Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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決起編
41.新たな出会い


都市連合の首都ヘフト付近の砂漠を4人の男女が歩いている。

男女と言っても一人は老人で後の3人は成人にも満たない十代の子供のようだ。

 

街の外を出ると秩序のない無法地帯となるこの世界において極めて異質な構成であるが、街道をすれ違う人々の反応は畏敬の念が含まれている。

 

「あれはメガクラブ殺しのルイじゃないか?」

 

「期待の新星トゥーラもいるぞ」

 

「あの爺さんは…知らんな」

 

熱い視線が送られる度に4人はどことなくぎこちない雰囲気になる。

 

「メガクラブ殺しって…いかにも俺がやったことになってるんだけど…」

 

先頭を歩くシルバー色の髪の女の子が振り返り様に困惑しながら仲間に語りかける。

 

「私なんて何もしてないのに期待の新星になってるわよ…」

 

黒くて長い髪を一本に結んだ女の子も反応する。

 

「なんでお主らが有名になっててこの無限のウィンワン様の名前が覚えられていないのじゃ…」

 

自分に二つ名をいれて呼ぶこの老人は逆に名前を覚えられていないことが気に障っているようでご立腹の様子だ。

それをフォローするかのように後ろを歩く一番小柄な男の子が声をかける。

 

「あ、でもたまに知っていそうな人達もいましたよ」

 

「ほ、ほんとか!しかしルイ達に知名度が抜かされるとはな…」

 

これにルイとトゥーラと呼ばれている女の子達がこたえる。

 

「まぁ名前も実力が伴わないと意味ないし、実際に強いウィンワン爺さんが護衛してくれて助かってるよ」

 

「でもなんでウィンワンさんは私達の護衛を申し出てくれたんですか?」

 

元々、ルイ、トゥーラ、ナパーロの若者3人で旅をしていたが先のハウラーメイズ遠征で知り合ったウィンワンは遠征終了後に護衛という形で帯同を申し入れていたのだ。

しかもウィンワンは護衛業を生業としているにも関わらず無料でだ。

 

「…気まぐれじゃ。わしがいると旅が面白くなるじゃろう?」

 

トゥーラの疑問に対してウィンワンははぐらかすようにこたえたが、トゥーラが追及するタイミングを妨害するように行く手に怪しげな集団が姿を現す。

 

「食い物だぁ!食い物をよこせぇ!」

 

ボロボロの衣服を纏い手には古びた鍬や剣を持った集団は4人を見つけるや否や奇声を発しながら向かってくる。

ルイもそれに気づくがさほど慌てた素振りは見せていない。

 

「どうだ?ウィンワン。やれそうか?」

 

ルイは背中に背負った光り輝く大きなデザートサーベルをジャラリと取り出し、早くも臨戦態勢に入っている。

 

「うむ。一人だけ剣士が混じっているようだから其奴はわしがやろう。あとの3人は素人だが気をつければ今のお前たちでもやれるじゃろう」

 

「よし、じゃあ迎え撃とう。対話もせずに問答無用で襲いかかってくるような奴らはどうせ反乱農民しかいないしな」

 

反乱農民に対して思うところがあるのかルイは一人息巻いて飛び出していく。

 

「あ、待って!」

 

トゥーラの呼び掛けにも反応せずにルイはデザートサーベルを頭上で振り回しながら集団のほうへ突っ込む。

これに集団は一瞬ひるむが、腹を空かして極限状態なのだろうか狂気に満ちた表情でルイに襲いかかる。

しかしルイはまったく動じずに突きつけられる数本の鍬を華麗に避けながら叩き落としていく。

相手が空腹で力が入っていないのもあるだろうがルイの見よう見まねの剣舞は若干ではあるが上達しているようであった。

その様子を見てウィンワンは胸を撫で下ろす。トゥーラやナパーロを置いて一人で突っ込むルイに不安を感じていたからだ。が、安堵したのも束の間、相手のリーダー格の剣士がルイの方へ向かったため慌てて遮る。

 

「お主の相手はわしじゃ!」

 

すぐさまウィンワンは背負った斬馬刀を手に持ち剣士に斬りかかる。

そして数回刃を交えた後、剣士の真正面からの攻撃を受け流しむき出しになった剣士の背中に一太刀をいれた。

剣士はそのまま前のめりに倒れ動かなくなった。

 

ふぅ、と息を吐きルイのほうを見やると周りには折れた鍬を持った者達が戦意を失って佇んでいる。どうやら他の3人はルイが制圧したようだ。

 

「お前ら反乱農民か?都市連合に不満を持つのは勝手だけどな、その不満を関係ない人にぶつけてんじゃねー!こんなことをしている時点でお前らは盗賊や野盗と同列になってんだよ!」

 

反乱農民と言われた者達はルイの一喝にビクッとしつつも恨めしげな目つきは消えていない。

 

「きゃあ!」

 

すると突然、後ろからトゥーラの叫び声が聞こえる。

 

「しまった!まだいたのか!?」

 

振り返ると大柄の男がトゥーラに覆い被さり両手を押さえつけている。

ナパーロが横で長剣を構えているが震えており斬りかかる素振りは見えない。

 

「くっ!」

 

トゥーラは必死に振りほどこうとするが大柄の男の手を払うことができない。

そればかりか大柄男はトゥーラの両手を無理矢理に頭上で1つにまとめ右手だけでがっちり拘束すると左手でトゥーラの豊満な胸をコートの上から力強くまさぐりだす。

 

「女!女ぁ!」

 

「…っ!」

 

息荒く興奮したこの大柄男は明らかに目的が違うようでそのままトゥーラのコートを強引に引きちぎろうとしている。

 

「てめぇ!何やってんだ!」

 

ルイが大きな声で威嚇したときだった。

 

どこからともなく鉄笠をかぶったロングコートの男が颯爽と現れ、トゥーラに覆い被さっている大柄男の横っ腹を躊躇なく蹴りあげた。

 

「ぐぇ!」

 

そしてそのままゴロゴロと転がる巨体に鉄笠の男は長剣を抜き容赦なく切り刻んだ。

 

砂漠の砂は血で染まり大柄男はぐったりと動かなくなった。

 

「そこのお嬢ちゃん、怪我はないか?」

 

鉄笠の男はすました声で倒れているトゥーラに喋りかけた。近づくとその男の背が大分大きいことが分かりトゥーラもたじろぎながら礼を言う。

 

「は、はい。助けてくれてありがとうございます…」

 

「礼には及ばない。この大男は俺が追っていた賞金首で本能のままに強盗、強姦、殺人をしていたB級首だ。遠目で見つけられてちょうどよかった」

 

そう言うと鉄笠の男は大男の手足を縛った後、傷口を手当てし始める。

そこにルイも到着して駆け寄る。

 

「トゥーラ!ケガはないか?…おい?おーい?聞こえてるか?」

 

ルイはトゥーラがボーッとして見つめる先の鉄笠の男に気づいて喋りかける。

 

「あんたが助けてくれたのか?助かったよ!旅人か?」

 

「俺は賞金首ハンターのヒックスと言う。君はメガクラブ殺しのルイだろ?こんなところで有名人に会えるとは光栄だ」

 

男が鉄笠をとると30歳台ぐらいだろうか、男前のグリーンランド人で、端正な顔立ちの容姿が現れルイは一瞬見とれた。

 

「あ、いや。そうだけどメガクラブは自分が倒したわけじゃない」

 

ルイはハッと我に返りもはや身バレしていたことに驚くよりも自分の実力でメガクラブを倒したわけではないことを釈明しようと必死になった。

 

「ふっ。面白い子だな。君の言いたいことは分かる。君のような小さい子が一人でメガクラブをやれるはずがないしな」

 

「そ、そう!俺はただトドメをさしただけなんだ」

 

「そうか。トドメをさせるぐらいの勇敢さを持ってはいるようだな。ただ…失礼だが君のチームが本当にメガクラブをやったのか…?」

 

そう言うとヒックスは訝しげにウィンワンやトゥーラ、ナパーロを見やる。端から見るとルイたちは老人や子供の構成だ。疑がわれて当然であった。

 

「いや、ギシュバチームの人がほとんどやったんだ。俺たちはほぼ見習いのような形で隊に帯同させてもらっていただけだ」

 

「…!ギシュバチームか。確かに彼らなら間違いないな。しかし君たちは…ちょっと危なっかしいね」

 

「危なっかしい?」

 

「ああ。正直君らチームの戦力は低いように見える。今のでそこの娘は死んでいたしな」

 

ヒックスの指摘は正しかった。4人の内、戦えるのはウィンワンと最近やっと様になったルイだけで、ナパーロは元よりトゥーラもまだ人を斬ることを克服出来ていなかったのだ。

 

トゥーラも自分がまともに戦えていないことで足を引っ張ってしまっていることを自覚しているのか気まずそうにうつむいた。

そんな様子に気づかずルイは会話を続ける。

 

「だからと言ってオラクルから貰った金はなるべくとっておきたいし下手に傭兵も雇えないんだよなぁ…」

 

「元手の資金があるのなら奴隷を使って鉱石掘りや農業でもやらせればいいだろう。まぁ俺の知ったことではないが」

 

そう言うとヒックスは先ほど倒した大柄の男をいとも簡単に背負い込んだ。

 

「…!あんたそいつをどうするんだ?」

 

「どうするって…俺は賞金首ハンターだし警察に引き渡す。3000catにはなるだろうな」

 

「おお!そんなに貰えるのか」

 

「君らも小銭稼ぎに賞金首を引き渡したらどうだ?そこで伸びている反乱農民の剣士は500catになると思うぞ」

 

「マジか!鉱石掘りだけだと賃貸料払いきれないし安定するまで賞金首でつなぐのもありだな」

 

嬉しそうに話すルイに気を許したのかヒックスがさらに助言をくれる。

 

「賞金稼ぎとなると益々戦力の強化が必要だと思うぞ。BARにでも行って仲間を募ってみるといい。君は有名だからチームに加わってくれる人もいるんじゃないか」

 

「おう、そうだな!色々助かったよ。つーか、あんたは一人で活動してんのか?強そうだし俺たちと一緒に来ないか?」

 

見知らぬ人間にもなりふり構わず勧誘出来るルイの破天荒な性格はこういう時に役に立つ。

この問いかけに男はしばし黙りこんだが小さな声でこたえた。

 

「…俺はコミュニティに加わってルールに縛られるのが嫌だが、君ら有名人がその辺の野盗にあっさりやられてしまうのも釈然としないしな。いいだろう。しばしの間、加わってやる」

 

「おお!やったぜ!これから宜しくな!」

 

こうして5人目の仲間を新たに加えルイ達一向は首都へフトを目指すことになった。新加入した長身イケメンの男ヒックスをルイやトゥーラの女子組は自ずともてはやしたが、これを見ていたウィンワンは明らかに怪訝な態度を示していた。




再開してみました
3編は各組織の思惑が交錯するドロドロした展開を考えてます(*_*;

1週間更新を目指してますが若干不定期になるかもしれません
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