Kenshi -20years later-   作:さわやふみ

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ルイ:主人公。世界に興味を持ち旅に出た16歳女子
トゥーラ:新米テックハンター。同年代のルイに同行している
ナパーロ/ラックル:ルイ達に買われた多重人格障害の元奴隷
無限のウィンワン:遠征以後、ルイに同行する爺
ヒックス:ルイ達を助ける賞金首ハンター
シルバーシェイド:金で雇われた何でも屋
シャイニング:料理人見習い
シャリー:逃亡奴隷の女の子


49.英雄リーグ連合2

焦げたスキマーの足を丸ごと手に持ちクチャクチャと肉にかぶりつく男がいる。

そこに慌てて掛け入ってきた者が大きな声で報告する。

 

「ミラージュさん!大変です!ルイのとこに行った奴らがボロボロになって帰ってきました!」

 

男は反応することなくムシャムシャとスキマーを食べ終わるとポツリと喋りだす。

 

「やっぱスキマーは足がうまいよなぁ。そう思わないか?」

 

「え…あ、はい。そうっすね…」

 

「で?何だっけ?貴族の食事を妨げてまで大事な用があるんだっけ」

 

「あ…いや、そういうつもりじゃ…」

 

「いい、いい。取り敢えず言ってみろ」

 

「は、ハウラーメイズに行った奴らが2人しか帰ってきませんでした」

 

「追い返されたのか?人数は同じぐらいだったろ。何やられてんだよ」

 

「い、いや奴ら思ったより一人一人が強かったみたいで…それと追い討ちでポートサウスの奴隷商が襲ってきたみたいなんです」

 

「ポートサウス…ああ~…あいつらね。返礼しに行かないと舐められちゃうね」

 

「どうします?」

 

「そうだな~…まずいつまでたってもミラージュ卿と呼ぶのを忘れるお前をボコボコにしてからルイって奴のとこを絞めにいくか」

 

「ひ…」

 

そう言うと男はゴミとなったスキマーの足を手に持ち目の前にいる男を殴り付けた。

 

 

同刻

 

ルイ達は英雄リーグ連合の攻撃があった件について話し合いをしていた。

 

「また来ると思うか?」

 

ルイの問いかけにヒックスが答える。

 

「英雄リーグ連合の頭領ロード・ミラージュの名前は襲名制だ。来るか来ないかは当代の性格によるだろうな」

 

「ん?どういうこと?」

 

「英雄リーグ連合はたしか30年ほど前にロード・ミラージュという名の貴族が立ち上げたレイシストの集団で、それから度々頭領は交替しロード・ミラージュという名を引き継いでいるらしい」

 

「へぇ~…なるほど!今のロード・ミラージュが復讐を考えるような陰険な奴なら再度攻めてくる可能性があるってことか!」

 

ここでシルバーシェイドが割ってはいる。

 

「私は一度仕事で今のロード・ミラージュに関わったことあるよ。重要書類の運搬を頼まれた。麻薬だろうけど」

 

一同は驚いてシルバーシェイドを見やる。

 

「マジか!早く言えよ!どんな奴だった?」

 

「うーん、スワンプ地方の奴らほどじゃないけど仕事をミスった人を処刑してたね。陰険な奴だよ」

 

「ヤバい奴じゃん!それ来るタイプじゃん!」

 

「まぁまぁ落ち着きなって。英雄リーグ連合は言っている通り頭領が何度も変わるほど誰でもなれるような組織ってことだよ。そもそも初代のロード・ミラージュも貴族の落ちこぼれに親が苦心して自警団のような職を与えたのがきっかけだったらしいし」

 

「強くないってことか」

 

「対策すれば何とかなるでしょ。それより最後に来ていたポートサウスの奴隷商のほうが気になるね」

 

「…なんでだよ?」

 

「名前をカマルクって言ってたけど、ポートサウスには三羽ガラスと呼ばれる優秀な幹部が3人いて、そいつはその内の一人だ」

 

これにウィンワンも同意する。

 

「たしかそうじゃ。ポートサウスの奴隷商はその三羽ガラスが考えた他とは違う特別な奴隷生産体制を確立して、都市連合が無視出来ないほど大きくなっているらしいぞぃ」

 

「特別な奴隷生産体制って…?」

 

「詳しくは知らんが農業や炭鉱掘りの他に隠密や暗殺に特化した訓練を受けた諜報活動要員や戦闘要員の奴隷を育てて売っているらしい」

 

「……!」

 

戦闘要員と聞いて嫌がおうにも強かったアウロラを連想できた。

これでルイの中で益々アウロラとポートサウスの結び付きが強くなる。

 

「そのポートサウスがなんで俺達のとこに来たんだ?」

 

「噂では奴らはある程度の手練れを奴隷化して手っ取り早く戦闘要員を作っているって話じゃ。少人数のワシらを狙っているのかもしれん」

 

一般人の奴隷化。しかもある程度有名になったルイすらも狙っているとなると常軌を逸した政策だ。そしてそれは奴隷としての人生の凄まじさを知っている者達を震え上がらせるには十分な言葉であり一同はしばらく無言になった。

だが、この様子を和ませるためかヒックスは異なる見解を提起する。

 

「または新興勢力の俺達をビジネスパートナーとして認識しているだけの場合もある。対話は攻撃的ではなかったしな。何れにしろまずは英雄リーグ連合の対策をしておくべきだろう」

 

「た、確かにそうだ。トゥーラ、傭兵を1ヶ月ほど雇う余裕ありそうか?」

 

「ええ、最近みんなの頑張りで若干の黒字に持っていけたから浮いた分で1ヶ月だけなら雇えるわ」

 

ヒックスはこのやり取りを聞いて少し考えこむと脇に置いていた長剣を帯刀する。

 

「よし。急いだ方がいい。道中は危険だし俺がヘフトに行って知り合いの傭兵と契約してこよう」

 

一同が立ち上がったヒックスを見上げるが、このヒックスの提案にウィンワンが食いついた。

 

「いや、ワシが行こう。お主は入隊して日も浅いから大金を持つのは嫌じゃろう?」

 

この若干挑発的な発言はまだ気を許していないヒックスに対する探りであった。今さらこの程度のお金を持ち逃げするような男ではないと認識はしていたが、過酷な世界で長年生きてきたウィンワンならではのやり方なのだろう。

 

「特に気にしていませんよ。ウィンワンさんも俺より数ヶ月早く入った程度でしょう。俺を疑っているのでしたら誰か一人ぐらいついてきても良いです。所属歴の長さで言ったら…ナパーロ君とかどうです?ルイやトゥーラは忙しいし君なら社会勉強にもなるだろう」

 

ヒックスはナパーロを見て問いかけた。

当然これにナパーロが返事が出来るほど自主性があるわけでもなく黙りこむが、回答内容にはウィンワンも納得したようであった。

 

「ふはは、気を悪くしてないでよかった。どうも『人がいい奴』、『イケメン』、『長身』は裏がありそうで好きになれんのでなぁ」

 

ズカズカと言いたい放題のウィンワンにさすがにルイも苦笑いで突っ込む。

 

「いや、爺さんさすがにイケメンについては嫉妬入ってるだろ」

 

「そうですよ。善意で動こうとしてくれている人に失礼です」

 

トゥーラに至っては暴漢から助けられたこともあり、最早ヒックスに恋愛感情があるのではないかと疑うぐらい一番好意的だ。

また、ナパーロの裏の顔のラックルが強いことをトゥーラは知っているため、この2人の組み合わせは問題ないと思っていた。

 

「では、傭兵契約にはヒックスとナパーロに行って貰うことにして私達は念のためここ1ヶ月は防衛態勢に力を入れましょうか。接近戦ができないメンバーもボウガンの砲台を作っておけば参戦できるし」

 

異論が出なかったため一向は今後の英雄リーグ連合の襲来に備えて動くことになった。

 

 

 

そしてそれから数日後

 

やはりロード・ミラージュ率いる英雄リーグ連合の一団が足しげくルイ達の拠点に訪れる。

 

既に完全武装した傭兵が4人、門の前に腕組みして立っており英雄リーグ連合を威圧するように睨み付けていた。

また、新たに建てていた家の屋上にも一基ボウガン砲台を建造し、その日はシャイニングがいつでも射てるよう備えていた。

 

対する英雄リーグ連合はロード・ミラージュを含めて10人ほどであり、拠点の前で様子を伺うように静止していた。

 

「なるほどな。こいつは攻めきれねぇ。つーか、聞いていた拠点の規模じゃないんだが」

 

ロード・ミラージュは恫喝するように隣にいる組員を睨み付ける。

 

「ぞ、増強したようです!傭兵も以前はいませんでした」

 

「ふーん、どうしたもんかねぇ…。何もしないで帰っても依頼料は貰えないし…。いっちょ男見せてやるか」

 

そう言うとロード・ミラージュは一人ルイの拠点に踏み寄る。

ルイ達も既に臨戦態勢でその様子を見ていた。

 

「おーい!俺は英雄リーグ連合の長、ロード・ミラージュと言う!このしみったれた拠点のリーダーはいるか?」

 

ロード・ミラージュは大きな声で拠点に向かって問いかけてくるが、ルイ達は敵対相手の呼び掛けに慎重になり応対しないでいた。すると続けてとんでもない事を持ちかけてくる。

 

「俺達はお前らの不正を見逃すことは出来ない。ルイってのがリーダーなんだろ?ここはリーダー同士で話し合わないか?ビビって出てこれないってなら別だが」

 

総力戦で勝てないと判断したロード・ミラージュは大将戦でケリをつけようとしたのだ。

 

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