Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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◆現在のメンバー
ルイ:主人公。世界に興味を持ち旅に出た16歳女子
トゥーラ:新米テックハンター。同年代のルイに同行している
ナパーロ/ラックル:ルイ達に買われた多重人格障害の元奴隷
無限のウィンワン:遠征以後、ルイに同行する爺
ヒックス:ルイ達を助ける賞金首ハンター
シルバーシェイド:金で雇われた何でも屋
シャイニング:料理人見習い
シャリー:逃亡奴隷の女の子


47.トレーダーズギルド

「いただきまーす!」

 

ルイ達は久しぶりのご馳走に飛びついた。

ルイが捕らえたカニをシャイニングが豪勢な料理にしたのだ。

 

「いやまじでうめーよ!もう料理店はいつでも開けるんじゃねーか?」

 

「ありがとうございまっス!ルイさん達が粋のいい食材をたくさん持ってきてくれたからッス!」

 

「もうここでシャイニングの料理店って名前で開いちゃおうぜ。たくさん旅人も来るだろ!」

 

「じゃあお店名はフラフラガーでお願いします!亡くなった母のお店名なんです!」

 

「お、そうだったのか。つーか母親って毛皮商の通り道にいたって言ってたよな?どんな成り行きなんだ?もしかしたら俺の親と同じ組織にいたんじゃねーか?」

 

「ルイさんの親御さんもいたんですか?あんまり詳しいことは聞けなかったのですがどうやら所属していたところが潰れてしまって住み慣れた都市連合に移住したそうです」

 

「ふーん…」

 

この話を聞いていたウィンワンは渋い表情をしていた。恐らくこのシャイニングの両親はボスの組織にいた。誰なのかもウィンワンには心当たりがあった。

しかし、自分はあの時逃げ出した身であり言い出せなかったのだ。

 

(こいつらを何があっても守り通すことがわしの最後に課せられた使命、責務となるのだろうな…しかし…このカニ料理本当にうまいな…)

 

一人黙々と食べながらウィンワンは何かを決意した。

 

 

翌朝。

ウィンワンはトゥーラと新規加入の女の子シャリーを呼び出した。

 

本来は子供を仲間にする余裕はルイ一向にはなかったが、引っ越し中に偶発的に仲間にせざるを得ない形で加入したためどんな子供なのか詳しく知らなかったからだ。

 

(ふむう。ボロボロの布切れを着込み、フケだらけのボサボサの髪。外見は奴隷じゃが割りと健康そうな肉付きじゃのう)

 

フードをとってから気がついたが肩にかかるぐらいのピンク色の髪も特徴的な女の子であった。

 

【挿絵表示】

 

「こんなところに呼び出して何の用ですか?」

 

最初に話し始めたのはトゥーラだった。

 

「いや、シャリーにどんな作業を割り振っているのかとそもそもこの子の経歴確認が済んでいないじゃろう。世話しているお主と一緒に確認しておきたいと思ってな」

 

ウィンワンは女の子に居直って問いただす。

 

「シャリーとやら。お主はどこの施設で何をやっていた奴隷なのじゃ?」

 

2人の視線を受けてシャリーは押し黙って萎縮してしまう。

 

「ウィンワンさん。まだ子供なんですよ?あまり覚えてないでしょうし元奴隷ってだけでいいじゃないですか」

 

「何をしていたんじゃ?」

 

ウィンワンはトゥーラを無視して続けた。

 

「こ、鉱石掘りです」

 

「ふむう」

 

ウィンワンは女の子の手の平をジロリと見る。

 

「助けた際に重労働は嫌だ、と言っていたが他に出来ることがなければ取り敢えずは坑夫等をしてもらうしかないのじゃが問題ないかの?」

 

ウィンワンの物言いにシャリーは今にも泣き出しそうな顔つきをしていて思わずトゥーラが割り込む。

 

「ここでの生活に慣れるまでは雑務とかやってもらいます」

 

「そうか。物資の管理もお主に任せているが、気がついたら破産、なんてことにならないようにの」

 

「ええ、分かったわ。では行きましょ」

 

トゥーラがシャリーを伴って戻ろうとした時、ウィンワンが呼び止める。

 

「トゥーラ。お主にはまだ話があるから残るんだ」

 

シャリーがおどおどと戻っていくのを確認するとそのままウィンワンは続ける。

 

「お主はそろそろ自分の弱点を克服せんと今後ルイを補佐していけないぞぃ」

 

トゥーラにとって何を言われているのか大方察しはついていたが、戦闘においてルイに大きく差をつけられているという劣等感と相まってつい否定から入ってしまう。

 

「ルイの補佐って何ですか?私は友達としてルイを助けているだけです。それに弱点って何のことです?」

 

この問いかけにウィンワンは人差し指をクイクイと曲げ無言でついてこいと言わんばかりにスタスタと歩いていってしまう。

 

トゥーラは重いため息をついて渋々ついていくと長い紐で木に繋がれたボーンドッグを発見し嫌な予感を覚える。

 

「お主、人は元より動物もろくに斬れんじゃろう。型は独学なりに出来ているがお主の剣に殺気がまったく感じられん。そこにつないでいるボーンドッグを斬り殺してみろ」

 

「…!」

 

この指摘は正しかった。トゥーラはいまだに動物を斬れないでいたのだ。

剣術の達人を自負するウィンワンは仲間になって以来、ルイやトゥーラに剣術の基礎を教えていた。2人はハウラーメイズ遠征時にもアウロラやハーモトーに教わっていたため、基礎はすんなり習得できていたのだが、実戦において相手を殺すことに恐怖を感じてしまっていたのである。

 

「真剣で仕合うと極端にお主は弱くなったからのぅ。永遠に斬れないようじゃこの先チームにいてもルイの足を引っ張るだけじゃ。分かるじゃろう」

 

「や…やるわよ。見ていなさい」

 

トゥーラは震えながら腰に差している忍者刀を抜いた。

 

(ボーンドッグをつなぐ紐が少したるんでいるから50cmはこちらに届くかもしれないわね。飛び込んでくる距離感を想定して首もとに刀を刺す…簡単な事だわ…)

 

「グルルルルル…」

 

ボーンドッグは前足を伸ばし戦闘態勢に入っている。

 

トゥーラはジリジリと近づこうとするも足がすくんで前に出ない。

 

「ふん。お主には相手を斬る恐怖の前に実戦への恐怖もあるようじゃのぅ。殺意を持つ敵にのまれておるわぃ。わしは行くからこの犬をせめて倒せるようにしておけよ」

 

そう言うとウィンワンは早々とその場を立ち去ってしまった。

 

残されたトゥーラは忍者刀をカランと落とし、膝から崩れる。

 

(このままじゃ私は本当に皆の…ルイの足を引っ張ってしまう)

 

結局、一度も斬りつけることさえ出来ずに戻るとルイが探していたのか勢いよく出迎えた。

 

「あ!いたいた!どこに行ってたんだよ!

…ん?おいトゥーラどうした?」

 

「ウィンワンさんに稽古つけてもらってたのよ」

 

トゥーラはうつむきながら小さな声で返答するがそんなトゥーラの心境も知らずにルイは元気な声で続ける。

 

「ああー爺さんなんか最近ピリピリしてっからなぁ。それより息抜きにずくだんずんぶんぐんゲームやろうぜ!シャイニングもやるってさ!」

 

「何よそのゲーム…。私たちはいまそれどころではないでしょ」

 

「いやでもさ、ずっと気を張りつめてると疲れちゃうしさ」

 

「はぁ…悩みがないと気楽でいいわね。ちょっと疲れているから小屋で休ませてもらうわね」

 

先日、夜番もしていたトゥーラはそのまま奥で寝入ってしまった。

 

この日はヒックス、ウィンワン、シルバーシェイドがいつもの狩猟に出ていってしまい拠点にはルイ以下、年齢層が低いメンバーが残り、間に合せの壁を作っていた。

そんな時、不運なことに新手の訪問者が来てしまうのである。

そして強気で勝ち気なルイが対応したことがさらに事態を悪化させることになる。

 

「ごめんくださーい」

 

間の抜けた太い声が拠点に響きルイが玄関に出ていくと行商人らしき集団が深々とお辞儀をしながら出迎える。

 

「ご挨拶もうしあげます、だんな」

 

先頭にいる男は行商の籠を背負った中年のスコーチランド人でたくましい体格ではあったが絶えずくねくねして両手を擦り合わせており、生理的に拒否反応が起きる気持ち悪い男であった。

 

「…何ですか?」

 

ルイもその様子を見て怪訝に問いかける。

 

「こんにちわ、私はトレーダーズギルドの代理人フグと言います。小さな拠点を建てたようですね。ただ一つ付け加えるとしたら無許可の、ですね。トレーダーズギルドは全ての商売活動に規定を設けており、加盟店手数料の支払い義務が発生します。ここがトレーダーズギルドのテリトリーであることを知っていて拠点を建てた、という認識であっていますか?」

 

ダラダラと口上をたてる男に対してルイも少し苛立ちながら応える。

 

「いや?知らなかった。ってかここは都市連合のロード・オラクルのテリトリーだし、商売する気もないんだけど」

 

「トレーダーズギルドは領土を持ちませんが都市連合から全ての交易権を取得し商売の認可を受けています。そのためここはトレーダーズギルドのテリトリーでもあるのですよ。そしてその場合、地域課で会員登録されている必要があります。我々に対して週ごとに4000catの支払いを行ってください。トレーダーズギルド会員は特典として武力面の保護を受け、パトロールが毎日巡回するようになります」

 

つい先日、都市連合の徴収があったことを聞いていたルイは当然のように請求する男にキレかかる。

 

「はぁ?この間、払ったばっかだっつーの!そんなにぽんぽん払えるわけねーだろ!」

 

「支払いがなかった場合、加盟店ブロンズ会員専用保護サービスの恩恵を受けられなくなります。あなたが今滞在しているその謙虚な拠点は多くの招かざる客人の視線を集めることになるでしょうし、あなたの小さなパーティにそのような不幸が降りかかるのは私たちにとっても恥ずべきことです」

 

「知らねーし、てめぇでシ○ってろ!」

 

普段ルイもここまですぐに激情することはなかった。少人数とは言え自然とリーダーとして祭り上げられ無意識に無理をしていたこともあった。この日いつもは率先していた狩猟に行かなかったのも少し体調を崩していたからだ。

ルイもトゥーラと同様、心に余裕がなくなっていたのだ。そんな不運も重なり今、巨大な勢力に目をつけられようとしていた。

 

「やれやれ…聞き分けのない下品な子ですねぇ…アウトランドで保護下にない人々が恐ろしい目にあったと耳にしない日はありません。あなたがその決断を後悔する日が来ないことを切に願っています」

 

「……」

 

トレーダーズギルドの集団が帰った後、振り替えるとシャリーがオドオドしながら見ていたので「安心しろ、大丈夫だ」とルイは自分に言い聞かせるように勇気づける。

 

しかしこの時、長く止まっていた因縁の歯車が再び回り始めたことは、まだルイには知る由もなかった。

 

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