為の防止策にもなった。
そして参加者それぞれの準備が終わり討伐日当日。
観戦組は討伐組とは別のルートで移動し戦場となる古都を見渡せる高地を探していた。
「あの丘がいいだろう。」
観戦組を案内するのはハーモトーが担当していた。不測の事態が生じた場合はロード・オラクルと調整の上、都市連合兵を投入するか判断するためだ。また万が一貴族に危害が加わる事も防ぐため観戦組の位置は遠くから現場を見渡せて安全である位置を慎重に選ぶことになっていた。
一方、討伐組メンバーは意気揚々とメガクラブが潜む古都へ歩を進めていた。
ギシュバを筆頭として副隊長アウロラ、モーリス、ワイアット、ニムロッド、クジョウ、ローガン、バーバラと8人衆の面々が続く。
「ついにこの遠征における最重要任務であるメガクラブ討伐の時がきた。この任務が遠征の成否に関わると言っても過言ではない。気合い入れてかかるぞ」
「おお!」
ギシュバの掛け声と共にメンバーの士気も頂点に達するが出だしからその腰を折る報告が入る。
「トリスラム傭兵団が帰ってこないだと?」
先行して古都の周辺のカニを掃討していたベテラン傭兵団が壊滅したと偵察兵から連絡が来たのだ。
「どういうことだ?彼らが全滅するような任務ではなかったはずだ」
「どうやらメガクラブに挑んだようです。双眼鏡で古都内に死体が転がっているのが見えました」
「まじか…あいつらがやられるとは…」
一気に重たい空気が討伐組を包む。いかにベテランテックハンターと言えどメガクラブの討伐は最高クラスの難易度と理解しており生きて帰れる保証はどこにもないのだ。長い付き合いだった傭兵団が簡単にやられたことで、自分達も失敗し無惨に死ぬのではないかと不安感に襲われる。テックハンターの殉職率を知っていれば無理もない話だ。
しかし、こんなことではギシュバチームは崩れない。
「やはり古都に住まうメガクラブは一筋縄ではいかんようだな…。だが、こちらもそれは同じだ。これまでもお前達は数々の難所を乗り越えてきたし、この日のためにおよそ7年の間、計画を練り鍛練もしてきた。メガクラブは7メートル級だがいつも通りやれば必ずやれる。自分達の力を信じよう!」
一向はギシュバの一喝により完全に士気を取り戻したのである。
そして古都へ歩を進めると所々にカニの死体を発見する。傭兵団が戦った痕跡だろう。さらに進むと古都の面影を残す建物が見え始めると同時に何か地鳴りのような音が聞こえてくる。
ズン…ズン…ズン…
「…地震か?」
ワイアットが手のひらを地面につけて確認しているが、それを否定できる理由が前方に出現する。
バサバサバサと一斉に鳥が上空へ羽ばたき赤い甲皮が廃墟の間から顔をのぞかせたのだ。
「で、でかい…。この地鳴りは奴の歩く音か」
メガクラブだ。古都の主は傭兵団による襲撃があったことを感じさせないぐらい悠々自適に歩き回っていた。
「おい、誰だ7メートル級って言ったのは…9メートルはあるんじゃないか…?」
近づいてみて分かるメガクラブの大きさに一同は息を飲んだ。
「報告と誤差があったが目標を視認できたな。ダメージも…負っていないようだがこのまま予定通り討伐を開始する。モーリスとローガンは予定通りわしのバックアップを頼む。他の者は傭兵に代わって周辺のカニを掃討しわしらに近づけるな。では散開!誰も死なずに凱旋するぞ!」
3人を残し討伐組は辺りに散っていくのを確認するとギシュバは背中に背負っていた大きなバックパックを下ろし中から1本づつ重武器を取り出し地面に刺していく。
板剣、フォーリングサン、フラグメントアックス。数々の種類の重武器だ。
どれも刃は光沢を放っており使い慣らされているようだ。
「手始めに一番軽い板剣で様子見ておくか」
ギシュバは板剣を引き抜くとヒュンヒュンと軽々しく片手で振り回す。
「配置につきました。いつでもいけます」
横でローガンが合図を送っている。
「では…始めるとするか」
ギシュバは板剣を肩に置くと廃墟の奥でうごめく巨大なカニに向かって歩き始めた。
最近またkenshiを初めからやり直してしまいました。
序盤の理不尽を生き抜くところに面白みを感じてしまう自分はMなのかもしれない('ω')
しかし、少し見ないうちにMODが作られていたりして、中々飽きがこない良いゲームだと改めて思いました。
kenshi2がすげー楽しみです