Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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42.募集

「剣技は得意だが、この町をでるのに9000cat必要だ。実家では病気の母が一人俺を待っているんだ…」

 

「そうだったのですか!それは不憫なことですね。採用します!9000catも我々で…」

 

ルイは鼻をすすり目元を潤わせながら男の言い分にこたえようとしたが、トゥーラが遮るように喋りだす。

 

「いえ!一旦こちらで検討しますので結果は後ほどお知らせします!」

 

話していた男は結局お金が貰えないと分かるとそそくさと去っていく。それを見送ったルイはトゥーラに詰め寄る。

 

「なんでさっきから強そうな人なのに採用しないんだ?しかも病気の母親がいるってのに…」

 

対してトゥーラは冷めた目をして突っ返す。

 

「あなた本当に仲間探しは苦手なのね。グンダーの時は見抜けたのに。人を疑うことを知らないし。ヒックスさんはさっきの人どう思いました?」

 

2人の視線は一緒にテーブルを囲って水を飲んでいる男に向かう。

 

「ん?ああ。トゥーラが正しそうだな。いま別れた奴は恐らく詐欺師だろう」

 

「ですよね~?」

 

尻尾を振る犬のように笑顔でヒックスに取り巻くトゥーラを見てウィンワンはドン!と酒ダルを机に置いた。

 

「ヒックスとやらに聞くがこれまで一人で旅を続けてたのか?」

 

ウィンワンは鋭い目つきでヒックスを睨むが彼は気にする素振りを見せず坦々と返す。

 

「ウィンワンさん。俺が戦力が乏しいと言ったことに腹を立てているようだがあなたの実力は認めてますよ」

 

これにルイが何か気づいたようにこたえる。

 

「なんだ爺さん、さっきからそれを怒ってたのか?イケメンのヒックスに嫉妬してんのかと思ってたよ」

 

「違うわい!何を言っとるんじゃ!ちなみにお主は仮にも頭領なのじゃから加入したての新人にベタベタしとるんじゃない!」

 

「ええ?俺は頭領じゃないし新参者は歓迎してあげるもんだろ。それに爺さんだって最近チームに入ったばっかじゃん。文句ばっか言わないで仲間選び手伝ってくれよ」

 

「人事は苦手なんじゃ」

 

そう言って押し黙ってしまったウィンワンを見てトゥーラがフォローする。

 

「ま、まぁウィンワンさんには剣を教えて貰ったりしてるし、さっきもウィンワンさんが捕らえた剣士は500catで引き渡せたのよ」

 

「わしのことはいいんじゃ!それより…」

 

ウィンワンは喋りかけて言葉を止めた。ルイ達が囲むテーブルの前に麦わら帽子笠をかぶったハイブ人が立っていたからだ。

 

「ああ!お前は!」

 

ルイやトゥーラも気づいて一斉に声を上げた。

 

「久しぶりだね。駒を募集していると聞いて駆けつけてみたよ」

 

「シルバーシェイド!」

 

金次第で敵にも味方にもなり得るこのハイブ人は最初に出会った頃と同じように無表情で佇み、独特の雰囲気を醸し出していた。

 

「なんであんたがここに?」

 

「ん?君たち有名になって金が貯まったんじゃないの?そりゃあ雇ってもらえないか応募しに来るよ」

 

「いや…あんたみたいな高給取りの傭兵が来てもそんなに金あるわけじゃないんだけど。度々報酬を要求してきそうだし」

 

「ああー…もしかして傭兵ってよりかはチームメンバーを募集してるのか。じゃあ取り敢えず成果報酬でもいいよ。何もしてない時は金を払わなくていい」

 

飄々としているシルバーシェイドを見てウィンワンも会話に入ってくる。

 

「お主達はこやつと面識があるのか?ワシも過去に少しだけこやつと一緒に仕事したことあって腕前は確かなのを知っている。賞金首ハントにも向いているじゃろう」

 

対するシルバーシェイドの反応は

「おやっさん、前に会ったことあったっけ?」

と、ウィンワンを全く覚えておらず、一方的に覚えていただけだったことが分かり、ウィンワンがまた顔を爆発しそうに紅潮させていたがトゥーラは話を進める。

 

「ま、まぁ今回は裏切られる心配はないしルイも特に問題ないよね?」

 

「うん。お金はトゥーラに任せてるし強い奴が入るにこしたことはないな」

 

「決まりだね。じゃあそこで酒飲んでるから募集が終ったら教えてくれ」

 

そう言うとシルバーシェイドはそそくさと別のテーブルでお酒を飲みだした。

 

「意外な人が入ったけどこれで6人ね。あんまり増えても動きにくくなるしお金も潤沢にあるわけじゃないから取り敢えず一人だけでいいわよね?」

 

「うん…そうだな」

 

トゥーラはいつもより小さい声でルイが返事をしたことに気がついた。

 

「どうしたの?なんか元気ないじゃない」

 

「あ、いや。都市連合で募集してたらニールからのコンタクトがあるかと思ったんだけど、ないところを見るとまだ一緒に行動する気はないんだなと思ってさ」

 

「そうね…。サッドニールさんが調べていることが危険だと言っていたから巻き込みたくないだけだと思うけどその内容も気になるしね」

 

「アイソケットにいるマスターミフネがあやしいことも教えてあげたいんだけどな。というか…話変わるけどあそこの隅でずっとこっち見てる男がいるんだけど誰か知ってる人いる?」

 

一同がルイの指差す方向を見るとまるで子供が新しいオモチャを見るように目をキラキラ光らせてこちらを見ている若い男がいる。

 

「あやつはわし達がBARに来たときからずっと見ていたぞぃ。大方、有名人を見て舞い上がっているだけじゃろう」

 

「ふーん…あ、こっち来る…」

 

ウィンワンが若干ふてくされた様子でお酒を飲みながらぼやいていると男はルイ達と目が合ったや否やパタパタと駆け寄ってきた。

 

「ルイさんっすよね!?メガクラブを倒した!」

 

開口一番、大きな声でルイに喋りかけてくる男は背丈はルイより少し高いぐらいの若くて元気のよい男子だった。

 

「そ、そうだけど…」

 

「俺はコック見習いをやってるシャイニングって言います!料理人を雇ってみる気ないっすか!?」

 

ルイも男子の勢いに若干引き気味であったが料理という言葉に反応して急に元気になる。

 

「おお!?料理が作れるのか?カニ料理とかも?」

 

「食材があれば何でも美味しくするっす!」

 

「マジか!採用する!若そうだけど歳はいくつだ?」

 

「15っす!」

 

「俺の1個下か!宜しくな!」

 

2つ返事で回答するルイにトゥーラが慌てて割って入る。

 

「待って待って!いま専属シェフを雇う余裕ないわよ!あなた戦えるの?私も人のことは言えないけど」

 

「棍棒なら握ったことはあるっす!戦えと言うのなら剣も覚えるっすよ!」

 

ルイはウンウンとうなずきながら同意する。

 

「その心意気買った!一緒に頑張ろう!トゥーラ、こいつは絶対伸びるぞ!」

 

「いつもその根拠はどこから来るのよ!素性も聞いてないじゃない」

 

「毛皮商の通り道出身で今は飯場のバイトをやってるっす!」

 

これにルイ以上に反応したのはウィンワンだった。

 

「毛皮商の通り道ってホーリーネーション領じゃし何もないとこじゃないか。嘘はつくなよ坊主」

 

「嘘じゃないっす!ノーファクションという組織が昔そこにあって母がそこで俺を産んだって言ってました!」

 

ウィンワンは厳しい目で若者を見やっていたが、この言葉に凍りついた。

 

「ノーファクションじゃと…?」

 

目を見開いて固まっているウィンワンにルイ達も様子がおかしいことに気がつく。

 

「爺さん急にどうした?」

 

「…いや、なんでもない。坊主、その母はいまどこにいる?」

 

「今はもうこの世にいなくて俺一人っす。いつか俺は母が昔やっていた料理店を再建したいんす!雇ってくださいっす!」

 

もはやお決まりの反応の如くルイが目を潤ませながら食いつく。

 

「そうだったのか!それは不憫だな!採用する!」

 

「さっきと同じパターンじゃない!」

 

このルイとトゥーラのボケと突っ込みのようなやり取りを何度も見てきたであろうヒックスやナパーロ等はもはや無反応で黙々とダストウィッチを食している。

 

「いやいや今回は俺は分かる。見ろよこの曇りなき眼を!人を騙している目じゃない」

 

「うーん…まぁシルバーシェイドを入れて戦力アップは出来たしそこまで言うなら…」

 

これまで既に面会を複数回やってきたのであろうトゥーラは疲れて言い争う気力が尽きたらしく渋々了承してくれた。

 

「イエーイ!やったな!シャイニング!」

 

「っす!よろしくお願いしまっす!」

 

初めて会ったばかりとは言えないほどルイとシャイニングが打ち解けている中、ウィンワンはこれ以上特に言うことはなく渋い口調で皆に発破をかける。

 

「さて…7人か。まずは購入した屋敷の賃貸料金含め生活費を稼げるようにしないとじゃな」

 

「ああ!まずは懸賞首を沢山捕まえて世界をまわるための資金を稼ぐぜ!」

 

戦力を増やした一向は安定した収入を得るため都市連合領内にいる賞金首を探してお金を稼ぐことにした。

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