Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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43.砂忍者

人数が増えたことでルイ達はヘフトにある大きめの屋敷を購入し、そこを拠点として活動することにした。

ウィンワン、ヒックス、シルバーシェイドの武闘派は賞金首を探してとらえる役割、トゥーラ、ナパーロ、シャイニングは家事、炊事、そして運営を担当した。ルイは迷った末に前者についていくことにした。

 

そして賞金首稼ぎグループは太陽が照り返す灼熱の砂漠の中、街道とされている道を敢えて外れて練り歩いた。反乱農民や野盗の襲撃を誘うためだ。

 

「暑ぃ~…ポンポン稼げると思ったらあんまり賞金首には出くわさないもんだな。一発ドカンとお金入らないと割に合わないんじゃない?」

 

ルイは汗だくの服をパタパタしながら重い足どりでヒックスに問いかけた。

 

「懸賞金が高額なA級賞金首は10000catぐらいになるが、そうそう見つからんし出会っても大体手練の人間だから危険だぞ」

 

「そうなんだ。一番高いのがA級ってこと?500catは何級だったんだ?」

 

「500catは一番低いD級だな。主にD級からA級までしか分類されないが特別に最上級のS級と呼ばれる10万catの賞金首がこの世界には数人いる。ここらの地域だと反奴隷主義者のティンフィストが該当するな。まぁ絶対に捕まえられないだろうから偶然見かけたとしても俺達は逃げの一択しかない」

 

「じゅ、10万cat!?一人でか?反奴隷主義者ってどんな凶悪な奴なんだよ!」

 

「ルイ、反奴隷主義者は凶悪犯と言うより都市連合に長く敵対している組織だ。全ての奴隷を解放して人間皆が平等になるべきだって主張している集団さ。まぁ俺から見れば奴隷を解放した後の混乱は何も考えていないただの能天気集団だが」

 

「へぇー…そんな奴らがいるのか。じゃあ都市連合の人間でもない俺達は手を出さなきゃ別に攻撃もしてこないんじゃないか?もし出会っても無視していこーぜ」

 

安心しながら先を行くルイとは対称的にヒックスは考え込んでいた。

 

「いや…ルイはどうだろうな。既に都市連合の英雄のように扱われているから覚えられていたら敵対視されるかもしれない」

 

「マジか…」

 

「ちなみにティンフィストは武術をマスターした最古からいるスケルトンで、あいつの鉄拳で殴られたら軽く頭が吹っ飛ぶだろう。下手すると奴一人でも都市を壊滅出来るかもしれんほどの達人だ」

 

「は…ははは…やっぱり取り敢えず手頃な3000catぐらいの奴からに探すことにしようぜ」

 

「B級だな。手配書を確認して地域を絞ったほうが早い」

 

4人は早速、都市の警察署にある手配リストを眺めにいった。

 

「おお~いっぱいいるなー。D級は何人いるか分かんないぐらいだ。3000catあたりはB級だっけ?こっちもそれなりにいるな」

 

ルイ達はズラリと並んだB級手配書リストを一つずつチェックしていく。

 

「んー?スナニンジャ…こっちもスナニンジャ…。この周辺にいる懸賞首はスナニンジャって奴が多いんだけど何なの?」

 

「それは都市連合内に巣くう忍者野盗の組織だ。放浪者や農民だけでなく侍兵にも手を出している連中でたしか山脈のサボテン穴という場所にそいつらの拠点があったはず。都市連合の貴族連中には討伐までやる余裕もやる気もなくずっと野放し状態だ。地図で言うとちょうどこの辺りだ」

 

「一般人にも攻撃してくるなら捕らえたほうがいいな!ちょっと遠いけどそのサボテン穴の周辺を出歩く小者を狙って小銭を稼ごうぜ!」

 

「ああ。ただスナニンジャの頭領は鬼と呼ばれていてA級の懸賞額2万catだ。万全を期して奴らの本体には手を出さないようにしよう」

 

目標を定めたルイ達は早速サボテン穴に向かうことにした。道中でヒックスが砂漠で奇怪にしだれた植物のような触覚を見つけ注意を促す。

 

「あの触覚には近づくなよ。スキマーだ」

 

「え、あれがスキマーなのか?あいつら地中に埋まっていることもあるのか…知らずに近寄ってたら危なかった…」

 

トゥーラとナパーロの3人で都市の周辺で鉱石掘りをしていた頃も昆虫型生物スキマーに出くわしたことがあったが遠目で向かってくるのが分かったため事前に逃げることができていた。

 

「地中で暑さを凌ぎながら近づいた生物を音で探知して補食している。君は都市連合出身ではないのか?よくここで生きてこれたな」

 

「あー、俺は違う地域から来たからこの辺のことは全部トゥーラに任せてたんだ」

 

「そうか。信頼出来る仲間がいることは良いことだ」

 

しばらくすると目標となるサボテン穴がある山脈が眼前を覆う高さぐらいになってきて、4人の足どりは自然と慎重になっていく。砂嵐が吹き荒れる中、高低さのある岩山に視界を遮られいつ他の生物に遭遇しても分からない状況になってきたからだ。

 

スナニンジャはあまり多くの人数で行動しないとのことだが忍者野盗と言われるだけあって一人一人の腕前はその辺にうろつく反乱農民より断然高い。こちらが4人のため基本的には3人以下で行動しているスナニンジャを狙うことにしていたが、岩影に隠れ誰かが通りすがるのを待つ間、稀にスキマーも遠くに見え4人に緊張が走る。

そして時間が経過しルイの集中力はとっくに途切れた頃、ゴーグルをしたヒックスが砂嵐の向こうに人影を発見する。

 

「何人だった?スナニンジャか?」

 

「2人までは確認した。それ以上いるかもしれないがスナニンジャかどうか判断できなかった」

 

シルバーシェイドが笠で砂嵐を防ぎながら目を細める。

 

「彼らスナニンジャは口元まで覆ったシャツを着ているのが特徴だが嵐でよく見えないね。近づいてみるかい?」

 

「待て!砂嵐で人数が分からないのじゃろう?相手が多かったらまずいぞい」

 

「かといってここに居続けても何も始まらないよね。相手の後ろからばれないように追跡しよう」

 

何事にも慎重なウィンワンは追跡を反対したが、結局シルバーシェイドが先を歩き始めたので4人は吹き荒れる砂嵐の中、人影が向かったと思われる道を後ろから慎重に追跡することにした。

 

「隠密は得意ではないのじゃが…」

 

ウィンワンがぼやいた矢先、先頭をいくシルバーシェイドが岩影に身を屈め『止まれ』の合図を後方に送る。

 

「どうした?何かいたのか?」

 

小声で問いかけるルイにシルバーシェイドは前方を見ながら若干慌てた様子で指を一本たてて『静かにしろ』のシグナルを送る。

 

ルイもソロリと身を乗り出すと目前の光景に驚愕する。

 

3階立ての監視塔のような建物と入り口を固める忍者装束をまとった兵士が2名。明らかに拠点と思える建物が姿を現したのだ。

 

「もしかして…スナニンジャの拠点を見つけてしまったのか!?」

 

「らしいな…。奴ら組織の規模は50人程度だ。建物内には10、20人はいるかもしれないから見つかったらアウトだろう。気づかれる前に撤収するぞ」

 

ヒックスもこのような事態には慣れているのかすぐに事態が深刻であることを悟り素早く判断する。

 

「やれやれ山道は年寄りにはきついと言うのに…」

 

ウィンワンがもと来た道を戻ろうとした時であった。つま先に当たった小石がコロコロと転がる。

 

カランカラーン…

 

乾いた音が嵐が吹き抜ける山あいの山腹にこだました。

 

「おい…!」

 

4人は思わず息を殺して足を止めた。

 

ビュオーっと吹き抜ける風の音だけが数秒間聞こえていたが、特に状況に変化は見られない。

 

ルイは手を広げセーフの仕草をした。が、その瞬間、黒い何かが飛んでくるのを他3人が気がつく。

 

カキーン!

 

シルバーシェイドが咄嗟に居合い斬りでその何かを叩き落とすとそれはクナイであることが分かった。

 

「走れ!」

 

瞬時にヒックスが指示を出す。

気づかれたことは一目瞭然だった。4人は一斉にもと来た道を走り出す。

都市連合でさえ殲滅しきれていない盗賊組織の本部に4人という小人数で手を出してしまったのだ。追いつかれれば命の保証はないだろう。誰も口を聞かずに全力で駆けた。

がしかし、しばらくすると老齢のウィンワンが息を切らし始める。

 

「爺さん!?大丈夫か!?」

 

ルイが振り替えるとスナニンジャと思わしき人影数名が猛烈な勢いで追いかけてきていることが分かる。

 

(奴ら軽装だから足が早い!このままじゃ追い付かれる!しかし…)

 

ウィンワンやシルバーシェイドを見ると最早スタミナが切れかかっていることは明白だ。

 

絶体絶命かと思われた矢先、ルイは前方に見覚えのある物を見つける。

 

「おい!あれが見えるか?回り道して奴らにぶつけるぞ!」

 

ルイ以外の3人もルイの意図に瞬時に気がつく。

 

動物は獲物を追う時、ついその対象だけに集中してしまう。それは人間であっても同じことだった。ぐるっとカーブを描くように逃げる4人をスナニンジャは距離が縮めることに気をとられルイの思い描くルートで追ってきたのだ。

 

ザザー!

 

スナニンジャの足下の砂から巨大な昆虫の足が這い出て鎌のような足でスナニンジャの一人をからめ取ったのだ。スキマーだ。

それを目撃するのはルイは当然初めてであり思わず口から声が漏れる。

スキマーはそのまま口もとにスナニンジャの体を運び肋骨が折れる不快な音と共にグシャリと噛み砕いた。

 

他のスナニンジャもこれに驚きスキマーに対して臨戦態勢に入る。

 

「やった!けどちょっと気の毒…!」

 

「仕方ないじゃろ!しかしよく思いついたな!やはりあいつの子だけ…」

 

何かを言いかけてウィンワンは口をつむぐ。

 

「まだ一人追いかけて来てるぞ!」

 

「マジか!…って一人か?チャンスじゃね!?ある程度引き離してから捕らえてやろう!」

 

「……」

 

ヒックスが度々振り返り怪訝な表情をしていることにルイが気づき声をかける。

 

「どうした?まだ追ってきているか?」

 

「いや…追跡者の顔を覆う籠のような深編笠…あいつはもしや…」

 

ヒックスが言い切る前にシルバーシェイドが急に立ち止まり仕込み刀を抜いて臨戦態勢に入ってしまう。

 

「もう走れないよ!ここでやっちまおう!」

 

砂煙を出して立ち止まると追跡者のスナニンジャも距離を置いて立ち止まった。

背中には二本の忍者刀を交差して装備している。

 

深編笠で顔は見えないが、息を切らしている様子もない。一人で追ってくるということはよほど腕にも自信があるのだろう。

 

「よくもアタイらの仲間をスキマーの餌にしてくれたね。この代償は高いよ」

 

深編笠からしがれた甲高い声が聞こえてくるとヒックスは何かを確信し、意を決したように前に出る。

 

「やはりこいつはスナニンジャの頭領、鬼だ。全員でかかろう、と言いたいところだがあんたら老人と新米は休んでな。ここは新参の俺が信任を得るためやらせてもらう」

 

「お前一人でやるつもりか!?大丈夫なのか?」

 

ルイの問いかけにヒックスは不敵に笑い腰に差した長剣を抜いた。

 

「アタイもナメられたもんだね。来な、若造が。血祭りにしてあげるよ」

 

対してスナニンジャの頭領、鬼も深編笠を脱ぎ去り肩から忍者刀を抜き逆手で持って臨戦態勢に入る。鬼はスコーチランド人の女で齢50ほどだが公開されている似顔絵と酷似しており、醸し出すオーラからも間違いなく本物と思われた。

 

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