Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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4.スケルトン盗賊3

3時間後

 

 

 4人のスケルトン盗賊の亡骸はその場に放置され無数の野鳥についばまれていた。

そこに一団が到着する。

 

「あ、いました!長老!奴らは・・もういないようです。」

 

ザッザッザッザッザ

 

金属の足が規則的な歩幅のテンポで死体に近づき辺りを見渡す。

 

「ふむ。スケルトンと人間の二人組ですか。興味深いですね。どちらに向かわれたのでしょうか。」

 

「奴らは当初、西に向かっていました!」

 

「そうですか。私たちは西から来ましたが足跡はありませんでしたね。スケルトンは重く固いから岩場でも何かしら足跡はつくはずですが・・・。方向を変えましたかね。」

 

「どうしますか?長老。」

 

長老と呼ばれた者は「ジジジジジ・・」と音をたて思考モードに入る。

 

外見は金属でできており正真正銘のスケルトンのようだ。

 

「消去法で考えると行き先は北ですね。南の汚染地域に人間が行くとは思えません。アークの西を抜けてブラックスクラッチへと出るルートでしょうか。皆さん北側を範囲的に探しましょう。人間は疲れているでしょうからその辺で休憩をとっているはずです。」

 

「分かりました!」

 

ゾロゾロとスケルトン盗賊達は北に向かいだした。

 

 一方、ルイ達はスケルトン盗賊の長老が推測した通り岩影で休息をとっていた。

 

「本当に持ってこなくて良かったのか?あいつら上質な武器とか持ってたぞ。」

 

乾いた肉を食いちぎりながらルイはサッドニールに問いかける。

 

「重いものを持ち歩いていたら盗賊に追い付かれてしまう。」

 

「足跡消して行き先を北に変えたしみつからないっしょ。しかしこの肉まっずいな。」

 

「いや、北には北で厄介な勢力がいるのだよ。荷物は軽い方がいい。」

 

「ええー・・。まだいんのかよ。そもそも、スケルトン盗賊って一体何だったの?自分がスケルトンだと思い込んでいる変人の集まりなの?」

 

焚き火に薪を汲みながらサッドニールはこたえる。

 

「・・・彼らの長老とは一度、交易をしたことがある。人間のような弱い有機体は滅び去る定めだと考えているスケルトンだ。実際に人間を恨んでいるというより人間と人間の戦いを娯楽として楽しんでいるだけのように見えるがな。そいつが逃亡奴隷など追い詰められた人間を拾って洗脳してスケルトンと思い込ませていると聞いたことがある。」

 

「・・・ごめん、ちょっと話が理解できんかったわ。」

 

ポカーンとしているルイを見てサッドニールは言い直す。

 

「ようするに一人のスケルトンが人間達を騙して戦わせてるのだよ。」

 

「それは許せないな。もしかしてそいつさえ倒せばスケルトン盗賊は解散するのか?」

 

「これ以上増えずに緩やかに瓦解するだろうな。しかし、長老を倒すのは我々の力だけでは不可能だ。彼は最古のスケルトンを自称するほど古くに作られており洗脳集団を形成して管理できるほど経験が豊富だ。たしか名刀級の武器を所持していたので腕もそれなりだろう。当時私のサーチだとCP75の誤差±20だ。」

 

「んん?CP?」

 

「コンバットパワー、総合的な戦闘力のことだ。実際の戦闘を見ていないから誤差が大きいがな。ちなみにルイはCP19の誤差±5だ。」

 

「はー?じゃあニールはいくつなんだよ。」

 

「私はCP52の誤差±0だ。もっとも一般的な計算式で出した数値だし、その時の体調、状況、環境で勝率は変動する。しかし我々の戦力では今のところ勝率1%と計算結果が出ている。」

 

「勝てねーじゃん!じゃあ手を出すのはやめておこうか。」

 

「君にしては懸命な判断だな。まぁ取り敢えず今は寝ておきなさい。起きたらずっとマラソンになるからね。」

 

「なぬー!少しだけ旅に出たことを後悔・・。」

 

サッドニールはルイを見やる。

 

「戻るかい?今ならまだ間に合うよ。」

 

「いや・・。やっぱりもっと世界を知りたくなった。」

 

「人間は短い期間に想像もつかない物を造り出すし破壊もする。今の世界は面白味のある時代かもしれないね。」

 

「なんか観点が違う気がするけどまぁいーか。おやすみ・・・。」

 

既に疲労でウトウトしていたルイだったが難しい話を聞いて眠気はピークに来たようだ。

 

そのままバタンとサッドニールの膝に倒れこんでしまった。

 

「はい、おやすみ。私は見張っていよう。」

 

サッドニールは自分の足を枕にして寝入ってしまったルイの顔を微動だにせずじっと見ていた。

 

 

 そこからまた一時が過ぎた頃だろうか。

サッドニールはそっとルイの頭を布の上に移し、立ち上がって遠くを見ている。

見ている先には砂ぼこりが上がっているのが分かる。

 

「追いつかれたか。この辺りにいると真っ先にアタリをつけないと追いつけない距離のはずだが・・・、やはりスケルトン盗賊の長老は健在か。」

 

少しだけ煙を出している焚き火跡を足ですり潰し、ルイの頬をペシペシと叩く。

 

「・・・んが!もう食べれないっつーの!」

 

ガバッとルイは飛び起きる。

 

「夢の中で食事中に悪かったね。そろそろ出発するよ。」

 

「・・・ん。あ、そーか。」

 

目をごしごしと擦りながらルイは支度を始める。

 

「荷物はいったん私が持とう。取り敢えず悪いが早々に走るよ。」

 

サッドニールは言い終えると同時に走り出す。

 

「鬼~!」

 

昔のルイなら反抗していたはずだが・・・

 

後続を従順に走るルイを見てサッドニールは感心する。

 

この子は死なせたくない。

 

 これはボスとの約束ではなく私自身の感情だろう。しかし人間に対して何かしらの感情を抱くのはこれで連続して2回目か。私も思考パターンが変化したのだろうな。

 

思えばデッドランドでボスに勧誘されたのがきっかけか。

 

「・・・ール!ニール!」

 

ハッとして走りながら後ろを振り替える。

 

「来たぞ!追っ手だ!」

 

ルイが指差す方に数人のスケルトン盗賊がこちらに走ってきているのが見える。

 

「見つかってしまったね。バックパックは捨てるよ。」

 

問答無用で荷物を捨てるニールを見てルイは悲鳴をあげる。

 

「ああー!大事なクラブヘルメットが入ってたのに!」

 

「そんな物を持ってきてたのか。でも死んだら意味がない。走り続けて!」

 

しばらく走ったがスケルトン盗賊は追いかけるのを諦めていない。それどころか間が詰まったように見える。

 

「はぁ・・はぁ・・、くそ!やべーかも・・・。」

 

ルイの速度が落ちてきている。

 

サッドニールは考えていた。

 

このままでは追い付かれるだろう。

 

しかし・・他に打てる手がない。

一か八か彼らの巡回ルートに入ってみるか。

サッドニールは走りながらルーティング計算を始めた。

 

「ルイ!少し道を変えるよ。そのままついてきて!」

 

「わ、分かった!」

 

そしてついに

 

「はぁ・・・!はぁ・・・!」

 

荒い息と共にルイは膝に手をついて止まってしまった。

 

「限界か?」

 

「・・・いや!まだ・・まだいける!」

 

ふたたび走り出そうとするルイを制止してサッドニールは鉄の棒を背中から取り出す。

 

「ここまでで充分だ。君はよくやったよ。少し休みつつ聞いてくれ。また同じ戦法をとるよ。私が防いでいる間に君はこの道を真っ直ぐ駆け抜けてくれ。今度は回収しに来なくていい。自力で帰れる計算がある。」

 

下を向いたルイは汗を鼻筋からたらしながら応える。

 

「・・・あんたの・・はぁはぁ・・嘘を・・何度も見抜けない俺だと思ったのか?」

 

「・・・・。」

 

「長老ってのが来てんだろ?そう2度も同じ手を食うはずないんじゃねーか?」

 

「私は例えバラされてもAIコアにメモリーが残ったままになる。だからAIコアさえあれば再構築が可能なのだ。」

 

「作り方なんて知らねーし!取り敢えず追っ手は数人だ。2人でなんとか返り討ちにしてまた逃げればいいじゃん。」

 

ルイはシャッ!とハンティングサーベルを腰から抜くと器用にクルクルと回している。

 

「へへ・・、ニールがいれば怖くもねーや。」

 

逃げてくれないルイを見てサッドニールも腹をくくる。

 

「いまいる追手は4人。勝率は63%だ。」

 

「充分だ!」

 

先行して飛び出そうとするルイを棒でいなすとサッドニールは何かを呟いたあと単独で猛進する。

そしてスケルトン盗賊4人とぶつかる刹那。やはり最初の1擊目はサッドニールが撃った。

大きく振りかぶって横一列にまとめてなぎ倒しにかかる。

 

 しかしさすがのスケルトン盗賊たちも振りかぶりのタイミングにわざわざ合わせて間合いには入ってこない。

 

ガキーン、キーン、カン!

 

鉄棒による横一閃は盗賊のサーベルに触れていなされた。

 

この時、サッドニールの攻撃を受けた一人目のスケルトン盗賊が武器を弾かれ体制を崩したのをルイは見逃さなかった。

 

 というより兼ねてからこうなると予想したサッドニールの指示でルイは一人目を狙っていたのだ。

 

ザシュ!

 

振り抜いたルイの攻撃は間合いが足りず胴には届かなかったが、盗賊の腕を切り落とした。

 

「ぎゃあああ!」

 

これで一人戦闘不能になっただろう。

 

問題はここからだ。

 

最早計算どうこうではなく、その場の瞬間的な判断で立ち回らなければならない。

 

 ルイには対人戦闘の経験が皆無だ。ましてや団体戦などどう動いてよいか分からないだろう。

だからサッドニールに出来ることは1つ。

攻撃的に残り3人を相手に棒術で暴れ、ヘイトを自分に向けること。

そしてルイにはこれまでのカニ漁をヒントに、相手の隙をついて自由に戦ってもらう。

 

この判断は間違っていなかった。

綺麗に戦術がはまりルイが3人の盗賊を仕留めたのだ。

 

しかし

 

「ニール!大丈夫か!?」

 

「問題ない。少し足を削られたが致命傷ではない。」

 

サッドニールの体に盗賊の攻撃がいくつか入っていたのだ。

 

「スケルトン応急処置キットはあるのか?」

 

「ああ、持っている。しかし、新手を倒してからだ。」

 

ルイが見上げると新手の追手が見える。それも10人以上だ。

 

「・・・・・っ!」

 

「今度こそ前回の戦法を使う時のようだね。」

 

「ダメだ!嫌だ!俺も最後まで戦う!」

 

「言うことを聞くのではなかったのか!!」

 

突然のサッドニールの怒号にルイはビクっとして固まる。

 

「・・・でも・・!」

 

普段、威勢がいいからといってもやはりルイは年頃の女の子だ。温厚なサッドニールの一喝に萎縮していた。

 

「いいかい?これも私の計算の内だ。嘘はついていないよ。」

 

泣きそうなルイを見てサッドニールは温厚さを取り戻す。

 

「それとね・・・」

 

サッドニールが何かを言いかけた時

 

どこからか罵声が一面に響き渡る。

 

「おいおいおい!お前ら人様の縄張りで何をやってんだ!」

 

スケルトン盗賊が見上げた先には茶色い軽鎧で身を包んだ一団がこちらを見下ろしていた。

 

「来たな。リーバー。出来ればルイがいないときに到着してほしかったが。」

 

サッドニールは一言ボソリと呟いた。

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